【ライブレポート】the GazettE、やがて「第九」へと至る狂熱のO-EASTファイナル
昨年の6月に自身9枚目となるオリジナルアルバム『NINTH』をリリースしたthe GazettEが、全国ツアー『Live Tour18 THE NINTH / PHASE #01-PHENOMENON-』をスタートさせたのは7月19日のこと。埼玉県・三郷市文化会館でのことだった。
◆the GazettE
現時点での最新アルバムとなる『NINTH』だが、インタビューの為に送られてきた際、初めて聴いたその印象は、改めて感じたthe GazettEというジャンルの確立だった。新しく振り切った楽曲もあった中で、そこまで遡る!? と、ここまでキャリアを重ねて来た彼らがまさかそこまで戻るとは!? と正直面喰らったほど、これまたとことん振り切ったという意味では新しいメロウな歌モノも共存していたのだ。しかし、このアルバムを通してはっきりと見えたのは、彼らのやりたい“ライブの形”であった。
それは、【教義】をテーマとして掲げたコンセプチュアルな前作『DOGMA』とは明らかに異なる世界。同じバンドとは思えない程に、別世界を描いた“ライブの形”だった。
ステージから放たれる蒼い光が赤に溶け、メンバーがステージに現れるとオーディエンスの歓声が立ち昇った。ホールやアリーナで聞く轟音の様な歓声とはまた異なる“近い狂気”を感じる熱だった。その場は一瞬にして温度が上がった。一階のフロアの熱気が二階まで上がるまで、一瞬。この現状を書き記すことで、その場にどれほど高い熱が充満していたのかが伝わってくれるに違いない。
一曲目に置かれた「Falling」は重心を低く置き、ゆっくりとそして激しくも静かな印象でフロアを侵食していった。無理に盛り上げようとしないそのスタイルは実に彼ららしい。
「東京! 今夜もよろしく頼むぜ!」
RUKIの叫びから曲は「NINTH ODD SMELL」へと流れ込んだ。 9枚目のアルバムであるというところを提示する意味もあったというアルバム『NINTH』。そのタイトルを考えたのはRUKIであったと言うが、RUKIは最初、アルバムタイトルを『NINTH ODD SMELL』にしようと思っていたそうだ。まさに、「NINTH ODD SMELL」は、それほどまでにこのアルバムの軸に近い楽曲だと言えるだろう。RUKIの中では、精神論的なものとしては分かりやすいものだったというが、それを曲調にどう落とし込んでいこうかというところで苦悩したらしい。
が、しかし、そこに広がっていった「NINTH ODD SMELL」は、“暗くてマニアックでダークでヘヴィ”という意味では『DOGMA』と通ずるものがあるのだが、the GazettEというバンドの原点に回帰した音像を感じさせられる、ヘヴィロックであった。この曲でREITAは前へと出、ボーカル台に足をかけてプレイする積極性を見せた。寡黙な印象のREITAの余勢を駆ったプレイは、このライブへのthe GazettE全員の想いだと感じたほどだった。
「NINTH ODD SMELL」から繋げられたのは「DAWN」。“13階段”“教義”といった『DOGMA』の世界を引用した歌詞をメッセージとして載せて届けるこの曲は、『DOGMA』から先のthe GazettEへと誘う城塞の門が開かれた瞬間のように思えてならなかった。
「初っ端から本気で来いよ! やれんのか!? 気合い入れてかかって来いよ!」
RUKIの煽りはいつもよりも近い激しさを感じた。シンプルなドラムのリズムから、RUKIの煽りへと繋げ、「THE STUPID TINY INSECT」を投下した流れも、 “ライブハウス”という場所に見合ったライブパフォーマンスだと感じた。それは実際の距離の近さがあってこそであるが、彼らはそこを今回のステージの演出とし、武器に変えていたのだ。
このアルバムの中で一番新しい境地への挑戦を感じたのは「BABYLON’S TABOO」。実に、この曲をライブハウスで聴けるとは思っていなかった。彼ら自身、自らも“新たな風”だと感じていたこの曲は、音源で聴いた時とはまた違った狂気を孕んだ違う怪物と化していた。確実にバンドの成長を感じさせてくれた、ロックというジャンルにカテゴライズするには、現存する音で言い表すには難しいほどに新たなthe GazettEの歴史を切り開く印象だった。この曲で魅せた戒の難解なドラムプレイも特筆すべき一幕であったと言える。硬めな音色とドラムのタム使いは、この曲の魅力を作り出している中心にあると私は思う。
この日は、届けられた楽曲そのものももちろんだが、ライブハウスという環境の中で最大限の演出を魅せてくれた照明も素晴らしかった。紅い胞子のような光がRUKIの身体をむしばむように這って魅せた不思議な演出は、限りある環境の中だからこその出せた特別な絵面だった。
「虚 蜩」「その声は脆く」の流れは、まさに音源の時から想像していたライブ感をダイレクトに感じた時間でもあったと言える。「その声は脆く」で聴かせてくれた葵の切なく物悲しいアルペジオは絶品。葵というギタリストの歩んできた人生をも感じさせるような“生き様”を描いた景色がそこに広がった。同じく個性を感じたのは「TWO OF A KIND」。ここでは麗のギタリストとしての魅力が前面に押し出されていたと感じた。明るめな照明の演出の中、音が解放されていく瞬間を見た気がした。
後半のたたみかけでのフロアのノリも圧巻。オーディエンスのクラップと叫び声で埋め尽くされたフロアに届けられた「UGLY」では、麗のライトハンドと戒のツーバスに魂の音を感じた。デスボイスで攻め立て後半戦の盛り上がりへとライブを誘った。
冒頭でも記したが、“教義”の名を掲げてツアーでもコンセプチュアルな世界観を繰り広げていた前作『DOGMA』からは一転、本作『NINTH』は制作時からライブを想定して創られたもの。方向性を一つに定めることなく、とにかくライブで魅せることを意識して創られた世界は、まさしく、今のthe GazettEのありのままを証明してくれた。
結成からの16年。自身9枚目のアルバムに『NINTH』と命名した彼らの潔さを感じたこの日のライブは、確実にこの先の彼らの未来を映し出していたように思う。
終演後、ベートーヴェンの交響曲第9番“第九”を流し、『the GazettE LIVE TOUR18-19 THE NINTH TOUR FINAL 「第九」』 (読み:ダイキュウ) と題したこのロングツアーのファイナル公演を、9月23日に横浜アリーナにて開催することが発表された。
彼らがライブハウスツアー『LIVE TOUR18-19 THE NINTH PHASE#03 激情は獰猛』の最終日のO-EASTの景色を、“ずっと小箱でツアーしてきたから、ここがすごく大きな場所に思えて、なんか落ち着かない”と言っていたのだが、その感覚が、この横浜アリーナでのライブにどのように活かされてくることになるのか、実に楽しみなところである。
the GazettEというバンドの未来が、ここからどの様な広がりを魅せていってくれるのか、この先も見守っていけたらと思う。
取材・文◎武市尚子
Photo:Keiko Tanabe
セットリスト<LIVE TOUR18-19 THE NINTH PHASE#03 激情は獰猛>
SE 99.999
1 Falling
2 NINTH ODD SMELL
3 GUSH
4 VORTEX
5 GABRIEL ON THE GALLOWS
6 裏切る舌
7 BABYLON’S TABOO
8 痴情
9 虚 蜩
10 その声は脆く
11 THE MORTAL
12 HEADACHE MAN
13 TWO OF A KIND
14 UGLY
15 ABHOR GOD
16 UNFINISHED
EN1 GO TO HELL
EN2 INSIDE BEAST
EN3 SWALLOWTAIL ON THE DEATH VALLEY
EN4 [DIS]
EN5 ATTITUDE
EN6 TOMORROW NEVER DIES
<the GazettE LIVE TOUR18-19 THE NINTH TOUR FINAL 「第九」>
OPEN 17:00 / START 18:00
チケット価格:全席指定 前売り\8,000(税込) / 当日\8,500(税込)
一般発売:2019年8月24日(土)
<WORLD TOUR 19 THE NINTH PHASE #04 -99.999->
May 4 USA-Dallas / The Bomb Factory
May 6 USA-New York / PlayStation Theater
May 9 CANADA-Toronto / The Queen Elizabeth Theatre
May 12 MEXICO-Mexico City / Pabellon Cuervo
May 15 ARGENTINA-Buenos Aires / Teatro Flores
May 17 CHILE-Santiago / Teatro Caupolicán
May 19 BRAZIL-Sao Paulo / Audio Club
June 11 UK-London / Electric Ballroom
June 14 FRANCE-Paris / Le Bataclan
June 16 GERMANY-Cologne / E werk
June 19 GERMANY-Munich / Backstage Werk
June 21 RUSSIA-Moscow / Izvestia Hall
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