【考察】“なぜ今、Waiveなのか?”──悲運なバンドの“これまで”と“これから”

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Waiveが2019年4月30日、Zepp Tokyo単独公演<Waive GIG「サヨナラ?」愛しい平成よ>を開催する。同公演は、“平成最後の日”に行われるものだ。2018年10月、MUCC、サイコ・ル・シェイムと共に合同イベントライブ<MUD FRIENDS 2000~2018>で約2年振りの再演を果たすことは既報のとおりだが、バンドの結成、解散、再演…と紆余曲折を繰り返してきた彼らが、その活動の舞台であった平成の終わりに何を行い、どんなメッセージを発信するのか。BARKSでは約半年間にわたって、Waiveを再検証していく。特集の第一弾は、“なぜ今、Waiveなのか?”。ライターの大前多恵氏が彼らを考察する。

◆Waive 画像

メジャーデビュー目前か?と囁かれていた矢先、2005年に突然の解散。ラストツアーは全公演ソールドアウト、今は無き渋谷AXで開催されたファイナルでは渋谷AX史上最多の2052人を動員。Waiveとは、まさに惜しまれつつ散っていった悲運のバンドだった。

2010年、Waiveにとって大切な人の死を受け、解散から5年の時を経て行われた再演ツアーでは8000人を動員。解散10周年を記念して再・再演ツアーを開催すると、約11年ぶりとなるオリジナル音源「Days.」を会場限定で販売。1500枚を完売し、根強い人気を示したのが2016年のことである。

そして、2018年の今年。10月14日から大阪、そして10月18日に東京でMUCC、サイコ・ル・シェイムとの3マンイベントライヴ<MUD FRIENDS 2000〜2018>を実施。さらには2019年4月30日、平成最後の日にZepp Tokyoにてワンマン<GIG「サヨナラ?」愛しい平成よ>を開催する。5年周期で再演を行うのか?と思いきや、予想よりも早い2年後に、彼らは戻ってきたのである。

正直に明かすと、Waiveの活動を私自身はリアルタイムで追えていたわけではない。ある日掛かってきた「Waiveというバンド、知ってますか? 聴いてみませんか?」という電話を発端に、この企画は動き出した。以前からWaiveを愛して来られたファンの方々にとっては説明不要のことばかりかも知れず心苦しいのだが、10月10日にベストアルバム『WAVES』(2009年リリース)から全20曲の配信をスタートするこの機に、敢えて少し遠い距離にいた者の眼差しとフラットな耳で彼らの生み出してきた音楽に触れ、“なぜ今、Waiveなのか?”を考えてみたい。そしてWaiveのこれからを見つめていけたら、と思っている。


バンドは2000年に大阪で、杉本善徳(G)と田澤孝介(Vo)が中心となり結成。幾度かのメンバーチェンジを経て、現在の形となった。解散後の杉本はソロ活動に注力し、楽曲提供も多数。田澤孝介はソロと並行しながら、2010年からRayflowerの一員としても活動中。高井淳(B)は数々のアーティストのサポートや楽曲制作に携わっているが、貮方孝司(G)はWaiveでの活動時以外は基本的に、音楽から離れた生活を送っている。

作詞作曲を主に手掛けてきた音楽的中枢は杉本善徳。音楽性は、BOØWYを始祖とするビートロック、パンク、オルタナティヴ、J-POP、ヘヴィロックなどなど、曲ごとに違ったエッセンスを含み多岐にわたるが、メロディーメイカーとしての卓越した才能は一貫して発揮されている。とにかく、耳に残る良い歌ばかりなのである。歌メロに限らずその才はアレンジにも反映されていて、ギターリフやソロ、ツインギターの利点を生かしたアンサンブルにも忘れがたいフレーズが多い。ふと時空が歪み、異空間へと誘われるようなトリップ感もある。そして、たとえ難易度は高くとも不思議とポップな聴き心地は保たれていて、これみよがしなところは皆無なのだ。

また、2003年にリリースされインディーズチャート1位を獲得した「君と微笑おう」(配信ベストにも収録)は、彼らの音楽的DNAに刻み込まれているJUDY AND MARY、GLAYなど時代を彩るバンドサウンドの礎を築いた、故・佐久間正英氏がプロデュースを手掛けていることも感慨深く、別の意味での聴きどころと言えよう。

天賦の才としか言いようのない田澤孝介のパワフルな歌声、それを巧みに操る抜群の歌唱力もバンドの大きな武器である。とりわけ高音域は驚異的な伸びを誇り、圧倒的な抜けの良さ。プロに対してこんな表現もおかしいのだが、やはり、とにかく歌が上手いのだ。アッパーな楽曲での力強さ以上に、私が惹き付けられたのは「銀河鉄道」「unforgettable memories.」といったミディアム、スローテンポ曲での落ち着いた歌唱。こういった楽曲群は、年を重ね表現が細やかになっていくことで、今後より一層味わいを深めていくのではないか?と思う。

歌詞もまた、魅力的である。硬軟織り交ぜたバリエーション豊かな詞世界で、言葉で戯れるようなユーモラスなものもあれば、シリアスで文学性の高いものもある。特に今印象深く感じているのは、ベストアルバム1曲目に収録されている「いつか」の“いつか、死ぬ僕たちは。”というフレーズだ。命には限りがあり、誰もが一度きりの尊い命を生きている、という紛れもない事実。生と死をテーマに生み出された音楽は無数に存在するが、ここまで明確に、短く、誰にでも分かる言葉で“自明のこと”として言い切ってしまう勇気と潔さに、ハッとした。

日々災害や事件が日本のどこかで起きていて、“永遠の安寧などない”と身に沁みる昨今だということもあるし、自分自身が年齢を重ね、死をより身近に迫り来るものとして感じているからかもしれないが、この前提に立って生み出された音楽は信じられる。そして、正しいかどうかはどうでもいい、“この想いにだけリアリティーがあればいい……!”と歌う全編を通して、過去2度の再演や2018・2019年のWaiveの新たな活動を予言しているかのように聞こえることに驚いた。優れた創作物は未来を予言するとも言うし、真理を突いた普遍的な表現は朽ちることがない、とも言えよう。そして、そんな深いメッセージを浸透力の高いポップなサウンドとメロディアスな歌に乗せてスッと届けてしまうところに、Waiveの凄みを感じざるを得ないのだ。


現状、ライヴは2016年の赤坂BLITZ(※当時)での再・再演<GIG「Days-in the future-」>を収めたBlu-ray映像で鑑賞したのみだが、メンバー各自が並々ならぬ想いを抱えてステージに立っていたであろうことは、冒頭の表情からだけでも感じ取ることができた。長年、歌い奏でられることなく眠っていたことが本当にもったいない、と心底思ってしまう名曲の数々。終盤に向かうにつれ、思わず画面の前で身を揺らしてしまうほど、引き込まれて止まないステージングだった。

2016年の時点では次の活動が未定だったため、披露し終えるごとに1曲1曲そっと大切に封印するような、楽しいライヴの中にも寂しさ、切なさを感じる部分もあった。MCはメンバーの見た目や佇まい同様に四者四様、笑いと涙があった。真っ直ぐで熱くて、ちょっと不器用な人たちなのかな?と想像したが、実際のところどうなのだろう……? 何より、紆余曲折を経て再度集まろうと決めたメンバーたちの、時が経ちすべてを受け止めた上でしか醸し出せない、温かい空気感。そして、待っていたファンに対して溢れ出す感謝の想いには強く胸を打たれた。

あのエモーショナルなライヴ空間を、まずは10月18日、Zepp Tokyoで開催される3マンイベント<MUD FRIENDS 2000〜2018>にて、いよいよ体感できることを心待ちにしている。

文◎大前多恵

■デジタルベストアルバム『WAVES』

2018年10月10日(水) 配信スタート
¥2,000 (税込) / 単曲価格 ¥150(税込)
01 いつか
02 わがままロミオ
03 銀河鉄道
04 Sad.
05 ガーリッシュマインド
06 そっと…
07 Dear
08 キミノヒトミニ恋シテル。
09 春色
10 TRUExxx
11 PLACE (2005 recording version)
12 unforgettable memories.
13 Baby, I LOVE YOU.
14 PEACE?
15 世界がすべて沈む-pain-
16 君と微笑おう
17 バニラ
18 spanner
19 C.
20 HEART

■<Waive GIG「サヨナラ?」愛しい平成よ>

2019年4月30日(火) Zepp Tokyo
Open17:15 / Start18:00
▼チケット
前売料金:1Fスタンディング ¥6,500(税込・Drink代別)
※入場者全員に新録「Dear」のCD音源をプレゼント
一般発売:2018/10/27(土)〜
(問)DISK GARAGE 050-5533-0888
【最終先行受付】
受付期間:10/13(土) 10:00〜



■イベント<MUD FRIENDS 2000~2018>


出演:MUCC / Psycho le Cému / Waive
▼大阪
2018年10月14日(日) Zepp Osaka Bayside
開場16:00 / 開演17:00
(問)夢番地 06-6341-3525
▼東京
2018年10月18日(木) Zepp Tokyo
開場17:00 / 開演18:00
(問)DISK GARAGE 050-5533-0888
▼チケット
前売料金 ¥7,800 (Drink代別)

■<MUD FRIENDS 2000~2018>Zepp公演チケット購入者限定特別追加公演
2018年10月15日(月)  OSAKA MUSE
2018年10月17日(水) 高田馬場AREA
※チケットSOLD OUT

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