【インタビュー】木梨憲武が語る、遊んで楽しむ人生観と無限の“コネクション”「音楽もアートもテレビも意識は全く同じ」

■毎日楽しくてしょうがない
■思い出だけに留まらず形になるから

──デビュー当時、木梨さんはソロ活動を「思い出作り」とも言ってましたよね。

木梨：いや、そうよ、そう。

──でもソロに関わる人全てが、木梨さん以上に強烈な思い出作りをさせてもらっているようにも見えます。

木梨：いや一緒ですよ、それは。例えば自分一人で曲や詞を書くと、それは俺だけのアルバムという感じでしょ。地味な作業にテンパりそうじゃないですか（笑）。ところが、みんなに参加してもらうと、いろんな人がここに来てくれるから、毎日楽しくてしょうがない。どの人からも思いとプロ意識がバーンと来るし、それぞれの曲や歌に対して「こういうほうがいいんじゃない？ これはどう？」ってアイデアもどんどん出てくるんですよ。まあ、みなさん強い強い、プロ筋が強い。だからこっちは、「それでいきましょう」っていうぐらいの感じ。たとえこっちに答えがなくても、みなさんが必ず答えを出してくれるんですよ。だから楽しい時間だよね。それぞれの思い出が、思い出の中だけに留まらず、しっかり形になるから。今は配信だけど、この後にCDになったり、この間みたいにアナログレコードにしようかなとか考えたり。そこにあるレコードプレイヤーにセットして、思い出をもう一回聴いてみたりとかして楽しんでますよ。

──ゲストといいますか、一緒に曲作りに参加しているみなさんは、アクの強い方ばかりじゃないですか。

木梨：強いですよ、アクっていうのか分からないですけどね（笑）。個性の強いプロたちばかりですから。




──ミッツ・マングローブさんとマツコデラックスさんの歌録りのときは、おしゃべりばかりが続いて、いつまで経っても録りが始まらないっていう（笑）。

木梨：打ち合わせをしても、まあ長い長い。おもしろいおもしろい。カメラが回ってないときもおもしろい。で、始まるんです。

──『木梨の貝。』で曲作りやレコーディングのやり取りを観たとき、現場で新しいアイデアが次々に生まれ、それをリアルタイムで楽曲に宿らせていく印象だったんです。そういうリアルさだったり、ダイナミックなところをすごく大事にしているんですか？

木梨：そっちのほうが大事かもしんない。最初は紙に企画書いて打ち合わせして、それに向かって進むんだけど、その紙より大事なものが実はいっぱいあって。これは今やらないと忘れちゃうとか、現実にならないとかっていうのがなんとなく分かるからさ。その瞬間瞬間で、“なんか来た！”と思ったら今やっちゃおうと。“今がダメなら明日はどう？”とかね。ここに来てくれたら何か起きるに決まってるから。さすがに阿木燿子先生の歌詞はイジらないけど、みんなで一緒に歌詞を考えるなら、今、大事なことを文字にしていく。そうすると強い思い曲が出来ていく。それが嬉しいんですよ。

──そうすると熱量もさらに高くなると？

木梨：うん。ココリコ遠藤とかももいろクローバーZとの曲「最高な毎日にするために〜」の場合は、「GYAO!とかテレビで発表会をしよう」と。「発表会といったらなんだ？ 『FNS音楽祭』だろう」と。テレビの現場で「『FNS音楽祭』に出たい」みたいな話をしていたら、「うわっ、出させてくれるって」ってことになり。「ヤベー、『FNS音楽祭』の現場で、初めてみんなで合わせて歌うことになるの？」みたいな。で、合わせてみたら「ホリケン、歌へたくそだな。この野郎」と（笑）。レコーディングでは機械ですげー綺麗に直してるけど、現場へ行ったらホリケン、「ふあー！」って音程外して叫んじゃうから（笑）。




──ははは！

木梨：マツコとミッツの「命綱feat. マツコデラックス,ミッツ・マングローブ& ピンドン・ノリ子」も、もしかしたらどっかで一発、発表会やるからね。今、「その発表会の衣装をどうするんだ？」って話をしてるんだけど、ふたりは、まあ細かい。無駄話も含めて、このアトリエで4〜5時間だよ。「あの生地は韓国へ行ったら早くて安いと思うわ」とか「お金はいくらあんのよ。ユニバーサル(レコード会社)、出しなさいよ！」とか。

──誰が言ったかすぐ分かる（笑）。

木梨：でしょ（笑）。CMで着たやつは「誰それ先生の許可が必要だわ」とか。「あたし達はちあきなおみさんになりたいのよ」とか言って、当時の映像も観て、「この照明、いいわね〜」とか「カメラアングルがいいわ」とか、どんどん広がっていくから。あの二人がハモったら間違いなくおもしろいのに、テレビじゃそんなに観ないでしょ？ それぞれが番組をやっているからさ。でもあの二人は、音楽のこと、エンターテイメントのこと、精神論的なこと、何でも知っているから。まあ、だからこそうるさいんだけど（笑）。俺が止めてあげないと、ずっとしゃべってるからね。今は衣装も作ってるんだけど、その発表会までの道中が大きな一回戦。

──ミッツ・マングローブさんは歌手デビューしてますが、マツコデラックスさんは今回の歌が初めてのレコーディングだったんですよね？

木梨：そう。それなのにグワーッと太い声でイケるから。タダ者じゃないっすよ。ミッツはミックス作業の場までいたからね。俺とマツコのバランスを聴いて、「もう一回、ちょっと歌いたい」って。「もしかして3人ともキーを変えてみたら」とか「もう一個、キーを上げてみたら」とか。「いやいや、もういいから。できているから」って（笑）。音楽に対してのこだわりが、それぞれ相当強いですから、楽しいです。そして今のところ、GYAO!はそれらを全部を回してるから、強い撮れ高が（笑）。宇崎さんもそう、中井貴一もそう、みんな、強くて濃いんですよ。



──中井貴一さんの参加も驚きでした。

木梨：「『木梨ミュージックコネクション2』で佐藤浩市さんが歌ったから、次は貴一さんだよ」と。「二人で狩人…、いや、ゆずになるのよ」って。で、貴一さんが「ジグソーパズルfeat. 中井さんと木梨くん。」の歌録りに来たら、めちゃくちゃ歌がうまいし。練習して仕上げてきたの？ぐらいに。そうしたら「いや、練習なんかしてないよ」なんて言うんだけど、もう、完璧だったからね。

──舞台で足を負傷していたにも関わらず。

木梨：そうなんですよ。

──しかも中井貴一さんは京都で映画の撮影に入る直前だったのに、木梨さんがスタジオに呼んじゃうっていう（笑）。

木梨：「行く前の日って空いてるでしょ？」ってね。


──今回のフィーチャリングアーティストは、ももいろクローバーZは歌をメインに活動していますが、他の方は決してそうではないですよね。でも、みんなの音楽へのこだわりや歌心を、木梨さんは昔から知っていて、グイッと引っ張り込んでしまうという強さ。

木梨：配信やCDをリリースしていないだけで、みんな、ある意味、歌手だから。中井さんはCDを出してないけど、ミュージカルもやるし。その昔は自分の舞台でキョンキョン(小泉今日子)と歌っているんだよね。「だったらやってよ、中井さん」っつってね。「浩市さんが終わったら、次は貴一さん、あんたしかいないでしょ」と言ったら、そんなに嫌がらないで来てくれるんだよね。本当にみんなと仲良くさせてもらっていますよ。

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