【インタビュー】ベリーグッドマン、過去最高のバリエーションで聴かせる新しいシーズンのアルバム『SING SING SING 7』
ラッキーセブンの7枚目。5年間で7枚という猛スピードで生き急ぐベリーグッドマンのニュー・アルバム『SING SING SING 7』は、これまでの作品とは何かが違う。力強く背中を押す得意の応援歌はもちろん、幸せの意味を深く噛みしめる曲から、あえて意味を持たせない軽やかな曲、Roverの弾くギター・インストなど、1曲ごとのバリエーションは間違いなく過去最高だ。「スタートライン」(『新幹線変形ロボ シンカリオン』エンディング主題歌)、「夢のまた夢」(『eBASEBALLプロリーグ』2019シーズン公式エンディングテーマなど)、「My Line」(Osaka Metroコラボ曲)、「大丈夫」(NHK『みんなのうた』)など強力タイアップを揃え、ベリーグッドマンの新しいシーズンがここからスタートする。
■大阪城ホールの大合唱がすさまじかった
■あの日の大合唱は僕たちのすごいパワーになりました
──もう7枚ですよ。
Rover:ねえ。“もう9枚ですよ”“もう12枚ですよ”って、これから何年言われ続けるかが喜びみたいになってきましたね。
MOCA:13とかなったら恥ずかしいわ。このまま売れずに解散とかなったら。
──何を言ってるんですか。
Rover:頑張らなあかんですね。この前ナオト・インティライミさんとしゃべっていて、ナオトさんも7枚でもうすぐ10周年なんですよ。僕らは5周年、メジャー・デビュー3周年で7枚。訳わからないです(笑)。
MOCA:2倍の速度ですね(笑)。
──生き急いでます。でも今年はいいことたくさんあったじゃないですか。1月には念願の大阪城ホール公演が大成功でした。
MOCA:そうですね。でも大阪城ホールが終わって燃え尽きた感覚もあったんですよ。燃え尽きる訳がないと思っていたけど燃え尽きはゆっくりやって来て、“俺ら、ほんまに大阪城ホールやったのかな?”って、今でもふわっとした記憶ぐらいで。
Rover:2か月ぐらいあとに後輩の引っ越しを手伝いに行った時に、僕らの大阪城ホールのDVDを流しながら作業してたら、見入っちゃって“すげえな”と自分で思っちゃった。完全に素人になっていました。「i」という曲でトロッコに乗って歌うシーンにすごい感動して、“2か月前にこんなんやってたんや”っていう感覚でしたね。
▲『SING SING SING 7』【初回限定盤A】
▲『SING SING SING 7』【初回限定盤B】
▲『SING SING SING 7』【通常盤】
──それって嬉しいようなもったいないような。達成感があんまりないってことじゃないですか。
Rover:達成感はないかもしれない。やり切った感覚はなくて“無事終わった”という感じ。しかも大阪城ホールの打ち上げで、『シンカリオン』の主題歌になる「スタートライン」の話をしていた時に、“ああ、僕たちはもう逃げられないんだな”と。イメージとしては、わーっと飲んで腹かかえて笑って最高やったなーってなると思っていたんですけど、めちゃくちゃシビアな話をずーっとしていたんで、これはもう逃げられへんなと。“一流になるってこういうことかな”と三流の僕は思いましたね。悔しくて、そのあと後輩を連れて地元のうどん屋さんで朝4時まで飲んだんですけど、酔っ払うために飲んでるんじゃなくて、噛みしめるためにハイボールを頼んでいる自分がいました。
──それってすごいドラマかも。大きな舞台を終えても、それが終わりじゃなくてどんどん続けなきゃいけない。良い曲を作らなきゃいけない。
Rover:終わりが来ないんです。でもそのほうがいいなと思いました。
──じゃあ「スタートライン」が、本当に大阪城ホール以降のスタートラインだった。
Rover:そうです。いいテーマをもらいました。しかも、僕には姉が二人いて、甥っ子姪っ子が6人いるんですけど、『シンカリオン』を見てる子たちが多かったんで、義理の兄に“最高やな!”って握手されました。
──間違いなくリスナーの幅が広がりますよ。『みんなのうた』で使われた「大丈夫」や、大阪メトロとコラボした「My Line」とかも幅を広げるためにはすごく役立っています。
Rover:そうだと思います。大阪城ホールはすごい登竜門だったんだなと思います。認知度が上がったというよりは、認めてくれていた人がさらに信頼を寄せてくれたという感じかもしれない。やって良かったです。
──そこで再スタートを切ってからはアルバム用の曲作りは順調に?
▲Rover
Rover:今回のアルバムはMOCAが引っ張ってくれたんです。
MOCA:そんな感覚もないんですけどね。ただ『SING SING SING 6』ぐらいから、俺が引っ張っていくという決意を持って取り組んではいます。そのタイミングで「大丈夫」「Good Day」「線香花火」「Secret Drive」とか、歌いたいテーマが自分の中にいっぱいあったので。ベリーグッドマンのチームとして一貫したテーマは“みんなと幸せになりたい。どんな辛い事があっても未来には幸せが待っている”ということで、それって何曲出しても一緒やと思っているんですよ。どの曲を聴いても良い意味で一緒やなと思ってもらえるようにするほうがいいなと思う軸と、この曲意味ないなという曲──それこそ「Secret Drive」とかはめっちゃいい曲やけど、秘密のドライブというだけで何のメッセージも乗せてない──そういうテーマを曲ごとに変えて行けるタイミングに気持ち的に入って来たかなと思います。「とにかくこの瞬間だけはぐっすり眠るために爪弾きたくて」も、ふざけてるじゃないですか。でも真剣に良いメロディを奏でるという、そういう“外し”もあって、振り幅が大きいほど、「大丈夫」とか「My Line」とかが映えてくるのかなと。極力意味ない曲を作ろうという気持ちと、ベリーグッドマンが求められている曲を作ろうという気持ちと二つの軸がありますね。
──わかります。こんなこと言うと身も蓋もないけれど、本当に伝えたいメッセージって、そんなにいくつもなかったりして。
Rover:ないですね。
MOCA:飲んで語る時も、夢だったり“おまえ頑張れよ”だったり、そのぐらいなので。一回使った歌詞をもう二度と使わへんとか、そういう制約を持っていた時期もあるんですけど、それもあんまり考えなくなった。
──それはね、「夢のまた夢」で思いましたね。“夢のまた夢、鼻で笑われたって”って、「Hello」のフレーズをまた使ってるなって。
MOCA:そうです。事務所の社長からは“鼻で笑われすぎだろ”って言われましたけど(笑)。“あれ、どっかで見たぞ”というものがあってもいいし、それを見つけた人はずっと応援してくれてる人だから、“あの曲の思いも背負ってんねや”と思うだろうし、ここから知る人は新しい曲として聴いてもらえばいいので。
──何なんでしょうね。そういう心境に達することができた理由は。
MOCA:年齢的なことなのかもしれないですけど。
Rover:大阪城ホールの大合唱がすさまじかったんで。僕らにとって一番の喜びは何ですかと言われたら、たぶんあれだったと思います。「ライトスタンド」や「Hello」の大合唱は、向こう何年間かはできないぐらいすごかったと思っているので、あの日の大合唱は僕たちのすごいパワーになりました。そこで自分が吹っ切れたのかもしれない。
▲MOCA
──さっき出た「Secret Drive」ですけどね。MOCAさんが初めてトラックメイクを手がけたという。
MOCA:僕がワンコーラスのトラックを作って、ラップも乗せてHiDEXに渡したんですよ。“こういう曲を作ってほしい”という意味でトラックを作って聴かせたら“これでいいやん”ということになって、そこに音を重ねて良い感じにしてくれたということですね。やっていることは今までと変わらなくて、誰かの曲をサンプリングしてデモを作ってヒデに直してもらうということをやっていたのが、今回は自分でループの素材を使って、“こういう曲にしたい”というつもりで持って行ったのがそのまま使われたということです。元々オケがないとできないタイプだと自分で思い込んでいて、音を聴いて“雨が降る車の中やな”とか“朝の太陽がまぶしい感じ”とか、サウンドを聴いてから物語を作りたいタイプなので、そこはヒデが今までやってくれていたことなんですけど。今はもっと曲を作りたいって、自分の中で飢えてる部分もあります。
──Roverさんのギター弾き語り「とにかくこの瞬間だけはぐっすり眠るために爪弾きたくて」からDef TeckのMicroさんと一緒に作った「線香花火」へのメロディアスでしっとりした流れ。最高です。
MOCA:“朝から夜に向かって行く”みたいな流れですね。6曲目「Good Day」が昼のピークで、「Happy 7」で3時ぐらいになって、「とにかくこの瞬間だけはぐっすり眠るために爪弾きたくて」「線香花火」で夜になって、最後に深夜の「Secret Drive」へというイメージはあります。
──うまいこと収まりました。「とにかくこの瞬間だけはぐっすり眠るために爪弾きたくて」はいい曲です。
Rover:正直に申し上げますと、時間がなくて丸投げされたという感じです(笑)。というか、“とにかくシリーズ”はいつも僕に対する丸投げなんですよ。MOCAの構想をしっかり実現してあげたいと思うので。それなのに“とにかくシリーズ”で良かったことは今まで一つもない(笑)。
MOCA:まったく盛り上がらへんしな。
──あはは。そんなことないでしょう。前回の「合唱」もすごく良かったし。
MOCA:今回、さくっと一発録りでいいと思っていたのに、何回も録り直すんですよ。“そんなこだわらんでええで”って言ったんですけどね。
Rover:きれいにちゃんと録ったほうが面白いじゃないですか。適当にやって面白いことはないので。
──確かに。しかもRoverさん、ギターがめちゃうまい。きちんとしたクラシック・ギターの弾き方。これは聴きどころですよ。
Rover:この前の「合唱」も一回もライブでやらなくて、これも一回もやらないと思うんですけど。ライブで出来る曲のほうが良かったかなという反省はあります。
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