【インタビュー】我儘ラキア「かっこよければ正義じゃない?」
■“アイドル”をナメられたくない
──我儘ラキアはアイドルにおいて異端な存在だと思うのですが、あくまでアイドルとしてアイドルの固定観念を壊そうとしている印象があります。
星熊南巫:わたしは音楽をやるための手段としてアイドルの世界に飛び込んで。今の時代これだけいろんなアイドルがいても、ふわふわの服を着て可愛い曲を歌っていると思われることがすごく多くて、正直“アイドル”を脱ごうと思ったこともあるんです。でも“アイドル”として世に出た以上、“アイドル”は脱いでも脱いでもわたしのここ(※両手で頭と頬を押さえる)にいつもいる。それやったら、叩かれたとしても自分がアイドルの概念を一新するしかないなと思ったんです。ラキアがいろんな意外性を見せられてるのもアイドルやからやし、だから新しい歴史を残せると思う。未来が明るいんですよね。
──我儘ラキアが葛藤のなかで変化や新しいものを求め、それをメッセージとして発信しているのは、グループの背景が影響しているということですね。
MIRI:わたしもラキアに入る前からラップバトルに出てるんですけど、“アイドル”というだけで物を投げ込まれたり、当たり前のように“アイドルが来てんじゃねーよ”と言われるんです。偶像を見せるアイドル文化と、自分のリアルだけを吐くラップ文化って正反対だから“リアルも言えねえくせにここ来んな”と言われるたびに“アイドル”が邪魔だなって思ってきた。でもアイドルという職業を選んだのは自分だし、辞めようと思えばいつでも辞められるのに辞めなかったのはアイドルが好きだし、やりたいからだと思うんですよね。やっぱり“アイドル”にしか感じられない瞬間があるんです。
──それがアイドルの方々にとってのリアルですよね。
MIRI:お客さんと距離が近いのもそうだし、あれだけ熱狂的なファンがいてくれるってすごいことだと思うんです。だからよくクマとも“アイドル”をナメられたくないって話してます。“わたしはアイドルじゃないです”と言ってるアイドルも、アイドルに偏見を持っている人も、アイドルを下に見てる。それがめっちゃムカつくんです。アイドルはかっこよくて、すごく尊いものなんですよ。昔“アイドル”と言われていた人たちってそうじゃないですか。
──たしかに。山口百恵さんやピンク・レディーは、時代が変われどもまさに“かっこいい女性”だと思います。
MIRI:それがどんどん時代を経るごとに、トップを取る人たちの性質が変わっていって、それが固定観念となっていって──だったらラキアがトップを取ったら、今後のアイドルの可能性がどんどん広がると思うんです。
▲海羽凜
──豪華作家陣が参加した『WAGAMAMARAKIA』は、その大きな一手になりそうですね。
星熊南巫:普通にお客さんとしてライブを観に行ってたバンドの方々が提供してくださって、“我儘ラキアに曲を書いてやってもいいと思ってくれてるんや”ってめっちゃうれしかったし、希望が見えました。チャンスをもらったぶん“こいつらしょうもないな”と思われたくないから、全力でやりましたね。
海羽凜:正直信じられなかったです。ずっとファンだったバンドさんに提供をしていただけるなんて。
MIRI:わたしはNOISEMAKERさんをヘビロテしたり、TOTALFATさんのライブで暴れたり、Crystal Lakeさんのマーチ(※グッズ)を買ったりして全バンドしっかり通ってて。それこそ凜ちゃんと初めて喋った時、MY FIRST STORYさんの話をしたんですよ。
海羽凜:だから曲をもらった時に動悸がしてきて……。頑張らないと……!!と思う反面、自分が歌うなんてという不安や焦りが生まれて、なにより怖かったです。でもメンバーにアドバイスをもらいながらレコーディングできました。
川﨑怜奈:わたしはダンスボーカルグループが好きでアイドルの世界に入ったので、失礼なんですけど提供してくださった方々がどれだけすごい方々なのか正直わからなかったんです。でもレコーディング期間に入って、バンドマンの方々ならではの空気感や、本気でラキアの曲を作ってくださっていることを肌で感じて“こんな中途半端な気持ちじゃだめだ”と焦って。でもそういう環境に身を置いたからこそ、自分はこういう人間なんやなと気付くこともたくさんあったし、音楽をやっている以上もっと成長する必要があるとも思いました。さらにスイッチが入りました。
星熊南巫:最近は自分で作詞作曲をしていたんですけど、今回のミニアルバムでは作っていただいたメロディに歌詞を乗せていて。……ステージではかっこいい姿を見せるべきやと思ってるんですけど、内心ずっと不安で、ずっと自分に自信がなかったんです。でも今回提供してくださった方々に歌や歌詞を“いいね”と言ってもらって、ちょっと自信がついたというか。自分がこれまで積み重ねてきた結果が出せたアルバムになった気がしています。
──「Like The Stars」の歌詞には、そういう気持ちが反映されているのではないでしょうか。“我儘ラキアの星熊南巫”が主人公の曲なのかなと。
川﨑怜奈:わたしは基本ノーテンキなんですけど、この曲のレコーディングで全然うまく歌えなくて、ものすごく落ち込んで、めちゃくちゃ悩んで。その時にこの歌詞がすごく沁みてきたんです。この気持ちをそのまま歌に込めたらすごく歌いやすくて、英語の発音も先生と一緒に細かいところまで研究しました。
星熊南巫:これはこのアルバムのなかでいちばん最初に作った曲で。ちょっと陽気な感じがするし、みんなで口ずさめるような曲にしたかったんです。いつも「Ambivalent」みたいな暗い歌詞ばっかり書いちゃうから“星”って言葉を入れました(笑)。どんな状況になっても絶対に不安という感情はつきまとうけど、それでも挑戦し続けたいなって。わたしはあんまりメロコア通ってなかったので「Letting Go」は挑戦でしたね。
──「Letting Go」は今作のなかで唯一恋愛をテーマにした歌詞の楽曲です。
星熊南巫:外出自粛期間に作詞をしていたんですけど、まとまった期間に数曲分歌詞を書くってあんまりやったことがなくて。そんなときにわたしたちの共通の友人のシライが失恋したんですよ。だからこの曲はシライのことを書いてます(笑)。
──ラキアのリアルだけでなく、お友達シライさんのリアルまで書かれているとは(笑)。
MIRI:星熊からそう言われて、“わかった、ラップもシライの感じで書くわ”って(笑)。
川﨑怜奈:“シライ、いい恋しろよ!”という応援ソングですね(笑)。
海羽凜:シライの話をずっと聞いていたから、歌詞を読んだら涙が出てきて。ど真ん中にグサッと刺さりました。
星熊南巫:シライからも“歌詞読んでたらめっちゃ涙出てくるわ~!”って電話来て(笑)。そしたらシライ調子に乗り始めて“この続編があるんやけど次の新曲で使える?”とか言い出して(笑)。
一同:あはははは!
──(笑)。星熊さんがあまりメロコアを通っていなかったからこそ、“我儘ラキア初の恋愛ソング”や“歌詞の主人公は友達”という大胆な選択ができたのかもしれないですね。
川﨑怜奈:本当にそうだと思います。作家陣のみなさんが新しいところに連れてってくださったなと痛感してますね。
▲川﨑怜奈
星熊南巫:NOISEMAKERのAGさんとHIDEさんが提供してくださった「New World」は、NOISEMAKERさんの色を出しつつ、ラキアから新しいものを引き出してくれようとしているのが音からすごく伝わってきて。だからこそ冒険できましたね。「SURVIVE」では久し振りに自分以外の人が書いてくださった歌詞を歌ったんですけど、KTRさんは自分が避けていた直接的な日本語表現で作詞してくださって。
──「SURVIVE」はサウンドもメロディも歌詞も、我儘ラキアというグループの性質を明確に示した曲だと思いました。
星熊南巫:ほんまそうなんですよ。やったほうが伝わりやすいことは理解しつつも、敢えてやらんかったことを一流の方々が全部やってくださったのが「SURVIVE」で。難しくしてたことをクリアにクリアにしてもらったというか、ラキアの魅力をストレートにぶっ刺してくれる。ほんまに感謝ですね。歌詞も“自分が書いたんかな?”と思うくらい感情移入しまくりです。もうひとつの日本語詞の「One」は全部日本語詞で書くようにと言われて挑戦したんですけど、日本語で音として聴き心地が良くて意味も通じるものを書ける人たちってまじで天才やな……と思い知らされました。
──MIRIさんのラップは、星熊さんの歌詞を違う切り口で表現したものが多いですよね。
MIRI:音だけじゃインスピレーション湧かなくても、クマの歌詞を読んだら書きたいことがすぐ出てくることが多くて。だからラップを先に書くことはまずないんです。でも「Ambivalent」はクマが全然歌詞書けへんくて、まず大まかなイメージを教えてくれる?と頼んだら煙の画像と一緒に“コーヒー的なの書きたい”“もやもやした感じ”“こういう感じのラップを書いといて”とか言われて(笑)。まあおしゃれな感じかなー……と思って書いてたら、クマから届いた歌詞に“kill”とか入ってて(笑)。でも核心を突くような内容だったので、読んで秒でラップを書き上げましたね。
──いやあ、MIRIさんが加入してくださって本当に良かったですね。
星熊南巫:はい!(笑)
──いいお返事をいただきました(笑)。この4人になって大きな変革が起きている我儘ラキア、今後の活動に注目しています。
星熊南巫:本来は2020年、ライブ漬け制作漬けになる予定やったんです。でも今年は4年ぶりに日曜に家におる生活になって、もっと歌を追求したり、宅録やってみたり、やりたいと思っていたことを片っ端からやって、そこで身についたことがたくさんあるし、自分についてしっかり考え直すことができたし、『WAGAMAMARAKIA』にそれが残せたと思うんです。ライブでみんなと楽しめるのがいちばんやけど、それ以外の方法でも我儘ラキアの音楽や我儘ラキアという存在を時代にぶっ刺していきたいですね。
川﨑怜奈:自粛期間で改めて自分のキャラクターや、この4人のなかでどういう役割を担っているかに気付けて。だからこそライブを再開して“今日はアイドル感を出してみよう”とか“今日はダンスをバキバキにしてみよう”と試せるようになって、また自分のいろんな面に気付けたんです。2021年ではさらに新しいラキアを4人で見せていきたいですね。
海羽凜:2020年は自分がやるべきことを勉強した1年だったし、いろんなことがあっても前に進まなきゃいけないんだなって痛感しました。自分を見つめ直したことで、それまでの自分はまだまだふわふわしてたなというか、切羽詰まってなかったというか。気を引き締めないとな……と思いました。『WAGAMAMARAKIA』と一緒に新たなスタートに立って、この先を走っていきたいです。
MIRI:音楽関係のものが一気になくなっちゃった2020年に、なぜラキアは前に進めているかというと、外出自粛期間を経て全員がステップアップして“やっぱりラキアっていいよね”とチーム全員で辿り着けたからやと思うんです。いま3人の話のとおり、うちらは外出自粛期間を誰もマイナスに考えてなかった。この状況で誰も落ちなかったのがうちらの強みだし、だからこそ『WAGAMAMARAKIA』というアルバムが出来たし、今後なんでも乗り越えられるような気がしてます。来年はそんな我儘ラキアをもっといろんな人に知ってもらいたいですね。
取材・文◎沖さやこ
New Mini Album『WAGAMAMARAKIA』
■通常盤 CD+DVD ¥2,500+tax WW-1001
■バンドルセット CD+DVD+L / S T-Shirts ¥5,000+tax
[収録曲]
1. SURVIVE
Produced by Nob(MY FIRST STORY)
2. Letting Go
Produced by Kuboty(ex.TOTALFAT)
3. New World
Produced by HIDE/AG(NOISEMAKER)
4. One
Produced by Nob(MY FIRST STORY)
5. Like The Stars
Produced by Kuboty(ex.TOTALFAT)
6. Ambivalent
Produced by YD(Crystal Lake)
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