【対談】人間椅子・鈴木研一×BARKS編集長、ロック好きによるロック談義
──当時KISS派としては、クイーンはどうでしたか?
鈴木研一:特にいいと思わなかったっすね。中学のときに『ザ・ゲーム』が出て聴いたんですけど、表題曲とかシングル曲はいいなと思ったけど、その合間合間に入ってる曲がつまんないなって思ったんです。でも、大ファンの編集長としても、そういうのはわかりますよね?
──確かに、当時は「なんか変な曲だな」とか「この曲いらない」とか思う曲もありましたよ。『オペラ座の夜』の「預言者の唄」とか意味がわかんなかった。今では大好きな曲だけど。
鈴木研一:『ザ・ゲーム』でもそういう感じがあったんですよ。なんかラップみたいなことをやってるでしょ(編集部註:「ドラゴン・アタック」)? ドリフの「合わせて ぴょこぴょこ 六ぴょこぴょこ〜♪」にしか聴こえなくて、だからクイーンの印象が悪いんですよ。
──気持ちはわかる(笑)。
鈴木研一:最初に『シアー・ハート・アタック』を買っとけばこんなことはなかった。そこまでクイーンが好きじゃなかったから、映画『ボヘミアン・ラプソディ』で、色々発見しましたよ。「ドラムのヘッドに笑った顔が入っているのは、スマイルってバンドからきてるんだ」とか。あの映画は、クイーンファンとしては相当良かったんじゃないですか?
──良かったです。ただ濃いファンになればなるほど、『オペラ座の夜』の1曲目「デス・オン・トゥ・レッグス」は、当時のマネージャーに対しての怒りをぶつけたもので、あのマネージャーのひどさに触れずして『ボヘミアン・ラプソディ』は語れないだろ、みたいなことを言いたくなるわけですよね。「俺はもっと知っている」みたいな気持ちを揺さぶる(笑)。
鈴木研一:確かに自分もバンドをやっているから、あれはもう本当の一部の断面でしかなくて、こうなるまでの経緯を見たかった、みたいなのはありますよね。「なんで途中フレディがソロにいきたがったのか」そこを聞きたいのに、そこの説明は無いのか?と。
──それはバンドマンの発想です。
鈴木研一:ははは(笑)。「ドゥーイング・オール・ライト」がスマイルの曲だったんだとわかって、フレディが入った最初のライブで「キープ・ユアセルフ・アライブ」をやったところ、カッコよくて震えました。
──「キープ・ユアセルフ・アライブ」が存在していた時点で、ブライアン・メイはスマイルの頃から6ペンスコインを使っていたんだろうこともわかりますよね。あのイントロはコインじゃないと出せないニュアンスですから。
鈴木研一:歴史が戻ったり進んだりしてちょっとあれだったけど、映画館ででっかい音で聴くとやっぱいいっすよね。あれはDVDじゃなくて映画館で観て良かった。
──30年も経つとKISS派もクイーン派も関係ないですね。でも私は高校生になるともっとハードな音が欲しくなり、スコーピオンズやジューダス・プリーストにハマります。
鈴木研一:編集長は最初に『電撃の蠍団 フライ・トゥ・ザ・レインボウ』を買ったのが成功ですよね。この前に1stが出てんだけど、そっちじゃなくてこっちで良かったと思うんです。
──日本だと1stと2ndの発売の順番が逆なんですよね。
鈴木研一:これ針落として最初に「スピーディーズ・カミング」、衝撃じゃなかったですか?
──でも「なんでこんなにジャケットがダサいんだろう」って思いました。
鈴木研一:でもジャケットとして成功してると思いますよ。絶対に忘れないじゃないですか。
──パープルやツェッペリンは当然のように聴いていましたけど、それとは違った泣き+ハードなサウンドが自分の好みそのものだと思って、もう大好きで。
鈴木研一:その気持ち、わかります。僕も高校に入ってツェッペリンとかディープ・パープルも聴いたんだけどお店で買った『イン・トランス』のほうが全然いいなと思った。ギターがすごいなあと思ったんですよね。いまだに良く聴くんですよね。ウリさんにインタビューしたことあって、僕は「ロンギング・フォー・ファイヤー」がすごい好きだって言ったら「これは自分にとっても思い入れ深い曲なんだ」って。「歌詞の内容もいいし、生まれて初めて一番高いフレットで弾いた記念の曲だ」って。
──それは凄い。僕は「ダーク・レディ」を初めて聴いたときに衝撃が走った。
鈴木研一:なんてカッコいいんだろうって思いましたよね。大したことないリフなんですよ。それがカッコよくて。
──「何、この魔術がかかったようなカッコよさ」って。
鈴木研一:コーラスはクラウス・マイネがやってて、出だしの歌はウリさんじゃないですか。「シシシシシティン…」って歌い出しの頭を引っ張るのがカッコよくて。
──そういうのって、バンドで歌うところで影響を受けたりしているんですか?
鈴木研一:採り入れてますよ。よく逆回転でやる人いますけど、自分でやるのがカッコいいんですよ。ライブは特によくやる。この頃聴いたのってやっぱ心に残っているから、1曲1曲がいいって言うより、この曲の2番のここがいいとか、ワンポイントでありますよね。
──ありますね。そこがくるのをワクワクして待つという。
鈴木研一:そうそう。サバスでも「イントゥ・ザ・ヴォイド」っていう僕らのアンセムがあるんですけど(『マスター・オブ・リアリティ』最後の曲)、3番にいくときに「ピシッ」ってクローズハイハットが一発だけ入るんですよ。それがカッコよくて、それ聴くために7分我慢するんです。「くるくる…これ、この一発!」って。
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