【インタビュー】ベリーグッドマン、新ALは手作りで贈る会心の一発「アーティスト性は今回が一番出ているかも」

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アツアツの鉄板の上でじっくり焼き上げた、できたてホットな楽曲をあなたの耳へと最短デリバリー。自主レーベル・TEPPAN MUSICからの第二弾アルバム、ベリーグッドマン『必ず何かの天才』は、過去にとらわれず前だけ見て進む、3人の今を詰め込んだ会心の一発だ。先の見えづらい時代の中でこそ、「僕らは必ず何かの天才」と誇りを掲げて歌いかける、愛とリスペクトに溢れたメッセージアルバムに込めた思いとは? RoverとMOCA、大いに語る。

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■今は環境のせいにできないぐらい、完璧
■心意気としては今作は一番手作りで作った感じがします


──1年前の『TEPPAN』から、新しい体制でリリースを始めて、これが2作目になります。

Rover: 今年はずっとリリースを切っていたイメージがあって、3月、5月、8月、そして10月なので、ずっと曲を作っているなという感覚はありますね。その全部が、ストーリーとしてつながっているのかなと思います。『TEPPAN』というアルバムは、以前までの『SING SING SING』から名前だけを変えたみたいな感覚があったんですよ。でも今回からは本当に違ってて、新たなものという意味ではたぶん一番アーティスト性は出ているんじゃないですかね。今までも人間味とかは出ていると思うんですけど、アーティスト性ということで言うと今回が一番出ているかもしれない。

──それは、何が変わったんでしょう。

Rover:何でしょうね? 以前は環境のせいにしていた時期もあったんですけど、今は環境のせいにできないぐらい、完璧なんですよね。音楽を作る上で。ある意味縛られていない、自分たちで舵を取っている感じがあって、それが音楽に出てきていると思います。僕たちの心意気としては、今作は一番手作りで作った感じがしますね。ジャケットをHiDEXが手掛けたこともそうですし、初回限定のDVDに入っているドキュメンタリー映像もメンバーで作り上げたものですし、手作りという感じがすごくします。下町の中小企業が本気でお金と時間をかけて作った機械みたいな感じ、というか。

──池井戸潤の世界ですね。

Rover:下町ロケットみたいなことですね、イメージとしては。

──それで宇宙を目指す。めっちゃロマンじゃないですか。MOCAさんは、今回のアルバムに、どんな手ごたえがありますか。

MOCA:「必ず何かの天才」という、ちょっと独特なテーマで、あまり聞いたことがないような表現ですけど、もともとは本当に些細な、身近な、きっかけでした。小学校からの友達のケケマルくんという人が、「必ず何かの天才」という曲を作ろうと思わせてくれて、この曲をめがけて行ってアルバムが形になったので。アルバムを通してある程度何でもできるというか、この曲を軸に、過去にリリースした曲と「こういう曲があったら面白いよね」という感じで作っていきましたね。

──アルバムの中心になるのが、タイトルチューン「必ず何かの天才」だと。

MOCA:自分たちは今まで、聴く人の背中を押すチームとしてやってきて、押しすぎやと言われる時期もあったりして、そこで「アイカタ」とか「それ以外の人生なんてありえないや」とか、ちょっと大人になった、勢いだけじゃない背中の押し方もあるんだということに気づいたんですね。事務所の社長も「北風と太陽」に喩えて「太陽で行けよ」と言ってくださるんですけど、「必ず何かの天才」はまさにそういう曲かなと思います。今年はオリンピックイヤーだったけど、あそこに出ていた人だけが特別だとは思っていなくて、努力のたまものというか、自分を信じきった、そこの天才なのかな?と。そうじゃない可能性もあるけど、僕は自分自身を信じて音楽をやり続けているし、たとえば居酒屋をやっている同い年の子とかも、「俺にはこれや」というものを、心から信じ切ってやり続けている。この曲を聴いて、そういう感情を持ってもらえたらいいなと思いますし、「もうアカンわ」と思った人も、「まだ何か、俺にもできるかも」と思ってもらえたらいいなという、そんな思いです。

──その、ケケマルくんというのは、どんなエピソードがあるんですか。

MOCA:小学校からの友達で、飼ってたワンちゃんがケケという名前で、そこにマルがついてケケマルになったんですけどね。内装をやっている会社の二代目で、お父さんが社長で、「全然給料上がらへんわ」とか言ってるし、女の子にも全然モテへんけど、給料が入ったら「今日は俺が全部出したるわ」と言う男気のある奴で、僕からすると実は才能に溢れていると思うんです。ケケマル以外にも、うちの奥さんの行動を見ていて、うちの子だけじゃなく友達の子とも無邪気に遊んでる姿を見て「才能あるな」と思ったんですね。僕はそれができないタイプなので「すげぇな」と思ったんです。それをこの曲の、僕が歌う入口として書かせてもらいました。

──それが《「自信が無い」とか言うな/才能に気づいてないだけ》《子供みたく子供と遊ぶ天才》というリリックになっている。

MOCA:そうです。最初にケケマルがそう思わせてくれたことで、そういう見方をすると自分も幸せになるし、それを相手に伝えることで、当たり前だと思っていたことが「特別なことだったんだ」って、自分で認めることで、人生が変わったりするのかな?という感覚ですね。

Rover:「必ず何かの天才」というタイトルは、「おまえにもいいところ、あるじゃん」とか、「俺にもいいところ、あるはずやし」という感じのテイストなんですよね。でも「おまえ、いいとこあるじゃん」というタイトルだとキツイから、「必ず何かの天才」にしたんですけど。

MOCA:そっちのほうが良かったかもな。(笑)

Rover:人は天才と凡人という二種類に分けられるわけではないので、天才かどうか?は、そんなに大切なことではないと思います。でも自分のいいところをぜひ信じてもらいたいし、人から言われたら受け入れてほしい、それが大きく言うと、平和のひとつかなとも思うし。この人はしんどいなと思う人もいれば、この人みたいになりたいと思う人もいれば、でもみんなにいいところがあって、みんな必要不可欠な存在なんだという、それは応援歌というよりメッセージソングという感じですかね。

──はい。なるほど。


Rover:今はコロナで、人と会えない時期が続いているからこそ、そういうことを思うというか、当たり前のことが当たり前じゃなくなった時に、「僕はベリーグッドマンの一員だったんだ」と思ったり、ライブで「こうやって歌を歌うんだ」ということすら、びっくりするんですよ。でも、そうなれたということはすごいチャンスで、「何のために頑張って生きてるんだろう」と思った時に、守るべきものがいっぱいあるなということと、守ってくれる人や環境があるなということに気づいて、その感謝の気持ちを込めたような気がしますね。アルバム全体に。「Alarm」以外は。

MOCA:おい!

──「Alarm」については、あとで時間があったら触れます(笑)。せっかくだから聞きますけど、Roverさん、何の天才ですか。

Rover:僕ですか? 僕は音楽的に、ベリーグッドマン3人のバランスを考えてメロディを繋げていくのは、うまいことできてるなとは思いますね。人にはできることとできないことがあって、その中で「できてないけど、できるかもしれない」という挑戦心も入れつつ、新しいメロディや新しいテイストの歌詞を考えていくのは、ベリーグッドマンのメンバーの一人としては、できてるかな?と思いますね。音楽以外では、そんなにたいした才能はないんですけど、音楽に関する集中力というものは、あるんじゃないかなと思います。

──この人(MOCA)は、何の天才だと思います?

Rover:MOCAの才能は、ハートの強さかな。というか、めちゃくちゃ空気を読めるから、めちゃくちゃ空気を読めないことを言える、ということだと思うんですけど。お笑い芸人さんの感覚に似ていて、人に対して言ったらアカンことを言うのが、一番面白いじゃないですか。ハゲてる人に「ハゲてるな~」と言うのが、一番面白いんですよ。それを言えるタイプの人ですね、元気よく。

MOCA:うははは。

Rover:それで怒られるんですけど、怒られても別に大丈夫というか。

MOCA:めちゃめちゃヤバイ奴やん。

Rover:あとはね、本当に声が通る人なので、声が通るって強いなと思いますね。うるさい時はうるさいんですけど、もしも緊急事態になった時に「みんな逃げろ!」とか、声が通る人がいたほうが致死率が下がるじゃないですか。

MOCA:どういう場面やねん。

──声が通るのは、歌い手やしゃべり手にとって最高の才能ですよ。

Rover:容姿がいいのと同じくらいに、声が通るのは才能だと思いますね。

MOCA:もともと地声がでかいということもあると思うんですけど、(高校)野球の時にめっちゃ声出していて、マイクもないから、センターのバックスクリーンの反射を使って、ピッチャーにプレッシャーかけていくみたいな。そのほうが、反響して2倍ぐらいに聴こえるというようなことをやっていたので。

Rover:草野球の時も、すごい声出るんですよ。あれはすごいですよ。あと、タバコをふかす天才ですかね。めっちゃ吸ってるふうに見せるのがうまいけど、ふかしてるだけ。

MOCA:うははは。それは、RYO the SKYWALKERさんと22歳の時に出会って、「喉をつぶすには、テキーラと、タバコをふかすことや」と言われたから。

Rover:テキーラでうがい、な。


MOCA:僕は、新幹線のヒマつぶしの天才かなと自分では思ってますね。心のもちようなんですけど、東京から大阪に帰る時に「まだ名古屋か…」とか、思った瞬間に負けやと思うんですよ。何事もなく「もう京都やん」と思ったら、勝ちなんですよ。

──勝ち負けの基準がよくわからないです(笑)。

MOCA:大阪から行く時は、車で新大阪に向かう途中で、その日はどういう心のもちようで行くかを決める。「マクド喰って、眠くして、前半戦は寝てみようかな。でも寝れない時は…」とか、設計するのが好きです。時計を見たくないんですよ。で、時間配分をミスった時には、メンバーには何回か見られてると思うんですけど、こういう感じ(うなだれる)ですよ。

Rover:まあ、どうでもいい話ですけどね(笑)。

──いや、どうでもいい話に意味があるんです。たぶん。じゃあHiDEXさんの天才は何でしょう。

Rover:ヒデは、記憶力の天才。あとは見た目が怖くて、怒っても怖いという「見た目のまんまかい!」という天才ですね。あとは、すっごい多趣味だと思います。マンガが好きで、昔読んだやつを大人になってから全巻揃えてる。もともとMOCAの趣味だったサウナも「俺も行ってみようかな」とか言って、MOCAよりハマるとか。

MOCA:サウナとゴルフは取られました。週5ぐらい、打ちっぱなしに行ってるんじゃないですか。「ライトスタンド」という曲で、♪バット振っていた、カキーン!みたいな振りがあるんですけど、最近、どんどん腕が下から出ていくんですよ。「それ、バットじゃなくてゴルフのクラブやん」って(笑)。完全にドライバーを振ってます。

Rover:それだけ趣味があって、仕事とバランスを取れるのがすごい。僕は仕事ばかりやっちゃうタイプなので、うらやましいなと思います。

MOCA:あと、ファンの人からめっちゃプレゼントをもらう才能がある。ライブの時、ファンの人が入り待ちしていて、僕は「おはようございます!」と言われて、何もないから、「プレゼント、一個ぐらいないんかい!」って突っ込む。Roverは2個ぐらいもらうかな。で、ヒデだけめっちゃもらってる。

Rover:あともう一個、ラストいいですか(笑)。ヒデは、空気を消す天才だと思うんですよ。ミーティングの時に空気を消して、ずっとスマホを見てる。僕とかMOCAがそれをやったら、「聞いてる?」って言われるんですけど、ヒデはそうならない。一回ぐらいは言われるんですけど、その時ヒデが言うのが、「聞いてなかったです」。ああ、そこは素直なんやなって。

MOCA:うははは。

Rover:愛嬌で乗り越える、天才ですね。

MOCA:今回のアー写も、ちょっとうしろに下がってるもんな。気が付いたら、ゆっくり遠くに行ってるんちゃう?(笑)

Rover:消えるのがうまいんですよ。消えたり、また表に出てきたり、仕事の時と休みの時と抜き差しがうまいのかな。


MOCA:あとはコーラで朝の5時までいける天才です。酒を飲んでても2時ぐらいが限界なのに、シラフで5時まで行ける32歳はあんまりいないですよ。むっちゃ元気。あれはマジで一番信じられない。で、「飲んだほうがしんどいやん」という、めっちゃ正論をかまされる。

Rover:ヒデが一番、天才ですね。

──ダントツですね。そんな天才3人が作ったアルバムが『必ず何かの天才』です。

◆インタビュー(2)
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