【インタビュー】無観客?バーチャル? 注目の<第63回グラミー賞授賞式>をジョン・カビラに訊く
<第63回グラミー賞授賞式>が、2021年3月15日(月)9時よりWOWOWにて生中継となる。
83部門のノミネーションが11月に発表され、ビヨンセが最多9部門、テイラー・スウィフトとデュア・リパがそれぞれ6部門といった話題が世界を駆け巡ったものの、新型コロナウイルスのLA地域の感染者急増の事態を憂慮し、当初予定していた2月1日(日本時間)開催の日程から1ヶ月半の延期を経ての<第63回グラミー賞授賞式>である。
極上のエンターテイメントが集う音楽の祭典として、今年は新たにコメディアンのトレバー・ノアが司会を担うものの、授賞式は無観客で開催し、式典の多くはバーチャルな演出になるという。これまでとは何から何まで様子の違う<第63回グラミー賞授賞式>だが、見どころ/注目ポイントはどういったところになるのか、WOWOWでの生中継で案内役を務めるジョン・カビラに話を聞いた。
▲ビヨンセ
▲デュア・リパ
▲テイラー・スウィフト
▲ポスト・マローン
──2021年のグラミー賞は、今までとは違うグラミー賞になりそうですね。
ジョン・カビラ:このコロナ禍にあって前代未聞ですよね。<第62回グラミー賞は>2020年1月26日(現地時間)に行われたんですが、アメリカで初めてのコロナ感染者が報告された6日後だったんです。トランプ元大統領が公衆衛生上の緊急事態を発表したのが1月末ぐらい。ちょうどギリギリというか、現在のようにコロナが世界を埋め尽くすというイメージがないタイミングだったんです。
──まさかこんな状況になるとは、思いもよらなかった頃ですね。
ジョン・カビラ:中国が武漢でのクラスター発生をWHOに報告したのが2019年末だったので、それからわずか数週間でのグラミー賞だったんですよね。間に合ってよかったと思います。
──昨年はビリー・アイリッシュが主要4部門制覇する歴史的な年でもありましたが、その翌年が無観客開催になるとは…。
▲ビリー・アイリッシュ
ジョン・カビラ:当然、公衆衛生上の安全確保が第一のポイントです。残念ながらロサンゼルスもかなりひどい感染状況になっていますし、ワクチン接種も一時滞ったりしているので、最大限の安全策を講じての開催となります。グラミーの持つスペクタクルな音楽への賛歌、アーティスト/ソングライター/インストルメンタリストのみなさんへの称え方ってどうなんだ?と普段にも増して世界の注目が集まることと思います。アメリカの音楽界/エンターテインメント界の底力、そしてアーティストのクリエイティビティが試されますよね。
──無観客開催とのことで、どうなるんでしょう。
ジョン・カビラ:一堂に会してステージで展開する華々しさ、スペクタクル感、ステージチェンジ/セットチェンジの妙、ステージングの妙で、まばゆい限りのエンタメの髄をワクワクしながら楽しませてもらっていたんですけれど、今回のステージ演出ってどうやるの?ってね。トレバー・ノアは初グラミーMCとしてデビューするわけですけど、どう仕切るの?生中継での演出のロジスティクスも気になるところで、逆にすべてが楽しみですね。
──会場に集結したそうそうたる現役のトップアーティストがステージ上のアーティストを賛美し、そのパフォーマンスに惜しみない拍手を送るというあのグラミーの空気感…ですよね。
ジョン・カビラ:それをどうするかですよ。例えばアデルが受賞したあと「私はビヨンセを心から愛している」と言い、ビヨンセが席に座りながら頷くというお互いのリスペクトが電気が流れるくらいの空気感で伝わっていく…それをどういった形で届けるのか、相当ハードルが高い演出になりますよね。だからずっと目が離せないと思います。
──必見ですね。あまりに特別なグラミー賞授賞式になりそうです。それにグラミーには、欧米音楽ビジネスやアーティスト活動をさまざまな角度から評価する側面を持っていますから、2020年という特別な年をどう捉えるか。
ジョン・カビラ:アルバムとは何かとか、ミックステープという存在もありますから、そういうところもちゃんと捉えてこれまで考えられていた領域を広げ現代化していくことが、グラミーに求められるところでしょうね。Black Lives Matter(人種差別抗議運動)もそうですし、大統領選挙の結果の出た年でも新しい政権が生まれた年でもありますから、そういった社会の動きをトレバー・ノアが司会でどれくらいギリギリのところを突いてくるのか、それとも突破しちゃうのか。そこらへんを僕はものすごく楽しみにしています。
──ノミネートされたアーティストのなかで、注目ポイントはいかがですか?
ジョン・カビラ:世代的にはブラック・ピューマズとか推したくなるんですけど、日頃愛聴しているとはいえないながらミーガン・ジー・スタリオンのぶっ飛ばし方はすごいですね。ポップカルチャーの中での立ち位置もすごいし、女性のセクシャリティに関して真正面から向き合って、もちろんブラックアメリカンのことも打ち出している。同時に公衆衛生の学科に通っていて衛生経営学の学位をとると言っている。子どもたちとは一緒に観られないようなものすごいビデオを出しながらも、ちゃんと大学は出ようねと言っているのが今のアメリカだなって感じます。女の子は女の子でいいし、セクシャリティを前面に打ち出していいし、でもみんな頭良く生きていこうよみたいな。「他人に好き勝手されることだけは許さない」みたいな感覚が最高ですよね。幼少から日本のアニメ好きというところも面白いですしね。
──曲や歌詞の素晴らしさはもとより、そこに根付く主義主張やポリシー・生き様こそが注目され評価につながる傾向がありますよね。
ジョン・カビラ:そういった傾向は無視できない状況にあります。昔はメディアブローカーみたいな人がいて、ラジオ局周りをしてテレビのトークショーをブッキングするというプロモーションの流れが連綿と続いていましたけど、今はSNS…インスタ、TikTokというメディアの民主化によって、レーベルPRに任せっきりというのはありえないし逆にダサいっていう。「私が私のメディアを持っている」というプレゼンスの強さは、HIP HOPの隆盛の裏にあるうねりとしては間違いないと思いますね。
──アーティストがアーティストたる所以は、そもそも主張があるから、ですもんね。
ジョン・カビラ:「What do you wanna say?」「何が言いたいの?」「なんでそういうの?」を説明できる。逆に突き詰めれば「好きだから」で押し切ってもいいんですけどね。
──今回、BTSのノミネーションも注目を集めています。
ジョン・カビラ:これは画期的なことですよね。アジア初ですし受賞ってことになれば歴史的なことです。「はいはいアジア系ね」っていうエンターテイメントの世界ではマージナルなところから、絶対メジャーにはなれない感をぶち抜いてきた。アメリカの普通の中産階級で肌の白い女の子もARMY(BTSのファンの総称)に参加していて、共和党のオクラホマ州での政治集会チケットを大挙登録して参加せず、会場をがらんどうにさせるぐらいのパワーを持ってしまった。Black Lives Matterに関しても発言をし寄付活動や募金活動もしている。すごいプレゼンスですよ。同じアジア人として一過性のものであってほしくないと思います。
──時間も距離も人種や文化の壁も一瞬で飛び越える今、デジタルネイティブの10代の子たちは肌感覚で世界を知る時代ですから、アメリカの女の子がBTSに憧れるのも自然なことなんですね。
▲BTS
ジョン・カビラ:本当にすごいことだと思います。K-POPの隆盛は韓国政府の肝入りの国家的事業ですから、ちゃんと税金を使って助成し徹底的に指導をして英語も学び歌もダンスも極める。逆に「え、本来それは日本の事務所が得意だったことじゃないの?」って思いつつも、ちょっとスケールが違ったみたいで脱帽ですよね。なまじ国内マーケットで成立、満足(?)している日本のビジネススタイルとモデルが、K-POPとの差を生み出したんでしょうね。
──<第63回グラミー賞授賞式>で日本の音楽業界の人が学ぶことや、注意喚起を受けるものなどはあるでしょうか。
ジョン・カビラ:当然、国の成り立ちとか民族性・歴史・文化・ポップカルチャーの違いがあるので、単純にグラミーを目標にすべきということではないですが、日本人のアーティストが出て行って世界的に認められてほしいですよね。こんなに素晴らしいアーティストが日本にはいるんだから。素晴らしいものは世界の人たちに楽しんでほしい。「日本にだってこんなにクリエティブな人たちがいるんだ」って肩に力を入れて証明するのではなく、サブスクでプレイリストを交換しあう子たちの間では、そのポテンショルはすごくありますよ。アメリカの大学生が「竹内まりあっていいよね」って会話をしたりしているんですから。
──確かに、1980年代日本歌謡曲も、海外で再評価されていますよね。
ジョン・カビラ:そういうのがTikTokとかで広がったりもする。「いいものはいいよね」っていうスタンスなんですよね。「K-POPはこんなに成功しているのに日本は情けないぞ」とかいうのは簡単だけど、そうじゃなくて「もっとシェアしたいよね」「じゃあシェアするためにはどうすればいいんだろう」っていうことを日本のエンタメ界は一緒に模索してほしい。もちろんグラミーを見れば、プロダクションレベルで刺激を受けると思いますし、どこかにヒントがあるかも知れない。憧憬の眼差しで見るのではなく「こういうやり方があるのか」「自分だったらこういうふうにやるかも知れない」という目で見ればいいと思います。
──3月15日(月)9時、WOWOWでの生中継が楽しみです。
ジョン・カビラ:前代未聞のグラミー…最初で最後であってほしいですね。どう見せてくれるんだろう、誰と誰がコラボするんだろう、コラボはステージに立つのかそれともCG、3D、ホログラムなのか?本当に楽しみですよね。ここでしか見られないコラボはどのようにするんだろう…楽しみです。当然テクニカルな問題・アクシデント、技術的な事故が起こる可能性もあるでしょうから、危機管理も大変でしょうけど。
──それも含めてのエンターテイメントということで、やはり楽しみです。コンサートでもトラブルなどはむしろ良き思い出になりますから(笑)。
ジョン・カビラ:「あれ見た?あれやばかったよね」っていう共有の価値、ありますよね。トラブルも楽しむくらいのマインドセットですね。オスカーでは『ラ・ラ・ランド』と『ムーンライト』の発表取り違えというすごいハプニングもありましたからね。
──2021年のグラミーは、色々な意味で特別なフラグが立った要注目のイベントのようです。
ジョン・カビラ:みなさん、相当ワクワクすると思います。Once in a life time(一生に一度)、最初で最後のグラミー賞授賞式になると思います。
写真◎Getty Images
取材・文◎烏丸哲也(JMN統括編集長)
▲第62回グラミー賞授賞式より Getty Images
3月15日(月) 午前9:00生中継 [WOWOWプライム][WOWOWオンデマンド] ※見逃し配信あり
出演者:ジョン・カビラ、ホラン千秋
『第63回グラミー賞授賞式』 ※字幕版
3月15日(月)夜10:00 [WOWOWプライム][WOWOWオンデマンド]
※見逃し配信あり
『第63回グラミー賞授賞式の見どころ』 ※無料放送
#1 3月11日(木)午前11:30 ほか [WOWOWライブ][WOWOWオンデマンド]
#2 3月13日(土)午前7:15 ほか [WOWOWライブ][WOWOWオンデマンド]
#3 3月13日(土)午前7:30 ほか [WOWOWライブ][WOWOWオンデマンド]
#4 3月13日(土)午前7:45 ほか [WOWOWライブ][WOWOWオンデマンド]
各番組、3月15日(月)までアーカイブ配信中
83部門のノミネーションが11月に発表され、ビヨンセが最多9部門、テイラー・スウィフトとデュア・リパがそれぞれ6部門といった話題が世界を駆け巡ったものの、新型コロナウイルスのLA地域の感染者急増の事態を憂慮し、当初予定していた2月1日(日本時間)開催の日程から1ヶ月半の延期を経ての<第63回グラミー賞授賞式>である。
極上のエンターテイメントが集う音楽の祭典として、今年は新たにコメディアンのトレバー・ノアが司会を担うものの、授賞式は無観客で開催し、式典の多くはバーチャルな演出になるという。これまでとは何から何まで様子の違う<第63回グラミー賞授賞式>だが、見どころ/注目ポイントはどういったところになるのか、WOWOWでの生中継で案内役を務めるジョン・カビラに話を聞いた。
▲ビヨンセ
▲デュア・リパ
▲テイラー・スウィフト
▲ポスト・マローン
──2021年のグラミー賞は、今までとは違うグラミー賞になりそうですね。
ジョン・カビラ:このコロナ禍にあって前代未聞ですよね。<第62回グラミー賞は>2020年1月26日(現地時間)に行われたんですが、アメリカで初めてのコロナ感染者が報告された6日後だったんです。トランプ元大統領が公衆衛生上の緊急事態を発表したのが1月末ぐらい。ちょうどギリギリというか、現在のようにコロナが世界を埋め尽くすというイメージがないタイミングだったんです。
──まさかこんな状況になるとは、思いもよらなかった頃ですね。
ジョン・カビラ:中国が武漢でのクラスター発生をWHOに報告したのが2019年末だったので、それからわずか数週間でのグラミー賞だったんですよね。間に合ってよかったと思います。
──昨年はビリー・アイリッシュが主要4部門制覇する歴史的な年でもありましたが、その翌年が無観客開催になるとは…。
▲ビリー・アイリッシュ
ジョン・カビラ:当然、公衆衛生上の安全確保が第一のポイントです。残念ながらロサンゼルスもかなりひどい感染状況になっていますし、ワクチン接種も一時滞ったりしているので、最大限の安全策を講じての開催となります。グラミーの持つスペクタクルな音楽への賛歌、アーティスト/ソングライター/インストルメンタリストのみなさんへの称え方ってどうなんだ?と普段にも増して世界の注目が集まることと思います。アメリカの音楽界/エンターテインメント界の底力、そしてアーティストのクリエイティビティが試されますよね。
──無観客開催とのことで、どうなるんでしょう。
ジョン・カビラ:一堂に会してステージで展開する華々しさ、スペクタクル感、ステージチェンジ/セットチェンジの妙、ステージングの妙で、まばゆい限りのエンタメの髄をワクワクしながら楽しませてもらっていたんですけれど、今回のステージ演出ってどうやるの?ってね。トレバー・ノアは初グラミーMCとしてデビューするわけですけど、どう仕切るの?生中継での演出のロジスティクスも気になるところで、逆にすべてが楽しみですね。
──会場に集結したそうそうたる現役のトップアーティストがステージ上のアーティストを賛美し、そのパフォーマンスに惜しみない拍手を送るというあのグラミーの空気感…ですよね。
ジョン・カビラ:それをどうするかですよ。例えばアデルが受賞したあと「私はビヨンセを心から愛している」と言い、ビヨンセが席に座りながら頷くというお互いのリスペクトが電気が流れるくらいの空気感で伝わっていく…それをどういった形で届けるのか、相当ハードルが高い演出になりますよね。だからずっと目が離せないと思います。
──必見ですね。あまりに特別なグラミー賞授賞式になりそうです。それにグラミーには、欧米音楽ビジネスやアーティスト活動をさまざまな角度から評価する側面を持っていますから、2020年という特別な年をどう捉えるか。
ジョン・カビラ:アルバムとは何かとか、ミックステープという存在もありますから、そういうところもちゃんと捉えてこれまで考えられていた領域を広げ現代化していくことが、グラミーに求められるところでしょうね。Black Lives Matter(人種差別抗議運動)もそうですし、大統領選挙の結果の出た年でも新しい政権が生まれた年でもありますから、そういった社会の動きをトレバー・ノアが司会でどれくらいギリギリのところを突いてくるのか、それとも突破しちゃうのか。そこらへんを僕はものすごく楽しみにしています。
──ノミネートされたアーティストのなかで、注目ポイントはいかがですか?
ジョン・カビラ:世代的にはブラック・ピューマズとか推したくなるんですけど、日頃愛聴しているとはいえないながらミーガン・ジー・スタリオンのぶっ飛ばし方はすごいですね。ポップカルチャーの中での立ち位置もすごいし、女性のセクシャリティに関して真正面から向き合って、もちろんブラックアメリカンのことも打ち出している。同時に公衆衛生の学科に通っていて衛生経営学の学位をとると言っている。子どもたちとは一緒に観られないようなものすごいビデオを出しながらも、ちゃんと大学は出ようねと言っているのが今のアメリカだなって感じます。女の子は女の子でいいし、セクシャリティを前面に打ち出していいし、でもみんな頭良く生きていこうよみたいな。「他人に好き勝手されることだけは許さない」みたいな感覚が最高ですよね。幼少から日本のアニメ好きというところも面白いですしね。
──曲や歌詞の素晴らしさはもとより、そこに根付く主義主張やポリシー・生き様こそが注目され評価につながる傾向がありますよね。
ジョン・カビラ:そういった傾向は無視できない状況にあります。昔はメディアブローカーみたいな人がいて、ラジオ局周りをしてテレビのトークショーをブッキングするというプロモーションの流れが連綿と続いていましたけど、今はSNS…インスタ、TikTokというメディアの民主化によって、レーベルPRに任せっきりというのはありえないし逆にダサいっていう。「私が私のメディアを持っている」というプレゼンスの強さは、HIP HOPの隆盛の裏にあるうねりとしては間違いないと思いますね。
──アーティストがアーティストたる所以は、そもそも主張があるから、ですもんね。
ジョン・カビラ:「What do you wanna say?」「何が言いたいの?」「なんでそういうの?」を説明できる。逆に突き詰めれば「好きだから」で押し切ってもいいんですけどね。
──今回、BTSのノミネーションも注目を集めています。
ジョン・カビラ:これは画期的なことですよね。アジア初ですし受賞ってことになれば歴史的なことです。「はいはいアジア系ね」っていうエンターテイメントの世界ではマージナルなところから、絶対メジャーにはなれない感をぶち抜いてきた。アメリカの普通の中産階級で肌の白い女の子もARMY(BTSのファンの総称)に参加していて、共和党のオクラホマ州での政治集会チケットを大挙登録して参加せず、会場をがらんどうにさせるぐらいのパワーを持ってしまった。Black Lives Matterに関しても発言をし寄付活動や募金活動もしている。すごいプレゼンスですよ。同じアジア人として一過性のものであってほしくないと思います。
──時間も距離も人種や文化の壁も一瞬で飛び越える今、デジタルネイティブの10代の子たちは肌感覚で世界を知る時代ですから、アメリカの女の子がBTSに憧れるのも自然なことなんですね。
▲BTS
ジョン・カビラ:本当にすごいことだと思います。K-POPの隆盛は韓国政府の肝入りの国家的事業ですから、ちゃんと税金を使って助成し徹底的に指導をして英語も学び歌もダンスも極める。逆に「え、本来それは日本の事務所が得意だったことじゃないの?」って思いつつも、ちょっとスケールが違ったみたいで脱帽ですよね。なまじ国内マーケットで成立、満足(?)している日本のビジネススタイルとモデルが、K-POPとの差を生み出したんでしょうね。
──<第63回グラミー賞授賞式>で日本の音楽業界の人が学ぶことや、注意喚起を受けるものなどはあるでしょうか。
ジョン・カビラ:当然、国の成り立ちとか民族性・歴史・文化・ポップカルチャーの違いがあるので、単純にグラミーを目標にすべきということではないですが、日本人のアーティストが出て行って世界的に認められてほしいですよね。こんなに素晴らしいアーティストが日本にはいるんだから。素晴らしいものは世界の人たちに楽しんでほしい。「日本にだってこんなにクリエティブな人たちがいるんだ」って肩に力を入れて証明するのではなく、サブスクでプレイリストを交換しあう子たちの間では、そのポテンショルはすごくありますよ。アメリカの大学生が「竹内まりあっていいよね」って会話をしたりしているんですから。
──確かに、1980年代日本歌謡曲も、海外で再評価されていますよね。
ジョン・カビラ:そういうのがTikTokとかで広がったりもする。「いいものはいいよね」っていうスタンスなんですよね。「K-POPはこんなに成功しているのに日本は情けないぞ」とかいうのは簡単だけど、そうじゃなくて「もっとシェアしたいよね」「じゃあシェアするためにはどうすればいいんだろう」っていうことを日本のエンタメ界は一緒に模索してほしい。もちろんグラミーを見れば、プロダクションレベルで刺激を受けると思いますし、どこかにヒントがあるかも知れない。憧憬の眼差しで見るのではなく「こういうやり方があるのか」「自分だったらこういうふうにやるかも知れない」という目で見ればいいと思います。
──3月15日(月)9時、WOWOWでの生中継が楽しみです。
ジョン・カビラ:前代未聞のグラミー…最初で最後であってほしいですね。どう見せてくれるんだろう、誰と誰がコラボするんだろう、コラボはステージに立つのかそれともCG、3D、ホログラムなのか?本当に楽しみですよね。ここでしか見られないコラボはどのようにするんだろう…楽しみです。当然テクニカルな問題・アクシデント、技術的な事故が起こる可能性もあるでしょうから、危機管理も大変でしょうけど。
──それも含めてのエンターテイメントということで、やはり楽しみです。コンサートでもトラブルなどはむしろ良き思い出になりますから(笑)。
ジョン・カビラ:「あれ見た?あれやばかったよね」っていう共有の価値、ありますよね。トラブルも楽しむくらいのマインドセットですね。オスカーでは『ラ・ラ・ランド』と『ムーンライト』の発表取り違えというすごいハプニングもありましたからね。
──2021年のグラミーは、色々な意味で特別なフラグが立った要注目のイベントのようです。
ジョン・カビラ:みなさん、相当ワクワクすると思います。Once in a life time(一生に一度)、最初で最後のグラミー賞授賞式になると思います。
写真◎Getty Images
取材・文◎烏丸哲也(JMN統括編集長)
▲第62回グラミー賞授賞式より Getty Images
■番組情報
3月15日(月) 午前9:00生中継 [WOWOWプライム][WOWOWオンデマンド] ※見逃し配信あり
出演者:ジョン・カビラ、ホラン千秋
『第63回グラミー賞授賞式』 ※字幕版
3月15日(月)夜10:00 [WOWOWプライム][WOWOWオンデマンド]
※見逃し配信あり
『第63回グラミー賞授賞式の見どころ』 ※無料放送
#1 3月11日(木)午前11:30 ほか [WOWOWライブ][WOWOWオンデマンド]
#2 3月13日(土)午前7:15 ほか [WOWOWライブ][WOWOWオンデマンド]
#3 3月13日(土)午前7:30 ほか [WOWOWライブ][WOWOWオンデマンド]
#4 3月13日(土)午前7:45 ほか [WOWOWライブ][WOWOWオンデマンド]
各番組、3月15日(月)までアーカイブ配信中