【インタビュー】J、11thアルバム『Limitless』完成「だから誰にも止められないんです」

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■まだその先があるんだよ
■ということを伝えたかった

──すごい発言ですね(笑)。ただ、それは本心からの“嫌い”ではなかったはずで。

J:なんかね、あまりにも存在が近過ぎて。退屈とまで言うと意味合いが違ってしまうんだけど、他に何か自分だけのためのものが絶対あるはず、と思ってしまうほど絶対的な存在だったわけです。ただ、でも、これは専門的な話になりますけど、フェンダーの楽器を手にするうえで、自分なりにすごく研究もしてきたわけですよ。自分自身が好きな音というのが当然あって、それを鳴らしてくれる楽器の木材のマッチングというのを発見したりとか。いろいろ試していくなかで、こういうベースの音は嫌だな、というのもあるわけです。ただ、そういったことをしているなかで、本来のプレシジョンベースの音はそういうものじゃなかったんです。自分がかつて聴いていたプレべの音というのは違ってた。いや、実は違うわけじゃないんだろうけど、本当はこういう音がするんだ、というのを突き付けられたというか。今、手元に来てるモデルがまさにそうなんです。なんかもう、自分の概念というか、自分自身にとってすごく重要な何かを塗り替えられたかのような気分で。まさにそういう感覚でしたよ。

──おそらくJさんはプレシジョンベースを嫌っていたのではなく、自分を確立したいがために遠ざけていたんでしょうね。そしてその本当の良さを知ったからこそ、衝撃が大きかった。

J:うん。届いたベースの音は自分が毛嫌いしていた音じゃなく、自分が求めていた音だったんですよ。いきなりハードパンチをくらわされた感じだった(笑)。だから伝えなきゃ、と思ったんですよ。そうじゃなかったんだ、ということを。

──面白いものですね。そういう意味では、ベースの音というものについてもリミットの無さというものを実感してきたわけで。

J:ホントにそうですね。そういえば増田さんもLUNA SEAの武道館公演のタイミングで会っているはずですけど、スティーヴ(・リリーホワイト)との創作活動も、このタイミングで水面下で進んでたわけじゃないですか。いろんなことが、この局面で僕のまわりで起きてるわけです。自分自身を見つめ直す機会というのが次々と訪れてきてる。

──実際、彼とは話をしましたよ。LUNA SEAの最新シングルでもコラボレイトしている彼は、そのままこの先に控えているニューアルバムでもプロデューサーを務めている。JさんにとってはU2の『WAR』(1983年)を手掛けた人物、という印象が強かったはずですよね?

J:うん。僕をこのロックミュージックのシーンに引きずり込んだ作品なんだ、ということを彼にも伝えたんです。あなたが作ったアルバムがなかったら僕は今ここにいない、あなたが僕の人生を変えたんだ、と。「そんな人と今、同じ音楽を作ってるという不思議さがわかる?」って尋ねましたよ(笑)。そんな不思議なことも実際に起きてたわけですし、しかも同じタイミングでこうしていろいろ起きてるということには、きっと何かしらの意味なり理由があるはずで。

──やはりそれはこれまでの年月があるからこそ、ですよね。昨日や今日からの縁では、そこまでいろいろなことが繋がってはこないはずだと思うんです。

J:確かに。あと、それがなかったら、今、こうして起きてることの意味が理解できてないと思う。今、このタイミングで……変な話ですけど、こうして打ち震えるようなものに出会えているんだ、ということ。それはもう、幸せなことですよね。しかもそうした出来事のひとつひとつが、何かものすごいメッセージを自分に投げ掛けてきてるんじゃないか、という気がしてくるんですよ。まだまだこの先に行け、と言われているように思えてくる。だから今、なんだか違う扉がバンバン開いてる感じがすごくするんです。

──違う扉が開いた。壁は、あるようでなかった。そしてリミットは、あるかもしれないと思っていたけど実は存在しないことがわかった。

J:いや、まさにそういうことなんです。


──実際、その扉の先にある可能性、みたいなものが今作収録曲の歌詞の端々からも感じさせられるんです。たとえば「Love Song」も実は全然ラヴソングじゃなくて(笑)、“届かない何処かと / 終わらない何かを / 追い続けた日々を撃ち抜くように”といった言葉があります。かつての自分には想像できないようなどこかにまで今は到達していて、終わらずにいてくれますように、と願っていたものについて、もはやこれは終わらないものなんだという確信を持てていると思うんです。でもそれを、どんなふうに続けていくかが問題なんだ、という意味であるように僕には聴こえます。それこそJさんの場合、22年前に「BURN OUT」では“途切れないように”という言葉を発していて、途切れないようにするためにはどうすればいいのか、というトライをずっと重ねてきた。だけど今はそれが途切れないものだと確信したうえで、途切れないだけじゃ駄目なんだと言っているように感じられるんです。

J:まさにその指摘の通りで、結局、何かを途切れさせてるのは……自分なんですよね。だから自分のなかで途切れさせないようにするにはどうすればいいのか、ということなんです。自分が信じた何かを信じ続けるためには、それしかない。そうするためにいつまでも自分自身の何かを信じ続けたり、ずっと夢を追い続けたり。ずっと思い描いてるその場所というのは、実際あるのかどうかもわからないけども、もしかしたらそれは存在しないかもしれないと自分に思わせているのは、自分自身でしかない。そうした想いの狭間で僕たちはいろんなものを見て、聴いて、感じて、その都度、答えを出しながら生きてきてる感じがするんです。そして、そこに対しての、気付きみたいなもの。それを感じていくことによって、まだその先があるんだよ、ということを伝えたかった。あるんじゃないかな、という希望というか、問い掛けも含めて(笑)。

──この先も絶対にあるから安心していていいよ、ということではないんですよね。突き詰めれば絶対にその先へと続く道が見えてくるはずだから、ということではあっても。

J:そうですね、うん。

──歌詞については、1曲目の「the Beginning」の冒頭に“永遠の炎が灯した世界”という言葉が出てきて、前作アルバムの『eternal flames』というタイトルを思い起こさせられます。そんなことからも、このアルバムが新しい始まりではあっても、これまでの流れから分断されたものではない、ということがよくわかる。これまで思い描いていたものがよりクリアに見えていたり、自分が求め続けていくものはこれだ、という想いがより確かなものになっている、という違いだけがそこにある。

J:うん。それは10枚目のアルバムを作り終えて感じたことでもあるし、“永遠の炎が灯した世界”というのは、同時に1枚目のアルバムのジャケットにも引っ掛けていて。なんか、ここまですべての時間を繋いでくれる言葉でこのアルバムの幕を開けられたらいいな、と思いながら言葉を探してたんですけど、この言葉を一発目に置けたことによって、なんかすべての扉が一気に開いていって、さっきも言いましたけど、ギアが一段上がったような感覚で作ることができた。そういうアルバムなんです、まさに自分自身の新しい物語として。

──歌詞全体を見渡してみても、さまざまなことを歌っているというよりも、そういう今現在だからこそ言いたいこと、伝えたいことというのが綴られているように思います。

J:うん。そう捉えてもらっていいと思います。

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