【インタビュー】アルコサイト、力強く優しく多くの人の心に届く3rdミニ・アルバム『逆風に帆をあげろ』

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アルコサイトが、3rdミニ・アルバム『逆風に帆をあげろ』を7月10日にリリースした。ドラマーの脱退、新メンバー森田一秀の加入を経て1年半振りとなる今作は、タイトルが示しているように、ここに至るまでの彼らの歩みが決して順風満帆ではなかったことを示している。だからこそ、ここに収録された7曲は力強く優しく普遍的な響きを持って多くの人の心に届くはずだ。今回BARKSでは、リリースツアー<逆風を力に変えろツアー>2日目の渋谷CLUB CRAWLでリハーサル終了直後のメンバー4人にインタビューを敢行した。この日行われたライブのレポートと併せて読んでほしい。

■愛を知ったことでまた新しく一歩前に進める
■そういう意味で『逆風に帆をあげろ』を作りました


――まず、1年半振りとなる3rd ミニ・アルバムを世に送り出した今の率直な気持ちをそれぞれ聞かせてもらえますか。

北林英雄(Vo.Gt):前回のアルバムリリースから1年半振りとなるので、念願のリリースというか待ち望んでいた日がやっときたという感じですね。2018年の末ぐらいから本格的に制作に取り掛かったので、約半年間かけてついに完成したという幸せな気持ちです。

小西隆明(Gt):この4人で音楽ができるということがめちゃくちゃ嬉しいです。曲も4、50曲作ったんですよ。その中の自信がある7曲を聴いてもらえることが嬉しいです。

浜口亮(Ba):僕は、色んな人とやり取りしたり考えたりしたりするポジションにいたんです。前のドラマーが抜けて今の森ちゃん(森田一秀)が入るまですごく色んなことが起こりすぎて、時間が経つのが早かったです。今作ができて“1年半振りのリリースですね”って言われるたびに、もうそんなに経ったんだって思うぐらいなので、今やっとみんなで同じ方向を向いて一枚の作品を出せたということに達成感があります。これからスタートだなって思っています。

森田一秀(Dr) :僕がアルコサイトで叩く初めての音源がCDとして全国のショップに並んでいるのが嬉しいです。アルコサイトに加入する前から8~9年ぐらい音楽活動をしてきたんですけど、全国流通盤として大々的に展開される状況は個人的には初めて。ずっと夢だったのですごく幸せな気持ちでいっぱいですね。

――発売して約1ヶ月経ちますけど、反響はいかがですか?

北林:良いです!(笑)。前作の2ndミニ・アルバム『WOLF』は、自分の思いを信じて周りを見ずに突き進んだりする生き様を描いていたんです。でもその後ドラマーが脱退して、ふと立ち止まって周りを見ると、大切にしたかったものが大切にできていなかったり、自分の思ったように仲間といられていなかったりとか。周りを見ずに進んできたせいで、失ってしまったものがあって寂しい気持ちになってしまったんです。そのときに、今の事務所や家族、周りのバンドマンに助けられて、自分の中で愛を知ることができたんです。愛を知ったことで、また新しく一歩前に進めるっていう意味合いを持って『逆風に帆をあげろ』という作品を作りました。「すごく優しい一枚」っていうことは、みんなからも言っていただけましたし、僕としても今までで最高の一枚ができたと思っています。

――先ほど4、50曲作った中から選んだ7曲という話がありましたが、どんなことを基準に選曲したんですか。

北林:この1年半の間に本当に色んな曲を作ったんですけど、最終的に選ぶポイントとしては、ライブハウスでのライブを大切にしているバンドなので、セットリストやライブでのお客さんに向けてどういう感情を爆発させるかっていう意識はありました。


――新メンバーの森田さんの存在はバンドにどんなものをもたらしたのでしょう?

浜口:これまで僕が一番年上でバンドをまとめているということもあって、ツアー中はとくにいつも気を張っていたんですね。スケジュールやメンバーのことも気にしながら、でも自分の体調も結構ギリギリという感じでツアーを回ったりしていたんです。それで精神的に疲労がたまることが多かったんですが、年上の森ちゃんが入ってくれたことで任せられることも多くなって、心に余裕が生まれました。助けてもらっている感はすごくあります。

森田:改めて聞くと嬉しいですね。すごく照れ臭いですけど(笑)。

小西:森ちゃんを誘ったのは僕なんですけど、もともと地元のライブハウスでの僕の先輩で、色んなことを相談させてもらったりしていて、その頃から慕っていたんです。その長い関係があったので、へんに気を遣わずにいられるというのは、すごく大きいですね。

――ドラマーが変わるとバンドの音楽性も変わったりしますよね。

北林:そうですね。前回のツアーは森ちゃんを含め色んなドラマーとやらせてもらったんですけど、森ちゃんは楽器に対してストイックな部分があるんです。そういう部分に自分も学ばせてもらうことも多いですし、バンドの中では変わる部分もあったんですけど、それがお互いの良いものに昇華できているという感覚がメンバー全員にあったので、今はすごく良い状態になっています。曲作りの面でも、リズムパターンを色々出してくれるので、今回楽曲の幅もすごく広がったと思います。

森田:自分はこれまで、色んなアーティストのサポートをさせてもらったんですけど、新しい人とやるたびに自分がやったことのない音楽に触れたりしてきて。それを吸収するのに精いっぱいになっていた時期もあったんですけど、そのおかげで今バンドの中で色んな提案ができると思います。それにメンバーの3人から教えてもらうこともめちゃくちゃ多いですし、ずっと勉強の日々という感じで、刺激があって楽しいです。

――収録曲の中で、演奏面では「愛してあげるよ」がすごく印象的でした。間奏からのギターソロからの展開が面白いですね。2ビートでカントリー、アイリッシュパンク調のソロというか。

小西:僕はもともとブルースが好きなんです。そのルーツのフレーズを混ぜつつできましたし、一番好きなフレーズを弾けました。

――その後、ドラムソロもありますね。新メンバー自己紹介的な感じですか?

森田:ははははは(笑)。ここは最初は入っていなかったんですけど、何かもうひと捻り入れたいなっていうときに、ハマが“ドラムソロを入れたらカッコイイんじゃないか”って。あとでドラムソロをねじ込んで完成しました。

――最後に「2小節じゃないの?」という声が入っていますよね。これはなんですか?

北林:曲の最後まで聴いていただいてありがとうございます!(笑)。これは曲中でガヤを入れいるときに、エンジニアの方が「2小節後に入れてね」って言ったのに、メンバーの誰かが1小節で入ったので、「2小節じゃないの?」って言ってる声がそのまま入っているんです。完全に自然なままで収録されています(笑)。

――バンドの今の良いムードが伝わってきますよ。この曲は「君」に対して歌われていますが、収録された7曲の主人公ってみんな違うのでしょうか?

北林:違っています。1曲目は女性で2曲目は少年だったり。その曲ごとのストーリーがあります。だから“君”というのも、誰か歌う対象がいますし、自分に対して届けばいいなという思いもあります。

――1曲目の「鳴り響け」はどうして女性目線の曲になったんですか?

北林:自分の目線の曲が多かったので、自分以外の目線の曲をいくつか書いてみたんです。その中で「鳴り響け」は、仕事とか日常を頑張っている女性をイメージして書いたんですけど、結構ハマったんじゃないかなっていうことで収録しました。

――そういう曲作りは、前作とは大きく変わった感じがありますか。

北林:そうですね。前作は“自分がどれだけ尖れるか”っていう感じで、とげのある曲が多かった。でも、尖っていたら自分が動くたびに色んな人を傷つけてしまうことが多くて。上手く自分を理解しきれていなかった部分があったんです。そういう意味で、生活に溶け込めるような歌も作りたいと思っていました。

――「陽だまり」という曲は、ひと際優しく聴こえます。

北林:この曲をプロデューサーに聴いてもらったときに、“英雄は、意外と安らぎを求めてるんだね”って言われたんですよ(笑)。普段気を張っていたりライブではカッコつけたり叫んだりしているけど、裏では安らぎを求めているんだねって。少し恥ずかしいですけど、確かにそうかもしれないなって。ここに至るまで本当に色んな愛をもらったので、そういう愛に対しての感謝の歌ですね。

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