【コラム】GLAYという健やかなバンドの話をする~BARKS編集部の「おうち時間」Vol.005
徒歩で帰宅中にトンネルにさしかかったあたりでGLAYドーム公演中止の報が目に入り、私の口から裏返った声で「ぐ、GLAYー!!」と小さい悲鳴が出たのが21時半ごろだったと思う。オフィシャルから発表がなされたのは、彼らが4月3日の『ミュージックステーション』3時間スペシャルに生出演する直前のことだった。公式Twitterの発表時のタイムスタンプは20:47となっている。
そんなわけで、「おうち時間」連載のバトンをいただいた。GLAYの話をしたいと思う。アーティストのライブがやむなき事情で中止になったとき、音楽ファンとしてはそのアーティストの話を語ったり書き残したりすることも格好の在宅ワークではないかなと思うので。
GLAYのドーム公演に関しても、チケットを買っていたわけではない。ただ、GLAYはいろんな困難を乗り越えてデカい公演もサラッと(サラッと見えるような華麗さで)成功させてしまうだろうという漠然とした信頼感があっただけだ。むしろチケットを買っていなかったがために深く考える時間がなかった状態で、それだけに5月中のドーム公演中止の報によけいに驚かされてしまった。5月16日のナゴヤドームはともかく東京ドームは5月末日(30、31日の2DAYS)でぎりぎり間に合ったりしないの? という思いが去来するも、オフィシャルサイトにはTAKURO氏御本人によるコメント動画がアップされており、視聴後に改めて己のぬるかった認識を反省することになった。
たとえ公演当日には感染症のピーク時期を過ぎている可能性があったとしても、そこまでの準備には多数の人間が長期間、何度となく現場に集まる必要がある。それがドーム公演だ。スタッフや関係各位の安全健康のことまで真面目に考えたら、この時期タイミングで準備を続けること自体危険を伴う。……という至極真っ当な内容が、誠実に説明されていたと思う。また、この動画でGLAYは医療分野へ1000万円を寄付することを発表している。(動画はぜひオフィシャルサイトにてご確認ください)
ラバーソウル(GLAYの個人事務所)社長でもあるTAKURO氏は、こんな場合に全体へ及ぶ判断をいち早く行わなければならない立場であったろうことも想像できる。コメント動画を見て泣かされるのは、その判断を可能にしているTAKURO氏の心の健康さもそうだし、その土台となっているGLAYチームの健康さが透けて見える気がしたからだ。(人や組織は、特に金銭面での困難が絡むと心の健康を容易に損なってしまうし、視野狭窄を起こしがちだ)日頃からアーティストとして理想的な体制を自ら開拓し続けてきたからこそ、この局面でも彼らはしっかり舵取りができていて、ファンのことを第一にした心くばりができている。
……といったことを帰り道で考えたのだが、口から出る独り言としては「GLAY……」「おおGLAY……」「TAKUROさん……」といったほぼ単語であった。発表直後のMステ3時間スペシャルでは最新ベストアルバム『REVIEW II 〜BEST OF GLAY〜』から新曲「Into the Wild」と視聴者投票企画“GLAY国民投票”第1位の「SOUL LOVE」が披露され、SNSにはエモい感想が次々と飛び交っていた。「SOUL LOVE」は言わずと知れた名曲ではあるのだが歌詞的にも今の時期にぴったりな曲で、優しさとトキメキが沁みるのでおうちでもぜひ聴いていただきたい。
▲Mステ後にHISASHI氏が北川景子氏への感謝と推しをツイートしていたのも記憶に新しい
それからのGLAYはというと、ドーム公演中止に伴いスタッフ・関係者向けに備蓄していたマスク5000枚を追加で医療機関へ寄付している。無観客ライブは、実はいち早く実施していた。TERU氏とHISASHI氏が2月24日にイタリアはヴェネツィア・ムラーノ島のガラス工房からYouTube LIVEで全世界に配信したあのライブだ。突発で決められるフットワークの軽さとスケール感がなんともGLAYらしい展開だった。
イタリア現地では本来出演予定だったイベントが今年は新型コロナウイルスの影響で中止になってしまったが、TERU氏は“2026年のファンクラブ発足30周年ライブをヴェネツィアのサン・マルコ広場で開催したい”という夢を掲げ、2017年から毎年欠かさずに同所のイベントへ出演し続けている。2018年にはTAKURO氏を、2019年にはJIRO氏を、2020年にはHISASHI氏を伴って。GLAYが解散しないバンドを信条にしている以上、このイタリアでのライブの夢も叶う日が来ることだろう。
そして先日、ドキュメンタリー映画『GLAY pure soul “MOVIE”Director’s cut』が全159分まるまるYouTube公開されたので、これ幸いとおうちで観ている。
若きTERU氏のレコーディングシーンもあるわけだけど、本当にいい声だ。高校でバンドを組んだ時にはTERU氏はドラマーだったのだが、ある日TERU氏の歌声入りデモテープを聴いたTAKURO氏がその歌声を絶賛し、結果TERU氏はボーカリストに転向したという流れがある。TAKURO氏はGLAY最初期にも最高の判断をしてくれた。「もし自分が高校生時代にバンドをやってたとして、ドラマーで加入した同級生がたまたまTERUさん級の歌声の持ち主だった場合に即ボーカリストに転向するよう勧誘することができるだろうか……」なんて思いながらGLAYの判断の積み重ねを辿っていくと、これも楽しい。
文◎宮川直子(BARKS)
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