【インタビュー:後編】筋肉少女帯、「今回のアルバムは“いつか、自分だけが観たい映画”みたいなイメージ」

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■分断されて寂しいなと歌ってるけど
■みんなで結束しようとは言ってない

──それを言っちゃうと、1曲目の「楽しいことしかない」にしてもツイン・ギターでガンと来るところが印象的ですけれども、歌が始まった途端、ホントにめちゃくちゃ明るくて楽しい響きに一転する。大槻さんの歌声自体がホントに楽しいことしかなさそうに聴こえてきます。この曲がオープニングに据えられていることの意味も、とても大きいように思います。

大槻:そうですよね、うーん。一発で憶えられますもんね、あの曲は。

──そうですね。同時にやっぱり、“このご時世だからこそポジティヴなものを”というところに行き過ぎてしまうと逆にわざとらしくなり兼ねないと思うんです。

大槻:うん。やっぱりそこは匙加減を考えますよね。

橘高:まあ、イントロのギターのフレーズなんかは、いわゆる泣きのフレーズのテーマになってたり。やっぱり泣きっていうのは悲しみだし、当然こうして今のご時世なりの不安要素が強くは出るよね。この状況で泣いてるわけだから。ただ、間奏なんかでも一回ポジティヴに行くところは、すごくポジティヴを引きずって、ホントにいいことしかないって気持ちに向かうんだけど、やっぱり、ちょっと懐疑的なところがあって、その後のアドリブ・パートでは“まだホントに大丈夫か?”と思いながら、アドリブ・パートの締めはやっぱりメジャーな気持ちでポジティヴに締めるっていう流れで。このへんは上手く歌詞ともリンクできるなと思いますよね。やっぱり、揺らぎは楽曲にはどうしても出てくるというか。

──揺らぎ、ですか?

橘高:ポジティヴに“大丈夫だ、大丈夫だ”とだけ言ってても、逆に信じられないじゃないですか。この不安を抱きながら、前向きな気持ちに到達した現在の我々だっていうのが、今のこの形だから。


▲橘高文彦 (G)

──ええ。しかも、その泣きのギターというのは、悲しいから出てくるものではあっても、メタルの泣きって“それを乗り越えて”みたいな感じがありますよね。

橘高:うん、そうですね。そこから向かっていく気持ちっていうのがメタル特有の泣きだから。いわば打破する気持ちで泣いてることが多いから、とてもフィットしてるかなと思いますね。自分たちの楽曲を聴いてみても。

──本城さんとしては、この「楽しいことしかない」がこういった形に落着というか、形になったことっていうのは、作曲時の頭の中の設計図通りですか?

本城:もうそれは期待通りといいますか。いつも期待を絶対超えてくれると信じてますし、今回も思い描いてたもの以上のものになってると思いますけども。たとえば、ギター・ソロなり歌のメロディなり、そのバッキング・パートみたいな部分は、僕が設計図の段階でもう作っているので、多分、今言った悲しみの要素だったり、ちょっと明るくなったりとかするっていう展開については、多分デモの段階で正解を提示できてるのかなと思っているので。で、その中で僕が描いてるイメージをさらにどんどん高みに膨らませてくれているかな、と思いました。


──そしてもう1曲、アルバムのど真ん中にある「COVID-19」関してもうかがっておきたいんですけども、作曲者の内田さんとしては、この曲がそのものズバリの「COVID-19」と名付けられたことについては、どうお考えですか?

内田:“そのままやんけ!”って思いましたね。だって、ねえ(笑)! いや、でも“勇気あるな!”とも思いましたね。

──タイトルにしようとなると、さすがに躊躇しますよね。

内田:うん。だから“偉いな!”と思いましたもん。なかなか言えないよね。

大槻:いや、やっぱりなんやかんや言っても、この1年半以上、我々、世界中の人たちが翻弄されてきたわけだから。それを歌にしないっていうのも逆に変だろう、と。

内田:うんうん。

大槻:他にも何曲かあるんでしょうね、そういうのは。コロナ禍が収束した後に、コロナについて歌った曲特集みたいなのが音楽番組で組まれた時に“こんな曲もあるよ”って言われるかもしんないですね。

──そこでコロナのことを歌っていながら、ちょっとそれをぼやかすのではなく、敢えてストレートにタイトルにまで打ち出したことにはどんな狙いが?

大槻:あの、そもそもこんなに憎らしいコロナなのに、COVID-19っていう名称が非常に……なんていうの? バンド名みたいでカッコいいんですよね。

──見た目の印象も含めてキャッチーですよね。

大槻:そう、変な言い方だけど。しかも言葉の響きが歌詞に採り入れやすい感じでもあったから。で、使ってみたら嵌まっちゃったので、“もうこれしかねえべなあ”と思って。

内田:SF映画のタイトルみたいだね。

大槻:あ、そうだよね。それはある。70年代のね。映画になると『戦慄!ナントカパニック!』みたいな邦題が付くことになるんだけど。

内田:へへへ!

大槻:ただ、歌の内容としては“世界はコロナ禍で分断されてる”というところまでしか歌ってないんですけどね。実はそんなにポリシーを掲げてないところが……というか、実はまったく掲げてないんですけどね、そういうものは。

──実際、結末がどうなるかってことを言いたいわけではないでしょうし、それは誰にも言えないことでもあるでしょうし。

大槻:そう。全体を通して、分断というか“境界線で分けられて寂しいなあ”ってことは歌ってるんですけども、“まあ、でも、そういうもんだよなあ”ってことも歌っているんですよね。だから、みんなで結束しようとも言ってないんだよなあ。

内田:ははははは!

──そこですよね。そこで“だから、みんなで手を取り合って頑張りましょう”となるのとはちょっと違うとというか。

大槻:ああ、うん。そこはやっぱり、僕がこういう人なんで(笑)。

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