【鼎談】“CRAZY”COOL-JOE × SAKURA × RIKIJIが語る、恒例イベントとDEAD END「あいつ自身が楽しみにしてたはず」
■俺はあいつのことを尊敬してた部分もあるし
■面白い混ざり方をしてたんちゃうかと
──選曲の幅も広がりそうですよね。RIKIJIさんは何か、提案しようと考えていることはありますか?
RIKIJI:これは選曲云々ではないんですけど、この前、JOEさんとSAKURAと3人でミーティングした時にも出たのは、どうしてもやっぱりお客さんはそこにDEAD ENDの要素を期待するんじゃないだろうか、ということで。状況も状況だけに……。YOUさんの追悼イベントというわけではないんだけど、リスペクトを込めたライヴではあるわけで、そこでいかにお客さんの期待に応えるか、そこで自分がいかにサポートするか、という部分がこれまで以上に大きくなってくると思うんです。
──ええ。足立さんの急逝を経ている今回の場合はどうしても、特別な意味が伴ってくることになります。なにしろ本来ならば今年もその場にいるはずだった彼が……。
JOE:うん。居なくなってしまったわけだからね。なんかね、正直、いまだに実感がないというか、今もまだ居てるような感覚がすごくある。急にYOUちゃんから電話がかかってきそうな気もするくらいだしね。実際……あれは亡くなる1ヵ月くらい前のことやったのかな。電話で喋ってて、その時にこの企画のことを伝えて。コロナのこともあって状況も状況やから、「もし無理やったらええよ」というようなことを言ったんよ。ほんなら「全然いいよ。やるよ~」とか言ってきて。「空けとくよ~」って言ってた。それが最後やったからね。お葬式の時にも会いに行ってきたけど、いつもみたいに笑顔で眠ってるようにしか見えへんかった。だから「こいつ、またふざけとんのか」と思ったくらいで(笑)。ただ、そういう経緯があるにはあるけど、このイベントをやるにあたって「YOUちゃんのために」という考え方、打ち出し方はしたくないな、というのがあって。俺は、それは嫌なのね。
──当然のように意識はするし、追悼の意が伴うものではあるけども、それを掲げながらのものにはしたくない、ということですか?
JOE:うん。だから観に来てくれる人も、今回参加してくれる人も……それこそ前回、YOUちゃんと一緒にやった人間も多数いるわけだけど、個人個人、自分のなかで思ってやってくれればいいかな、と思ってる。
JOE:まあ、書かれへんこともたくさんあるけどね(笑)。でも、近いところで言うと、フランスに行った時のことはすごく憶えてる。ジャパンなんたらフェス、みたいなので行ったんだけど、若いヴィジュアル系の子らも一緒で (2014年にパリで開催された<JAPAN MUSIC FEST.>。DEAD ENDの他に、SADIE、SUGも出演)。滞在期間はそんなになかったんやけども、現地に着いたのが結構遅くて、夜中近かったのかな。もうどこの店も開いてなくて、マクド(ナルド)以外はケバブ屋ぐらいしかやってなかったから、そこにサウンドウィッチみたいなのと水を買いに行ったりとか、ちょっと観光もしてみたりとか。あの時はそんな具合にYOUちゃんと一緒に行動してたな。
──ギタリストとしての彼には語り継がれてきた伝説めいた話がいくつかありますよね。ろくに曲を知らないままDEAD ENDのツアーに参加することになって、移動中に機材車のなかで曲を覚えたとか、『DEAD LINE』のギター・ソロも各曲の全体像を知らないまま一発で録ったとか。ただ、どういう人だったか、ということはあまり広く知られていないようにも思うんです。
JOE:そうやね。でも……なんやろ。自分のギター・スタイルというのをすごく持ってるやつやったとは思う。最初に会った時からそういうイメージはすごくあったよ。あと、こだわりがすごく強い。ケーブル1本にしてもそうやし、弦にしてもそうやし。まあ、変な意味じゃなしにおたくに近いというか。ギターにしても、どこから情報を引っ張ってくるのか知らんけども、常になんか新しいのを試してたよね。俺が自分で作ったエフェクターボードにあれこれ並べてたら、「これ、何?」とか聞いてきたり。知らへんものがあると知りたがるというか、とにかくホンマにおたくやねん、あいつ。
──そんな彼が音楽シーンから離れていた時期が長くあったということ自体が何かの間違いのようにも思えたものです。とはいえ当時は、聴覚に問題を抱えていたりもしたようですが。
JOE:うん、そうそう。だから戻ってこれたのは良かったし、まだまだやりたいこと、いっぱいあったんちゃうかなと思うけどね。
──音楽的な意味でのJOEさんとの相性についてはどう考えていましたか? 個性がバラバラのDEAD ENDにあって、JOEさんと彼はある意味、両極のようにも見えるところがあったわけですが。とても音楽的に溶け合うようには見えなかった、というか。
JOE:そうかもね。ただ、完全に溶け合わなかったとしても、マーブル状にはなるよね。お互い重なるところがある。そういうふうになってたとは思うな。個人個人の色が混ざってひとつの色になるんじゃなくて、いろんな色の層があるというか。そういう面白いマーブルになってた、ということなんちゃうかな。それぞれに考えがあったのかなかったのかはともかく(笑)、そこで教科書通りじゃない混ざり方をしてたというか。
──ロックンローラー然としたJOEさんと、泣きのギターのYOUさん、というイメージが強かったと思うんです。お互いのなかでいちばん重なっていたと思えるのはどんな部分でしたか?
JOE:音楽的な意味では、やっぱりメロディアスな部分かなあ。まあ、様式美というのとはちょっと違うように思うけど、なんか耳に残るものをいつも弾いてたよね。そこで……あいつが俺のことをどう思ってたんかは知らんけども、俺はあいつのことを尊敬してた部分もあるし。多分、そういう気持ちがお互いに少なからずあったからこそ、面白い混ざり方をしてたんちゃうかという気がするけどね。溶け合いきらないからこその面白さのある感じでね。
RIKIJI:俺は……正直なところ個人レベルでの付き合いがあったわけじゃないんで、人間的なところは残念ながらよく知らないんですけど、前回のイベントの打ち上げの時に、結構話させていただいて。ずっとファンだった、と伝えたら「ああ、そうなんや」みたいな。そこでデビュー当時のエピソードとか聞かせていただいたことが俺にとってはいちばんの想い出ですね。あと、ガキの頃の話で言うと、当時は金もなかったからライヴにもなかなか行けなくて、俺、埼玉会館でのイベントの時にバックステージ・プロジェクトのバイトをやって、それでちゃっかりDEAD ENDを観たことがあったんです。で、YOUさんの場合、ギター・ソロが毎回結構違うじゃないですか。ガキの頃の俺はそこにガッカリさせられたんです。外タレとかでも原曲通りに弾く人が多いなかで、YOUさんはその時によってソロへの入り方から違ってたりするし、半拍ずらしたりとかもするし。そういうことについて、その打ち上げの時に文句を言わせてもらったりもしました(笑)。
──音源上のソロが絶対的な正解だと思われても困る、とか言ってませんでしたか?
RIKIJI:まさに! なんでわかるんすか(笑)? 「どれもこれもその時のノリで弾いたものだから」みたいなこと言われましたよ。今の自分にはもちろんそれもわかるんです。ただ、やっぱり今さらながら思うのは、いかにあの当時のDEAD ENDの作品のクオリティが高かったか、ということなんです。まだ20代前半だったわけじゃないですか。今の俺からすれば、まだまだガキの年齢ってことになるわけです。そういう世代の人たちが作ったものとは思えないクオリティと、楽曲センスと……。変な話、当時は普通に聴かせてもらってたけど、むしろ今のほうが奇跡みたいなバンドだったんだな、と思えるというか。
──しかも当時は、現在のようなテクノロジーの恩恵もなかったわけですしね。
RIKIJI:そうなんですよ。まだレコーディングもデジタルじゃなかったわけで。そこはプロデューサーの岡野(ハジメ)さんのすごさというか、岡野さんとの相乗効果というのもあったんだろうとは思うけど、どちらにしても当時のDEAD ENDのアルバムは20代のガキが作る次元のものではないわけで。そういう意味では、俺のなかではある意味、ガンズ(・アンド・ローゼズ)とかに近いものがあるんですよね。奇跡が重ならないと、ああいうメンツは集まらないというか。
──ちなみにメジャー・デビューの年という意味では、DEAD ENDとガンズは同期(1987年)だったりもするんですよね。その時代にその年齢でそんなにすごいものを作っていたなんて、という意味では、それこそ70年代の先駆者たちについても同じようなところがありますよね? それこそレッド・ツェッペリンにしても、クイーンにしても。
JOE:うん、そうやね。
──不思議なもので、ある程度、年を取ってからそういうふうに言われるようなことが増えてきてるんじゃないですか? JOEさんの側からすれば。
JOE:うん。「当時、あの若さで」とかね(笑)。当時、自分たちではそんなん全然考えてなかったし、そんなふうに言ってもらえることもなかったように思うけど(笑)。
RIKIJI:自分がその年齢の頃にやってたこと、その頃に作ってたものと聴き比べると、やっぱり全然勝てないんですよ。演奏のクオリティがやっぱりDEAD ENDは抜群だったなと思う。
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