【ライブレポート】バックチェリーは「100%ライヴ・ロックンロール」
10月15日、東京・恵比寿リキッドルームにて、バックチェリーの約3年ぶりとなるジャパン・ツアーが幕を開けた。オープニング・アクトとして今回のツアーに帯同しているジャレッド・ジェイムズ・ニコルズ(今回が正真正銘の日本初上陸)による骨太でブルージーなパフォーマンスを経て、すでに熱気を帯び始めていたオーディエンスの前にデビュー20周年を迎えている“ならず者バンド”が姿を現したのは、午後8時になろうとしていた頃のことだった。
さりげなく配置についた5人がまず披露したのは、去る3月にリリースされた最新アルバム『ウォーペイント』に収録されていた「ヘッド・ライク・ア・ホール」。今回の来日の直前まで実施されていたオーストラリア・ツアーの際にもオープニングに据えられていた、ナイン・インチ・ネイルズのカヴァーだ。もちろんそれを彼らが演奏すれば、シンプルで豪快なロックンロールと化し、無駄なく研ぎ澄まされたバンド・サウンドと、ジョシュ・トッドの強烈な歌声が、このバンドの帰還を待ち焦がれてきたオーディエンスをすぐさまひとつに束ね、激しくシェイクする。
本日、10月16日には大阪公演も控えているだけに、具体的な演奏内容についてはあまり過度には触れずにおこうと思うが、20年前のデビュー・ヒットである「リット・アップ」や、最新作からの「レディオ・ソング」、看板曲のひとつである「クレイジー・ビッチ」に至るまでテンポよく組み込まれたライヴは、最後まで体感スピードを緩めることなく進んでいった。一瞬の間伸びも伴わない、危険な匂いをまとったそのパフォーマンスには、上半身全体に刺青をまとった、贅肉のまるでないジョシュのたたずまい自体にも通ずるものがある。
終演後に楽屋を訪ねると、5人はオーディエンスの熱烈な反応について満足を口にし、さらっと披露されたケニー・ロギンスの「フットルース」のカヴァーについて、あるメンバーは「日本のファンがみんなあの曲を喜んでくれていたようで良かった!」と語っていた。実は最近、他のカヴァー曲を披露したところ、観客がその曲を知らずほぼ無反応だったことがあったのだそうだ。また、去る13日まで続いていたオーストラリア・ツアー中はライヴと長距離移動の連続で、充分な睡眠もとれていなかったのだとか。この夜の素晴らしい演奏内容には、東京到着後にきちんと睡眠時間を確保できていたこともプラスに作用していたのかもしれない。
そして前述の通り、彼らは本日、10月16日には大阪公演を行なう。ジョシュはライヴのなかば、「100%ライヴ・ロックンロール」という言葉を口にしていたが、バックチェリーの完全に生身のロックンロールを言い表すのに、これほどまでに適切な言葉はないだろう。5人の男たちが繰り出す、機械仕掛けではなく、あくまで肉体的でプリミティヴなロックンロールの説得力と切れ味を、大阪のオーディエンスにも是非ご堪能いただきたい。
写真:YOSHIKA HORITA
文:増田勇一
<バックチェリー大阪公演>
@大阪・umeda TRAD
開場18:00 開演19:00
※オープニング・アクト:ジャレッド・ジェイムズ・ニコルズ
https://www.hipjpn.co.jp/archives/54123