【インタビュー】“新生”ましのみ大捜査。ニューALで「面白いけど心地いい」の境地へ
MBS/TBS系ドラマ『死にたい夜にかぎって』のオープニング曲「7」で注目を集めるピアノ弾きのシンガーソングライター・ましのみが、恋愛を軸に“リスナーの踊り場(ほっとする場所)になれば”というコンセプトのもと、初のミニアルバム『つらなってODORIVA』を発売する。
◆撮り下ろし画像
そんなましのみに、久々にインタビューを行った。取材のとき、いつも持参していた2リットルのペットボトルがない。ひたすら手を動かしながら、早口でしゃべりまくるましのみはそこにはいなかった。いったいましのみに何があったのか!? 新作から見えてきた新生ましのみを、BARKSが大捜査してみた。
◆ ◆ ◆
■人間的にも“社交的になろう”と思った
──大学卒業して以降会うのは初めてですけど。なんか大人になりました?
ましのみ:なったと思います。落ち着いてしゃべれるようにもなりました。練習したんですよ。
──え、なんでまた?
ましのみ:“わー!!”っていう子に見られるのが嫌だなっていうのがずっとあって。曲よりも私のキャラクターに目がいくのもな……っていうのがあったんで、しゃべるときの声のキーを下げたり、なるべく手を動かさないでしゃべる練習を4月頃からしてたので、いまはこれが普通になったんです。
──“ましのみ”を自ら矯正した結果がこれ。
ましのみ:そう。同世代に向けて書いてる歌詞だから、それがナチュラルに届いて欲しいなというのもあったし。あとは、考え方もガラッと変わったんですよ。それもあるかな。
──じゃあまずその考え方が変わったところから知りたいです。
ましのみ:1stアルバム『ぺっとぼとリテラシー』は初の全国流通だったじゃないですか。あれは“世間”という怪物にいかに棘を刺すかということで、内側を掘っていって作ったトゲトゲのもので。流通して1年経ったらリスナーの顔がどんどん見えてきたんで、2ndアルバム『ぺっとぼとレセプション』ではリスナーに寄り添うことをしてみたいという気持ちが生まれて。“じゃあどうやって寄り添ったらいいんだろう”という実験をしたアルバムだったと思うんですよ。ここまでは自分が前に出ることが前提だったから、ビジュアルとかの判断は主観が入らないように周りの人の最終判断を優先することをよしとしてたんですね。
──つまり、2ndアルバムまでのアートワークは大人に判断をゆだねていたと。
ましのみ:そうです。曲の選択もそう。アレンジも、私は作詞・作曲・歌唱はやるけど、音作りはプロに任せたほうがいいものが生まれるんじゃないかと思って任せてたんですよ。そういう形でやってみて、自分は意外と自分が前に出るよりも、もっと“自分のセンス”でトータルプロデュースしたいタイプだということに気づいて。2ndアルバムでもちょっとずつヘッドアレンジをし始めてたじゃないですか?
──ですね。で、いずれは自分でトラックまですべて作れるといいよねって話をした。
ましのみ:そう、そう。あれがまさに片鱗だったんですよ。あとは、プライベートでも変化があって。音楽的なところで外に開けることに対してポジティブになったんですよ。
──ええーっ!
ましのみ:はははっ(笑)。その声のデシベルの大きさにびっくりしちゃったじゃないですか(笑)。前は内側に引きこもって自分のマイナスを掘っていくことをよしとしてたし音楽もあまり聴いてなかったんで、外側に向かっちゃうと自分の感性がつぶされると思って、いろんな音楽を聴くような勉強はしたくないと思ってたんですよ。だけど、そこに対しても余裕がでてきて。sasakure.UKさんとの出会いも大きかったですね。Sasakure.UKさんを見てて、センスと技術のバランスをうまくとりながらこういう風にいいもの作ることはできるんだと分かったんですよね。2ndアルバムでリスナーに寄り添おうと思ったけど、あれはいまから思えば内にこもった自分だったからこそ、ああいうある種実験的で、不器用な寄り添い方になってしまった。だから、あれを作ったあと人間的にも“社交的になろう”と思ったんですよ。
──愕然! もうそうなると自分革命の領域だ。
ましのみ:そうそう。外に出てみたら、“いろんな人としゃべることで逆に自分が照らし出されたりするんだ、これっていいな”と思えたんですよね。なので、どんどん人と会うようになって。初めはしんどくて疲れてたんですけど、それも全然大丈夫になってきて。いまは普通に同世代の子とラフにしゃべりながら生活するのが当たり前で。そういう環境にいれば、自然と周りに寄り添ったものが生まれてくるし。そのなかで、逆に自分のセンスもよく分かってくる。そこで、私の感性はそんな容易く潰れるもんじゃなさそうだなと思ったんで、いろんな音楽を聴くようになって、音の勉強をし始めたんですよね。自分はトータルプロデュースをしたいんだと気づいてから、2019年は音に関してもビジュアルに関しても出来る限り自分のセンスでやりたいという考え方でやっていって。それが一つの形になったのが『つらなってODORIVA』なんです。
▲『つらなってODORIVA』初回限定盤
──なるほど! だから、ジャケットのアートワーク一つとっても、「エスパーとスケルトン」にしても『つらなってODORIVA』にしてもましのみの顔は見えなくて。この感覚って、インディーズで出したアルバム『ハッピーエンドが見えません』と同じなんですよね。
ましのみ:あれ(『ハッピーエンドは見えません』)は、いまだからいいますけど、とりあえず写真を撮ったら私をボンとはめ込んだジャケットが上がってきたんですね。それで「絶対に嫌です。顔を塗りつぶして下さい」といったからあれになったんで(笑)。プロデュースはしてないです。
──そうでしたか。「エスパーとスケルトン」と『つらなってODORIVA』については?
ましのみ:この2つはトータルプロデュースという意味でああいうものにしたんです。いまは私を全面に出すことにあまり意義を感じなくて。私の曲だよって押し付けをしたい気持ちもなくて、どちらかというとリスナーの人に“自分ごと”として聴いて欲しくてああいうデザイン性を重視したジャケットにしました。
──『つらなってODORIVA』はなんでフルーツだったんですか?
ましのみ:そこは、コラージュアーティストのQ-TAさんのアイデアです。Q-TAさんが最初に出してくれたものは果物も腐ってなくて、もっとポップな感じだったんですよ。そこから、私の今回の作品に対するイメージを話してすり合わせていって。もっと憂いを出したいということからフルーツの種類を変えたり腐らせたりして、こういう仕上がりになりました。めちゃめちゃ気に入ってますね。今回のジャケットは。
──これはましのみの頭にフルーツが突き刺さってるんですよね?
ましのみ:そう思ってる人が多いんですけど、ましのみは撮影してないです。
▲『つらなってODORIVA』通常盤
──アー写ももしかして別の人?
そんな訳ないじゃないですか。ましのみです!
──幽霊が写り込んでましたけど。
ましのみ:(即座に)違います(笑)。あれも私。ブレてるだけ。これを撮ってくれたのは『ぺっとぼとレセプション』のジャケットから関わってくれてる、同い年のヒサノモトヒロ君という人で、写真家とか映像作家というよりも面白いことをやるのが好きっていう人なんですね。それで、今回はアー写をお願いして。私は出るんだけど、顔バーンみたいなのじゃなくて、というのでお願いしたら外の部屋作ろうか、みたいなことからこうなりましたね。これも気に入ってます。
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