【ライブレポート】Kroiがライブで起こす“化学反応”
内田怜央(Vo)、長谷部悠生(G)、関将典(B)、益田英知(Dr)、千葉大樹(Key)から成る5人組バンド、Kroi。「クロイ」(黒い)と読むバンド名は、ブラックミュージックから受けた影響を日本人である自分たちなりに昇華したいという意味と、あらゆるジャンルを取り入れながら新しい音楽を想像したいという考えで、全ての色を混ぜると黒になるということから。
2018年2月に結成されると、同年10月にデビュー。2019年夏には<SUMMER SONIC 2019>に出演。早耳のリスナーから注目されているほか、“今注目のアーティスト”としてリリース作品がメディアやプレイリストにピックアップされることもしばしば。2021年6月には、1stアルバム『LENS』でポニーキャニオン内のIRORI Records(Official髭男dism、スカート、Homecomingsが所属)よりメジャーデビューすることが発表されている。
◆ライブ画像(27枚)
勢いに乗る彼らが3月27日、東京・渋谷WWWXにて、全国ツアー<3rd EP『STRUCTURE DECK』 Release Tour 『DUEL』>の追加公演を開催した。1月にリリースされた最新EPを引っ提げてのツアーは元々東名阪1公演ずつの予定だったが、初日の渋谷WWW公演がソールドアウトしたことを受けて急遽追加公演が設けられた。そんなトピックも彼らの勢いを物語っているように思う。
開演時刻を迎えると、SEなしでステージに現れた5人。誰からともなく楽器を鳴らし始め、やがてセッションになると、内田が「みなさん、元気ですか? 調子いいですか?」とフロアに投げかけ、「Noob」、そして「Finch」が続けて演奏された。同じ場所に留まることを嫌うように、1曲の中でくるくると変わる曲調。音の変化に委ねて身体を揺らす観客。メンバーは、笑みが抑えきれないといった表情で演奏している。ステージ上には親密な空気感が流れていて、まるでジャムセッションを覗き見しているかのよう。内田がMCをしている最中もその後ろではバンドが音を鳴らし続けている。「本当は一緒に歌いたいところだけど、自分なりに楽しんでください」と始まった「Monster Play」は、唄えない観客の代わりにメンバーが「モーンスタプレイ!」とコーラス。内田もシャウトとスキャットが入り混じったような歌い方で加勢する。
バンドの場合、ボーカリストのことをフロントマンと呼ぶことが多いが、Kroiは5人全員に主役を張れる華やかさがある。そのうえ、ボーカルの内田も歌だけではなく、ギターもガシガシと弾くし、ボンゴだって叩くため、どの楽器がいつ飛び出してくるのか全く分からない。演奏するうえで最も重視されているのはステージ上で偶発的に発生する化学反応的なものであり、各曲の印象は音源から大きく変貌。いわゆる“ライブ化け”が起こりまくっているのが最高に楽しい。曲が終わったあとの「あざーっす」という挨拶も、自ら「ゆるい」「ヤバい」と言っていたMCもリラックスした温度感。「本当に音楽好きな人が集まってると思うんで、安心してやってますんで、よろしくお願いします」(内田)という言葉からバンドが自由でいられる理由が伝わってくるが、「お客さんあっての我々」と実感を語りつつ、「我々あってのお客さんでもある」とちゃっかり付け加えるのが彼らのキャラクターだろうか。なお、インテリアや観葉植物が飾られたラグジュアリーなステージセットは、後日このライブの模様が配信されることを鑑みて用意したとのこと。演出を担当する映像監督・新保拓人氏いわくコンセプトは“ギャルのおなら”らしく、例えばおしりの形のようなオブジェがあったりと、遊び心満載だ。
この5人ならではの愉快な混沌「dart」。長谷部が歯ギターで魅せた「Mr. Foundation」は音のトメハネによって生まれるノリが楽しく、ライブでシンガロングしたくなる曲でもある。ギターによって「flight」の最後のコードが鳴らされたと思いきや、他にもいくつかコードが鳴らされ、バンドが合流した頃には「侵攻」が始まっている。「バカになれる時間がないと人間おかしくなってしまうので。みんな、我々の音楽でガンガンバカになってください」(内田)という言葉通り、畳み掛けるように演奏した前半でフロアの空気はかなり和らいだ。「Never Ending Story」以降のチルゾーンでは、先ほどまで歌とラップを交互に繰り出していた内田の、力強くも甘美な歌唱にまず驚かされる。特に11曲目の「Polyester」は独白のような筆致の歌詞も相まって、リアルな質感が伝わってきた。しっとりとした展開から一転、観客の手拍子に乗って5人で歌い始めた「risk」で一気に和やかな雰囲気に。曲中、長谷部が突然オペラ風に声を張るなど、ユーモアを盛り込み笑いを誘った。
「Custard」、「Page」、「HORN」と曲数を重ねながらラストスパートに差し掛かるが、観客を徒に掻き立てるのではなく、余白のあるアンサンブル、バンドのグルーヴで踊らせていくのがKroiのやり方だ。スマートだが適度に重みのある4つ打ちが心地よい「Network」、2番が終わったあとにもう一段階勢いが増す展開がスリリングな「Fire Brain」を経て、本編ラストに選ばれたのは「みんなが大好きな、というか俺らが大好きな」と語られた「Shincha」。「楽しかったー? OKOK、楽しそうです!」と観客の表情を確認する内田は、「来てくれたみんな、本当にありがとうー♪」とアドリブで歌い、その歌がパワフルなスキャットに変わると、まだまだ遊び足りないと言わんばかりに演奏の熱量がグッと上がる。喜びが爆発したようなラストシーンは、このバンドがまだまだ進化していきそうな予感をも感じさせるものだった。
アンコールではリリースやツアーなどの新ニュースを発表し、6月リリースの1st アルバム『LENS』に収録される新曲「shift command」を早速披露。サビこそ爽やかだが、そこに行くまでの展開が捻りまくっていて、このバンドの個性が感じられる曲だった。なお、「shift command」はアルバムリリースに先駆けて、4月30日に配信リリースされるとのこと。さらに4月10日には、今回レポートしたWWWX公演の模様がLIVEWIREで配信されるため、会場に足を運べなかった人はチェックしてみてほしい。
取材・文◎蜂須賀ちなみ
写真◎Momo Angela
■リリース情報
2021年6月 Major 1st Album『LENS』
<Kroi 1st Album Release Tour “凹凸”>
7月4日(日) 北海道PLANT
7月10日(土) 横浜FAD
7月11日(日) 千葉LOOK
7月16日(金) 大阪バナナホール
7月18日(日) 名古屋SPADEBOX
7月30日(金) 福岡DRUM Be-1
8月1日(日) 京都 KYOTO MUSE
8月6日(金) 東京CLUB QUATTRO
前売り 自由 ¥3,800(税込、ドリンク代別)
【ぴあ最速先行抽選】
受付URL:https://w.pia.jp/t/kroi-t/
受付期間:3/27(土)21:00~4/4(日)23:59
※ご来場に関する注意事項など最新情報を公式サイトにて必ずご確認ください。公演前に発表する注意事項をご確認の上、ご来場をいただきますよう、お願い申し上げます。
※当日は新型コロナウイルス感染拡大防止のガイドラインを遵守し、然るべき安全対策を講じた上で開催されます。
■LIVEWIRE配信<3rd EP 『STRUCTURE DECK』Release Tour "DUEL”>
チケット:前売 ¥2,000 / 当日 ¥2,500
チケット販売期間:2月22日(月)18:00~4月16日(金)21:00
見逃し配信期間:4月16日(金)23:59まで
公演サイト・チケット購入:https://livewire.jp/p/kroi210410
お問い合わせ先:livewire@spaceshower.jp
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