【インタビュー】TEARS OF TRAGEDY、新たな幕開けを宣言するアルバム『TRINITY』をリリース

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■何か攻撃力が足りないなと
■思うようになってきちゃって(笑)


――このアルバムに向けて最初にできた曲はどれになるんですか?

TORU:HAYAちゃんの「Innocent gram」かな?

HAYATO:あぁ、それも結構前だね。

TORU:このアルバムの中ではかなり初期からあるものですね。すでにライヴでもやってましたし。

――この曲が、アルバムを作る上で軸になったということはないですか?

TORU:特にそういうことはなかった(笑)。

HAYATO:入れ場所がなかったからここに滑り込んだ(笑)。
TORU:そういうことではないんですけど(笑)、『STATICE』を出した後に作った新曲だったんで、必然的にここに入ってきましたね。

――その後に曲が揃ってくる中で、今回のアルバムにおいて象徴的だなと思うような曲もありました?

HAYATO:うーん……担当する楽器によって変わってくるかもしれない。

TORU:でも、EPICAがキッカケでシンフォニック要素を強めたというのもあったりもしましたけど、HAYAちゃんが、3rdを踏まえて、もうちょっと強めの曲を久々に書いてみたらどうみたいなことを、僕に言ってきたんですよ。前のアルバムやその前のアルバムで、ちょっと長尺な曲とかはHAYAちゃんに任せてた部分があったんですよ。でも、ちょうど滾ってたのもあって、久々にちょっとやってみようかなと思ったのが、「時に鏡は嘘をつく」という曲で。それを作っている間、だんだん自分もそういうモードになってきたんですよね。だから、それまであったデモを聴き返したときに、何か攻撃力が足りないなと思うようになってきちゃって(笑)、全体がそういう方向に引っ張られたところもあると思います。「幽玄」や「Outsider」は明らかにそうですね。

――確かに激しいテイストが出ていますよね。

TORU:デジタル・サウンドという観点で言えば、「Anonymous」は仮タイトルが“近未来”だったんですよ。そこで近未来感をもっと出したいということで、HAYATOがいろいろと音を足してくれて、よりそういう世界観が出た、オリジナリティのある曲になったんじゃないかなと思いますね。メロスピと言えばメロスピですけど、今までにないような感じだと思いますし、じゃあ、J-ROCKにあるかというと、こういう曲はないと思うんですよ。そういう意味でも面白い曲になったなぁと思うんですよね。

――作曲段階でも近未来がテーマだったんですね。

HAYATO:そうですね。ピコピコしてるんですよね、何か近未来のイメージっていうと(笑)。昔、NHKの『みんなのうた』で「コンピューターおばあちゃん」って曲があって、それがピコピコしてたんですよ。YouTubeで聴き直したら、子供の頃に思ってたほどピコピコしてなかったんですけど(笑)。でも、「Anonymous」はコード進行がなかなか劇的になっているので、それに合わせて作ってみたら、上手くいったという。キレイだけど、ちょっと奇妙で規則性がない感じなんですよね。

HARUKA:私が「Anonymous」を最初に聴いたときのイメージは、90年代後半ぐらいのパソコンのスクリーンセーバーとかの映像ってわかります? ちょっとずつウニャウニャ動いてるみたいな。あれだったんですよ。だから、今の視点ではなく、何十年か前に戻ったような感覚で、その頃に思う未来ってこんな感じなんじゃないかなというイメージで歌詞を書いていきましたね。

――そう。“Anonymous(匿名)”というと、昨今ではとかくインターネットの世界の話題になりますが、歌詞を追っていくと、<ボタン一つ>といった、インターネットではなさそうな言い回しが出てきますよね。

HAYATO:ボタンということで、一昔前な感じはあるよね。

HARUKA:そんな感じ。どっちかというと、パソコンというよりは、携帯電話みたいなイメージかもしれない。でも、電話がどうとか、具体的な言葉はあまり出したくないんですよ。いろいろ想像して欲しいなというところはありますね。


――でも、その世界に対して思うところが常々あったということですよね。

HARUKA:そうですね……でも、この曲に関してはですけど、自分のことや自分の思っていることではなくて、世の中にこういう人もいるんじゃないかなとか、想像のほうが大きいかもしれないですね。

――その意味では、「時に鏡は嘘をつく」は、より自分の思いや心情が出ているのかなと思いますが。

HARUKA:この曲の歌詞はTORUとの共作なんですよ。1番がTORU、2番が私みたいな感じなんですけど、曲がTORUから上がってきたときに、この曲は歌詞を書いてるから、ちょっと待っててみたいな話があって。でも、だいぶ待たされたので(笑)、私もこんなイメージかなみたいなものを作っておいてしまったんですね。ただ、その後にTORUから送られてきた歌詞が、自分が思っていたのと全然違ったんですよ。これは自分のイメージを壊して、そこに合わせに行くのか、どうしようかなと思ってたときに、1番と2番でまったく別の人が作って歌ってる感じも面白いんじゃないかなと思ったんですね。そこであえて、二人のイメージをそのままにして、一つの曲なんですけど、二人が歌っているような感覚で作ったんですね。

――なるほど。だから、鏡だけれど、写し絵になっていないといった意味を持つ、このタイトルも導き出されたわけですね。

HARUKA:そうです。まったく別々のものが映っているということですね。

――TORUくんはこの曲に関しては、歌詞まで書きたかったわけですよね?

TORU:いや、案外そうじゃないんですよ(笑)。とにもかくにも僕は音が先なんですね。何かテーマや思いに沿って曲を書くとかではないんです。今までもたまに少しだけ書いたりはしてたんですけど、そうすると(HARUKAが)助かるみたいなときもあったので、今回はこの曲の雰囲気に合うように、自分なりに書いてみた感じですね。

――ただ、いざ書くとなると、必然的にいろんなものを見つめ直したり、考え直したりしますよね。

TORU:そうですね。まぁ、4年間いろいろあったので、それを思い返したりしたかもしれないです。やっと動き出せるというところもありましたので。短いですけど、そんな苦悩が込められているかもしれないですね。

――一方のHARUKAさんはどのように自分の歌詞を書いていったんですか?

HARUKA:「時に鏡は嘘をつく」って、このアルバムの中で一番シンフォニック、クラシカルな感じですけど、どちらかというと攻撃的な曲だと思うので、それをイメージして、何か反抗的な態度を取ってみました(笑)。

――何かの物語をモチーフにしたような内容にも思えますよね。

HARUKA:具体的なしっかりしたストーリーがあるわけではなく、雨の中で、裸足で、行く宛もなくいる女の子がいて、その子がどう思っているかなぁみたいな。そういう映像から来ているかもしれません。

――<奥深き傷を負った心臓に>という一節がありますが、ここで“心臓”という言葉を使ったのはなぜだったんですか?

HARUKA:“心”と書くとちょっと柔らかいですけど、“心臓”という言葉を使うと、ドキッとする感じがするんですよね。歌詞を書く場合、ある程度、音に合わせて言葉をはめ込まなきゃいけないので、同じような意味の類語を調べたりして言葉を選ぶこともあるんですけど、ここは特に意識したわけではなく、スラッと出来上がった感じではありますね。

――言葉的にキレイに響かせるのであれば“心”だったと思うんですが、“心臓”にすることで、毒々しさなども表れますよね。ここは曲の強さにも関係していると思いますが。

HARUKA:そうですね。この曲だからこそだと思います。

――「時に鏡は嘘をつく」は間奏も凝っていますよね。

TORU:僕、DREAM THEATERとかがわかりやすくて好きなんですけど、演奏の難しさではなく、リズムの面白さとかを追究してて。あとは低音のピアノの音が好きなので、そういうものも入れたいなと思ってました。その後に、HAYAちゃんがストリングスで下から上がってくる、迫ってくるようなアレンジをしてくれて。あれはHAYAちゃんの功績が大きいんじゃないですかね。

HAYATO:ストリングス・アレンジは一番力が入っているかもしれないですね。


――イントロダクションの「Trinity」に導かれる実質的なオープニング・トラック「Nonsite」は、1曲目らしい開けた印象を与えつつ、いろんな思いも込められていそうですね。

TORU:そうですね。毎回、試行錯誤はつきものですけど、すでにあった曲で、この位置に入る曲がないような気がしてたんですよ。でも、この曲を作っていくうちに、その可能性があるなとだんだん思うようになり、サビができたときに、オープニングに相応しい曲がやっとできたという感触があって。自分たちらしさもありつつ。でも、意外と、アルバムの最初の曲で、このテンポでツーバスを連打するみたいなのって、1stのとき以来なんですよね。そういう曲はあったにせよ、オープニングに持ってくるには定番すぎるかなと思ってて(笑)。でも、今回は、結構強めに行きたいという思いがありましたからね。

HAYATO:ツーバス自体は、3rdでもあまり踏んでなかったよね。だから、「おとなしくなった」みたいなことを(リスナーから)言われたんですよ(笑)。

TORU:俺はHAYAちゃんにそれをすごく言われましたね(笑)。

HAYATO:TORUさんが丸くなってきちゃったなぁと(笑)。

TORU:いや、その頃、メタルにどんどん興味がなくなっていったというのも事実で。勉強したいと思う音楽がメタルじゃなかったんですよね。だから、必然的に曲にも攻撃力というか、強さを求めてなかったんですよ。とにかく色彩豊かにしたくて。とかくメタルって、黒とか灰色とか、色のないほうに行きがちですけど、自分が作る音楽は、メタルだろうとなんだろうと、とにかく色彩豊かにしたい。そういう思いがあって3rdはできたんですよ。

――そこで強さも前面に押し出した本作ですが、「Nonsite」は意表を突く強さでしたね。ドラマーにYU-TOくん(THOUSAND EYES、UNDEAD CORPORATION)を起用しているのも、その表れのように思いましたが。

TORU:それはあんまり関係ないかな(笑)。ドラムは細かいところまでデモの段階で自分たちでも詰めていくので。

――ええ。つまり、それを叩ける人を選んでいるということです。

TORU:あ、そうですね。今まではテクニック的な限界を気にして書いてたところもあったんですよ。でも、今回はこの3人で作ると決めて、あとはできる人にお願いしようという考えだったので、曲作りの時点でこのレベルにしたというのは間違いなくありますね。

――特にドラミングに激しさが出ていると思うんです。それはアルバムを聴き進めていく中で、一つの方向性として基盤にあったんだろうなと感じましたね。

TORU:手加減しないって感じですよね(笑)。

HAYATO:YU-TOくんがやってくれるというのであれば、じゃあ、これぐらいやっちゃおうみたいな(笑)。

TORU:その中でも、自分的にはJ-ROCK、J-POPの要素が必然的に出ちゃうので、その辺の激しさとのバランスも上手くいったんじゃないかなと思ってるんですね。

――ポップさと激しさという両極をどう振り切らせるか、その一つの結論がこの曲なんだろうなと思いました。

HARUKA:「Nonsite」はアルバムの最初に相応しい曲だなと思いましたね。当然、MVも撮るだろうし、歌詞に関しても、さっきのTORUさんの話じゃないですけど、この4年間の思いなどの言葉はこの曲に全部集約したんですね。それでいて、TEARS OF TRAGEDYを好きでいてくれる人たちの期待に添うような、正統派でいこうって感じで歌詞を書いて歌って。

――<新しい光へと渡れ>というフレーズは、これはもう自分たちとファンの人たちということでしょうね。

HARUKA:3人になったので、またちょっと違うステージに行っているのかなぁという意味を込めたところですね。

――HAYATOくんは歌詞を見ました?

HAYATO:ちゃんと見てないです(笑)。

HARUKA:ホントに歌詞を見ない人たちなので(笑)。

HAYATO:自分の場合は音で色をイメージするというか。たとえば、「時に鏡は嘘をつく」は真っ茶色なんですよ。オルガンとか、室内楽みたいな……木の色ですよね。「Nonsite」は……青いソーダみたいな色ですかね。たとえば、イントロでシュワッとしている音色が入っているのも、そういうイメージが合うかなぁと思ったからなんですよ。しかも、まず最初にみんなが聴く曲だと思うので、そこでいかにデジタルな要素を入れるかという今回の自分のテーマをわかってもらえればなと。だから曲中はそんなに入ってないんですよね。

TORU:でも、いいアクセントになったよね。


▲TORU(g)

――「幽玄」という曲もまた突進するような勢いに溢れていますね。

TORU:どんどんBPMが速くなっていったんですよ。デモの段階ではもっと遅くて、HAYAちゃんにもっと速くしたらいいんじゃないかと言われて上げて、俺も確かにもっと速いほうがいいなと思ってさらに上げて(笑)。やっぱり、3rdの後に書いた曲って、まだまったりしてた期間が長かったんで、そんなに激しい曲を自分自身も求めてなかったところがあるんですよね。なので、一応、そういうリフから書いた曲なんですけど、やっていくうちに自分自身もテンションが上がっていって、強い方向に最終的に向かっていって。この曲と「Outsider」とかはクワイアをふんだんに使ってみたり……クワイアがしょぼくならないようにというのは課題だったんですよ。

HAYATO:この曲に関しては、デジタル感はなしでいってますね。

――歌詞のテーマ的にはどんなものがありました?

HARUKA:私はネタ探しに図書館とかに行ったりするんですけど、たまたま世界遺産に関する資料を手に取ったんですね。それをペラペラめくっていて目についたのが、ヨルダンにあるペトラという世界遺産だったんです。その画がすごくカッコよくて、この曲に合ってるんじゃないかと思って、それをテーマにして書きました。

――ペトラの映像などを見ながら聴くと、より味わい深く響きそうですね。

HARUKA:そうですね。ただ、そこで何があったとか、そういうことまで調べているわけではないんです。そこまでやっちゃうと、ただそれだけの話になっってしまいがちなので。だからタイトルもペトラにしなかったですし、そこでこういうことが起こっていたんじゃないかなみたいな私の想像を書いたんですね。

――それを“幽玄”というタイトルしたのが興味深いですね。

HARUKA:あぁ。幻想的な雰囲気の言葉にしたかったんですね。あまり直接的な意味にはしたくないんです、基本的には。なので、いいところを突いてたのが幽玄という言葉だったということですね。ちょっと曖昧じゃないですか。

TORU:確かに明確に何かを示しているわけではない。

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