【対談】感覚ピエロ 滝口大樹 × イラストレーター 深井涼介、初コラボがアパレルで実現「出力すべきフラストレーションを共有した」
■他の人と何かやったら面白い
■っていうことを見せてあげたい
滝口:深井さんはバーチャルYouTuberのプロデュースとかもやられていますけど、面白いことをしている異業種の人と何か一緒にやりたいという気持ちがあったんですよね?
深井:そうですね。個人的に、ちょうど1周年になるバーチャルYouTuberのプロデュースをしているんですけど、アパレル進出もしてみたいと思っていたので、自発的な立ち上げも考えていたんです。加えて、誰かと一緒に新しいことをやりたいと思っていたコロナ禍のフラストレーションもあった。だから、あまり繋がりのなかったミュージシャンの方……つまり滝口さんとのコラボ話が来た時、それらがちょうど合致したんです。“コロナ禍でも、あれをやった”って思い出にもなると思ったので、オファを受けてみたいと。さっきも言いましたが、本当にタイミングもよかったんです。
──お互いのモードが繋がって誕生したのが、新ブランドCICL.の第一弾商品ですね。
深井:話をいただいたのが今年6月ぐらいで、納期が短かったので急ピッチで進めました。最初は「既存のイラストでもいいですよ」というお話を滝口さんからいただいたんです。だけど、やはり僕も新しいことをやりたかったし、ファンの方々にも僕の新しい作品展開を見せられていなかったので、「1枚だけでも描かせていただきたい」とお話して。
▲深井涼介
滝口:まず、僕からオファした時には、渋谷PARCOのポップアップ展開が既に決まっていたんですね。
深井:渋谷PARCOのシャレオツなあの空間に並ぶことを想像して制作しましたね。
滝口:お伝えしたのは、「単なるイラストを描いたグッズにはしたくないんです。そこさえクリアしてもらったら好きにしていただいていいですよ」ということで。あとは、「これ1枚着て外を歩いたら誰でもオシャレになれる、くらいのアイテムを展開したい」と。“Canaan名義でリリースしたいからイラストを提供してください”っていうよりは、“ゲストとして一緒にやってる”ってことを大事にしたかったんです。だから、「個性を出してください」とも言いましたし、そこにCanaanなり、僕なりのエッセンスを取り入れることができれば、と思っていたんです。
深井:僕としては滝口さんがどういうものを出したいのか、その意図に応えたいと思っていました。互いに歩み寄りながらできたので、やりやすかったですね。
──深井さんがイラストを描く上で大事にされていることってありますか?
深井:僕は常に「これ好きなんですよ」って自分で言えるものを作りたいと思ってます。
滝口:僕らもそう。自分の中にクエスチョンがないものを作りたい。音楽を世に出す時に70点とか80点ではリリースしたくないんです。最低限100点のものを出したい。それに、僕が常々思ってるのは、イラストレーターだからこうだよね、ミュージシャンだからこうだよねってイメージがあると思うんですけど、そういう壁はしょうもないなって。その壁をブチ壊して、面白いことが一緒にできたらいいなってことで。
深井:それは僕も思ってました。いろんな畑のクリエイターさんがいて、話してみると共通点っていっぱいあるんですよ。だから、“他の人と何かやったら面白いんだよ”っていうことを見せてあげたい、それがモチベーションのひとつとしてありました。根底にあった意識と、持っていたフラストレーションがすごく近かったからこそ、出力が早く、すぐに共有できたのかなって思います。
▲滝口大樹 with CICL.第一弾
──今回はTシャツ、カットソー、パーカーの3点ですが、どのようなこだわりを持ってイラストを作られたのかについてもお話を訊かせてください。まず『ARMS NOTE』の代表的なキャラクター“バイオニック・ジョシコウセイ”はSNS上でもファンの多いキャラクターですが、誕生したのはいつ頃ですか?
深井:2016年なので、もう5年を迎えましたね。漫画家として2014年まで連載していたんですが、新しいキャリアに踏み出したいと思ってた時期がちょうど2016年なんです。その時、“自己アピールの一環として、自分の得意分野を人に効果的に見てもらうにはどうしたら良いんだろう?”と考えて工夫した結果生まれた、うちの看板キャラクターが、バイオニック・ジョシコウセイで。その辺にいる女子高生が武器とか装備を着けているアンバランスな姿を描いたら、“なんだろう?”って思われるんじゃないかって。そこからSNSでも発信したんですね。2016年当時は現在と比べると仕事もなかったし、彼女が生まれて5年経ちましたけど、こういったコラボの話を今、またいただけるというのもうれしいことです。
滝口:今ではフィギュアの写真投稿もありますよね。
深井:このキャラクターを見た人が、“僕に何か話しかけてくれるんじゃないかな?”っていう期待と願いを込めて作ったものだったので、そういう反応を待っていたんです。
滝口:そして、まんまとメールしたのが、僕です(笑)。
──はははは。パーカーのイラストはあえてバイオニック・ジョシコウセイの足元だけですね?
深井:滝口さんから「このイラストの足元だけ、どうですか?」って提案をいただいて、僕としても面白いなって思いました。
滝口:インパクトがあるイラストですからね。
深井:服において一番に目が行くところってだいたいが胸元なんです。アパレル映えするイラストならいいんでしょうけど、僕の場合はオタクっぽい服になりがち。なので、バイオニック・ジョシコウセイの足元にあって、強さの象徴のようなブーツをガン!と見せることで、エネルギッシュかつオシャレな作品に仕上がるイメージが浮かんだんですね。それを伝えたらそのまま採用されました。
滝口:「OK! じゃあこれで!」って(一同笑)。足元は深井さんの武器やなって思ったんですよ。
深井:僕はキャラクターが得意なんですけど、もともと工業デザインから入っているのでメカニックにも自信があって。工業デザインの仕様ありきに慣れているので、製作のしやすさがあるのかもしれません(笑)。足元のイラストは、スポーツバイクのカウル(=車体を覆うパーツ)はイメージしましたかね。
滝口:足元だけで深井さんのイラストって分かりますから。
深井:僕は、自分の絵柄そのものは勝手に没個性だと思っているんです。ただ、このタイプの女の子の絵柄を持ちつつも、いわゆるガンダム系とは少し異なる洋画のプロップに出てくるようなメカニックを描ける人が、日本にはあまりいない。そういう意味で見せたいなとは思ってたんですよね。
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