【ライブレポート】a flood of circle、3時間超え全32曲の日比谷野音公演に覚悟「俺と一緒に行こう」

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2024年8月12日、デビュー15周年を迎えたa flood of circleが、10年ぶりに日比谷野外大音楽堂のステージに帰還した。

◆a flood of circle 画像

この日に向けて、彼らは<CANDLE SONGS -日比谷野外大音楽堂への道->という全国ツアーを敢行。各地で野音への想いを語りながら、愚直に1本1本のライブを積み重ねてきた。そして、ソールドアウトという目標を早々にクリアし、当日は追加販売した立見エリアも売り切れた。

そこでa flood of circleが繰り広げたのは3時間強に亘る、実に32曲ものロングセット。事前に「これまでで一番曲が多いライブ」と告知された時はベスト盤や集大成的な意味だと思っていたが、そうではなかった。我々が目撃したのは、“今できるすべてを出し切る”という覚悟のドキュメンタリーだった。着飾った華々しい周年ライブなんてできない。あるがままのa flood of circleがそこにいた。


その幕開けは、とても静かなものだった。SEもなければ照明もない。ただただセミの声がこだまする中、グランドピアノが置いてある以外は通常のバンドセットのみが置かれたステージに、メンバーがゆっくりと姿を現した。

「おはようございます、 a flood of circleです」──お馴染みのライダースジャケット姿の佐々木亮介が、お馴染みの挨拶でギターを掻き鳴らすと、オーディエンスが大歓声で迎える。1曲目から「Buffalo Dance」「博士の異常な愛情」とデビュー初期の楽曲を連投。ステージ同様余計な装飾はせず、4人の音だけで作り上げる剥き出しのバンドアンサンブルが日比谷のビル群に放たれていく。反骨心が漲る初期の楽曲は荒々しく、今のa flood of circleの強固なグルーヴとの相乗効果で攻撃力は抜群だ。


「Blood Red Shoes」ではHISAYOの獰猛なベースが牽引し、「Dancing Zombiez」ではアオキテツが前方に出てギターソロを轟かせる。前のめりなエイトビートからポップにハネるリズムまで、緩急の手綱を握るのは渡邊一丘のドラミングだ。その中心で歌い踊る佐々木亮介は、時に緑茶割りの缶チューハイを煽ったり、「Black Eye Blues」でステージを練り歩いたり、自由そのもの。ツアーで鍛え上げた楽曲でそれぞれの個性を存分に発揮し、ほとんどインターバルを挟むことなく前半戦12曲を駆け抜けた。

ようやく一呼吸ついたのは、佐々木がアコースティックギターを持った「月面のプール」。アコギの音色と優しい歌声が野外に映え、のびやかなメロディとアオキのギターソロが切なく響き渡った。続く「BLUE」で初めてステージに青い照明が灯り、少しずつ陽が傾いていることを知る。マジックアワーの時間帯には、渡邊、HISAYO、アオキがブルージーなセッションを展開し、贅沢なソロバトルを堪能。照明が一気にきらびやかになり、さながら夜のロックンロールパーティだ。


このままラストスパートに向かうかと思いきや、ライヴはまた様相を変える。ふらりと佐々木がグランドピアノに移動し、「白状」を弾き語ったのだ。

丁寧な指使いでピアノを奏でながら、ひと言ひと言、独白のような歌詞を紡いでいく。けだるく、それでいて熱い声が夜の空に溶け込むのをオーディエンスが息を呑んで見守る。後半はバンドサウンドが加わり、温かいグルーヴで佐々木のやりきれない想いを包み込んだ。

「年齢的に、どこまでもいけないのがわかってきて。それが最近、“人生面白くなってきたじゃん”って感じなんですよ。行けるところまで行くだけなんですよね。どこまでも行ける人は行ってください。そして、行けるところまでかもって思ってる人、俺と一緒に行こう。よろしくどうぞ」──佐々木亮介

「どんだけそれをわからされても、辞める理由にはならないんだよね」と付け加えて「花降る空に不滅の歌を」に入り、最新アルバム『花降る夜に不滅の歌を』以降の楽曲が並ぶゾーンへ。オフマイクで“俺の夢を叶えるやつは俺しかいない”と夜空に吠えた「月夜の道を俺が行く」も、“これでいいんだ”と叫ぶ声がもう嗄れかけていた「本気で生きているのなら」も、佐々木の人生を削り出して生まれた楽曲たちだ。荒削りだからこそ、胸に深く刺さって心を抉られてしまう。


そこから、ASIAN KUNG-FU GENERATIONの後藤正文をプロデューサーに迎えた「キャンドルソング」と、ストレイテナーのホリエアツシをプロデューサーに迎えた「ゴールド・ディガーズ」と続き、貪欲に進化を求める野心を提示。「武道館 取んだ2年後 赤でも恥でもやんぞ」の叫びが痛快に響いた。体力を消耗するごとにギラついたエネルギーが増し、会場全体の熱量が飽和状態になる中、本編のエンディングが近づく。

「何度倒れてもやってきたロックンロールバンドがここにいるぞ! 俺はただの人だけど、ただのヤツにしかできない歌があること、証明しようぜ。ぶっとばしてくれ! 俺たちとあんたたちの明日に捧げます」──佐々木亮介

メンバー紹介を盛り込んだ「プシケ」を挟み、ラストに投下されたのは押しも押されもせぬ名曲「シーガル」だ。佐々木の声をかき消すほどの大合唱が起き、アオキもHISAYOもステージ端に出て熱い眼差しで客席を見据える。ここで終わりではなく、やってくる「明日」のために。全員が想いをひとつにして約束を交わすような、どこまでも眩しい光景が広がっていた。


拍手と「ロックンロール!」のコールに呼ばれてアンコールで再登場した佐々木から、ニューアルバムリリースの告知が飛び出した。さらにサプライズは続き、「今日のために作った」という新曲「虫けらの詩」が披露された。「俺の生き方はこれだけ」と叫ぶ、不器用でまっすぐなロックンロール。野音での映像も含めたミュージックビデオが公開されているが、どうやらレコーディングは大自然の中で行われていたらしい。どおりで野外が似合うはずだ。

3時間を越えるライブも、ついに終わりの時間が訪れる。文字通りの熱帯夜を締め括るべく、佐々木がアカペラで「Honey Moon Song」を歌い始めた。そこにバンドサウンドが寄り添い、「シーガル」の時に負けない大合唱が湧く。オーディエンスからの愛情を受け、一人ひとりに応えるようにステージから身を乗り出して歌う佐々木。アオキのギターソロが名残惜しげに響き、美しいメロディとともにフィナーレを迎えた。


「もしいろんなものが去っても、俺たちはここでやってる。同じことをね」──佐々木亮介

「虫けらの詩」の前のMCで、佐々木が語った言葉だ。a flood of circleは、10年ぶりの野音ライブで、「いつもどおり」全身全霊でロックンロールを鳴らし切った。肩肘張って戦っていた15年前も、「武道館でやるまで死ねない」と夢を言葉にして進む今も、彼らにできるのはロックンロールバンドであり続けることだけ。

ニューアルバムのリリースが11月6日であること、来年2025年1月から全国34ヶ所37公演に及ぶツアーが開催されること、そして6月13日はZepp DiverCity TOKYOであることも発表された。a flood of circleは、止まらないどころかスピードを上げようとしている。

取材・文◎後藤寛子
撮影◎新保勇樹

■<a flood of circleデビュー15周年記念公演 “LIVE AT 日比谷野外大音楽堂”>2024年8月12日(月/祝)@東京・日比谷公園野外大音楽堂 セットリスト

01. Buffalo Dance
02. 博士の異常な愛情
03. Human License
04. Blood Red Shoes
05. The Beautiful Monkeys
06. I LOVE YOU
07. 理由なき反抗 (The Rebel Age)
08. I'M FREE
09. Dancing Zombiez
10. GO
11. Black Eye Blues
12. ベストライド
13. 月面のプール
14. BLUE
15. 花
16. NEW TRIBE
17. ミッドナイト・クローラー
18. Blood & Bones
19. Lucky Lucky
20. 美しい悪夢
21. Rollers Anthem
22. 北極星のメロディー
23. 白状
24. 花降る空に不滅の歌を
25. 月夜の道を俺が行く
26. 本気で生きているのなら
27. キャンドルソング
28. ゴールド・ディガーズ
29. プシケ
30. シーガル
encore
31. 虫けらの詩
32. Honey Moon Song

■ニューアルバム『タイトル未定』

2024年11月6日(水)発売
【初回限定盤(CDA+DVD)】
TECI-1829 ¥5,000(税抜) / ¥5,500(税込)
【通常盤(CD)】
TECI-1830 ¥3,000(税抜) / ¥3,300(税込)

■15周年記念曲『虫けらの詩』各ストリーミングサイト
配信リンク:https://afoc.lnk.to/mushikera-no-uta


■<a flood of circle Tour 2024-2025>

▼2024年
11月28日(木) 千葉LOOK
11月29日(金) 千葉LOOK
12月06日(金) 堺FANDANGO
12月07日(土) 堺FANDANGO
 w/ THE CHINA WIFE MOTORS
▼2025年
01月23日(木) 名古屋CLUB UPSET
02月09日(日) 京都磔磔
02月11日(火祝) 広島SECOND CRUTCH
02月13日(木) 松山Double-u studio
02月15日(土) 高知X-pt.
02月16日(日) 高松DIME
02月18日(火) 静岡UMBER
03月06日(木) 神戸太陽と虎
03月08日(土) 鹿児島SR HALL
03月09日(日) 大分club SPOT
03月11日(火) 岐阜ants
03月16日(日) 横浜F.A.D
03月20日(木祝) 新潟CLUB RIVERST
03月22日(土) 郡山HIPSHOT JAPAN
03月23日(日) 盛岡CLUB CHANGE WAVE
04月05日(土) 長野J
04月06日(日) 金沢vanvanV4
04月10日(木) 奈良NEVER LAND
04月12日(土) 出雲APOLLO
04月13日(日) 福山Cable
05月09日(金) 仙台MACANA
05月10日(土) 水戸LIGHT HOUSE
05月15日(木) 八戸ROXX
05月16日(金) 八戸ROXX
05月18日(日) 山形ミュージック昭和SESSION
05月23日(金) 岡山PEPPERLAND
05月25日(日) 福岡CB
05月30日(金) 札幌cube garden
05月31日(土) 旭川CASINO DRIVE
06月05日(木) 名古屋CLUB QUATTRO
06月06日(金) 梅田CLUB QUATTRO
06月13日(金) Zepp DiverCity TOKYO
06月21日(土) 沖縄output


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