【ライブレポート】wyse、充電期間前ラストライブで「信じてほしいし、想いを届けてほしい」

ポスト

5月からスタートしたwyse結成20周年記念にして充電期間に入る前のラストツアー<wyse Tour 2019「Period」>が、7月28日に渋谷ストリームホールでファイナル公演を迎えた。

◆wyse 画像20点

約5ヶ月前の2月、同会場で本ツアー<wyse Tour 2019「Period」>を持って無期限の充電期間に入ることをファンの前で発表。「今だけでなく、この先の未来を見据えての必要な選択」と伝え、いつかまた戻ってくるために“時間”が必要だとしたTAKUMA。



5月にリリースされたシングル「蘇生」のBARKSのインタビューでもTAKUMAは、「全員がwyseに向き合って進んでいくからこそ、持ち帰るものがあると信じているし、そういうふうに僕は充電を捉えていますね。ひと回りもふた回りも大きくなりたい」と今回の決断を位置づけていた。そして、ソールドアウトとなったツアーファイナルは全10ヵ所14公演を切磋琢磨しながら廻ってきたwyseの現在進行形。最新シングル収録曲はもちろん、インディーズ時代のデモテープに収録されていた曲もアップデートさせ、ときに切なくて涙が流れる場面があっても、最後には清々しさが残る最強のwyseを見せつけた。

解散前のラストアルバム『Colors』(2005年)収録曲「Friend」で幕を開けたライブは新旧織り混ぜてのセットリスト。再結成の2011年まで約6年のインターバルがあったとはいえ、初期のライブに足しげく通っていた人から、再結成後もしくはメジャーデビュー後にwyseを好きになった人まで幅広いファンをすっぽり包みこんでしまうようなアクトを彼らは繰り広げた。

背後の巨大なLEDスクリーンに映し出された映像など、演出も周年ライブにふさわしい華やかさで、「Flowers」ではフロアに花の匂いが漂うという粋な計らいが。イントロで“待ってた”とばかりの歓声が上がった「終わらない夜のマーメイド」ではアクアリウムの中にいるかのような映像とwyseならではの甘く切ないメロディが夢心地にさせてくれた。



かと思うとTAKUMAのボーカルから月森のボーカルへと移行する最新シングル収録曲「Calling…」はEDMを取り入れた洗練されたサウンドと同期するように高層ビルのイルミネーションの映像が想像力をかきたてる。昔のライブの定番曲と今の楽曲にまったくギャップを感じないのはリアレンジされているからだけではない。やはり、wyseの曲のメロディには時間を飛び越える強さがあるのだと感じさせられた。イントロでMORIがギターをかき鳴らして煽ったアッパーなロックンロールナンバー「Breaking down」ではステージが真っ赤に染まった。

ライブ後半では攻撃的なwyseが立て続けに投下され、フロアはモッシュ状態になるほどに過熱。そんな熱をクールダウンさせるようにTAKUMAが口を開いた。

「楽しいね。やっぱりライブがいちばんいいね。音楽をやってる人間は“音楽で伝わらなきゃ意味がない”と思っているので、そういう意味でツアー中に何度も何度もメンバーと話をして、リアレンジして2019年の僕たちを届けたいという気持ちで向き合ってきました。次の曲も1999年の初期の曲ですが、何度か触って向き合って、ようやくその曲が形になったのかなと思いました。それもみんなのおかげです。僕たちの意志が今じゃなくてちゃんと未来に向いていると思いました。そういう想いをこめて演奏したい」──TAKUMA



力強いコールが起こる中、演奏されたのはHIROがエモーショナルなギターソロを響かせたインディーズ時代のナンバー「Feeling」。月森、TAKUMA、HIRO、MORI。結成時からの不動の4人が過去を振り返るのではなく、今、この瞬間を見て、歌い、音を鳴らし、バンドとしてひとつのカタマリになっていること、それを見ている人も全身で感じられたのがこの日のライブだったように思う。本編ラストに贈られたのは再始動後初のアルバム『Imaging』収録バラード「ALONE」。解散で寂しい想いをさせたファンに向けた歌詞だが、この曲に込めた気持ちは今も変わらない。そんなふうに響いてきた。

メンバーがステージを去るやいなやアンコールの声。時間が経つにつれ、大きくなる声に応えてツアーTシャツに着替えてメンバーが出てきた。定位置につき、ひとことも発さずにインディーズ時代の曲「wade」を投下。笑顔を見せ、色違いのTシャツを着用しているのはメンバー独自のカラーのTシャツが随時各地で発売されていたからだと、“wyseレンジャー”だと沸かせ、なごやかなムードに。

そして本ツアーではソールドアウトしたら銀テープが発射されるという約束(?)が成されていたが、ライブハウスの構造上の問題で、後ろからしか飛ばせず、みんなのもとまで届かなかったという失敗談も。さらにTAKUMAが「ソールドアウトしたけれど、今日は難しいかもしれないから、その代わりに匂いのプレゼントを」と言うとフロアからブーイングが。しかし、これは嬉しいイタズラ。スクリーンの星座が曲のスケール感とロマンを増幅させた「オリオンの空」では、後半で銀テープが勢いよく発射されて大歓声。「Scribble of child」も2019年のwyseバージョンとして鳴らされた。



最後のMCではTAKUMAが充電を発表してから限られた時間の中で、メンバー同士ぶつかりあいながらバンドとして進んできた日々を振り返った。

「みんなの中で、仮にプラスのものを50%でも僕たちが作れて残せたらいいなと。それまでの期間、あるいはここから40%ほどマイナスなものがあっても、僕たちが50%を作れたら、引っぱられることなく僕たちが引っぱってあげられるという気持ちでやってきました。残り10%はきっとみんな次第だと思うんですよね。
 今日までもそうだし、今日が終わって止まっても僕たちもそうだし、みんなもそうだけど日常があって現実が待っていて、お互いやらなきゃいけないこと、やるべきこと、抱えている問題、いろんなことがあると思います。ただその10%がマイナスのほうに行かなければ6対4になるし、そうなったときに近くにはいないかもしれませんけど、音楽は近くにあると思うので。支えになれればと」──TAKUMA

誠意あふれる言葉に拍手が起こり「1999年から2019年までの20年間、僕たちのことを応援してくれて、愛してくれて、本当にありがとうございました!」と伝えると場内からはすすり泣きの声が。TAKUMAはその先を続けた。

「今、ひとつ仮の約束をしてみたいと思います。この20年、どこ探してもなかったような最高の曲たちを作って形にして、それをちゃんとみんなにも届けて共有できるような未来に進むために、今日から頑張っていくことを約束したいと思います。想いは愛だと思っているので。信じてほしいし、期待してほしいし、想いを届けてほしい。それ以上のものを返せる僕らでいられるように努力しますから。少し先の未来でまた良かったら一緒に音楽しましょう」──TAKUMA



力強く温かい拍手と声援に感極まるTAKUMA。メンバーと話し合って、“最後の曲はこれしかない”と決めたというナンバーは“どんな未来でもきっと大丈夫 その重ねた手を強く信じて”と歌う「Glorious Story」だった。

すべての演奏が終わり、生声で「最高の20周年でした。本当にありがとう!」と叫んだ月森。誰もいなくなったステージには手塚プロによる作品が映し出された。それはコールドスリープのケースに入ったwyseの4人を鉄腕アトムとお茶の水博士が見守る絵。拍手はいつまでも鳴り止まなかった。

取材・文◎山本弘子
撮影◎今元秀明

■全国ツアー<wyse Tour 2019「Period」> -the Final Chapter- 7月28日(日)@東京・渋谷ストリームホール SETLIST

01. Friend
02. 無色の雪
03. 離さないで
04. Imaging brain
05. MORAL
06. J・E・T
07. Flowers
08. J’s song
09. ヒカリ
10. 言葉を失くした僕と空を見上げる君
11. Air
12. 終わらない夜のマーメイド
13. Calling…
14. L.A.S.P.U.P.
15. Breaking down
16. 路地裏のルール
17. My name is Japanese Breaker
18. BLAST
19. Feeling
20. 蘇生
21. ALONE
encore
22. wade
23. オリオンの空
24. Scribble of child
25. Glorious Story

この記事をポスト

この記事の関連情報