【ライブレポート】2019年、“メリー”の展望
2018年12月25日、MERRYが東京・品川クラブeXにて<VERY MERRY CHRISTMAS~CORE Premium Night~>と銘打った二部制のFC限定公演を開催した。
◆ライブ写真
夕刻より開演の第1部、「~silent acoustic night~」は、文字通りMERRYの楽曲をアコースティック・アレンジで演奏するという特別な趣向。この日の会場である品川クラブeXは、フロア中央の円形ステージや天井部分の9面大型ディスプレイなど、他の場所ではなかなか味わえない高級感を堪能できる場所だ。
場内に入ると、ステージ上には楽器やマイクが観客を歓迎するように並べられている。この円形の舞台を360度取り囲むように設置された客席は、かつてないほどメンバーとの距離が近い。クリスマスにふさわしいスペシャルな場所でMERRYを観られるとあって、開演前からファンの気分は高まっていた。
ジャジーで弾けるようなSEとともにテツ(B)とネロ(Dr)のリズム隊が客席と客席の間の通路を通って入場。別の扉からは結生(G)と健一(G)のギターコンビが登場し、ステージに向かって歩き出す。各々の配置についた楽器隊が1曲目「黄昏レストラン」を奏で始めると、客席の反応を確かめつつ、ゆっくりとガラ(Vo)が現れた。
円形ステージの周縁を歩きながら歌う彼と、着席スタイルで演奏に徹する楽器隊という珍しい構図が、この楽曲の叙情と哀愁をさらに高めている。ガラが思わずこう述べる。「どこを向いたらいいかわからないけど、普段見れない角度からMERRYを楽しんでください。平成最後のクリスマス、思い出に残りますように。CORE(MERRYのFC名称)限定なので、ちょっとはミスするかもしれませんが、大目に見て!」
続いて披露された「ブルージーナイト」と「犬型真性MASOCHIST」から香り立つ色気も大人のムードたっぷりで、切なさが募る。久々のアコースティック・ライブということもあり、この第1部ではしっかり歌を聴いてください。と言うガラ。彼の「回転!」の合図でステージがメンバー1人分回転すると、オーディエンスは思わずクスクス笑いだす。ショーのブロックごとに実行されるこのアイデアにより、ファンは満遍なく全メンバーと触れ合えるというわけだ。
この第1部のハイライトは、メンバー自身がやりたい曲を1曲ずつ披露するという“メンバーリクエスト”のコーナー。ガラ「恋哀交差点」、結生「リフレイン~土曜日の涙~」、健一「群青」、テツ「新曲」、ネロ「nameless night~名もなき夜~」といった各人のキャラクターがよく伝わってくる選曲に観客は大喜び。作詞作曲への自画自賛や直感など、選曲理由の一つひとつにもファンへの想いがこもっていて、頬が緩むシーンだった。これらの曲の詩情に浸るCOREファンに向けて、いくつかの嬉しい告知がなされた。
まずは<2MAN TOUR 「魑魅魍魎2019」>の開催発表。このツーマンツアーは、3月2日の岡山YEBISU YA PRO公演から、3月22日の高崎club FLEEZ公演にかけての全6ヶ所で、defspiral、Psycho le Cému、MUCC、メトロノーム、DEZERTといった強力なゲストを迎えて行われる。この顔ぶれを見てタイトルを付けたというガラの表情は、自信たっぷりだった。
そして2019年春のミニアルバムのリリースが決定。タイトルは『for Japanese sheeple』とのこと。ガラいわく、ツーマンツアーの終わり頃には発売したいとのことなので、続報に期待したいところだ。また、本作のリリースに伴うワンマンツアーも決定している。こちらは5月5日の仙台CLUB JUNK BOX公演を皮切りに、6月14日の東京・日本橋三井ホールでのツアー・ファイナルまで全7ヶ所で開催。
この一連の動きについて、ガラは力強く述べた。「2019年は“メリー”表記です。あの頃の気持ちを取り戻すのではなく、今の俺らなら何ができるかっていうのを示したい。2019年、やることは何も変わりません。さらにトガッていこうと思います。俺らはまだまだやらなきゃいけないことがあるし、このメンバーでずっと続けていきます。何をしでかすかわからないメリーでいたいです。これからも一緒にメリーと歩んでもらえたらと思います」
この後、ガラがタンバリンを軽快に鳴らしながら叫ぶ「ハライソ」、寒い時期だからこそのぬくもりが嬉しい「Happy life」と続き、ラストは「この曲をやらないとMERRYのクリスマスは締め括れない」とのガラの言葉に導かれた「冬のカスタネット」。この美しいメロディに涙腺を刺激されているうちに、あっという間にMERRYのアコースティック・ショーは終わりを告げた。
「すごく気持ち良くやれました! 今年1年、MERRYをありがとうございました。2019年は亥年ですけど、羊のメリーは正面から突っ込んでいきますんで、応援してください!」とガラが丁寧に言葉を発する。メンバー全員が充実の表情を浮かべると、フロアは大きな拍手に包まれた。時計の針はちょうど午後7時半を指していた。
FC限定だからこそのセットリストと趣向に大満足の第1部だったが、それ以上に気づかされたのは、MERRYがいつの時代もアコースティック・アレンジが映えるような素晴らしい楽曲を生み出してきたこと。演者の鼓動を間近に感じられるこの場所でのアコースティック・ショーをまた観たくなった。
午後9時より開演の第2部「~holy burst night~」もまた、ファンにとって忘れられない時間となった。こちらは通常のバンド編成でのライブで、思う存分歌い暴れるという趣向。ドラムセットを中心に、要塞のように機材が設置されたステージを眺めているだけで心奪われるものがある。
ムード満点のSEとともに、開場時には観客と同じ目線の高さにあったステージが一段上昇する。ガラ、結生、健一、テツ、ネロの5人を観客が総立ちで迎えると、着席スタイルでしっとりと楽しんだ第1部とは異なる熱気がすでに発生している。
1曲目の「sheeple」でさっそく気合いが入るオーディエンス。2階席も当然興奮状態だ。最新型のMERRYを堪能できるこのシングル曲は、すでにファンの間で浸透している模様。結生が手掛けた歌詞によってもたらされる新鮮な疾走感が心地よく、今後のツアーで大化けする気配のある楽曲だ。ここから「頭がザクロ」「Black flag symptom」といったにぎやかな楽曲で畳みかけると、頭が飛ぶほどのヘドバンを繰り出すファンが多数出現。観衆がMERRYを360度取り囲んで生まれる狂熱が、たとえようもなく気持ち良い。
「こんな距離感でメンバーとライブやることもないし、新鮮でしょ? 今夜は行けるとこまで行きましょう!」とガラが扇動する。ここから続けて披露された「Fleeting Prayer」「クライシスモメント」「黒い虹」は、非常に緊張感のある流れだった。闇の中でもがき、叫び、祈るガラから溢れ出す感情にじっと見入るファンの立ち姿が印象深い。そんな演劇にも似たスリルの直後、「第1部からやってて思ったんですけど、みんなが回ったらいいんじゃない?」とファンを笑わせることも忘れないガラであった。
この後の「さよなら雨(レイン)」で始まったブロックは、MERRYの5人が紡ぐ歌謡の趣きをたっぷりと味わえた時間帯。たとえば「林檎と嘘」の濃厚な色合いは、場内の雰囲気と相まって、とりわけゴージャスに感じた。演奏中のメンバーの手元、足元、顔の表情、後ろ姿といった普段なかなか見られない光景に興奮した向きも多いことだろう。また、彼らが曲の入りやキメ等、要所要所で互いにアイコンタクトをしていることも大きな発見だった。こうした、通常のライブでは見逃してしまいそうになる細やかな場面を目撃できたことも円形ステージならでは。いつもと違う角度からMERRYの核心に迫ることができた第2部である。
ガラの「来年は行ってない土地、やってない場所でやりたいです。今日バッチリ終わって、2019年に踏み出しましょう。2018年のMERRY、暴れ納めしましょう! 品川! 踊れ!」の声を合図に「不均衡キネマ」が鳴り響く。この曲本来の猥雑さに加えて、大人の遊び心を含んだ高級感が嬉しい。ギターを抱えながら客席最前列に飛び込んでいく結生の姿も見どころだった。激しい欲望の渦巻く「SIGHT GLASS」、狂喜乱舞の「千代田線デモクラシー」と続き、ラストはMERRYの代表曲のひとつとして定着した「エムオロギー」。目の前の視界がパーッと明るくなる、大団円にふさわしいこの楽曲の最後に「今年もたくさんの幸せをありがとう! これからもMERRYと一緒に! メリークリスマス!」と叫んだガラ。いつものことながら、ひたすら満足感を得た本編だった。
アンコールに応えて、MERRYのメンバーたちが再び登場する。「あと1曲、冬の季節に合う歌をやりたいと思います」と彼らが奏で歌い始めたのは「ラストスノー」。この哀愁の余韻に包まれた場内に、ガラの「品川、ありがとうございました! 良いお年を! メリークリスマス!」の声が響き渡り、第2部は幕を閉じた。
すでに時計は午後10時半を指している。客電がつき帰り支度を始めたファンもいるなか、メンバーたちが慌てて戻ってきた。「最後は騒いで終わりたいじゃん? 一発、COREのみんなと同じ目線でやるのを試していい?」とガラがほくそ笑むと、一段上がっていた円形ステージが下がり、オーディエンスと同じ目線の高さに立ってのサプライズ・アンコールが始まった。「この曲でイッちゃってください!」とガラが煽ると、「バイオレットハレンチ」が炸裂する。めったに経験できない、メンバーの息づかいが感じられる演奏は、これ以上ないクリスマスプレゼント。メンバーもファンも暴れまくり、過激に突き抜けたラストナンバーが着地点に至ると、ガラは絶叫した。「メリークリスマス! こういうの面白いね! COREありがとう! 2018年も本当にありがとう! 来年も一緒に騒ぎましょう! MERRYでした!」
品川クラブeXというラグジュアリーな空間を巧みに使った、どの瞬間も画になるようなライブだった。メンバーをあらゆる角度から観られたのはもちろん、ファン同士が互いの笑顔を確認できたのも円形ステージならではだろう。MERRYはまた一つ、自分たちによく似合う場所を手に入れた。平成最後の〈VERY MERRY CHRISTMAS〉はCORE限定だからこその幸福な熱が充満したライブとなった。
このクリスマスの夜に改めて感じたのは、どんな見せ方でも“映える”情緒豊かな歌をMERRYが無数に持っているということだ。彼らの音楽をたっぷりと浴びれば、誰もが心の底から自由になれる。ミニアルバムやツアーに関しても、彼らはきっと想像以上の景色を見せてくれるだろう。最新型が常に刺激的。2019年、“メリー”が掴み取る新たな自由をともに謳歌したい。
文◎志村つくね
写真◎中村卓
<2MAN TOUR 「魑魅魍魎2019」>
w/defspiral
3月3日(日)名古屋THE BOTTOM LINE
w/Psycho le Cému
3月7日(木)大阪味園ユニバース
w/MUCC
3月9日(土)神戸Harbor Studio
w/メトロノーム
3月21日(木祝)仙台CLUB JUNK BOX
w/DEZERT
3月22日(金)高崎club FLEEZ
w/DEZERT
オールスタンディング
¥5,500(税込・D代別)
<メリー ONE MAN TOUR 2019「for Japanese sheeple」>
5月6日(月・振)高崎club FLEEZ
5月10日(金)名古屋THE BOTTOM LINE
5月11日(土)大阪味園ユニバース
5月25日(土)岡山YEBISU YA PRO
5月26日(日)神戸Harbor Studio
オールスタンディング
¥5,000(税込・D代別)
メリー ONE MAN TOUR 2019「for Japanese sheeple」-FINAL-
6月14日(金)日本橋三井ホール
◆メリー 公式サイト
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