【インタビュー】AK-69、『LIVE : live』完成「自分の人生を表すようなアルバムにしたかった」
■俺が最前線に立ってる状態でそれをやるのは
■名古屋のヒップホップの文脈としてすごくいい
──ここから、気になる曲を1曲ずつ掘っていきますけど。「Bussin’」で、セルフサンプリングをやりましたね。あの「Ding Ding Dong ~心の鐘~」のビートを。
AK-69:この曲には名古屋の文脈があって、¥ellow Bucksが『ラップスタア誕生!』で出てきた時に、名古屋のヒップホップへのリスペクトを歌詞に入れてて、“出会いは「Ding Ding Dong」”だって歌ってる。名古屋の有望株は長年待たれていて、やっと出てきたスターになりうるラッパーのあいつがそれを歌って優勝して、しかも自分で「ヤングトウカイテイオー」って、トコナメ(TOKONA-X)のことを意識して言ってる。Def Jamの文脈としても、トコナメがいて、俺がDef Jamの看板をまた蘇らせて、俺からまた続きうるラッパーが出てきて、すべてが繋がってるんですよ。俺のターニングポイントにもなった「Ding Ding Dong~心の鐘~」は、あいつが小学校の時に初めて聴いた日本語ラップで、それを今蘇らせて一緒にやる、まだ俺が最前線に立ってる状態でそれをやるのは、名古屋のヒップホップの文脈としてすごくいいなと。
──アツいですよね。
AK-69:それをDJ RYOWがプロデュースしてくれた。RYOWが“「Ding Ding Dong」のネタを使いましょう”って言って、“それだ”と思ってBUCKSを呼んで。大抜擢になるけど、これは本当に意味のある曲になると思ったし、ただのイケてる若手をフックアップしてるだけじゃなくて、ストーリーを全部表せるから“これはヤバいね”って。
──名古屋文脈で言うと、「B-Boy Stance feat. IO」は刃頭のトラック、そしてスクラッチも。
AK-69:刃頭くんに頼みたいというのはけっこう前からあって、トラックをちょこちょこもらってて、“これだ”というものは定めてたんですけど。こういうサンプリングサウンドはあんまり俺の中になくて、今まで1〜2曲しかなかったのかな。Jay-Zの『アメリカン・ギャングスター』とかをやってるプロデューサーと一緒にやったやつぐらいかな。あと、WATARAIくんとやったやつと。で、このトラックでいこうと思った時に、往年のKANDYTOWNの感じが聴こえてきて、“これはIOだな”と思ったんで、頼んだんですよ。あいつも今はオートチューン使ってメロディっぽいことやったりしてるから、「“久しぶりにこういうの振られた”みたいな、“ラップが試される曲来た”みたいな感じだった」って言ってましたけど。IOも、俺とサシでやりたいと言ってくれてるのを聞いてたし、Def Jamっていう繋がりもあるし、頼んだらうまくハマったって感じですね。ミュージックビデオもめちゃカッコいいんで、ぜひ観てください。
──その一個前の「Speedin’ feat. MC TYSON, SWAY, R-指定」というのも、まあとんでもなく濃い3人が大集合してる。
AK-69:集まりそうにない3人ですね(笑)。これも俺の声掛けだからこそ成立したのかなと。大阪ストリートのTYSONと、華やかなマスに出ていけるSWAYと、今すごい来てるR-指定と。「Speedin’」は、マイクリレーだなって初めから決めてて、RYOWとも相談して、予定調和なメンツはやめようと。3人を並べた時に“これは面白いね”ってなるメンツじゃないと嫌だなと思って、考えて、ハマったのがこのメンツでした。
──そうやって、ド頭から5曲目まではこれまでの生き方、生き様のメッセージを見せる曲がずらりと並んで。真ん中あたりで少し落とす感じで、「もしよければ」で爆笑しましたけどね(笑)。これ最高です。
AK-69:これはね、福岡の先輩が、煽る時に“もしよければ”っていうコールで煽るので、俺たちの中では流行語だったんですよ。すげぇキャッチ―で、飲みの席で使える煽りなんですよ。それを俺が東京に持ってきて、東京の先輩方も使うようになって、ボトルキープのハッシュタグも“#もしよければ”って書いてあるぐらい浸透してたんで、これ歌にしたほうがいいなと思って歌にした感じです。
──久しぶりに意味のない、楽しいだけの曲を聴いた感じがする。
AK-69:そうっすね(笑)。俺はあんまりメッセージのない、ただ面白ぇみたいな曲ってそんなにないんですけど、これはね。“グラスなみなみ、田中みな実”なんて意味ねぇすからね(笑)。でもそういうのがあっていいんじゃねぇか?って。意外と意味のないことのほうが、みんな言いたくなるんですよ。
▲『LIVE : live』通常盤ジャケット |
AK-69:まあ、そういう人生歩んでますってことですね、良くも悪くも。これが順風満帆に行ってたら、こういうものは生まれないですし。これって切ないところでもあるんですけど、家庭がうまくいって、子供もいて、幸せになるのが、もちろん人としてベターなんですけど。それがアーティストとして、ラッパーとかロックミュージシャンとかになった時に……UVERworldのTAKUYA∞ともそれについてよく話すんですけど、“あー幸せだな”という状態になると、棘がなくなってしまうんじゃないか?と。人としてはそっちのほうがいいんだけど、アーティストである以上ずっと尖っていたいし、棘がなくなってしまうことへの恐怖感みたいなものがあるんですよね。自分から不幸せになりにいこうとはまったく思ってないですけど、なんかね、これでいいのかな?ってすごく思いますね。
──わかる気はします。
AK-69:俺の人生、けっこうギャグなんですよね(苦笑)。でもまあ、人生一回なんでそれもいいかなって。ありがたいことに、それを歌にできる職業なんで。
──3曲の連作のミュージックビデオを観てると、YouTubeのコメント欄とか、歌詞の解釈で盛り上がってましたよ。これ浮気の歌?とか。
AK-69:憶測が飛ぶでしょうね。俺は「And I Love You So」のイメージが強いのか、奥さんがいて、一途な夫の感じとか思わることもあるんだけど、別に俺はそれを意識してあの曲を作ったわけじゃないんですけどね。“始末の悪いこんな俺にも”って、サビで何回も言ってるんだけど。
──純愛ものだと思われてる。
AK-69:そう。でも男はね、やってしまうものじゃないですか。それがね、こういうことになったり、ならなかったり、過程によってあると思うんですけど、俺はそういうものを経て、というところなんで…ここをあんまり深く言うとね、どうやって原稿を書いていいかわからなくなると思いますけど(笑)。こういうことが起こっても、全部自分の中では人生というところ、ですかね。
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