【対談連載】ASH DA HEROの“TALKING BLUES” 第11回ゲスト:佐々木亮介 [a flood of circle]

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■親の仕事の関係で引っ越しが多かったけど
■音楽だけはずっと変わらずに持っていられる

──a flood of circleは、結成から15年目を超えました。初期から自分たちのスタイルは見えていたんですか?

佐々木:a flood of circleのスタイルっていうか、自分はとにかく超パーティが好きなんで。騒いでる状態がいい(笑)。だからライブを観に来ているみんなも“はしゃぎたければどうぞ”だし、無理にはしゃぎたくなければ“それで別にいいよ”とも思っているんです。例えば自分はザ・リバティーンズというバンドが好きで、イギリスへ行ったときにライブも観たんだけど、彼らはライブ中に「DANCE!」って言うんですよ。だけどそれは、“一人残らずダンスしろよ!”ってことでもないわけ。“ダンスしたけりゃどうぞ”ということで。俺もそのぐらいのつもりでライブやっているので。とにかく自分が最高に気持ち良くなりたくてやっているので、それでみんなも気持ち良くなればラッキーだという。楽しみ方は人それぞれでいい。みんな違う人間ですからね(笑)。

ASH:その感じ、俺はできないんですよ(笑)、「全員踊れ!」って言うタイプなんで。しかも「後ろのオマエ、見えてんぞ!」とまで(笑)。とにかく一人残らず煽っちゃう。


──a flood of circleは、いろんな引き出しを持っていて、楽曲も幅広いと思うんです。

佐々木:そうですかね。自分的にはいろいろやっているとは思ってないけど。まぁ、a flood of circleの中で曲のグラデーションがいくつかあるとしたら、なるべく全部やりたいなとは思っていますけどね。

ASH:音楽の造詣がめちゃくちゃ深いんだろうなって、端から見ていて感じてます。BARKSの連載コラムからも音楽観の深さがうかがいしれましたし。

佐々木:逆にASHさんは、どんなものが好きですか?

ASH:ルーツはもともとヒップホップで。“俺は絶対にラッパーになるんだ”って思ってたぐらい。でも高校生になってパンクロックという音楽にブン殴られて、学校を脱走みたいな。

佐々木:パンクロックの誰にやられたんですか?

ASH:最初はオフスプリングなんです。初めてバンドで歌うとなったとき、「この曲を覚えてきて」と渡されたMDの1曲目に、オフスプリングの「Want You Bad」が入っていて。

佐々木:ヤバい。めちゃくちゃ世代が近いかもしれない(笑)。しかも今は無きMDに「Want You Bad」というのが、さらにヤバい(笑)。

ASH:ははは。それまで個人的に聴いていた音楽がR&Bとかソウルで。もっと言うと、小学校の頃はAORを聴いてて。ボズ・スキャッグスとかエア・サプライとか。

佐々木:ボズ・スキャッグス、最高ですよ。

ASH:そういう音楽に浸っていたから、ロックとかは“うるさい”という感じだったんです。ところがオフスプリングを聴いたとき、“かっけー!”と。その後にグリーン・デイの『American Idiot』にブッ飛ばされて。その日からずっとアイラインを引いて学校へ通ってました(笑)。


佐々木:ははは! ヴォーカルのビリーの影響で(笑)? 僕のルーツはスピッツとビートルズ、あとはカニエ・ウェストなんですよ。

ASH:カニエ・ウェストとは意外だな。俺は佐々木くんのソロも好きなんだけど、英詞でラップっぽいことしていたり、マジでイケてると思っているんですよ。ソロのライブにも行きたい。

佐々木:ありがとうございます。ラップを聴くのは好きで。カニエ・ウェストはビートルズぐらい全てをやっていると思うから。

ASH:カニエ・ウェストはヒップホップの枠をはみ出てるから。発明をいっぱいしてますよね。

佐々木:発明だらけですよ。すごすぎる。

──佐々木さんは幼少期に海外生活もしていますが、それが音楽との接し方などに影響することも?

佐々木:あると思いますね。親の仕事の関係で引っ越しが多かったので、一定の環境にいられなかったんですよ。でも音楽だけはずっと変わらずに持っていられるものだってことを学んで。あと、イギリスに住んでいたときは、スパイス・ガールズぐらいしか入ってくるものがなかったというか。子供ながら、スパイス・ガールズが先生みたいなものだったんです(笑)。その前、ベルギーにいたときは、日本のカルチャーも入ってこないし、人口も少なかったんだけど、イギリスのロンドンは日本人向けの古本屋もあるぐらい日本文化もあって。あと日本のテレビ番組をひとつにまとめた放送もあったんですよ。テレビつけたら日本のテレビ番組がいろいろ観れる。そこで『夜もヒッパレ』みたいな歌番組も放送してて(笑)。

ASH:えっ!? 『夜もヒッパレ』がロンドンで観れたんですか?

佐々木:そうそう。そういう番組とかでスピッツも知ったし。あとは周りが英語ばっかりだから、国語の教科書で見る日本語はカッコいいと思えたし。

ASH:向こうに住んでいると、逆にそういう捉え方になるんだ?

佐々木:そう。でも英語をあんまりしゃべれないままオトナになっちゃったんで(笑)。最近、アメリカ音楽をアメリカでやってみようって、ソロとかセッションを録音しにシカゴへ行ったんだけど、あんまりしゃべれないから、“もうちょっと英語のことが好きになっておきゃ良かったな”と思ったり(笑)。


ASH:子供の頃に住んでいた影響なのか分からないけど、ロンドンというかUKの匂いがa flood of circleの音楽に常にある気がするんですよ。

佐々木:でもね、東京の渋谷はたぶんロンドンにすごく似ていると思うんですよ。「世界の音楽が」とかみんなが言うけど、だいたいアメリカ音楽の話しかしていないじゃないですか? ビートルズも含めて、ロンドンの人達もみんながアメリカに憧れて、自分たちのアイデンティティーは何なのかってことに思いを巡らせつつ、どう昇華するかって考えている。でも日本には、アメリカだけじゃなくて、さらにそこからロンドンもあるような気がしているんです。だから自分がUKっぽいっていうよりも、東京で音楽をやっていくとロンドンぽくもなっていく気がする。

ASH:ああ、その発想はめちゃくちゃおもしろい。幼少期にロンドンに住んでいたことで、いろんな音楽やビートが自分の根底にあるんじゃないかなって自覚するようなことはないですか?

佐々木:確かに原体験としてはあるかもしれませんね。小学生のときにゲームセンターへ行ったら、ドラムンベースが掛かっていたりしてたから。そのときにドラムンベースを深堀りするようなことまではなかったけど。

ASH:なるほど。日本で生まれ育った人とは、アウトプットするときに違いも出るんだろうなって思うんですよ。a flood of circleの楽曲のそこかしこに、そういう匂いが散りばめている気がする。“このビートってアスワド(イギリスのレゲエバンド)っぽいな”って感じたりとか。日本で生まれ育った人がイギリスのロックに憧れて、この感じのビートにしようってやったものとは全然違うというか、異質で。

佐々木:っていうか、音楽をビートで聴くのって、やっぱラッパーっぽいっすね(笑)。

ASH:それで言うと、a flood of circleの曲って、ビートがおもしろいものが多くて。歌やサウンド感には一本筋が通っているんだけど、ビート感やサウンドのアレンジやドレッシングにものすごく引き出しが多い。いろんなジャンル感が内包されている感じがして。たとえばa flood of circleの「Blood Red Shoes」を聴くと、すげぇベスパ(スクーター)に乗りたくなる。

佐々木:まさかのモッズに感じました(笑)?

ASH:THE WHOっぽいとか、THE JAMっぽいとかは感じなかったけど、あの曲を聴くと、ベスパにまたがって、ジタン(タバコ)をくわえて、モッズスーツを着て、M-51(モッズコート)を羽織りたくなるようなね。そういう世界に浸れる。

──イメージ、風景、匂いをそれだけ曲や音が持っていると?

ASH:そう。a flood of circleの楽曲を聴いていると、歌のメッセージも素敵なんだけど、ビートやサウンドのアプローチからいろんな匂いを感じて、ふわっと世界や絵が浮かぶことが多いんですよ。この前もZepp DiverCityでライブを観ていて、行ったことないけど“ここはイギリスみたいに思えるな”とか、曲によっては“アメリカっぽく感じるな”とか。ロックンロールの魔法を感じるバンド。

佐々木:ASH DA HEROのできたばかりの新曲を送ってくれたんだけど、新曲にはシャッフルのロックンロールっぽいビートの曲ありましたよね? あっ、こういうこともやっているんだと。バンドになったASH DA HEROの幅をすごく感じました。

ASH:「Avengers」かな。その曲のテーマは“アンチヒーロー”。この世界を救いに来たんじゃなくて、この世界を終わらせに来たというヒーロー像が浮かんで、歌詞を書いたんですよ。作曲はギターのNarukaze。ロカビリー的なサウンドにヒップホップっぽいアプローチが混ざったらおもしろいんじゃないかって、作り上げていったんですよ。

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