【インタビュー】TEARS OF TRAGEDY、新たな幕開けを宣言するアルバム『TRINITY』をリリース
東京を拠点に活動してきたTEARS OF TRAGEDYが、4枚目のアルバム『TRINITY』を完成させた。タイトルに冠された言葉が意味するものは“三位一体”。今回の制作に向けて、バンドはHARUKA(vo)、TORU(g)、HAYATO(key)という初期の3人編成へと戻った。彼らは何を思い、どんな未来を見据えているのか。自身が影響を受けてきた様々な音楽性を巧みなバランス感覚で融合させた、各方面から「最高傑作」との声が寄せられる本作について、メンバーに話を聞いた。
■自分たちが好きだったものを
■もっと素直に出してもいいんじゃないかなって
――今回のアルバムの制作に当たって、活動初期の3人の体制に戻りましたよね。その過程においては、TEARS OF TRAGEDYはどうあるべきなのか、どうありたいのか、改めて考える機会もあったと思うんです。今、TEARS OF TRAGEDYはどんなバンドなのか、自分たちの言葉ではどのように説明できるでしょう?
TORU:一応、メタルというジャンルに分類はされると思うんですね。ただ、自分たちの世代も関係あるんですけど、90年代ぐらいが青春だったので、その辺の時代のJ-ROCK、J-POPの要素を、こんなにも上手くメタルに混ぜたのは自分たちだけだという自負はあります。意図的にそうしようと思っていたわけではないんですけど、結果的に他のアーティストとの差別化もできてると思うんですよ。昔はそういう要素を出さないようにしてたんです。むしろ、海外バンドと同じようなことをして彼らに並びたかったので。でも、音楽なんてもっと自由にやっていいはずなのに、逆に縛られているように思えてきて。自分たちが好きだったものを、もっと素直に出してもいいんじゃないかなって。
――1stアルバム『ELUSIVE MOMENT』(2011年)をリリースした頃には、そういう考えに至っていたんですか?
TORU:いや、その頃はまだなってないですね。2nd(『Continuation Of The Dream』/2013年)の後かなぁ。
HAYATO:どんどん制限はなくなってきてるよね。
TORU:ありがちだと思うんですよ、「メタルバンドはこうあるべきだ」みたいなのって。よくも悪くもフォーマットが決まっていると言えば決まっているので、ただそれに従っていると単なる焼き直しになってしまう。そういうのは避けたいですし、自分たちらしくあるために、ひたすらオリジナリティを追究したいと思っているんですよね。だからこそ、いろいろ勉強して、研究して、挑戦して、試行錯誤を繰り返してきて。
――基盤はヘヴィ・メタルにあるということですよね。
TORU:それはもう抜けないところではありますよね(笑)。そんなにメタル・バンドということにこだわっているわけではないんですけど、長く聴いた、一番影響を受けたジャンルではありますし、血となり肉となっているのはありますよね。もともと俺はSIAM SHADEが好きで、HAYATOはX(X JAPAN)がすごく好きでしたし。
HAYATO:そういった影響はどこかで出てきちゃうんですよね。もっと遡ると、入口はMALICE MIZERだったんですよ。「月下の夜想曲」を聴いて、「何だこれは!?」と思って。シンフォニックな要素はそこですよね。あとはL’Arc~en~Cielとか。
TORU:L'Arc~en~Cielは共通するところかもしれない。
――SIAM SHADEにしろ、L'Arc~en~Cielにしろ、MALICE MIZERにしろ、ハード・ロック/ヘヴィ・メタルを聴いて育ってきた人たちですよね。
TORU:そうなんですよね。通ってないわけがないという。みんなDEAD ENDが好きだったりとかあるじゃないですか。
HARUKA:TEARS OF TRAGEDYのよさは、そういったメタルのサウンドに自分みたいな、いわゆるポップスっぽい普通のヴォーカルが乗るものなので、私もそういうふうに歌わなきゃいけない、それを全うしなきゃいけない……そう思ってたわけじゃないんですけど、3枚目(『STATICE』/2016年)ぐらいまでは、それが当たり前だと思ってたんですね。でも、今回のアルバムでは、ちょっと遊びに入ったというか、今までと違う、いろんな自分も出してみたいなと思って取り組んだところがありますね。
――何かキッカケがあったんですか?
HARUKA:毎年出ているカヴァー・イヴェントみたいなのがあるんですけど、去年の夏はたまたま椎名林檎さんの曲だったんですね。ただ、もともとがすごく癖のある人なので、そっちに寄せるよりは自分の歌い方で歌ったほうが個性が出るんじゃないかなと思って、リハーサルで歌ってみたんです。そしたら、あまりにつまらなすぎちゃって、自分も周りもがっかりしちゃったんですね。そのとき、このままじゃいけないなと思って、本物に寄せるわけじゃないんですけど、わざと癖をつけて歌ってみたら、そっちのほうがよかったんです。何でこれを今までやらなかったんだろうって思うぐらい。今回はそういった歌い方にも挑戦したところがありますし、そこが前回までとは違うかなと思います。
――そのヴォーカルの話も含めて、より自由に自分たちらしさを押し出す、表現することが、今回の『TRINITY』における大きなテーマだったわけですね。
TORU:変な話ですけど、3rdアルバムを作る前から4枚目のことを考えてて、これが出来上がったら、きっとこの先にどう自分たちが舵を切るか、進化するかが見えてくるだろうなと思ってたんですね。実際に『STATICE』をリリースした後は、予想していたとおりに、次はこういくのかなぁと何となく思ってたんですけど、意外とそうならなかったんですよ。(前作から今作までの)期間が空いたというのもあったり、EPICAの『進撃の巨人』のカヴァー・アルバム(『EPICA VS attack on titan songs』/2017年)を聴いたときに、久しぶりにシンフォニック・メタルですごく感動したんですよ。それがキッカケとなって、血が滾ったというか、今回はもうちょっと激しめにいってもいいかなと思うようになったのはありましたね。なので、ただ自由にというよりは、ちょっとハードにしたいという思いが結構ありました。
――実際にハードな音にしてきたなという第一印象を抱きますからね。
HAYATO:自分の場合は、たとえばトランス系とか、デジタル・サウンド的な要素をいろんな曲に入れていけたらいいなというアイディアはウッスラとあって。そしたら結構、そういうのが合うんですよね、今回の曲は。それに合わせて作った曲もあるんですけど。その点は、今までと与える印象が違うと思うんですよ。ピアノとか、ストリングスとか、今まで大事に使ってきたものを主軸として残してはいるんで、その辺がどう出るか、お客さんの反応が楽しみですけどね(笑)。
――トランス系などの要素を入れてみたいと思う理由もあったんですか?
HAYATO:多分、今までやってなかったというのもあるし、実はやり方がよくわからなかったんですよ。機械が苦手で敬遠してたというか……お年寄りがケータイ持たないみたいな(笑)。でも、やってみたら、思っていた以上に簡単で、ちょこちょこっとやるだけで、ものすごい広がりが得られたんですよね。そこで味をしめたら楽しくなってきて。ただ、バンド・サウンドに馴染ませるうえでは、また話は別になるので、そこはかなり試行錯誤もあったんですけどね。
HARUKA:今の話は「クロノメトリー」のことを言ってるんですよ。もともと私は4つ打ちみたいな曲がすごく好きなので、こういうのにチャレンジしてみたらどうですかと、リクエストをした曲だったんですね。多分、今まで通りの曲は言わなくても勝手に作ると思うので(笑)、そうではない、TEARS OF TRAGEDYはこういうのもできるんだなと思ってもらえるような曲を書いて欲しいなと思って。
HAYATO:ただ、それキッカケで作り始めた曲ではない。何がキッカケだったのかは覚えてないけど(笑)、そう言われたときには、もうすでにイントロがあったの。じゃあ、このアイディアを元にして、とことんまでやってみようと思ったんですよね。だから、たとえば、間奏の部分でもトランスっぽい音色がガンガン出てくるんですよ。
▲HARUKA(vo)
――でも、90年代J-POPを通っている世代からすると、小室哲哉イズムと言いますか、むしろ馴染みがあるような音ですよね。
HAYATO:通ってますからね、あの辺の時代を。小室哲哉は結構好きでしたね。globeとかも昔は聴いてましたね。
HARUKA:どうしても懐かしくなっちゃうんだよ。
TORU:ユーロビートも好きだったもんね。
HAYATO:ユーロビートはすごい好きだった。でもあのケバい感じっていうんですか?(笑) ああいう感じはあまり出したくないなとずっと思ってたんですよ。でも、「クロノメトリー」に関しては、そういう雰囲気も最終的には入れちゃいましたけど。あの当時は『DANCEMANIA』とか『SUPER EUROBEAT』とかが流行ってて、「Night Of Fire」とかダンス・ミュージックをよく耳にしてたんですよね。Folder5とかもめちゃめちゃユーロビートだったし。だからちょっとデジタル・サウンドを入れたんだけど、それにしても古臭いみたいな(笑)。似ているようで、ちょっと違うんですよね、使ってる音色の系統というか。
HARUKA:メロディ・ラインが90年代だから、絶対に今っぽくならないし……。
TORU:音色探しの旅をしながら、わりと新しめのものを導入したりしたんですけど、これはちょっと違うみたいな感じになるんですよね(笑)。
HAYATO:だから好きなんですよ、あの2000年問題の辺りの音が(笑)。とはいえ、まだ改良の余地があるんで、成長の伸び代があると思ってます、自分では(笑)。
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