【インタビュー】deadman、15年ぶり新曲含むリテイクベスト完成「嘘があれば20年前の曲は歌えない」

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■音楽的なグルーヴを出すためには
■昔ながらのやり方のほうがいい

──気持ち的にラクになって、音楽的にどんどん追求できる状況は、バンドとして健全ですよね。そういう活動の中で、今回のリテイクアルバムは2020年7月の活動期間延長発表時にアナウンスがありましたが、実際はいつ頃から話として立ち上がっていたんですか?

aie:最初に決めた1年という期限が近づいたあたりで、コロナ禍のためにライヴができなくなりまして。“じゃあ、限定を外してもう1年やろう”といったときに、“20周年だから、アルバムを録り直そうか”ということを解散当時のメンバーで集まって話していたんです。

──眞呼さん、aieさん、kazuya(B)さん、Toki(Dr)さんという、このラインナップでレコーディングをすることがひとつのテーマのような感じですね。

aie:そうですね、どうせやるなら面白いかなっていう考えでしたね。当時のファンクラブ会員の人に、好きな曲を投票してもらって。30曲くらいの中から、我々がチョイスした15曲ですね。それにdeadmanって結構ベーシストが変わったから、最後のメンバーで録ってない音を残そうということで、ベースがKazuyaになる前の曲ですね。だから、この4人で15年前にレコーディングしたアルバムの曲はあえて除いたり。

──眞呼さんとしては活動休止当時のメンバーでのレコーディングというのは?

眞呼:さっきも言ったように当初は、以前のメンバーでライヴとなると自分自身が過去と比べちゃうかもなって思ってたんです。でも、1年くらいdeadmanという冠で動いて、変化はありましたよね。

aie:当時のリズム隊は、今、サラリーマンだからガッツリとは活動できないけど、「例えば毎月3曲とか課題曲を決めて、トレーニングしながらレコーディングするという方法ならできるかな」と言っていて。「じゃあ、やろうぜ」って、1年半くらいかけて作ったアルバムですね。


▲aie(G)

──リズム隊のおふたりには、実際ブランクがあるわけじゃないですか。レコーディングに持っていくテンションや演奏など、難しさなどあったと感じますか?

aie:僕はずっと現役でやっていますけど、その僕が見てもまったく問題ないクオリティの演奏でしたね。ただ、やってる本人たちは“当時の自分のレベルまで到達していない”と真面目に思っちゃってて。「いや、全然人前でやれるレベルですよ」って言っても、なかなか腰が重い感じでした。もともとTokiくんは真面目で、ドラムにストイックな人だから、この感じも懐かしいなって思いましたけど。でも、本人たちも楽しそうだったし、15年ぶりくらいのレコーディング現場を新鮮に感じているようにも見えたので。趣味としては最高にいいんじゃないかなと思います。

──とてもレアなベストアルバムですよね。年月を経ながらも、活動休止時のメンバーが再集結してレコーディングできるっていうのは、なかなか実現し得ないことだと思うので。

aie:そうですよね。しかもふたりは現役を離れていたわけですから。1年くらいのリハビリでここまでやれるというのは、すごい。もともとスキルが高いふたりだったんだなと思います。

──どの曲も臨場感があって、ヒリヒリとした緊張感や迫力を感じるアンサンブルとサウンドですが、レコーディング環境はどんな感じだったんですか?

aie:当時と変わらないんですけど、楽器隊3人で演奏してみて、ドラムのOKテイクをまず出して。その後ベース、ギターを修正していくという。

──まず3人で一緒に録るんですね。

aie:そうですね、それをOKにするかは置いといて、ベースとドラムは一緒に録りました。やっぱり顔を合わせてやるほうがいいので。今はリモートでデータのやり取りをするほうが主流なのかもしれないですけど、PCを使って遠隔とかで録っちゃうと、どうしても違うなと思うので。

眞呼:やっぱり目と目が合わないとね。

aie:そうなんですよ。家で録ったベースやギターをスタジオでリアンプするというレコーディング方法もあるんですけど、それだと弾いてるときの感じがないというかね。やっぱり目の前でアンプから音が鳴っていないと弾けないフレーズや、出てこない雰囲気があると思うので。実際に生音が鳴っているということは、大事にしましたね。

──それはdeadmanだからこそ、そういう形とかノリにこだわって録ったという感じですか?

aie:いや、それしか知らない4人ですし、わりとそれが正解だと信じているし。お金もかかるので、今時あまりやらなくなっちゃったレコーディング方法だと思うんですけど、結果的にできたものを聴くと、やはり正解だったなと思います。

眞呼:グルーヴを前のめりにしたり後ろに引っ張ったりというのが曲によって変わっていて。それがカッコよかったりするんですけど、宅録でそれをしてしまうとタイミングが合わないんですよね。言葉がない分、全員が目で語るというか。今、目が合って、そこでこう言いたいんだなっていうのがわかる。そういう面で、音楽的なグルーヴを出すためには、昔ながらのやり方のほうがいいものができると思いますね。ボーカルの僕が言うことではないですけど(笑)。


▲『I am here -DISC 2-』ライブ会場/通販限定盤

──全編を通してボルテージが高い演奏として聴こえてきますし、「quo vadis」「溺れる魚」のような勢いのある曲、「受刑者の日記」の緊迫感、「re:make」のライヴ感も、そうしたレコーディング方法ならでは、だと思います。

aie:きれいなテイクというよりも、勢いがあるというかカッコいいテイクだなと。ギターなんかは結構ミストーンとか、鳴っちゃいけない音を鳴らしまくっているけど、誰もそれがダメとは言わない。それこそがこうやって録る良さだから。やっぱり昔から僕らは、生で録っている先輩にしか憧れてないんですよ。ネットを使ってレコーディングができるようになってからの音楽に憧れがないというかね。当時のRed Hot Chili Peppersとかの映像を見てもそう。集まってレコーディングをしたりということに憧れて僕らはバンドを始めたから、どうしてもそこから抜け出せないんですよ。でも、そのどこか田舎臭い感じがdeadmanというバンドの音になっている気もする。それって、音楽に詳しくないお客さんが聴いてもなんとなくわかると思うんですよ。だから、この形はキープしたいかなと思いますね。

──曲ができた時点から20年近く経っていますが、曲の捉え方などで変化していることもありますか?

aie:それがね、わりとよくできた曲だなと思っていて。

眞呼:うん。

aie:流行りに乗って音楽を作ってこなかったから、どの曲も今でもやれるというかね。という話を以前、MUCCの逹瑯くんのラジオに呼んでもらったときにも喋ったんですよね、「20年前の曲を今でも平気でやれる」って。だから復活できたし。当時は、“この曲はちょっとな”と思っていたものも、10年以上寝かせることによって、“全然カッコいいじゃん”と思えたり。僕と眞呼さんの中には全然ないかなと思ってた曲とかを、晁直やテツさんが「やりたいから」ってライヴでやってみたら、“今、やるとカッコいいかもな”という発見もあったりしましたからね。

──眞呼さんの歌詞も時代を超越したものですし。

眞呼:どうなんでしょうね。言ってきたことが現実になっちゃったな、という部分もあるんですけど。

──それはこの数年特に思います。リアルになってしまったというか。

眞呼:それが逆に残念かな、止められなかったということが。書いてきたことは当時の現実だったりしていたんですけど、やっぱり警告的なことも言ってきたので。残念ではあるんですけど、今後もこのスタンスは変わらないし、変えたくないとは思っています。

──眞呼さんの歌詞の書き方はどういう感じなんでしょう。自分の内側にずっとある何者かを表現しているのか、現実にあったものをモチーフとしていくのか。

眞呼:両方ですね、実際、自分自身に起こったことだけど、形を変えて歌詞にしているというものもありますし。でも、こういうのって嘘は絶対いけないと思うんです。自分の意思や考えを曲げてしまってはいけない。言葉として発する以上、責任があることなので。それがたとえ間違っていても、僕は正直に言わなきゃいけない立場だと思っています。

aie:眞呼さんが嘘の歌詞を書いていたら、20年前の曲は歌えないですもんね。

眞呼:歌えないですね。

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