【インタビュー】ASKA「これほど聴いてもらいたい曲は久しぶり」10年ぶり新作CDへ至る旅路

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▲「歌になりたい/Breath of Bless〜すべてのアスリートたちへ」

■東京オリンピックが決まった時点で作ったんです。
■自分の記録として作るのは勝手でしょ?(笑)。


──それでは続けて東京オリンピックをイメージして制作された「Breath of Bless〜すべてのアスリートたちへ」について聞かせて下さい。こちらはインスト曲なんですよね。

ASKA:音楽は映画音楽から入っているので、元々インストが好きなんです。学生時代にジャズを流してる喫茶店でアルバイトをしていたんですが、そのなかでポール・モーリアだけはかけてもよかった。その頃、ジャズの良さをわかっていませんでしたので、そのポール・モーリアを聴く瞬間が当時の僕には至福でしたね。そんななか、これも、たまたまなんですが、ポール・モーリアさんが来日したときに僕の曲を知ってくれ、後に30曲以上もの僕の楽曲を「ポール・モーリア作品」にしてくれました。

──ASKAさんのたまたまって、エピソードが全部が全部凄すぎですから。

ASKA:(笑)。これまでもコンサートの中のインストとなる部分のメロディを作ってきたことはありましたが、ちゃんと作品としてインストを作ろうと思ったのは、この曲が初めてかもしれません。ドラマ『振り返れば奴がいる』のサントラがあるんですが、あれは主題歌以外にドラマのサントラも作ってみて欲しいといわれて、僕と澤近泰輔とS.E.N.S.で作ったんです。当時、テレビ局は、ドラマの音楽にお金をかけるという発想がなかったので、プロデューサーに直接交渉して、これをCD化すれば制作費をそこまで抑えなくてもいいんじゃないかと。サントラ盤を出すよう働きかけました。運良くそれが大ヒットして、関わった全ての人たちが喜べる状態になりました。あれからですね、ドラマのサントラが発売されるようになったのは。

──ASKAさんって、様々な出来事のパイオニアだったんですね。

ASKA:いえいえ。人を説得するのが得意なのかもしれませんね。プレゼンが得意なんじゃない(笑)。

──今作も東京オリンピックのプレゼンですもんね(笑)。

ASKA:東京オリンピックが決まった時点で作ったんです。自分の記録として作るのは勝手でしょ?(笑)。デモが出来上がった時点で、テレビに流出してしまったんですが、それで俄然力が出ましたよね。絶対凄いものにしてやろうというスイッチが入りました(笑)。東京オリンピック用に作ったものではあるけど、それをタイトルに入れたら東京オリンピックとともに消えてしまいそうだったので、タイトルも変えたんです。アスリートの名場面スローモーションでどんどん繰り出されるイメージで作りました。

──曲の冒頭でゴスペルみたいに聴こえてくる歌がありますけど。あれは何語で歌ってるんですか?

ASKA:これはですね、無国籍語なんです。あれは人間のヴォイスという楽器。言葉には意味がなくて、音の響きのつながりがいいようにつないだだけなんです。

──曲自体は、とてつもなくシンプルなものなんですよね。

ASKA:おっしゃって頂いた通りで、まったくシンプルなコードです。でも2番からは、そこは自分がやるならなにか仕掛けもしたい。2番が終わった後から転調しているんです。その転調後、4度進行で元のキーに戻すというテクニックは使っていますが、それ以外はまったくシンプルですね。


■公開リハーサルでの収益に関しては全部チャリティーとして寄付。
■これも、いま自分ができること


──このシングル発売後、12月からは<billboard classics premium ensemble concert-higher ground->がスタートします。今回はASKAさん、スペシャルバンド、ビルボードクラシック・ストリングスによる弦楽器アンサンブルが三つ巴となり、ポップスとロックとクラシックが融合した新しいステージに挑戦するそうですが。

ASKA:その融合をまざまざと見せつけるものをやっているのってE.L.O.(Electoric Light Orchestra)ぐらいだと思うんです。先人となるのはE.L.O.しかいないので隠さずお伝えすると、今回はE.L.O.みたいなコンサートをやりたいと考えています。

──はい、分かりました。ツアーのなかで3月20日開催の熊本城ホールは“特別公演”と表記されていました。そこにはどんな意味が?

ASKA:元々入ってなかったんです。熊本公演を提案されたとき、すぐにやろうと思ったんです。熊本は、被災地の一つですよね。僕は長い間被災地である福島に行けなかったことが、自分のなかで辛くてね。あの地震のあとの無力さ。ミュージシャンとして何万人の前で歌ったといいながら、あのようなことが起こったら何もできない自分の無力さを痛感して、精神にダメージを受けてしまった。それは僕だけではなく、周りにも同じようなミュージシャンがいっぱいいました。まだ仮設住宅もできたない頃、避難所にAKBが訪れたとき、あんなに真っ暗な表情をしていた子供の目がキラキラになったんです。それを見たときに「アイドルの力ってすごいな」と思いました。俺たちがどれだけやろうと思ってもできなかったことを一瞬でやったんです。そのあと、僕は『僕にできること いま歌うシリーズ』としてカバーアルバムを出させてもらって、その収益を寄付していきました。それで、2年前に仕事も兼ねて、熊本にいた友人でありデザイナーである人のところに会いにいったんです。そのとき、熊本の街の中はブルーシートがまだかかっていました。自分が知ってる熊本城の石垣がこんなに崩れてたんだというのを見てすごいショックだったことを覚えています。こういうことを目の当たりにしていたので、熊本の話が出てきたときに「やろう」と即決したんです。特別公演とつけて、この日に向けて数カ所で公開リハーサルを行い、そこで得た収益をすべてチャリティーとして寄付する予定です。

──ああ、そうなんですね。

ASKA:公開リハーサル自体は2003年に札幌ドーム(<CHAGE and ASKA COUNT DOWN LIVE 2003-2004 in SAPPORO DOME>)でやっているんですが、今年のアジアツアー(<ASKA CONCERT TOUR 2019 Made in ASKA ASIA TOUR>)でも台湾と香港で公開リハーサルをやったんです。リハーサルを観たいという人も多いと思うので、今後は、この公開リハーサルを積極的にやっていきたいと思っています。そこでの収益に関しては、全部チャリティーとして寄付させてもらおうかなと思っています。これも、いま自分ができることですよね。

──ということは、今後公開リハーサル公演を他の箇所でも行うかもしれない。

ASKA:そうですね。まだいろいろと調整が必要ではありますが、やりたいと思っています。

──またまたASKAさんがパイオニアとなって新しいシステムを構築していくことになりそうですね。

ASKA:これを続けることで、いろんな方面への理解が深まっていくと思います。きっと、他のミュージシャンもなにかやりたいと思ってるはずなので、チャリティーということを積極的にやれるようになったらいいなと思っています。チケットを買う方も、好きな人のチケットを買うことが誰かのためになるのであれば、こういった公開リハーサルを行うことで、幸せになる人はいても悲しむ人は誰もいないんですよ。なので、みんながやればいいと思っています。

──逆に、なんでいままで日本にこういうシステムがなかったんですかね。

ASKA:そこは“プロ意識”なんだと思います。プロとして完璧なものを観せるのが芸術で、その過程は見せるべきじゃないということなんだと思います。それも理解できるんですが、すべてにおいて“時代”ってあると思うんです。僕はいま楽曲を作る過程もYouTubeで公開したりしていますが、そういうものをアップすると喜んでくれる方も多くいるので、完成するまでの内側、過程を見せるのが、いまの時代には受け入れやすい手法なんだと思います。


──そして、2020年3月にはニューアルバムの発売も決まってるそうですね。

ASKA:はい。今回、一言でいうと「これを聴かないとダメだよ」というものになっています。足りないところは一つもないぐらい完成度の高いものができたので、アルバムが出るまでは「歌になりたい」と「Breath of Bless〜すべてのアスリートたちへ」と全国ツアーに参加していただきながら、期待して待っていてください。

取材・文◎東條祥恵



■ASKA ニューシングル「歌になりたい/Breath of Bless〜すべてのアスリートたちへ」

2019年11月20日(水) 発売
収録楽曲:「歌になりたい」「Breath of Bless〜すべてのアスリートたちへ」2曲収録
価格:¥1,300+税
レーベル:DADA label


<billboard classics ASKA premium ensemble concert -higher ground->

2019年
〔京都〕12月10日(火)京都コンサートホール 大ホール 18:30開演
〔名古屋〕12月11日(水)愛知県芸術劇場 大ホール 18:30開演
〔西宮〕12月20日(金)兵庫県立芸術文化センターKOBELCO大ホール 18:30開演
〔仙台〕12月27日(金)東京エレクトロンホール宮城 大ホール 18:00開演
2020年
〔福岡〕1月3日(金)福岡サンパレスホテル&ホール 17:00開演
〔大阪〕1月6日(月)フェスティバルホール 18:30開演
〔東京〕1月9日(木)東京国際フォーラム ホールA 18:30開演
〔札幌〕1月11日(土)札幌文化芸術劇場hitaru 17:00開演
〔東京〕1月15日(水)LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)18:30開演
〔新潟〕1月18日(土)りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館 コンサートホール 17:00開演
〔高崎〕2月2日(日)高崎芸術劇場 大劇場 17:00開演
〔横浜〕2月9日(日)神奈川県民ホール 大ホール 17:00開演
〔熊本:特別公演〕3月20日(金・祝)熊本城ホール メインホール 16:00開演

出演:ASKA 
ASKA BAND:
澤近泰輔(Pf、編曲)、菅沼孝三(Dr)、古川昌義(Gt)、鈴川真樹(Gt)、荻原基文(Bs)、SHUUBI(Cho)、西司(Cho)
弦楽アンサンブル:ビルボードクラシックスストリングス

チケット:11,800円(税込・全席指定) ※特製プログラム付き ※未就学児入場不可
一般販売中

主催・企画制作:ビルボードジャパン
後援:朝日新聞社、米国ビルボード

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