【対談】Psycho le Cému × Waive、同期バンドの歯に衣着せぬ本音「今日は発破を掛けに来た」
■「俺ら解散中なんで」とかじゃなくて
■ちゃんと活動して時代を作りなはれ
──seekさんがおっしゃるように、バンドを長く続けようと思っているからこそのバランスの取り方があるんですよね?
seek:それはありますよ。これもlynch.との対談のときに話したけど、昔の俺らの活動はブレーキが付いてなくて、“ぶっ壊れるまで走ります!”みたいなスタンスやったから。だけど今は、続けるためにある程度ブレーキも持っておかないと、というのが意識のどこかにあるし。それがDAISHIの事件とリンクしてるかは分からないですけどね、俺はDAISHIに対して別にもうそんなこと思ってないし。十字架は一生背負わなあかんのかもしれんけど、“バンド内にはそれ持ち込まんでええんちゃう?”って。
DAISHI:「持ち込まんといて」とメンバーには言われたんですけど……でも、なかなか難しいもんですよ。
seek:まぁね、それはそうですよね。
──理由は全く違いますけど、田澤さんも「Waive解散の引き金を引いたという事実を一生抱えて、十字架を背負う懺悔の気持ちがあった」と以前のBARKSインタビューでお話されていましたよね。
田澤:十字架的なところは僕もそうですね。誰が何と言おうと消したらあかん、というかね。勝手に自分で思い込んでるだけかもしれないけど、やっぱりどう振る舞っていても、なかったことにしたらあかんというか。周りが「ええやん、もう」と言ってくれるぶんにはいいけど、僕自身が「ええやんもう」っていうのは絶対にないでしょ。
seek:なるほどね。
田澤:ただ、それが表に出てしまうことによるマイナスもあるから、ステージに立つ上での手段として包み隠しているというか。それが邪魔になってはいけないから、気を付けようとは思ってますけどね。本当の意味で、気負いみたいなものが消えるか?と言ったら、消えないでしょっていうところですかね。
▲seek (B / Psycho le Cému)
──「この先、10年間バンドを続けたい」と明言するPsycho le Cémuとは対比的に、Waiveの場合は今の状態を「解散中」と謳っています。解散によって二度とファンを悲しませないために逆説的に発明された、ネガティヴなようで実はポジティヴな概念だとは思うのですが、今後はどんな活動をしていかれるんでしょうか?
田澤:仮にコロナがなかったとして20周年アニバーサリー企画が予定通り進んでいたら、2021年2月23日の渋公ワンマンでWaiveの活動は一旦終わるのかな?と思ってたんですよね、自分的には。僕らは大義がないのにステージに立つバンドではないから、“次は25周年かな?”みたいなね。でも、20周年のやり直しということで2022年1月のリベンジライブが決まって、今は先が見えてるというか。とはいえ、予定していることが綺麗な形でできるか?というと、これからも状況がどうなるか分からない。いろいろと考えながら前に進んでいく過程で、コロナ前のような景色が見られたならラッキーなだけであって、コロナ以前に戻るみたいな感覚はもうないじゃないですか。今後ルール上、お客さんを100%入れられるとなっても、やっぱり人それぞれの状況があるから、気兼ねなく“行きます! 楽しみまーす!”みたいなことになるかと言ったら、違うでしょうし。その時々の情勢を見ながら、やり方を変えていかなあかんやろうし、考えなあかんでしょうね。
seek:これはもうずっとWaiveに思ってることなんですけど……。僕は再集結してからのライブを何本も観に行ってて、ヴィジュアル系シーンに限らず、音楽シーンに対してすごく影響を残せるバンドだと思っているので、関係者としても思うんですよ、“ちゃんとやってよ!”って。
DAISHI:それは思うよな!
田澤&杉本:ははははは(爆笑)。「ちゃんと」って何やねん(笑)!
seek:「俺ら解散中なんで」とかじゃなくて、ちゃんと活動して、ちゃんと時代を作りなはれ!
田澤:ちゃんとやってるやん!
DAISHI:その「ちゃんと」じゃない(笑)!
杉本:解散中とか言ってないで、「スタンダードをパーマネントにやれ」ってことだとは思うけど。
seek:今、ヴィジュアルシーンが閉塞的と呼ばれてるようなところがあって、それが真実かどうかは分かりませんけども……ひょっとしたらですよ? Waiveがちゃんと続けてたら、未来は変わっていたかもしれない。
杉本:変われへんって(笑)。
田澤:あはは!
seek:この歳になると解散や復活を繰り返すバンドもいるし、回顧主義でやってるようなバンドもいるんでしょう。だけど、俺はWaiveの新曲を聴きたいし、そう思わせるぐらいの楽曲の良さがWaiveにはある。Waiveの曲って自分自身や人間をテーマにしてるから、なかなか新曲が作りづらいことも分かるんですよ。それでもやっぱり俺は、今のWaiveの曲が聴きたい。そういう目でWaiveを見ていますね。
──ストレートにそう言われて、お2人はどう感じますか?
杉本:……この人ね、一緒に食事すると酒を飲んで酔っぱらって、僕に「バンドやれ」ってことばっかり言ってくるんですよ。
seek:ずっと言ってます(笑)。
杉本:「Waiveやれ」も言うし、「仮にWaiveでないとしても、とにかくバンドを組め」と。MUCCの逹瑯とかと食事した時も、「(※seekの口調を真似て)このメンツでバンド組めるじゃないですか」とか、無理やり組ませようとしてるのか、すぐに言い出す。
seek:「全員パート違うし、できるじゃないですか」って(笑)。
杉本:そういう訳の分からんことを言ってくるんですよ。求めていただけることはそれだけで嬉しいし、冗談じゃなく言ってくれてることも分かるから、嫌なもんじゃないんですよ、当然。今言ってた「シーン全体を変える」みたいな大きいことは、きっとできないと思うんですけどね(笑)。とはいえ、仲間内を変えられたかもなというのは、正直、たしかにそう思う。<MUD FRIENDS>然り、みんなが一丸となっていたら、あのイベントの熱量みたいなものを多発させられたでしょ?ということには、なるほどと感じるところがあるから。だからといって「やって」と言われたところで、僕はやりたくないんですよね(笑)。Waive解散発表ライブの時にも言ったことだけど、後にも先にも“僕にはこれしかない”と思ってやったから。当時の僕が抱いていたWaiveに対する感情を凌駕するものが目の前に転がってきたら、もしかしたら“バンドをやる”とか“ギターを握ろう”と思うのかもしれないけど。僕の中で一番燃えたのがその歳ぐらいにあったので。やっぱり、過去ほど熱量の高くない僕が、ブランクもある中で、わざわざ何かを変えられるかな?って、どうしても思っちゃう。ただ、ちょっと語弊あるかもしれないですけど、Waiveをやる時だけはその熱量に依存できる。“この熱量は自分が持ってたものなんだ”と思いながらそこに向き合える。でも、新しいものがあの時を超えられるのか?と言われたら、無理なんですよ。僕は楽器自体そんなに好きじゃないし、さっきの筋トレの話じゃないけど鍛錬をずっと続けることができないから。その代わり、誰よりも頭を使って熱量を持って時間を割くことができる。それが僕のアイデンティティであり、誰にも負けない部分なので。そこに本気で向き合える環境じゃない限りは、やった時にみんなをガッカリさせる気がするんですよね。だからできないなって思う。
seek:頭が良すぎるんですよ、善徳さんは。頭でいつも先に答えが出ちゃうから。
DAISHI:分かるわ~。難しいこと考えて、たまに“何言っとんのコイツ?”って思う(一同笑)。
杉本:あはは! 脳みそも筋肉になってもうてるから、彼は(笑)。
seek:いろんなことが人よりも整然としてクリアに見えてるんやろうなと。僕らが迷いながらやってる2~3年があったとして、善徳さんは「2~3年後にここに行くんやったら、これは違う道やな」って2〜3年前に頭の中でもう見えちゃってるというか。俺はそこにすごく憧れてたんですけど、それは幸せでもあり不幸でもあるんやなって。善徳さんを見ててそう思う時もある。
杉本:いやいや。きっとこの3人は筋トレ3人衆で、脳筋になってる人たちの意見だから、僕は聞かないです。
田澤:俺、何も言ってないやん(笑)!
DAISHI:フィットネスの世界からしたら、なかなか差別的な言い方やな(笑)、今日はミュージシャン対談だからいいけど。それにしても、思ってた対談と全然ちゃうわ~。杉本善徳のせいで(一同笑)。
杉本:“俺がなんで呼ばれたのか?”を考えたら、こういう発言のためでしょ? 発破を掛けてくれたと思ってくれよ。そう思って今日は来てるもん。
──すごくいいお話でしたよ。お互いに発破を掛け合うような内容は単独インタビューにはあり得ないですし、関係性の深い2バンドの対談だからこその内容になったと思います。
DAISHI:うん。めっちゃいい話だったし、お互いが取り繕ってない、すごくいい対談だったと思う。
田澤:うん、そうね。
杉本:MUCCを入れた3バンドだったとしても、絶対に話さない内容になったしね。それを求められてると思って来てるので。
──5月3日に開催が予定されているPsycho le Cémuの結成記念日公演<理想郷旅行Z ~二十年後の僕たちへ…~>(対談取材時は緊急事態宣言の発出前であり、開催協議中だったが、4月27日夜、開催見送りを発表。その後、振替公演が8月14日(土)に姫路市文化センター大ホールで開催されることが決定)はどんなものにしたいですか? 開催できるかどうかは緊急事態宣言の状況次第だと思うのですが……。
seek:この公演には、もはや遺恨と呼んでもいいぐらいの思い入れがあって。さっきのWaiveの話じゃないけど、2020年5月3日が20周年プロジェクトの最終章を飾る21回目の結成記念日で、“地元の一番大きい会場=姫路市文化センター大ホールでやる”っていうのがテーマだったんです。だけど、コロナ情勢の影響で「今の段階では開催できない」という判断の中で延期となった。今回は、一年前のライブタイトルをそのまま引き継いだものなので、「なんで、東京でやんねん?」と思っているファンの方々ももちろんいると思うんです。ただ僕らは、再び姫路市文化センターに行くために、ここをスタートとしないと物事を動かせないと思っていて。まして、渋谷公会堂(現LINE CUBE SHIBUYA)という想い出深い場所が、22年目を迎える5月3日の結成記念日に取れたということにも運命を感じられた。いろんな想いを抱えながら、ここをスタートラインにしようという流れだったんですが、今、また緊急事態宣言が発出されるかもしれないという状態なので……(苦笑)。何とも言葉にするのが難しいんですが、この1年でメンタル的に鍛えられた僕らは、仮に開催できなかったとしても、この日をまたひとつのドラマにして次に進めば、いつか必ず新しい日が来ると思えるようになっているんですね。去年は結論がギリギリまで出せない状態に陥ること自体に、すごくストレスを感じていたんですが、そこはメンバーも強くはなってきたかなと思ってるところはありますね。
──DAISHIさんはどんなライブにしたいですか?
DAISHI:いろいろな挑戦を入れていきつつも、作り方としては王道な周年ライブにしたいと思っています。特にホール公演はそういう作り方にしているんですけど、ミュージシャンというよりは、エンターテインメント性をより強めに。なかなかのボリューム感なので、人によっては“音楽をもうちょっと聴きたかった”という意見が出てくるのかもなというぐらい、今回はエンタメてんこ盛りです。
杉本:そっちのほうが観たいですよ、みんな。
seek:もう少し具体的に言うと、配信ではお芝居の温度感が伝わりづらいし、スベるのも嫌やったので避けていたんですね。だから、ゲームが進んでいくみたいな動画を使ったライブの作り方だったんです。だけど、今回は有観客ということと、渋公は座席もあるので芝居の時は座って観ていただけるという環境もあって、ボリューム的に今回はお芝居を多く入れています。あと、脚本は昔からお付き合いいただいている劇団 第14帝國の楠本柊生さんに書いていただいて。この20年間のPsycho le Cémuをすごく上手にシナリオにしていただいたんですよ。自分たちが歩んできた物語のようでもあり、ひとつのRPGの世界観としてもしっかり作っていただいた。今、芝居の練習をしているんですけど、自分自身が感動できるような内容だったりするんですよ。
DAISHI:これまで自分たちでシナリオを書いたりもしたし、ほかの方に書いてもらったこともあるんですけど、今までで一番面白い脚本かもしれないです。
seek:去年予定していた公演タイトルと同じにはしてるんですけど、今回の東京公演のために、結構演目は変えています。
DAISHI:新しい試みも入れてますよ。初めての試みじゃないかな?
──Waiveは夏に新宿BLAZE2DAYS開催と、2022年1月29日に渋公リベンジライブを控えてますが。
田澤:まだ、内容についてはこれからですけどね。
──では、Waiveのお2人も<理想郷旅行Z ~二十年後の僕たちへ…~>はご覧になりますか?
田澤:今の話を聞いたら、もうめっちゃ観たいですよね。
杉本:コロナ抜きにしても、この2年ぐらい、僕はかなりPsycho le Cémuに文句を言ってきたというか、発破掛けてきたつもりでいるから、そろそろ観たいですね。
DAISHI:いや、また怒られると思うな~。「あれがオモロないねん」みたいな(一同笑)。
seek:やる前から言いそう(笑)。
杉本:そういうのはお互い、常にあるんでね(笑)。
取材・文◎大前多恵
■<Psycho le Cému 理想郷旅行Z ~二十年後の僕たちへ…~> 振替公演
open17:15 / start18:00
▼チケット
S席 ¥19,800 / A席 ¥9,800
一般発売:8月8日〜
Web先行受付:7月20日〜
■<Waive 2Øth Anniversary Again #2 TOUR「NEED...?」>
09月18日(土) 大阪 BIGCAT
09月19日(日) 名古屋 BOTTOM LINE
10月02日(土) 横浜 BAYHALL
10月09日(土) HEAVEN’S ROCK 熊谷VJ-1
11月23日(火・祝) 渋谷 TSUTAYA O-EAST (全席指定)
open16:30 / start17:00
open16:15 / start17:00 ※渋谷 TSUTAYA O-EASTのみ
▼チケット
¥6,800 (税込 / ドリンク代別 / スタンディング)
※渋谷 TSUTAYA O-EAST公演のみ全席指定
一般発売:8/14(土)~ 各プレイガイドにて
【最速先行受付】
受付期間:7/15(木)18:00~8/2(月)23:59
https://eplus.jp/waive21-official/
(問)LIVE EXSAM 03-5575-5170
■『Waive 20th Anniversary Special GIG「ライブハウス渋谷公会堂へようこそ。」2021年2月23日(火・祝)@LINE CUBE SHIBUYA』
※Waiveオフィシャルショップにて発売
http://waive.shop/
価格:8800円(税込)
【7/31, 8/1 新宿BLAZEにて会場販売実施】
会場購入特典:終演後メンバーによる商品お渡し会
■<Waive 2Øth Anniversary Again #1 GIGS「The Land of Beginnings -新宿-」 >
open16:30 / start17:00
8月01日(日) 新宿BLAZE
open15:30 / start16:00
▼チケット
¥6,800(税込 / ドリンク代別 / 全座席指定)
※SOLD OUT
(問)DISK GARAGE 050-5533-0888
■<Waive 2Øth Anniversary Again GIG「2Ø22 -俺たちの戦い(20周年)はこれからだ-」>
※詳細は後日発表
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