【ライヴレポート】deadman、ツアー<道徳の系譜>千秋楽に不穏な緊迫感とのコントラスト「24年も経つと、こんなハッピーになる」

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オリジナルアルバムとしては19年ぶりの『Genealogie der Moral』を3月にリリースしたdeadmanが、同アルバムを引っ提げて、3月30日の渋谷CYCLONE公演を皮切りにFC限定含む全17本の全国ツアー<deadman TOUR 2024 道徳の系譜>を開催した。そのファイナルとなった6月1日、東京・新宿BLAZEのレポートをお届けしたい。

◆deadman 画像

2019年の活動再開以降、眞呼(Vo)とaie(G)は、サポートメンバーとしてkazu(B / gibkiy gibkiy gibkiy)と晁直(Dr / lynch.)を迎えてライヴを重ねてきた。ステージで磨かれたバンドアンサンブルの呼吸が、現体制でのリテイクベストアルバム『dead reminiscence』(2023年)や、アルバム『Genealogie der Moral』制作につながったことは間違いない。deadmanという4ピースには信頼と楽しさがあり、だからこそ生まれるクリエイティヴィティがある。このファイナル公演もまた、ツアーがいかに充実したものだったか、怒涛とも言えるバンドアンサンブルから痺れるように伝わってきた。

真っ赤なライトにステージが染まるなか、aie、kazu、晁直が登場し、SEから連なるようにアルバム『Genealogie der Moral』のラストに収録されたインストゥルメンタル曲「dawn of the dead」を会場に轟かせる。ずっしりとヘヴィでブルータルなビートにギターが咆哮を上げる。そのパワーで一息にフロアを飲み込んでいったところに眞呼が登場、高らかにシャウトを放つ。


「ようこそ!」という挨拶からは畳み掛けるように「in the cabinet」「真夜中の白鳥」「rabid dog」とアルバムの曲を連投した。序盤から凄まじい勢いで、バンドの気迫と爆音に、観客の腕が突き上がり、ヘッドバングでフロアがうねりを帯びていく。眞呼は早くもジャケットを脱ぎ捨てて、全身でシャウトを放っている。特に「rabid dog」でのブラストビートと眞呼のグロウルやシャウトが生む不穏なハーモニーは圧倒的で、観客の興奮を加速度的に引っ張り上げて、大きな歓声を巻き起こしていった。

この序盤から中盤にかけてはアルバム『Genealogie der Moral』を中心としたセットリストで、序盤はよりラウドな曲が並び、「blood 2.0」からはバンドのグルーヴが冴えるロックンロールなナンバーが並んだ。

「今日だけのエネルギーを見せてください」という眞呼の言葉と共に観客がステップを踏み、「the dead come walking」ではハンドクラップやコーラスのシンガロングが起こった。ちなみにBARKSインタビューによると、この「the dead come walking」の仮タイトルは「THEE MICHELL GUN ELEPHANT」だったという。aie曰く、「オケはTHEE MICHELL GUN ELEPHANTで歌はBARBEE BOYSをイメージした」そうだ。キレのいいギターリフと軽やかに跳ねたビートが心地いい。またワルツのリズムによる「ミツバチ」では、繊細なギターフレーズとうねるようなベースラインと歌とで、軽快なワルツを不穏なロンドに染めて、さらなるdeadmanの濃い世界観へといざなっていった。


「ドリスからの手紙」に続く中盤は過去曲が中心となった。微かな明かりのもと眞呼はステージにしゃがみ込むようにして歌い、エモーショナルに耽美的なメロディを紡ぐ。淡々としたビートに柔らかなメロディやハーモニーが冴える「additional cause for sorrow」をじっくりと響かせたところから、最新アルバムのなかでもプログレッシヴな「宿主」へ、という流れは特にドープで、ビートやリフ、歌が絡み合うことで生まれるポリリズムが観客を深く酔わせていく。

退廃的なSE「dlof facs 2.0」を挟んで、現体制でライヴを重ねてブラッシュアップされていった曲たちが続く。軋みを上げるギターから、重厚なビートやリフ、パワフルなヴォーカルで温度を上げる「溺れる魚」、パンキッシュに加速する「受刑者の日記」、ヘヴィなベースラインとバウンスするドラムビートが妖しく、幻影的なサーカスに誘うような「through the looking glass 2.0」では、観客がコブシを掲げてコールする。恍惚感と興奮とがないまぜとなった独特の空気感がフロアを満たしている感じだ。


熱が高まったところからの後半は、再びアグレッシヴな曲で観客を沸騰させていく。分厚いアンサンブルで一気にバーストする「lunch box 2.0」では、眞呼が激しいシャウトで観客の興奮を煽りながら、さらにフロアへとマイクを向けて観客の叫びも爆発させる。最新アルバムでも最もポップな「零」は圧巻。「声を聞かせてくれ!」と眞呼がサビのシンガロングを指揮すると、続く「quo vadis」では観客が一斉にヘッドバングや歓声で盛り上げ、「re:make」でアンサンブルの勢いを増していった。巧みにギアチェンジしながらサウンドがスピードに乗っていく感覚がスリリングで、バンドの阿吽の呼吸と言おうか、4人で一体となった密度の濃さに痺れる。

会場内を風が駆けるような勢いから、本編ラストに演奏されたのはアルバム『Genealogie der Moral』からの先行配信曲にもなった「静かなくちづけ」。抑えたヴォーカルとギターで始まる同曲はdeadmanのなかでも詩的で、ヒリヒリとした緊迫感と静と動のコントラストが美しい。ライヴではより鮮やかで、エモーショナルな余韻が尾をひく曲となった。バンドサウンドのダイナミズムや爆音に酔い、耽美な歌や世界観を味わうような余韻が、とても甘美なエンディングだ。

deadmanのサウンド世界を濃厚に表現した本編から一転。歓声に応えてのアンコールでは、饒舌でユーモアたっぷりのMCからスタートした。「24年も経つと、バンドもこんなにハッピーな感じになる、面白い感じになる」とaieはMCで語った言葉だが、きっとライヴ後の打ち上げも、こんな感じにくだけて楽しいやりとりがメンバー間で繰り広げられるんだろうなと想像できるトークで観客を和ませた。


また、19年ぶりのオリジナルアルバムを引っ提げたツアーということで、“何かひとつゴールを決めよう”という発案から、同ツアーでは晁直に“スリムになってlynch.に帰っていただこう”というダイエット企画も進行していた。3月末の渋谷CYCLONEでのファンクラブイベント時の体重と腹囲から、約2ヶ月でどれほど変わったかステージ上で計量──結果、体重も腹囲も見事減量に成功。「これでようやく締めのラーメンも食べられる」と晁直。「おめでとう!」というメンバーの言葉やフロアの歓声と共に、金テープが発射された。

「どうだ! 24年間一度もやってこなかった金テープ、MCで使ってやったぜ」──aie


とaieが笑顔を見せるひねくれぶりも炸裂したアンコールでは、「701126」「聖者の行進 2.0」を披露。さらに2025年にはdeadman結成25周年を迎えるということで、たくさんのライヴを予定していることもアナウンスされた。

さらにこの日は、興奮冷めやらぬなか二度目のアンコールに立ち、deadmanの真骨頂たる狂気を帯びた「蟻塚」が演奏された。ステージ上の照明をすべて落とし、会場が漆黒に包まれたなか、眞呼の顔だけが赤くぼんやりと浮かび上がり、不気味な残像のごとく揺れる。ブラックライトに反応するフェイスペイントを用いた演出が、最後の最後に観客を混沌へと突き落とす。一筋縄でないバンドの一面を見せるツアーファイナルとなった。

取材・文◎吉羽さおり
撮影◎マツモトユウ

■<deadman TOUR 2024 道徳の系譜>6月1日@東京・新宿BLAZE セットリスト

01. dawn of the dead
02. in the cabinet
03. 真夜中の白鳥
04. rabid dog
05. blood 2.0
06. the dead come walking
07. 猫とブランケット、寄り添い巡り逢う産声
08. ミツバチ
09. ドリスからの手紙
10. follow the night light
11. additional cause for sorrow
12. 宿主
13. please god 2.0
14. 溺れる魚
15. 受刑者の日記
16. through the looking glass 2.0
17. lunch box 2.0
18. 零
19. quo vadis
20. re:make
21. 静かなくちづけ
encore
en1. 701126
en2. 聖者の行進 2.0
W encore
en3. 蟻

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