【インタビュー】Mary's Blood、セルフタイトルの6thアルバム完成「原点回帰、メタルといったキーワードが自由度を拡げた」

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■歌詞にも自分はこうありたいという想いが
■すごく色濃く出ることになった

──冒頭、EYEさんから「今回は作曲者が作詞も手掛けるようにした」という話がありましたけど、そうした作風をとろうと考えたことには何か理由があったんでしょうか?

EYE:それはあくまで私からみんなにお願いして、やってもらったことなんです。前回はカヴァーアルバムだったから作詞のプロセスがなかったわけですけど、その前、『CONFESSIONS』の時に“闇”というテーマのもとで書くことになった時に、ちょっと煮詰まってしまったんですよ。“闇って何?”と考えていく中で、ゲシュタルト崩壊し始めたようなところもあったりして(笑)。それでなんか、全作詞というのは荷が重い、みたいな感覚が若干残ってしまってたんです。そういう理由からみんなに助けを求めた、という感じでしたね。もちろん今までもRIOちゃんとかSAKIちゃんにも書いてもらったりしてきたし、ずっと全部ひとりで書いてきたわけじゃないですけど、常にほぼほぼ自分で作ってきたわけで、今回だって書こうと思えばきっと書けたはずだと思うんです。だけどなんか“歌詞についてOKかどうかを決めるボーダーラインが、たぶん自分だと見えないな”という感覚があって、逆にそこでみんなにも書いてもらえたなら、何か面白い発見があるかもしれないな、というのがあって。そこで試しに“作曲者に書いてもらう”という形をとってみることを提案したわけなんです。

──それこそ“闇”のような世界観を決定づけるテーマが設けられていたわけではないから、歌詞の面でも自由度はそれなりに高かったはずですよね。しかも同時に、こういった特殊なご時世だからこそ書きたいこと、というのも各自あったはずだと思うし、露骨に希望的な歌詞が目立つわけではないですけど、前向きであろうとする表現が目に付くように感じます。実際、今の世間の現状といったものは、やはり歌詞を書くにあたって何かしら影響したと思いますか?

EYE:その影響は、大いにあると思います。今までは、1枚のアルバムのために10曲なり11曲ぶんの歌詞を書いていくにあたって、それぞれどういうテーマで書いていこうというのを色分けしておかないとぼやけてしまうから、そういうところを常に気にかけてたんですね。この曲はこういうテンションだからこういう歌詞、だから次に来るこの曲には別の世界線を設けたほうがいいな、とか。だけど今回は、現実世界の話、ホントに身近に起こりそうなことに対する気持ちを、設定とかバランスとかを気にしないで書こうと思ってたんです。そう思えたのもやっぱり、このご時世とか、こういう状況下なりの心境というのが結構影響してたんだと思います。みんなに作詞をお願いしたこと自体も含めて。



──こうした状況下、自分はどうあるべきか、自分にとって何が大切なのか。そんなことを考えさせられることになった人は多いはずですし、皆さんの中にもそうした部分は少なからずあったはずですよね。そんな中から生まれてきた歌詞でもある。たとえば「Be Myself」はMARIさんの曲で作詞もMARIさん自身ですけど、こういう局面で“誰かに何かを伝えたい”というところから書き始めると、むしろ「Be Yourself」になるんじゃないかと思うんですよ。だけどこの場合、きっと自分自身に対して“自分のままであれ”と呼びかけているところがあるわけですよね?

MARI:そうですね。元々、曲を作る時に仮のタイトルとして考えてたのが「Courage」という言葉だったんですね。その意味のまま、“勇気”というテーマで書いたんですけど……。私、ここ10年ぐらいホントに歌詞を書いてなかったんですよ。このバンドを始めた当初の頃なんかはちょっと書いてみたり、それをEYEちゃんに渡してみたりもしてたんですけど。そこで今回、自分の中で、何を伝えたいのか、そもそも歌詞を通じて人に伝えたいことって何なのか、みたいなことを考えてみて。結果、自分で読んでみた時にグッとくる歌詞って、その人の言いたいことがいちばん込められてるもので、そういうものにこそ心を動かされるんだろうなって、改めて思ったんです。その結果、この曲の歌詞にも、自分はこうありたいとか、こうなりたいんだっていう想いがすごく色濃く出ることになったというか。

──曲の中で何度も繰り返される“明日は変わると信じている”という言葉がすごく耳に残りますし、そこに言いたいことが集約されていると感じました。EYEさんが書いた「Blow Up Your Fire」の冒頭に出てくる“人は言うだろう/夢を持てと/夢なき顔で”という言葉もかなりグサッときましたが。この曲で言っているのは、“「夢を追おうとする中で、間違う自由もあっていいはずだ”ということですよね?

EYE:まさに! 夢を持てと言うわりには、あれをやっちゃ駄目、これもやっちゃ駄目、みたいなご時世じゃないですか。そんな窮屈な状況にあるからこそ、なおさら自分のしたいことをやろうよ、夢を持って頑張ろうよ、ということなんです。そのためには今の1秒だって必要で無駄にできないはずなのに、それを捨てなきゃいけないような風潮のあるご時世だからこそ。なんか、そういう矛盾があるじゃないですか。他人に迷惑を掛けなければ何をしてもいいという意味ではないんですけど、“べつに自分の人生なんだから、自由にする権利はあるはずでしょ?”ということなんです。そこにみんな気付いて欲しいというか、自分自身もそうありたいな、という気持ちで書きましたね。



──同じくEYEさん作の「Joker」に関しても、歌詞自体の内容は全然違いますけど、ピンチの時の立ち向かうことだけが正義ではないというか、逃げることが正解の場合もあるし、誰かにとっての正論を押し付けるべきではない、というところに共通項を感じました。そしてRIOさんは「ignite」を書いていますが、ここで言っているのは何に対しての“着火”なんでしょうか?

RIO:想像力ですね、聴いてくださる方の。正義の反対は悪ではなく、そっちもまた正義だと思ってるので。結構多いじゃないですか、この状況下に家族間でDVが増えたとか、SNS上での誹謗中傷が増えたとか、そういう話が。なんかそういう現実について考えながら書きましたね。元々はあるゲームがモチーフになってるんですけど。

──なるほど。SAKIさんの書いた「Hunger」には“止まない怒りでも/それすら今は心埋める”という一節があります。“hunger (空腹)”を“anger (怒り)”で満たすこともある、ということなんでしょうか?

SAKI:ああ、確かに言われてみればそうですね。サビの“Satisfy my hunger”というフレーズは、自分で歌詞を作ることがあったら使いたいな、と思ってたもので……。めっちゃ疲れてしまった時って、何もできなくなるじゃないですか。本当に無気力になると怒る元気すらなくなってしまう、みたいな。だから“怒りをおぼえてるだけでも感情があるってことだよ”みたいな感じですね。ただ、“hunger”と“anger”との韻については、ホントにまったく意識してなかったです。

──偶然でしたか。というのも、「Without A Crown」の歌詞にも‟道化でもいい”というフレーズ、つまり“crown”と韻を踏む‟clown”が登場しているので、こっちもそうなのかな、と思ったわけなんです。

SAKI:そうなんですよね。そっちについては確かに意識して作ったんですけど、「Hunger」のほうに関してはホントに“言われてみれば”でした。

──その「Without A Crown」の歌詞にも、諦めない気持ちが描かれているように思います。

SAKI:Mary's Bloodの歌詞の中には結構、モチーフとして女王が出てくることがあるんですけど、これについては挫折した女王の話にしたいな、と思って。ただ、挫けかけてはいるんだけど、まだ完全には諦めてない、みたいな感じ。そこに世相が出てるのかどうかは自分でもよくわからないですけど(笑)、そういうイメージで書きましたね。

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