【インタビュー】岸田教団&THE明星ロケッツ、“尖り”や“はみ出し感”を継承し新たな魅力が散りばめられた4thアルバム『REBOOT』
■いつも以上に曲作りをがんばれたしベースを考えるときも余裕があった
■“まだいけるぞ”という感じだったので今回はがんばれたんです
――岸田さんとhayapiさんの共作名義になっている「Never say Never」や、hayapiさんが書いた「キミノミカタ」についても話していただけますか。
岸田:「Never say Never」はほぼ僕が作って、若干hayapiさんも手伝ってくれたという感じです。メロディーを作るときに、一部のメロディーをhayapiさんが考えたんですよ。だから、共作名義ではあるけど、僕の色が強く出ていますね。「キミノミカタ」はhayapiさんがコードとピアノだけの状態のデモを持ってきて、とりあえずこれにドラムをつけようという話になって。メロディー自体が僕のメロディーと全然違っていて、明確に暗いんですよ(笑)。
ichigo:暗いというか、ナイーブな感じだよね。
岸田:そう。それを踏まえて、ドラムを、ちょっと凝ったものにしました。
――「キミノミカタ」もそうですが、今作のドラムは凝ったものが多いですね。
岸田:今回は僕のために、みんなががんばって仕事を分担することで、僕は曲を作ったり、アレンジを考えたりする時間がいっぱいあったんです。やっぱりね、10年間なにも変えずに続けるというのは不可能なんですよ。10年もすれば、向き/不向きがわかってくるし、10年やってできないことは本当に才能がないわけだし。才能があるものに関しては必ず覚醒するけど、10年やって覚醒しなかったものは20年経っても無理。なので、今回の制作では、それまで流れで仕事をしていた部分でも10年やってうまくならなかったことは手を引いて、それは他の人に振るようにしたんです。逆に、自分が得意なことは、絶対に人に譲らないとか。そうやって仕事の分担を変えたことで今までよりも時間ができたので、凝ったドラムもがんばって作りました。
――考える岸田さんも、それを実際に叩くみっちゃんさんもさすがです。
岸田:普通は、叩けないと思う。ある程度叩けなくてもしょうがないと思ってドラムを考えても、みっちゃんはそのまま叩いてくれるので、調子にのってどんどん難易度が高くなるという(笑)。みっちゃんに、「これ間違ってない? 本当にこれ?」と聞かれて、「そうです」みたいな(笑)。「できなかったら変えていいスよ」と言っても、大体できるという。
――その辺りもさすがです。話を「キミノミカタ」に戻しますが、この曲はichigoさんが歌詞を書かれていますね。
ichigo:hayapiから、最初にご指名がきたんです。hayapiには、贖罪的だったり、後悔しているようなイメージだと言われたんですよ。でも、曲を聴いてみたらもうちょっと優しさがあったというか愛を感じたので、これは多分ラブソングだよという話をしました。「ラブソングを書いてもいい?」と聞いたら「いいよ」と言ってくれたのでラブソングを書くことにしたんですけど、hayapiが持っている世界観みたいなものが自己犠牲をイメージさせたんですよね。彼は自己犠牲に溢れた人だなということが、今回のアルバムの制作でもすごくわかったので。その自己犠牲のイメージから、好きな女の子を直接的に幸せにできないなら自分が地球を守って、間接的に幸せにしようという思いを抱いた男の子が浮かんできたんです。だから、“正義の味方”ではなくて、“キミノミカタ”。多分世間からは正義の味方、ヒーローとして扱われているんだろうけど、すべてそのモチベーションは一人の女の子のために…という世界観を描きました。
――いい歌詞ですね。
ichigo:泣けるでしょう?(笑)
――泣けます。それに、Aメロの儚げで、でも温かみのある歌も、そういう男子の心理を見事に表現しています。
ichigo:本当ですか? 嬉しいです(笑)。
――今作は、今まで以上に歌のハッとする場所が多くなっていますね。
ichigo:全体を通して思いきって歌ったというのもあるんですけど、今回は偶然の産物だったり、これは失敗に近いなと自分が思う部分も、hayapiが「いい! カッコいい!」と言ったら全部活かすことにしたんです。そういう奇蹟みたいな瞬間がどの曲にもあって、それがハッとするという印象につながっている気がしますね。本来は自分の歌は自分でコントロールしたいところなんですが、今回はhayapiを信じる、hayapiの向こう側にいる岸田を信じると決めたんです。それに、そういうテイクを活かすことで、自分の歌について改めて感じたことがあったし、今回できるようになったこともいくつかあって。今回の制作でエンジニアの敏さん(渡辺敏広氏)が一番喜んでくれたことでもあったんですけど、静かな低いところの声に高い成分を混ぜて歌えるようになったんです。今までは偶然できたりしていたんですけど、意図して使えるようになったので、表現だったり、ダイナミクスの幅が広がった。その結果、私の声の音量を下げてもちゃんと抜けてくるからミックスが一層やりやすくなったと言われました。
――より進化されたんですね。それに、hayapiさんは自己犠牲に溢れているという言葉がありましたが、たしかに今作の彼のギターはより楽曲にフィットしたものになっていることが印象的です。
岸田:そう。hayapiさんはすごく尖っていて、我が道をいくタイプのギタリストというイメージを持っている人が多い気がするけど、実は楽曲に寄り添ったアプローチもめちゃくちゃ上手いんですよ。今回のアルバムは、hayapiさんならではのトリッキーな部分は継承しつつ、オシャレなフレーズとか。キャッチーなフレーズを弾いている曲もあるんですよね。それは、すごくいいなと思います。
――岸田さんのベースも今までとテイストが変わっていますね。以前ベースはボトムを支えていればいいとおっしゃっていましたが、今回は動きのあるベースが多くなっています。
岸田:がんばりました(笑)。さっきも話したように、今まではありとあらゆることを自分でやっていたんですけど、こいつは自分よりもうまいんじゃないかと思うことを積極的に振っていったというのがあって。僕は、本当にものを創ることだけに集中していたんですね。それで、いつも以上に曲作りをがんばれたし、ベースを考えるときも余裕があって、“まだいけるぞ”という感じだった。それで、今回はがんばれたんです。僕は、やればできる子なんです(笑)。ベースのフレーズに関しては、基本的に曲を作るときに併せて考えました。1音1音、他の楽器のコードワークとかを見ながら、ここはいっても大丈夫だろうというところを探していったんです。アレンジの方向として、ここはギターがそんなに厚くならないし、ドラムのリズムがこうで、メロディーがこうだから、メロディーに当たらない範囲でこう動こう…みたいな感じでした。
――緻密に構築されたんですね。それに、ハイ・ポジションにいったときのしなやかさや、ウネリ感なども絶妙です。
岸田:その辺りは、狙ってやっています。スライドのタイム感は気にしています、ちゃんと。僕はベースの弦を揺らすのが苦手なんですよ。スライドは元々得意なので、自分が得意なところを基盤にして、苦手なところはなるべくバレないように組み立てる。今回は、そういうテクニックが光るベースになっています(笑)。
ichigo:光ったね(笑)。
――とはいえ、タイトなドラムとしなやかなベースのコンビネーションは魅力的です。
岸田:今回のドラムは本当にタイトで、その結果サウンドに余裕ができたというのがあって。今までのみっちゃんは力いっぱい叩いていたので、1音1音が長かったんですよ。それが短くなることで、隙間が空くんですよね。そうなると、そこの隙間に別の情報を入れられる。今回は、そこを活かすアプローチが採れたんです。
――サウンド面でより洗練された印象を受けるのは、ドラムの音が短くなったことも要因になっているんですね。もうひとつ、今作ではカヨコさんが「Reboot:RAVEN」を書かれています。
岸田:カヨコさんはLiSAさんなど数多くのアーティストへ提供している作曲家であり、友達でもあります。今回外部の作曲家を起用して、しかもそれをタイトル・トラックに使うという勇敢さ(笑)。ただ、そこに深い意味があるわけではなくて、元々仲がいいので、今回のアルバムで1曲コライトしようという話になっていたんです。作曲はカヨコさんになっていますけど、実際の曲の土台は僕が先に全部作って、そこにメロディーをつけてもらったんです。
ichigo:そういう作り方だったけど、メロディーがカヨコさんなので、やっぱりいつもとはテイストが違っていますよね。でも、すごく歌いやすかったです。カヨコさんとは遊びでユニットを組んでいて、彼女が作ったメロディーを歌っているというのがあるし、彼女もシンガーソングライターなので、メロディーを歌いながら作っていると思うんですよ。だから、歌いやすいんですよね。それに、岸田のサウンドで女性らしいメロディーが乗っているというのが新鮮で、歌うのが楽しかったです。
岸田:僕も、“自分の曲に女性らしいメロディー”ということをやりたかったんです。それで作ってみたら予想以上に良くて、良かったのでタイトル・トラックにしちゃうという(笑)。良かったんだから仕方ない。
――タイトル・トラックが外部の作曲者ということで、結構大きな決断だったのかなと思いましたが、そうではないんですね。
岸田:純粋にいい曲だから、タイトル・トラックにしたんです。この曲は、間奏もいいんですよね。hayapiさんはトリッキーなギター・ソロを弾いているけど、ピアノの和音が合わさることで、メロディー感はピアノが受け持っていて、表現力はギターというふうにパキッと別れていて、僕は間奏もすごく気に入っています。
――「Reboot:RAVEN」に限らず、今作は“カッコいい!”と思うシーンが満載で、それも大きな魅力になっています。
岸田:僕がREBOOTするにあたって一番最初に思ったのが、情報量を増やすということだったんです。今までの自分達の楽曲の情報量が、自分が思っているレベルまで達していなかったから。僕は多い情報量を持っている音楽というのが好きで、時間単位でどれくらいのイベントが起こるかみたいなことをすごく計算している。それがちゃんと結果として残っていないことがすごく多くて、今回はちゃんと残したかったんです。そこにこだわって作っていくと、とんでもないことになるんですよ。曲は短くなるし、一瞬一瞬が込み入ったものになるので、いかに1音1音を短くするかが大事になる。音が短いことで、情報が入れ替わっても大丈夫になるから。それに、なるべく音が重ならないようにしました。分厚い音を作るんじゃなくて、楽器が切り替わったときに、裏の音がなくなるようにしたんです。楽器が増えるんじゃなくて、切り替わるようなイメージで、楽曲の頭から最後まで音楽のカラーレーションが変わり続けるという。今回は、そういう形になっています。
ichigo:そういう手法を採ることで、『REBOOT』はスッキリしたイメージだけど密度が濃いアルバムになったと思います。それに、私は『REBOOT』を完成させて、ツアーがすごく楽しみになりました。このアルバムでできるようになったことやわかるようになったことが沢山あるので、歌は変わると思うんです。ツアーでは今までの曲も当然やるだろうから、そこでの変化も楽しんでもらえるだろうし。それに、今回は今まで以上に歌詞を深く読み込むようにしたというのがあって。hayapiと歌詞について話している中で、そういうふうに考えるんだというメソッドをいろいろ教えてもらった感覚があったんです。私は芸術的な感覚で見るということが苦手だと思っていたけど、食わず嫌いだったんですよね。リズムに関しても、リズムを取ろうと思っていなかったから、できなかったんだなとわかったし。やってみたら、できたという(笑)。なので、今までの曲もあらためて歌詞を読み込んだり、リズムを理解しようと思っているんです。そういうところで、歌の聴こえが大分変わると思うんですよね。
――今後のライブも楽しみです。ichigoさんから話が出ましたが、『REBOOT』のリリースに合わせてライブハウス・ツアーを行うんですよね。
岸田:今度のツアーは、今までのライブとは違ったものになります。みんなが僕のためにリソースを空けてくれるので、考える時間がいっぱいあって、考えれば考えるほどできることは沢山あるし、しっかり物事を考えて創るならこうだというイメージもちゃんとある。今回のライブはツアーを通してのクオリティーの高さというか、顧客満足度をすごく上げたいんですよ。『REBOOT』というアルバムをちゃんと表現したくて、そのための覚悟を決めています。
取材・文●村上孝之
リリース情報
2018.12.05 on sale
<アーティスト盤>CD+特典BD
品番:1000735130 価格:5,000円+税
<通常盤>CD(1枚組)
品番:1000735131 価格:2,800円+税
<収録曲>
1.Decide the essence
2.our stream
3.Never say Never
4.Blood and Emotions
5.ストレイ
6.3 seconds rule
7.Reboot:RAVEN
8.Love prescribe
9.シリウス
10.キミノミカタ
11.stratus rain
12.Code :Thinker
ライブ・イベント情報
■弾幕祭/再起動 ~Re:boot and Carnival Bullet Time.
2019/2/28(木) CLUB CITTA'(川崎)
問い合わせ:DISK GARAGE 050-5533-0888 (平日12:00~19:00)
■大阪公演
2019/3/08(金) バナナホール
問い合わせ:夢番地(大阪)06-6341-3525 (平日11:00~19:00/土日祝 休)
■福岡公演
2019/3/10(日) DRUM Be-1
問い合わせ:キョードー西日本 0570-09-2424 (11:00~17:00/日祝 休)
■仙台公演
2019/3/17(日) LIVE HOUSE enn 2nd
問い合わせ:キョードー東北 022-217-7788 (平日11:00~18:00/土曜10:00-17:00)
■東京公演
2019/3/23(土) EX THEATER ROPPONGI
問い合わせ:DISK GARAGE 050-5533-0888 (平日12:00~19:00)
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