【インタビュー】杉本善徳 (Waive)、「僕はやっぱりWaiveしか好きじゃない」
■自らの意志でWaiveを“愛しいもの”にして
■人生の核にすることは“してはいけない”
──メンバー間のやり取りの仕方や関係性について、田澤さんは「実家感があった」とお話されていたんですけど、杉本さんはいかがでした?
杉本:うーん……これもまた、僕と田澤くんの大きな違いだと思うんですけど、田澤くんは僕と違って大阪に頻繁にライヴで帰るのに、実家に帰らないんですよ。僕は、別にライヴをしなくても積極的に実家に帰るタイプなんですよ。音楽と全く関係のない話を率直にすると、例えば、年に1回しかこの先僕が大阪に帰らないとして、母親の年齢を考えたら、“あと20回とか会えたらいいところなのかなぁ?”と。毎日会ってる人の1か月にも満たないうちに、この人はこの世にいなくなるんだな、ということを考えるから。でも、彼の言う家族ってのは、“あまり会わない人”っていう可能性があるというか(笑)そういう意味で言ったんじゃないでしょうけど。
──家族の定義、実家の定義そのものが違う、と。
杉本:その可能性はある。実際は分からないですけど、僕は勝手にそう思ってるところがあって。だから、僕にとっての家族の定義とは全然違うというか、Waiveはもっとぎこちなく「お…おう、久しぶり。元気? 最近何やってんの?」みたいなところから入らないとダメな感じなんです。今だったらSNSがあるから、各々の行動を把握しようと思えば表面的には知れるはずだけど、僕はメンバーのSNSに関わらないようにしていて、誰の日常にも触れないようにしている。もしかしたらメンバーは僕のことを知ってくれているのかもしれないのに、僕は彼らのことを一切知らないに等しいから、「何やってんの、最近?」から入らないとダメな状態なので。それも込みで僕にとって、Waiveには“家族っぽさ”がないのかもしれないですね。
──SNSなどを見ない、というのは、あえてそういう距離感を設定なさっているということなんですか?
杉本:そうですね、はい。
──理由は何ですか?
杉本:嫌いなんじゃないですか(笑)。
──えっ(笑)!?
杉本:いや、彼らのことが嫌い、という意味じゃないんですよ? 彼らが(Waive以外の)何かをしていることが嫌いなんだと思うんです。なぜなら、僕はWaiveをやっててほしいから。無茶苦茶だし、横暴な話だし、これをメンバーの違うところの活動でファンになった人が読んだら、「杉本のこういうとこがイヤ!」と言われるかもしれない(笑)。だけど、僕はやっぱりWaiveしか好きじゃないから。ソロ活動はしているけれどもバンドはできないのもそれが理由で。いろんな人にバンドも誘われたし、その人たちが悪いミュージシャンだったとも決して思わないけど、どの人たちとステージに立っている自分を考えた時にも、「いやぁ~……」と僕はなってしまったので。だから、彼らの今の活動を見て、それを「いいバンドだね」「いい曲だね」なんて、僕は思いたくない。僕は変に素直だから、もしそう思ってしまったら、「こうやってもう1回Waiveやろうよ」という気持ちが彼らにあっても、「いや、今やってるバンドめちゃくちゃいいから、大事にしな」とか訳の分からんことを言っちゃう可能性を自分に感じてしまっているんです。本音かどうかは分からないけど、田澤がWaiveを「家族だ、実家だ」と我々に言ってくれたり、淳もそう思ってるんだとしたら、それに対して「いつでも帰っておいでよ」と僕は言える位置じゃないとダメなのかな?と思ってるから。そのためには逆に冷たくしておかないと。「もう東京出て行ったんやったら、私歳取って足悪くなったけど、実家なんか帰ってけぇへんで、ちゃんとお仕事し!」って親が言うのと一緒で(笑)。それぐらい避けてますね。知りたくない。
杉本:特別と言うとカッコいいかもしれないですけど、女々しいんだと思うんですよね、僕が。こういう話を聞いたら「それだけWaiveが愛しいんだ」みたいなことを第三者は言ってくれるかもしれないけど、もう僕の中で、愛しいかどうかも分からない域まで来てしまっている、というか……(笑)。決して愛しくないわけじゃないけど、「愛しいものだ」と思ってしまうと求めすぎてしまいそうだし。ソロ活動で培ってきたもの、それは自分の手腕であれ、ファンであれスタッフワークであれ、漠然とした言葉で言ってしまうけれど、そういう“気持ち”みたいなものも、やっぱり僕にとって大事なもので、かけがえのないものはそこにある、と思っているから。Waiveは、今のかけがえのないものをつくる上で絶対的に必要なものだったし、解散したという事実さえも、今の自分には必要だったと思ってる。それが無くなったことに対して、諦めてもいるし。理解もしているんだけど、だからこそ、Waiveに気持ちが引っ張られ過ぎていってしまうと、ソロでのファンだけの話じゃなく、「それ以降に起きた事象すべて」を僕は裏切ってしまう気がしていて。だから、「もうできないのかな?」という気がするんですよね。
──難しいですね……。
杉本:人は裏切るものだと思うし、僕もやっぱり、プライベートも含め人を裏切らなかったなんて言う気は毛頭ないし。裏切り行為を経験したこと、自分が裏切ったこと、裏切られて身を以って体感したことによって、人は考え方が変わっていくから。例えば田澤くんがいつも言っているような、バンドが解散して、その後再演をした時の懺悔の気持ち。彼は「引き金を引いたのは自分だ」という表現をしていて、そこに対する後悔があるから、今では「チャンスがあるんだったらWaiveをやろう」と言っているし。僕は、引き金を引いたわけじゃないのかもしれないけど、引き金を用意したのは自分なんじゃないのかな?と思っていて。引かないようにロックを掛けても良かったのに、最終的にそれを外したのは僕なんじゃないのかな?って。解散が決まっても、発表のその日まで「いや、もう一回考え直せ」という話を周りの関係者の多くからされたけど、それを放棄して、最後まで抗わなかった自分を理解しているので。僕は日常においても、身内、家族、スタッフとかも含めて、自分に関わったすべての人たちと衝突し合ったことによって成長してきたと思っているし、Waiveもきっとそうだと考えている部分があるんです。守るには、大事に思い過ぎてもいけないのかな?と。ここ(Waive)が僕の中でまた大事になってしまったら、きっと誰かの中で、「いや、そういうスタンスだとWaiveができない」という想いが生まれるのかもしれないな、とも思うし……分かんないけど、僕は勝手にそう思ってしまっている。もしそうじゃないんだとしたら、誰かが僕に対して「そうじゃないんだよ」と働き掛けて来ることで、「あぁ、そうだったの?」となって変わる可能性はあるけれど。僕の自らの意志でWaiveを“一番愛しいもの”にして、人生の核にすることは、“してはいけない”と思ってるんです。
──でも……これからもWaiveの活動を見たいというファンの方がいて、それに応えたい、という気持ちもあるわけですよね?
杉本:望まれることに応える、ということを拾い出すと、「どこまでそれって続くの?」って気もしているんですよね。例えば、1万人お客さんが集まっていたアーティストが、「100人になろうが俺は歌うぜ! 最後の1人まで、なんだったら0人でも、俺が歌いたいから歌うんだ」というのが正義、と言う人もいるだろうし。「いや、やっぱり現実的に50人ぐらいになってきたら無理やろ」という人もいるだろうし。それぞれの答えがあって、誰にも話すわけでもないけれど、僕には僕が見つけている答え、明確に「ここだ」と思ってるラインがあるから。求めてくれる気持ちもうれしいし、なるべくそれに応えたいという想いは当然持ってるんだけど、その引力だけに引っ張られてWaiveが続いてしまうのは……カッコつけてるみたいな言い方になるけど、僕の中ではアーティストとしての“美学に反してる”んですよね。僕は、僕のやっていることでファンが喜んで、そのファンも僕の次の何かを見たいと思ってくれて、僕もそれをまだ生みたいと思うからこそ関係性が続くべきだ、と思っているから。それと、ソロ活動を続けてきた中で僕が断言しているのは、仮に二度とライヴをしない日が来たとしても、いちいち「これが僕のラストライヴだ」とは言わないこと。バンドの解散と一緒で「二度とやらないよ」ということを言う気はないんです。Waiveに関してもそうで、しっかりとした解散ライヴをして皆を悲しませることも二度とない分、「Waiveとして再結成した」という言い方もしないよ、と。万が一この先、メンバーから「やろうよ!」と言われてやることになったとした場合、一つ条件があるとしたら、「じゃあ二度と解散しないであるべきだね」ということだと思う。もちろん、やらなくなる可能性はあるんですよ? けれども、わざわざ「終わり」と告げてやる音楽活動はもうしたくないなぁ、というのが、僕が経験則から思っていることだから。漠然と「なんか最近飽きた」とか、「不仲になったような気がする」とか、そういう理由で解散するのはちょっと違うかな、と。それらを考えていくと、僕の中ではもう、やっぱりバンドは終わっちゃってるんですよねぇ……。
──メンバー同士で最近、そういう話し合いをされたことはあるんですか?
杉本:いやぁ、一切しないですね。最近だけじゃなくて、たぶん一度もないと思いますね。
──そういうふうに杉本さんが思っておられる、ということを皆さんが察してらっしゃる雰囲気はありますか?
杉本:全く分かんないなぁ……でも、皆思ってるんじゃないですか? 「(Waive以外の)バンドやったらいいのに」って(笑)。今はもう思ってないかもしれないですけど、一時期は。
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