【ライブレポート】defspiral、10周年2マンライブ企画ファイナル。メリーとともに誓う“前進”
2020年1月から2月にかけて行われた<defspiral presents CARNAVAL to 10th ANNIV. 2MAN LIVE SERIES 「The STARS」>も、ついに最終回。2月27日、新宿BLAZEで現バンド体勢ではお互い最後となるdefspiralとメリーのツーマンライヴが敢行された。
◆ライヴ画像(12枚)
この2バンドは、これまでに幾度もイベントツアーで全国を一緒に回っている。そのイベントツアー中、メリーのテツ(B)が公演中の事故によりバンドを離脱せざるを得なくなった時、ツアー続行を望んだ本人の意向もあって他のバンドのベーシストがメリーを支えた。その中の1人がdefspiralのRYO(B)であったことは、ファンの記憶にも残っているかと思う。そうやって時にライバルとして切磋琢磨し、時に仲間として支え合ってきた彼ら。そんな密な関係にある2バンドのステージ、しかもこのメンバーでは最後ということでファンも複雑な想いで会場に足を運んでいたことだろう。
まずはメリーのライヴからスタート。1曲目「消毒」からキャッチーな「千代田線デモクラシー」、ライヴでは定番の「絶望」、テツのベースから「Midnight Shangrila」と、ひっきりなしにたたみかける。演奏が途切れステージが暗転、うっすらBGMが流れるも、その間メンバーは誰一人として言葉を発することなく、楽器陣は汗を拭ったりチューニングし、上半身裸で腕を真っ黒にペイントしたガラ(Vo)は黙々とストライプのシャツを着込む。
一呼吸置くと、すぐさま「東京テレホン」の演奏へ。ステッキを持って、昭和なワードを散りばめた哀愁漂う女性目線の歌詞を切なく唄う。続く「Kamome Kamome」は昨年発売されたミニアルバム『for Japanese sheeple』に収録された曲だが、10数年前の作品「東京テレホン」の世界観に通じるメリーらしさはそのままに。ドラム台に座り込み唄うガラ、泣いてるような唄声も相まって、一人芝居を見ているような感覚をおぼえる。BGMで少し間を空けて始まった「不均衡キネマ」では“お客様の拍手で「show」の始まり!”でブレイク、観客からの拍手喝采を浴びる恒例のシーンも挟みつつ、「sheeple」から「F.J.P」「ジャパニーズモダニスト」とテンポも温度も上昇させていく。
しかし手元の曲順表では残り1曲、メンバーからの言葉はない。そしてついに最後の曲を目前に「defspiralに送ります! 「梟」!」と一言だけガラが叫び、「梟」の演奏がスタート。メリーの代名詞ともなっている「梟」、実は先述したテツが途中離脱したイベントツアーでよく演奏されていた曲であり、defspiralとメリーの関係を語る上でキーとなるものでもあるのだ。そして、サビの後の曲中の語りの部分でガラが語り出す。
「defspiralには俺らが大変な時、スゴく助けてもらいました。その恩を今日、このステージで返しに来ました。いろいろたいへんな中、集まってくれて本当にありがとう。そして、defspiral、ありがとうございました。俺ら、死ぬまでdefspiralと共にやっていきます。これからも、しっかりその目に焼き付けてください。ありがとう!」これまで口をつぐんできたのは、想い出のこの「梟」のココに凝縮したかったからなのか。ガラの言葉が心に染み入り目頭が熱くなる。しかし曲中だけでは伝えきれない想いがあったのだろう、演奏後、ガラは再びマイクを持った。
「defspiral、ありがとうございました。一緒にツアー回っていて、本当にいろいろ助けてもらって、ツーマンやったりもして。本当にdefspiralには恩ばっかりあって。今回、誘ってもらって。お互い、いろんなことがあるんですけど、ここまでやってきたからには前を向いて、このバンドをやっていこうと思います」ありったけの熱い想いと、defspiralに対する感謝の言葉、思いの丈を客席に吐き出して彼らはステージを後にした。
ガラの言葉で少し湿っぽくなった会場の空気を蹴散らすかのようにSEとライトがチカチカと光る中、defspiral登場。疾走感のある「AURORA」から演奏がスタート、MASAKI(Dr)のドラムフレーズが「Arcoromancer」へ導く間に、「最高の夜にしようぜ!」とTAKA(Vo)が客席を煽り、さらに熱量の高い「PULSE」でオーディエンスを焚き付ける。“破裂しそう お前に”と体をくねらせながらセクシーに囁くような唄、惜しげもなくフェロモンをまき散らし観客をメロメロにしていく。
「<The STARS>ファイナル新宿ブレイズ! ようこそ! いろいろある中で集まってきてくれてありがとう! 会いたかったぜ! 今夜も美しい時を重ね合っていきましょう! オン・ドラムス、MASAKI!」とTAKA。ライトがMASAKIを明るく照らし出し「PARADISE」のリズムを刻んで、defspiral流パーティーソングでファンを踊らせる。その空気を一掃するように、幻想的なMASATO(G)のギターから「STARDUST」が演奏され、RYOの独特なベースフレーズと音の隙間、わざとスケールアウトしたMASATOのギターソロがユニークな「花とリビドー」へ。defspiralサウンドの表現の幅、揺れ動く感情を唄と演奏で見せつける。続いてMASATOのギターからミディアムテンポの「陽炎」へと繋げられ、TAKAが優しく心の機微を繊細かつ情感に唄い上げ、溢れんばかりの想いを会場に響かせた。
「メリー、最高のステージ、最高のパフォーマンスを魅せてくれました。楽しい時間はすぐに終わっていく……。メリーと一緒に素敵な時間を重ねてこれて本当によかったです。みんなもいろいろある中、集まってくれてありがとう。メリーにはさっき凄いものを見せられたけど、defspiralとメリーの間で忘れられない1曲を送りたいと思います。俺たちなりの想い込めて送りたいと思います。想いを乗せて……」と話した後、defspiralがメリー「梟」をカヴァー。会場が一体となってこの上ない盛り上がりになったのは言うまでもない。
実はこの「梟」、テツが怪我をした翌日のイベントライヴでdefspiralが自分たちの持ち時間の中でカヴァーしたと聞く。思い起こせば、あの時、defspiralをはじめ参加バンド全員がメリーを盛り上げようと必死だった。そしてバンドの垣根を越え手を助け合って一丸となり、あのイベントツアーを乗り切った。その記憶がdefspiralが演奏する「梟」で呼び覚まされた人も少なくないだろう。
「<CARNAVAL to 10th ANNIV. 2MAN LIVE SERIES 「The STARS」>、本当にどの瞬間もキラキラと輝く素晴らしい時間でした。我々が企画して5公演やってきたわけですけれども、出演してくれたどのバンドも言葉にできないくらいの愛情を、愛を、毎回ステージで届けてくれて、僕らは心を打たれました。今夜、最後にすべてのバンド、紹介させてもらっていいですか?」そう言って、MUCC、lynch.、THE MICRO HEAD 4N’S、D’ERLANGER、メリーと共演バンドの名前を丁寧に呼び上げる。
「ライヴ空間というのは本当に儚くて美しい、何ものにも代えがたいものだと心から思いました。本当にいろいろありますけれど、僕らは4月から、メリーは3月から、このメンバーで最後になるツアーがあります。そのツアーでは、みんなと重ねてきた時間が嘘じゃなかったと、意味のあるものだったと証明したいと思います」
ツーマンシリーズの総括ともいえる言葉と御礼を述べた後、会場に響かせた「ESTRELLA」の唄。その歌詞の冒頭にある“やがて 全ては報われるだろう”のフレーズが心に響く。過ぎ去りし日の砕け散った夢や希望、突然味わった大きな痛み、そんなネガティヴな事柄さえ、大きなサウンドに抱かれているとポジティヴにすら感じられてくるから不思議だ。これまでdefspiralと重ねた瞬間、その1つ1つの場面が走馬燈のように駆け巡る。そしてアウトロの最後の一音がトレモロで伸ばされる中、再びこのツーマンツアーへ登場したバンドの名前をひとつひとつ叫んだTAKA。「また会いましょう、本当にありがとう!」と言葉を残し、<defspiral presents CARNAVAL to 10th ANNIV. 2MAN LIVE SERIES 「The STARS」>は幕を下ろした。
今夜、温かい余韻を残しながら、鮮やかな世界へ、鮮やかな明日へと踏み出したdefspiral、メリー。奇しくも2バンドとも今春、長年連れ添ったメンバーと袂を分かち、新たな道を歩んでいくことになる。TAKAの言葉を借りるなら、時の儚さと痛みを知りながらも前へ進もうとしている彼ら。もしかしたら喜びも哀しみもすべて受け止めて前へ進むことでしか、歴史を刻むことはできないのかもしれない。それを覚悟の上で、バンドの看板を背負い、未来へと進んでいくと、彼らは心に決めたのだと思う。今春から始まるそれぞれのツアーで、彼らの雄姿を見届けようではないか。
文◎増渕公子[333music]
<defspiral CARNAVAL to 10th ANNIV. ONEMAN TOUR 2020 『DEAR FREAKS』>
2020年4月11日(土)西川口Hearts
2020年4月12日(日)柏ThumbUp
2020年4月23日(木)姫路Beta
2020年4月24日(金)姫路Beta(MASAKI BD Special! )
2020年4月26日(日)大阪RUIDO
2020年4月27日(月)名古屋ell.FITS ALL
2020年5月04日(月・祝)静岡Sunash
2020年5月09日(土)仙台space Zero
2020年5月15日(金)新横浜 NEW SIDE BEACH!!
FINAL
10th ANNIVERSARY LIVE 『DEAREST FREAKS』
2020年5月26日(火)渋谷TSUTAYA O-WEST
チケット料金:
前売 ¥5,000(税込/D別)
※渋谷TSUTAYA O-WESTのみ ¥5,500(税込/D別)
※3歳以上チケット必要
チケット一般発売日
2020年3月14日(土)
お問い合わせ:サイレン・エンタープライズ TEL: 03-3447-8822
defspiral <ZEPPET STORE, shame, defspiral presents「3.2.1」【振替公演】>
会場:下北沢GARDEN
公演日:2020年5月18日(月)
開場:18:30 開演:19:00
チケット料金:前売 5500円(税込1D別)当日6000円(税込1D別)
チケット一般発売日3月14日(土)10:00~
※3/8公演のチケットは整理番号含めそのまま有効です。
なくさずににそのままお持ちくださいますようお願いいたします。
・イープラス001-P0030001:https://eplus.jp/sf/detail/3256400001-P0030001
・ローソンチケット(Lコード:71629)
・ぴあ(Pコード:181-692)
(問)下北沢GARDEN
<メリー「5 Sheep Last Tour」>
2020年3月22日(日)仙台CLUB JUNK BOX
2020年3月28日(土)松山WStuidoRED
2020年3月29日(日)福岡BEAT STATION
2020年4月5日(日)HEAVEN’S ROCK 熊谷 VJ-1
2020年4月10日(金)大阪味園ユニバース
2020年4月11日(土)京都磔磔
2020年4月17日(金)札幌cube garden
2020年4月18日(土)旭川CASINO DRIVE
2020年4月24日(金)名古屋BOTTOM LINE
2020年4月25日(土)岡山CRAZYMAMA KINGDOM
2020年5月2日(土)千葉LOOK
2020年5月4日(月・祝)金沢vanvanV4
2020年5月6日(水・振)高崎clubFLEEZ
2020年5月10日(日)新横浜NEW SIDE BEACH!! (CORE限定)
メリー「5 Sheep Last Tour【FINAL】そして、遠い夢のまた夢」
2020年5月16日(土)なかのZEROホール
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