【インタビュー】杉本善徳 (Waive)、「僕はやっぱりWaiveしか好きじゃない」
■あまり曲を書かなかったのが功を奏して
■まだ“隙間”だらけなバンドなので(笑)
──なるほど。それでも今、新曲をつくっているんですよね。
杉本:うん。でも、さっきも言ったみたいに、要らなくなれば要らないでいいし。田澤くんが取材の中で言ってた、「いつか」はあの時にしか生まれない、と。だから「いつか」を越える「いつか」……「またいつか」なのか分からないけど(笑)、それは僕もたしかに違うと思う。それは「いつか」というハードルが高いから、とかいう話じゃなくて、「別物しか常に生まれない」と思っているから。「いつか」の代わりに、例えばライヴのラストでできるような曲が生まれる可能性はあるけれども、「いつか」を越そうぜ、「ガーリッシュマインド」を越そうぜ、という気持ちで書いてしまうのは、根本が間違った音楽のつくり方のような気がしているから。「まだ書いていない曲があるんだよね」というのはいいと思うんですよ。13年も前に解散しているバンドだから、前回の(2016年の)活動の時に書いた11年ぶりの新曲「Days.」のように、良いか悪いかは別として、その当時は書けなかった音楽が生まれているし。短い期間とは言え、またあれから2年が経って、「隙間があって、そのポケットにスポン!とハマる曲が生まれたね」とか、「自分らで隙間が空いてるのは気付いてたけど、当時はスキルなくて埋められなかったものを、今なら埋められるんだね」とかがあるんだったら、新曲が存在しても意味があるし。それがライヴでは披露されない曲になったとしてもね。まぁ、元々既に解散していて、ライヴで披露される曲はないはずのバンドなんだから(笑)。ファンも今より年老いていった先に、「めっちゃ好きやったけど、さすがにもう『ガーリッシュマインド』を聴いてたら頭痛い」とか「めっちゃうるさいな、なんやこれ?!」となってる人が落ち着いて聴ける曲だったらいいかもなぁ、とかね。その真逆で、我々はおじさんおばさんになっていっているけど、「久々にライヴハウス足を運びたくなるわ」みたいな曲が生まれたら、それはそれで素敵なことかもな、とも思うから。結果どういう曲が生まれて来るかはまた別の話として、まぁ、生んでもいいのかな……? 僕がそういう性格で、あまり曲を書かなかったのが功を奏して、まだ“隙間”だらけなバンドなので(笑)。「あ、まだこういうことってやってへんねんな」がいっぱいあるから。「じゃあ、書いてみようかな」となったんです。
──聴けるのがとても楽しみです。「Days.」もすごく良い曲でした。今だからこそ沁みる意味を感じる歌詞で。
杉本:うーん……でも、分からないんですよ。もちろん「Days.」は一生懸命書いたし、これは2016年の最後のライヴでも言ったんですけど、もちろん今の自分の音楽スキルを考えると、「Days.」は自分の持てるスキルすべてを入れたわけではない曲だし、Waiveというものを意識してつくった曲だから、すごく……稚拙な曲の一つだと思ってるんですね、自分の中で。
──とてもピュアな曲ですよね。
杉本:うん、そうですね。ピュア……たしかにそうかも。そこから1年、2年と時が経っていく中で、その歌詞だとか、メッセージに対して自分が思うことだとか、その歌詞に対して自分がこの2年間取ってきた行動だとかが(新たに)存在するようになって来ていて。そのときの自分としてはそんなつもりはなかったけど、「この歌詞に対して僕の取った行動は裏切りでしょ」とか。「逆に傷付いた人いるかもしれないな」と思う部分がいっぱいあるようになってきていて……僕が変に考えすぎなのかもしれないけど。自分の行動、発言に対して「反省しないとなぁ」というか……何て言うんだろう? 「あの時に同じ言葉に対して抱いていた理解の深度を考えると、まだ言っちゃいけなかったな」とか。「こんなことを言っておきながら、こんなことしたのか、俺は」と考えてしまうことがあるんですよね。だから僕の中で「Days.」は既に……悪い意味で取ってほしくはないけど、反省とか、後悔の曲になっているんですよね。比較的スルメ曲だから(笑)、いろんな人に、特に今回の<MUD FRIENDS>では大阪でだけやったんですけど、「あの曲、もっとやったほうが良かったんじゃないの?」と言われたり、ファンの人たちからも「『Days.』がようやく沁みて来た」と言われたりするけど、僕の中では「『Days.』が沁みられると逆にツラい」、というところまでもう行ってしまっていて。大袈裟に言うと「期待を裏切った」というか、「Days.」で書いた自分と今いる自分は、もう重なっていない、というか……そういうことをしてしまったなぁと思っちゃってるんですよね。
杉本:まだ歌詞も書いてないんですけど、メロディーを紡いでいく中で、大人な振りをしたいからテクニカルなことをやってしまって。そうすると、どんどんWaiveっぽくもなくなっていくし、テクニカルになればなるほど「別に誰が書いてもいいんちゃうんか?」みたいな曲になっていって。だから、たとえ「また一緒や」と言われる可能性があったとしても、自分の中で“呼んでいる”メロディーと癖とで、同じ譜割りでつくることにしたんです。なんだかんだ言っても、そこに行くべきなんじゃないのかな?と思うようになって、メロディーが自分の中でどんどん素直なほうに寄って行った。田澤くんのインタビューの中で、僕のつくる曲は「キーが高い」という話をしていたのを読んで、「しめしめ」と思ったのかムカついたのか(笑)、何なのか自分でも分からないけど、こういう性格なので、「じゃあ、キーが低くでもいい曲書いたろか!」と一旦、なっちゃって(笑)。「ごめんやけど、キーとかと関係なく俺はいい曲書けんねん。それを教えてあげてもいいよ?」という気持ちになってしまったので(笑)。
──あのインタビューが影響したんですね(笑)。
杉本:一度はそのスタンスで書き始めたんですけど、曲がいいか悪いかは別として、やっぱりその書き方は邪(よこしま)なので(笑)、やっぱり違うな、と。「善徳くん、また高い曲書いてきたな~」じゃないとあかんのとちゃうかな?となって。実際そっちのほうがハマりのいいメロディーが頭の中では流れているわけだから、「やっぱり、こっちなんじゃないのかな?」という作業をやっていくと、どんどんWaiveっぽくなっていき。そのメロディーの段階で「どういう言葉があてはまるんだろうか?」とか、「自分はどういう感情でこの音に行った時に気持ちいい、“正しい”と思えるんだろう?」と言語化していく作業をする時に、「Days.」に対する反省であったりとか、裏切りであったりとかが、自分の中で顕著に見えてくるようになってしまって……。「Days.」の時に一生懸命「11年ぶりの新曲です、これが僕たちの気持ちです!」と言ってつくったのに、「たった2年で自分はこんなに至らなくなるのか」が見えて来てしまった。それ以外にも、日常生活の中で自分が口に出していることが、いかに取り繕われたものなのか?とか……そういうものがボロボロと剥れて出てきて。その素っ裸にした状態が僕にとっては原点に近いところだから、できた曲は「あ、善徳くんらしいの来たな」になってるのかな?という気はするんですよね。
──実際、キーが高いほう田澤さんらしさが活きる、ということも考慮して作曲されている部分もあるんですか?
杉本:うーん、“高いほうが”とはちょっと違うんですよね。僕なりに琴線に触れるメロディーがやっぱりあって、「田澤くんがどの音からどの音に行った時に、何という文字の言葉が乗っていたら真っ直ぐ来るのか?」とか、これをされた時に男性を感じる、とか、これをこういうふうに歌われた時に女々しさが見えてくる、とか。僕なりに数多く彼の歌を録って来ているから、“データ”として知っているので。「しんどいのも分かるけど、このしんどいメロディーをしんどい言葉でしんどそうな顔で歌ってる田澤くんが……こんなふうに言ったら気持ち悪いかもしれないけど……セクシーだよね」とか。「ここでブレスする瞬間の田澤くんを俺、見たいもんな」とか、「この瞬間に女の子はドキッとするやろうな」という瞬間のヴィジョンがしっかりあるから。結局、似た曲にはなっていく原因もそこにもあって、そういういい瞬間が結果、高い音のところにあることは多いかもしれないですね。やっぱり彼はハイトーンができる人なので。
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