【レポート＆photo_gallery】＜京都大作戦2021＞ハルカミライ、「やっぱバンドって最高だな！」

＜京都大作戦＞が再びこの太陽が丘に帰ってきた。昨年は新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け開催断念となったが、これからトップバッターとして登場するハルカミライは2019年に＜京都大作戦＞の牛若ノ舞台に初登場し、昨年も出演を予定していたバンドである。今年は源氏ノ舞台、それも2年ぶりの＜京都大作戦＞を幕開ける役割を担う。ハルカミライが、この日この時間を任された意味を、観客はこのあと存分に食らうことになる。

◆ハルカミライ 画像

まだバンドの紹介アナウンスが終わりきらないうちに、ステージへと飛び込んできた関 大地(G, Cho)、須藤 俊(B, Cho)は気合いを入れるように雄叫びを上げ、小松謙太(Dr, Cho)は登場するや上着を脱ぎ上半身裸でドラムの前に座る。そしてピンクの髪色が鮮やかな橋本 学(Vo)の「京都大作戦！ はじまったぜ」という言葉を合図に、全員でジャーンと音を鳴らした──かと思うと、須藤はベースをぶん投げるようにしてステージ前へと走り出す。何が起こるのかハラハラしながら、また1ミリも見逃せないとステージに釘付けになった観客から拍手がわき、「君にしか」「カントリーロード」へと続いていく。



曲中に橋本は、「すげえ1日にしよう、すげえ35分にしよう、すげえライブにしよう、すげえ歌にしよう、すげえやつでいよう、全員！」と、叫ぶ。ステージ上は相変わらずベースがぶん投げられていたり、アンプに乗っかってギターをプレイしたりのけぞってブリッジ状態でプレイしたりとしっちゃかめっちゃかに見えるが、奏でられるサウンドはまさにエネルギーの塊で、ダイレクトに観客の体にぶつかってきて、心も揺さぶっていく。

「今まででいちばん嬉しい早起きです。……いちばん嬉しい早起きですって言ったんだけど、俺、ドキドキして一睡もできなかったわ。朝までずっと起きてた。だから深夜のテンションなんだよ。マジ寝てねえ俺かっけえ」──橋本

そして「10-FEET！ 京都大作戦！ 俺たち！ お前ら！ ファイトー‼︎」と叫んで、ショートチューン「ファイト‼︎」へ突入。「俺たちが呼んでいる」「春のテーマ」と曲が進んでいくにつれ、観客もどんどん彼らの歌の世界へと入り込んでいって、エモーショナルにコブシをふるい、シンガロングできない分を拍手に込める。衝撃と同時に浸透力のあるその音楽、歌は、心の何処かにしまっていた気持ちや、蓋をした感情を引っ張り出してパンチを食らわせ、またそっと寄り添う優しい温度もある。馴染みある何かに出会った、そんな感覚だ。





この日は大雨の影響で東海道新幹線や在来線が止まるなど交通に影響が出ていたことに触れ、「まだ来れてないやつがいるからよ、君らの口からしかハルカミライがどんなライブしたか、伝える方法はない。どうか教えてやってくれ、どうか自慢してやってくれ」と言って、「Tough to be a Hugh」からスタートした後半は、ハルカミライの真骨頂だ。

「このままどうか、雨よ、降らないでくれ。俺たちのために、みんなのために。このままずっとずっと、歌を歌ってたい。君たちと一緒に、好きなやつらと一緒に」と節をつけて歌い出した「僕らは街を光らせた」は、この日、この時をパッケージしたドキュメント性の高い曲になった。「俺、TAKUMAさんと電話で話したことがあって。“どうしようもなくなったら思い出せよ、学。初めて衝撃を受けたあのライブのこと。それができりゃ、俺たち大丈夫だから…”」と歌詞に織り込んでいく。目一杯、鼓動を打ち鳴らすような演奏に乗せ、そのラストで、「今日のこと、俺は味方にしながら、初めて出た源氏ノ舞台を、俺がどうしようもなくなった時に思い出しながら、俺たち強く生きていかなきゃだぜ」と叫び、語るように歌う。

「アストロビスタ」へという流れでは、関のギターのストロークに乗せて橋本がポツポツと語る。「俺たちさ、2年前に初めて牛若のステージに出たんだ。あのときは俺、全然自分で納得できねえライブして眠れなかったんだ。悔しかったよ。終わってすぐ、自分が飲んでたペットボトルをバーンで投げつけたりして。ガキだった」と自嘲しながらも、「眠れない夜に私、頼れるメンバーがいて。眠れない夜に私、認めてくれる先輩がいて。眠れない夜に私、駆けつけてくれるみんながいて。やっぱバンドって最高だな！」と歌詞に織り交ぜた。橋本は観客を見渡し、「ここ来てよかったよな。ここで、この場所で間違ってないよな」と、笑顔を見せる。


35分の出会いだが、長いを過ごした友だち同士のような感覚に陥るハルカミライのライブ。バンドと一心同体で時間を共有した観客もまた、笑顔だ。そこに向けて、本日2度目の「ファイト‼︎」をプレイ。 1回目よりも明るく、アンセミックに響く「ファイト‼︎」は最高だった。

取材・文◎吉羽さおり
撮影◎青木カズロー／瀧本 JON...行秀


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