【連載】建物語り by うらら(Salley)第四回<千里ニュータウンの先輩団地、千里山団地>
■千里山団地=スターハウス
■なんでもっと写真撮っとかなかったんだよ私……
大阪の吹田市出身です、と言うと、大体は「吹田ジャンクション」「万博公園」、あるいはスポーツが好きな方だと「ガンバ大阪」という風に言っていただける。また、「……(どこ?)」となっても「万博公園のあるところです、ほら、太陽の塔の」というと大概わかってもらえるくらいには、知名度のある街だと思う。
大阪府吹田市、という街が他府県の方にも認識されているのはとても嬉しい。吹田市に生まれ、吹田市で青春のすべてを過ごしてきた。上京して随分とたった今でも2か月に一度は帰りたい、大切な故郷である。実際帰っている。
しかし、長い間不思議に思っていることがある。それは「吹田市出身です」と自己紹介をした際に、いまだに誰にも「ああ、千里ニュータウンの!」と言われたことがない、ということである。万博公園や阪急電車が映画や本の題材に取り上げられているのにも関わらず、それらと密接に関係している、しかも日本最初の大規模ニュータウンであるのに、こうも言われないものか。まあ薄々気づいてきてはいるが、特に団地や建築を好きという方でない限り、「日本最初の大規模ニュータウン!」とか言われても「へー」くらいなものなのだろう。うーん、ちょっと寂しいけど。
さて、ニュータウンの話をしておいてなんなのだが、今回書かせていただくこの「千里山団地」は、「千里」という名前ではあるが、実は「千里ニュータウン」には含まれない。駅も隣だけど含まれない。千里ニュータウンの開発がスタートしたのは昭和33年、千里山団地は昭和32年。つまり、有名(だと私が思っている)な千里ニュータウンの先輩的団地なのだ。
ちなみにこれからお見せする千里山団地は既に全棟が建て替え、または売却され取り壊されており、今はもう見る事ができない。毎度ながら、なんでもっと写真撮っとかなかったんだよ私……。とにかく手元にある写真を載せていきたいと思う。
この千里山団地は、千里ニュータウンの団地群とは様相が少し違う。派手……というわけではないが、色々やっているな、という印象で、千里ニュータウンの団地のほうがよりシンプルだなと感じた。
特にこちら。
以前の建物語りで紹介した「花ブロック」のようなものが使用されている部分は、サンルームになっている。旅館などにある広縁のようなスペースで、窓を開けるとベランダのようにも使用できる、日当たりのよい室内になっているようだ。
四角がたくさんあって美しい。日当たりも相当よさそう。住んでみたかった団地ナンバーワンである。
おしゃれなレンガ調のダストシュート。取り壊し前で褪せてしまっているが、完成当時は美しかったのだろう。VRソフト「完成当時の団地」とかあったら即買いしたいくらいだ。
そういえば私が生まれたのは津雲台の団地(こちらは千里ニュータウン内になる)なのだが、ダストシュートがあった記憶がない。ただその頃にはもう使用されていなかったため、印象がないだけかもしれないと思い、去年撮った写真を見返してみると、
しっかりとダストシュートが写っていた。なんとなく、そういうデザインだと勝手に思いこんでいたが、かつては立派に役目を果たしていたのだろう。父や母は使っていたのだろうか。今度聞いてみようと思う。
さて、千里山団地に話を戻そう。
団地好きなら、「千里山団地」ときいて真っ先に思い浮かべるものがあると思う。それがこちら。
スターハウスである。
別の角度から見るとこうなる。
お分かりいただけただろうか。スターハウスというのは、上から見るとY字型になっており、その中心に階段と廊下があって、そこから一戸ずつが突き出ている形になっている。つまり、すべての部屋が角部屋になるという、なんとも贅沢なつくりの建物なのだ。
やっぱり日当たりよさそう。
なんか一階のとこに出窓みたいな空間ある!なにあれ誰か間取りーーー!!
集会所を発見。第二、ということはいくつかあるのだろう。
この、団地の窓の格子に鉢を置いているの、個人的にすごく好き……
吹田の他の団地は塔ごとに「C-3」や「A-11」などと書かれていることが多いが、こちらは、住所が虹ヶ丘のところは「ニジ」、星ヶ丘は「ホシ」、霧ヶ丘は「キリ」と表記されている。まるで宝塚の組名のような素敵な名前である。
■たとえ建物がなくなってしまったとしても
■確かに存在していたことを残していきたい
少し話が逸れるが、千里山団地のあった阪急千里山駅は、ロンドン郊外のレッチワース田園都市をモデルに作られたらしく、駅舎はまるで積み木のようなかわいらしい建物で、駅から一本の道が丘の上の噴水まで伸びており、その噴水を中心に放射状に道路が伸びている。同じ沿線の南千里駅のような機能的な作りというよりは、ひとつのポリシーをもって作られた洒落た街に感じられる。その噴水にのびる道とは線路を挟んで反対側にある千里山団地であるが、そんなテーマを持って作られたからこその「虹」「星」「霧」という洒落た名前になっているのではないだろうか。余談だが、その一本道沿いにあるトイカメラ屋さんには20歳くらいのころよく通っていた(今もあるかはわからない)。
団地っ子は棟の下で遊んだりするのだが、もう取り壊し寸前だったこのときにはそんな姿を見かけることもなく、その代わりにこの団地を去っていく人々を見かけた。
地震が多いこの国では、古い建物を全て保存することはできない。安全のためには立て替えも必要だ。しかし、この街で育った人の気持ちを考えるとやはり切なくなる。このトラックは千里山団地での思い出を積み込んで、どんな街へと走っていったのだろうか。
吹田市に育ち、千里山駅周辺を通ったことがあっても、団地内に足を踏み入れるまで知らなかったこともたくさんあった。作り手の想い、住んでいた人の想い、そこに生まれたであろう様々なドラマ。たとえ建物がなくなってしまったとしても、私はそれを想像し、考え、そしてこうして確かに存在していたことを残していきたいと思う。
さて、繰り返しになるが、私は大阪府の出身である。そんな私が大阪でライブをすることが決定している。[2018.10.6(土) FM802 MINAMI WHEEL2018]に私がボーカルを務めるSalleyが出演するのでぜひ見にきていただきたい。FANJのトップバッターである。
そしてワンマンツアーでも大阪へ帰る。
Salley東名阪ワンマンツアー<Salley BAND DE NIGHT TOUR〜サリーのワンマン行かナイト〜>
10.13(土)渋谷Milkyway
ADV/DOOR ¥4,200 / ¥4,700
start 18:00
チケットはこちら
■名古屋公演
10.18(木)名古屋ell.SIZE
ADV/DOOR ¥4,200 / ¥4,700
start 19:00
チケットはこちら
■大阪公演
10.20(土)心斎橋CLAPPER
ADV/DOOR ¥4,200 / ¥4,700
start 18:00
チケットはこちら
いや、いきなりライブとか言われても……という方は、ぜひSalleyのYouTubeチャンネルで音源やライブ動画を見てほしい。
建築もたまに載せているインスタグラムから入ってもらっても構わないのでぜひ私のことを覚えていただけたらと思う。
この連載も4回目となり、だんだん使える写真も減ってきてしまったので、そろそろ建築を見に行かなければと思っている。次回の建物語りは、住宅なのか? 名建築か? 楽しみに待っていていただきたい。
そしてとりあえず10月はSalleyのツアーに来ていただきたい。
Salley うらら
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