【ライブレポート】マイケル・シェンカー・フェスト、トータル30曲、2時間40分の大競演
マイケル・シェンカー・フェストの東京公演を見てきた。場所は有楽町の国際フォーラム。これだけ広い会場で、HR/HMのアーティスト単独公演を見るのはとても久しぶり。椅子有の会場+マイケル・シェンカーというだけで、1980年代の懐かしい空気がよみがえってくる。ステージにズラリと並んだマーシャル・スタックが圧巻。客電が落ちると場内は総立ちに。おいおい大丈夫か。今日の公演は長いし、私も含めお客さんの平均年齢は高そうなのに、と余計なことを考えていると、いきなりマイケルのMCがスタート。しかも内容は、「『Lovedrive』に収録されているこの曲は、私が書いたものだ。クレジットはされていないけどね」とほぼクレーム。いくらなんでもショウの始め方としては斬新すぎやしないか!ということで、1曲目はスコーピオンズの「Holiday」。マイケルの弾き語りだ。続いて「私が17歳のときに書いた曲」と紹介されたのが、「Doctor Doctor」。2曲目でもうこれを持って来るのか!ヴォーカルはグラハム・ボネット→ゲイリー・バーデン→ロビン・マッコーリーのリレー方式。これで盛り上がらないはずはない!
◆マイケル・シェンカー・フェスト画像
さて3曲目からはドゥギー・ホワイト・タイム。「Live and Let Live」「Vigilante Man」「Lord of the Lost and Lonely」と、マイケル・シェンカーズ・テンプル・オブ・ロックの楽曲を披露していく。今回4人のヴォーカリストが参加しているが、安定感という意味ではドゥギーが一番だろう。彼独特のステージアクションもユーモラス。続いては、ゲイリーとロビンが出てきて「Take Me to the church」。マイケル・シェンカー・フェスト名義の最新作『レザレクション』からのナンバーだ。そしてもう1曲、「マイケルと初めて一緒に書いた曲」だとドゥギーが紹介した「Before the Devil Knows You're dead」をプレイして、ドゥギー・コーナーは終了。
続いては名曲中の名曲「Into the Arena」!イントロだけで大歓声!当たり前だけど。本当にカッコいい曲だ。フライングVを高く掲げて演奏するマイケルの姿は、神々しいとしか言いようがない。ここからロビン・マッコーリー・タイムがスタート。今回は、基本的にマイケルの歴史をさかのぼっていく構成になっているようだ。歌詞やら何やらホワイトスネイクとカブりすぎな気がしないでもない「Bad Boys」、そして「Save Yourself」とロビン時代の名曲が続く。ロビンも実に良く声が出ている。続く「Anytime」では他の3人のヴォーカリストも参加。美しいバラードをさらに美しく聴かせる。ギターのハーモニーも素晴らしい。ロビンからは「みんな手を上にあげて」と指示があるが、何だかイマイチ反応が悪いような。続くマイケル・シェンカー・フェストの「Heart and Soul」でも、再びロビンは手をあげるよう要請。しかしやはり反応は鈍い。「Love is Not a Game」では、ゲイリー、グラハム、ドゥギーがバックコーラスを務める。歌っていない間、3人とも何だか手持無沙汰な感じで微笑ましい。不屈の精神を持つロビンは、ここでも再び手をあげるよう指示。すると3度目の正直か、ついに大量の手があがったではないか!諦めなかったロビンの勝ちである。続いて再びマイケル・シェンカー・フェストの新作から「Warrior」で、ロビン・タイムは終了。
そして出ました「Captain Nemo」!大歓声に手拍子と、場内の熱狂が凄い。先日の豊洲PITでは、この曲でミスってしまったマイケルだが、今日は完璧!ちなみに豊洲はステージ・モニターの状態が非常に悪く、そのせいで「人生で3度目の『Captain Nemo』ミスをやらかしてしまった」とおっしゃっていました。ここからはグラハム・ボネット・タイムだ。まずは「Dancer」。ゲイリーとロビンもバックコーラスを務める。そして実に1980年代らしい、実にグラハムらしい大名曲「Desert Song」。それにしてもグラハム・ボネットが凄い!高音もよく出ているし、パワーも凄い。「Night Moods」を挟んで「Assault Attack」だ!この曲のイントロは本当にカッコいい。どうやったらこんなフレーズを思い付くのだろう。「Searching for a Reason」でもグラハムが聴かせまくる!もちろん安定度ではドゥギーやロビンの方が上である。だけどやっぱり俺はグラハムが好きだなあ。これで70歳ってどういうことなんだ。こういう爺さんになりたいものである。
続いてのマイケルのMCが凄い。「これも私が書いた『Lovedrive』収録の曲。クレジットされていないけどね。あるとき、6歳半年上の兄貴、ルドルフに言われたんだ。マイケル、曲をくれないかって。だから、いいよ、プレゼントするよって答えたのさ。ナイスだろ?ルドルフはさらに聞いてきた。マイケル、お前の黒と白のフライングVを使ってもいいかって。何でそんなことをしたいのか理解できなかったけど、いいよって答えた。そして彼は私みたいに髪をブロンドに染め、私と同じギターで私の曲をプレイし始めたんだ。こんな風にね」と、スコーピオンズの「Coast to Coast」を紹介したのだ。マイケルによれば、今回のツアーではなるべく"informative"であるように努めているとのことであった。日本のファンは熱心で、マイケルのことを良く知っている。一方、特にアメリカのファンは、彼の経歴をまったく知らないものも少なくない。彼らに昔のことも知ってもらうために、今回はMCで色々な背景を説明しているのだそう。その意図はわかるが、説明の内容があまりにinformativeすぎやしないか!(ちなみに豊洲ではルドルフの誕生日が近かったため、ハッピーバースデーをプレイ。終演後「ハッピーバースデーどうだった?」と聞かれたが、沈黙するしかなかった。)
ゲイリー・バーデン・タイムは「Ready to Rock」でスタート。フェイクしまくり、お客さんに歌わせまくりのゲイリー節全開で、場内の興奮も最高潮に。で、「Ready to Rock」が終われば、頭の中で自動的に「Attack of the Mad Axeman」のイントロが流れるのがHR/HMファンというもの。この2曲の流れは本当に完璧。ロビンも加わって、美しいハモリを聴かせる。続いての「Rock My Nights Away」は、ここ数年ほとんどプレイしていなかったのでビックリ。キーボード・スタートでも、ギター・ソロ・スタートでもない始まり方だったので、私も一瞬何の曲だかわからなかったのだが。「Messin' Around」を挟んで「Armed and Ready」。この日一番の歓声があがる。サビの大合唱も圧巻。再び「私が17歳のときに書いた曲」として披露されたのが、「Rock Bottom」!!ヴォーカルは、ロビン→ゲイリー→ドゥギーと持ち回り。マイケルも相当乗っていたのだろう、ギターソロを引っ張りまくる。しかしこの曲のカッコ良さは異常。「これよりカッコいいリフなんてこの世にあるのか?」と真剣に思わせる曲だ。それにしてもこれを17歳で書いたって凄すぎますよ。と、27曲たっぷりと演奏したところで、本編終了。
バックステージに引っ込むことはなく、そのままアンコールへと突入。アンコールは、UFO3連発。「Shoot Shoot」はロビンがヴォーカル。ドゥギーがヴォーカルをとった「Natural Thing」では、アンセムの清水氏がゲスト出演。スティーヴ・マン→清水氏→マイケルというギター・ソロ・リレーを見せたが、それぞれ3人の色があって面白かった。ドゥギーの衣装がバスローブに見えて仕方がなかったが。そしてラストはマイケルが22歳のときに書き、初のアメリカでのヒットとなった作品「Lights Out」!ヴォーカリスト4人全員で、この名曲を盛り上げる。場内のヴォルテージが最高潮に達しところで突然本当にライツアウトして終了という演出は、実にドラマチック。トータル30曲、2時間40分!とにかく最高。大満足。あー、でも「Cry for the Nations」とか「Let the Sleeping Dogs Lie」「Only You Can Rock Me」なんかも聴きたかったな、なんてことを言い出したらキリがないが。とにかくしばらくはマイケル・シェンカーとUFOしか聴きません。
文:川嶋未来 / SIGH
写真:Mikio Ariga
2018年2月28日 世界同時発売
マイケル・シェンカー・フェスト『レザレクション』
【初回限定盤CD+ボーナスDVD】 GQCS-90522~3 / ¥4,000+税
【日本語解説書封入/歌詞対訳付き/日本語字幕付き】
【CD】 GQCS-90524 / ¥2,500+税
※日本語解説書封入/歌詞対訳付き
1.ハート・アンド・ソウル
2.ウォリアー
3.テイク・ミー・トゥ・ザ・チャーチ
4.ナイト・ムーズ
5.ザ・ガール・ウィズ・ザ・スターズ・イン・ハー・アイズ
6.エヴェレスト
7.メッシング・アラウンド
8.タイム・ノウズ・ホエン・イッツ・タイム
9.アンカーズ・アウェイ
10.サルヴェイション
11.リヴィング・ア・ライフ・ワース・リヴィング
12.ザ・ラスト・サパー
ボーナスDVD
1.ウォリアー(ビデオ)
2.ザ・ドキュメンテーション
3.インタビュー
4.LOUD PARK 2017 来日ドキュメンタリー
【メンバー】
マイケル・シェンカー(ギター)
ゲイリー・バーデン(ヴォーカル)
グラハム・ボネット(ヴォーカル)
ロビン・マッコーリー(ヴォーカル)
ドゥギー・ホワイト(ヴォーカル)
クリス・グレン(ベース)
テッド・マッケンナ(ドラムス)
スティーヴ・マン(ギター/キーボード)
◆マイケル・シェンカー・フェスト・レーベルサイト
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