【連載】Vol.092「Mike's Boogie Station=音楽にいつも感謝!=」

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ME エルトン・ジョン自伝


▲「ME エルトン・ジョン自伝」フロント・カバー from Mike's library

レディー・ガガがキュレーターとなってUS時間4月18日発信のチャリティ・ライヴ【ワン・ワールド・トゥゲェザー・アット・ホーム】は、コロナ禍で怯えていた世界中の人々を多くのビッグ・アーティストの素晴らしいパフォーマンスで元気づけてくれた。その一人エルトン・ジョン。自宅庭内バスケットボール・コートに設置したピアノをパワフルに弾きながら1983年のヒット「I'm Still Standing」を熱唱、♪まだ負けてない 終わってなんかいないんだ♪。

僕がエルトンを真剣に聴くようになったのは1971年。当時担当A&Rだった故・石坂敬一さんから、「エルトンは、ローリング・ストーンズのカバーも取り上げているからぜひ聴いてよ!」と薦められたアルバムが『17-11-70』(邦題は“ライヴ!”)。ここには「Honky Tonk Women」収録。


▲CD『17-11-70』from Mike's Collection

その年の秋、彼の初来日公演で「Honky~」も披露してくれたのだった。前半はしっとりとした雰囲気の中でシンガーソングライターの魅力を噴出、後半はエキサイティングなロックンローラーとしての姿を披露してくれたのだ。丁度その頃、映画『フレンズ~ポールとミッシェル~』試写イベントで石坂さんとトーク・ライヴしたこともあった。

そんなエルトンの70年以上の人生を自らが正直に著したのが『ME エルトン・ジョン自伝』(ヤマハミュージックエンタテインメントホールディングス)。本書については6月初旬の某新聞で書評させてもらったが、改めてここでちょっぴり突っ込んでというかストーンズ・フィーリングを漂わせながら(?!)紹介させていただく。多くのアーティストが“自伝”を発表しているけど、ウ~ンこれはデフォルメされているなぁと感じることしばしば。でもこの“エルトン自伝”はここまで書かなくても、と思わせるくらい真っ正直に自ら歩んできた道を書き綴っている。エルヴィス・プレスリーに衝撃を受けロックンロールに開眼したエルトンは、クラシック・ピアノを学んだこともあってかリトル・リチャード、ジェリー・リー・ルイス、レイ・チャールズが大のお気に入りだった。後に彼はザ・キング(エルヴィス)と会うことが出来たし、レイ最後のレコーディングはエルトンと一緒だったという。僕はエルトンが1950年代後半から多くのロックンロールを聴きまくっていた若き日の時代の章に大きく惹かれた。またエルトンが大のレコード・コレクターだということは70年代の頃から知っていたけど、短いセンテンスだけどダイアモンズの「Little Darlin'」を手に入れた時の様子にエキサイトした。そしてエルトンは60年代プロのミュージシャンとして活動するようになる。最初のバンドであるブルーソロジー時代にはメージャー・ランス、パティ・ラベル&ザ・ブルーベルズ、フォンテラ・ベース(当時日本ではフォンテラ・バス)、リー・ドーシーらのUK公演でバックを務めたという。いずれもまさに僕がその当時レコードで楽しんでいたR&Bアーティストだ。そしてブリテッシュ・ロックの元祖、ロング・ジョン・ボールドリーをブルーソロジーはサポートしている。僕はロング・ジョンのライナーを担当したことがあるが、その頃からずっと御大はエルトンの音楽の師だと思っている。また一時、ロング・ジョンのところでマーシャ・ハントが歌っていたと“自伝”で紹介されている。マーシャはミック・ジャガーとのLOVEで有名だ。これ以降本書では、エルトンとローリング・ストーンズとの交流を何度も登場させている。僕流に言わせて貰えば“自伝”はストーンズ・フリークへの推薦書でもある。まずはアルバム『Goats Head Soup』が登場、キース・リチャーズのことが…。これは本書109ページのところなんだけどアルバム・タイトルが何と“山羊頭のスープ”と記されている、“山羊の頭のスープ”に直してください、YAMAHAさん!

そしてストーンズ&エルトンといえば75年RS/Tour Of The Americas、7月20日コロラド州フォート・コリンズ/ヒューズ・スタジアムでの共演がよく知られる。


▲RS「Tour Of The Americas」ツアー・パンフ フロント・カバー from Mike's Collection

その時日傘を手にしたライヴ直前のミックの姿を僕は想い出すけど、その横にはカーボーイ・ハット&サングラス、LAドジャーズのスタジアム・ジャンパー姿のエルトンがしっかりいる。前年にミック・テイラーが脱退し75年当時ストーンズはミック/キース/ビル・ワイマン/チャーリー・ワッツの4人組だった。そのストーンズ・ツアーをフェイセスのメンバーで翌年ストーンズにジョインすることになるロニー・ウッドほか6人目ストーンズのイアン・スチュワート、オリー・E.ブラウン、ビリー・プレストンがサポートした。この日のフォート・コリンズ1曲目「Honky Tonk Women」でエルトン・ジョンが特別ゲストとして参加。でもその日ブットンでたエルトンは2曲目以降もステージに留まりキースに睨みつけられてしまう。ここからは“自伝”でしっかりお読み頂きたい!!


▲RS「Tour Of The Americas」ツアー・パンフ バック・カバー from Mike's Collection

そのほかチャーリーからのプレゼント品のこと。そしてスキャンダルに巻き込まれた時にミックからアドバイスの電話を貰ったことなども記されている。写真頁にエルトンがジェリー・ホールやアンディ・ウォーホルらと写ってる。またキースの94年のドギツイ一言もしっかりエルトンは本書で紹介、当時UKメディアが大きく取り上げていたのを想い出す。

ところで60年代末エルトンはジョージ・マーティンのもとで働いていたトニー・キングという業界人と出会う(AIR)。その時から二人はとても気が合い、彼はミュージック・シーンの先輩としてエルトンを応援する。その後ト二-を介してエルトンはジョン・レノンと知り合い、三人は親交を深める。ある時トニーはフレディ・マーキュリーを連れてエルトン宅を訪れたこともある。そんなエピソードが随所に登場。このトニー・キングは80年代後半から近年までストーンズプレス担当~ミック・ジャガーのパーソナル・マネージャーとして働いた。そんなこともあって僕は何度となく国内外で仕事含めていろんな話しをした。90年RS初来日時のミック・インタビューでとても親切にして貰った。すごく優しい&仕事のできる人物だったなぁ。


▲トニー・キングと筆者 Pic.by Tetsuo Matsuo

そして本書ではリンダ・ウッドローとの婚約からジョン・リードとの出会い、レナーテ・ブラウエルとの結婚、そして遂には数年間に正式承認されたデイヴィッド・ファーニッシュとの結婚まで、よりプライベートな面も赤裸々に書き述べられている。植毛トラブルや過食症、ドラッグ問題にも真っ向から立ち向かったことも告白している。一方でチャリティー活動にも積極的である。勿論サッカーが大好き、ついに王室との交流についても語られる。それは余りにもドラマティックで人間味を凄く感じさせる。音楽ファンとしてはダスティー・スプリングフィールド、マーク・ボラン、ロッド・スチュワート、ダニー・ハットン(スリー・ドッグ・ナイト)、マーサ&ザ・ヴァンデラス、ビーチ・ボーイズ、トム・ベル、トム・ロビンソン、クリス・トーマス、ジョージ・マイケル、ティナ・ターナー、そしてジョージ・マーティンらとの数々のエピソードも楽しませて貰った。本当に何度となく熟読したくなる“自伝”である。


▲「ME エルトン・ジョン自伝」バック・カバー from Mike's library

コロナ禍で延期になった彼の引退ツアーだが、是非2021年日本公演を期待したい。

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