【インタビュー】wyse、手塚アニメへの愛とコラボ作品を語る「後世に自慢できる一生もの」
■子供から大人まで歌える
■こんな曲をやるロックバンドはいない
──確かにチャレンジしていますよね。「鉄腕アトムDisc」に収録されているカップリング「僕のヒーロー」は出だしの“きらきらきーら きーらら”っていう歌からして驚きました。子供たちが歌える曲調だし、サウンドも夜空とか流星のイメージで。
TAKUMA:「ヒカリ」を作ったあと、いちばん最初に絵が浮かんで、方向性が決まったのが「僕のヒーロー」です。サウンドのイメージは近未来的で電子的なんだけど、キャッチーでポップで、聴き心地がいいメロディ。そこにひっかかりがあって少し物悲しくなるような歌詞を載せようというのがテーマでした。例えばまだ幼い頃、5歳くらいのときにはアトムを見たり、オモチャで遊んでいたとしても、15歳くらいになったらオモチャも手からは離れて、見ているアニメも変わって生活スタイルも変わっていく。だけど、どれだけ大人になったとしてもアトムは自分たちの中心で支えになってくれる存在で「いくつになっても僕のヒーローはアトムだよ」って。と同時にどれだけ時間がたってもアトムも「変わらず、いつまでも僕がついているよ」って、そう思っていてくれるような、そういう存在、関係性を、世界を描いたものが「僕のヒーロー」ですね。
▲HIRO(G) |
TAKUMA:そうですね。どちらの解釈もできるように。例えば80歳になったとしても、その感覚は変わらない。いつまでたっても励ましてくれるような。そこを描いてみました。
月森:「僕のヒーロー」は最初に聴いて歌詞を見たときに「この詞はアトムのどんなところを歌っているんだろうな」ってすごく考えましたね。wyseは「この曲はこういう想いで書いたんだ」って話すバンドではないので、自分で想像しながら歌うんですけど、絶対的な信頼、無償の愛、繋がりみたいなものを感じたので、あえて気持ちの部分だけを歌いました。アトムがモチーフになっていることを知らなくても友達だったり、親だったり、子供だったりに当てはめても聴けるような。
──そばにいなくても繋がっていると思えるような?
月森:そうそう。何年経っても距離が離れても変わらない気持ちを歌に入れられたら曲の輪郭がよりハッキリしてくるのかなと思って。
HIRO:僕はアトムの中に僕らがいて一緒に遊んでいるジャケットのイメージや楽曲がポップなので、そこを意識して制作に取り組みました。ギターの音使いやフレーズも今までにない感じですね。すべての曲に言えるんですけど、こんなチャンスがなければ、こういうギターは弾いていなかったと思います。
──子供から大人まで歌える曲だし。
HIRO:そうなんですよ。そこは大事にしたかったですね。「こんな曲やるロックバンドっていないでしょ?」って。
MORI:この曲はシンプルなギターで支えるという気持ちで取り組みました。さっきTAKUMAが歌詞では物悲しさも表現したかったって話してましたけど、アトムの突き抜けた明るい部分だけを切り取ったら、親しみやすくはなるかもしれないけど、この深みは出ないだろうなって。
TAKUMA:その通りなんです!
MORI:今、僕がしゃべってますから(笑)。手塚作品は大人になって、ふとしたときに読み返したくなったり、手元に置いておきたいものだと思うんですよ。「ヒカリ」もそうなんですけど、光と影が同居している。小さい頃のアトムはスーパーヒーローですけど、年齢を重ねて読むとアトムの悲しい生い立ちや、それゆえの優しさや強さなんだってことがわかってくるんですよね。この曲も初めて聴いたときの印象と、年月が経って聴いたときとでは感じることが違うかもしれない。淡白に作った曲はすぐに飽きてしまうけれど、「僕のヒーロー」はライトなのに、きちんと重厚な部分も入っている。僕が思うアトムが凝縮された曲ですね。
TAKUMA:僕も、突き抜けた王道の曲と歌詞ができても「こっちじゃないな」っていう気持ちがあったんですよ。「僕のヒーロー」は例えば子供番組とかで流れるような、そういうサウンドイメージで、そこにどんなメッセージを込めるか、そこがとても重要だなと。
▲ジャングル大帝 Disc「ヒカリ / Link」 |
TAKUMA:この曲は作る前からビート感、スピード感、力強さを大事にしたいと思っていて、イントロのリズムは「これしかないだろう」って。でも、この曲も「僕のヒーロー」と同じで、リアルタイムでは手塚先生の作品を見る世代ではなかった僕たち、そんな僕たちがその中で受け取った、感じ取ったものを表現してみました。若さ、蒼さではないですが、歌やギター、ベースのアプローチも勢いがあるというか、落ち着いてはいない感じが曲のスピード感などにつながればと。それと曲が始まったときに太陽や空や風、自分がその世界にいるかのような空気感を表現できたらいいなと思いました。
──主人公のレオが住んでいる森をイメージできるような?
TAKUMA:そうですね。それと同時に環境保全に対するメッセージも感じられるような、そんな曲にしたかった。歌詞の中の“僕”と“君”は“現在”と“未来”という意味も含んでいるんです。今の僕たちが生きていることが未来にリンクすると思うし、環境問題は自分たちが現実の社会の中で問われていることだと思うんですよ。例え小さなことでも行動を起こすのか、起こさないのか、気づくのか気づかないのかが数十年後に大きな変化となって現れてくる。人も繋がっていけば身近に感じるわけで。ただ、こういう話だけを描くと少し重くなり過ぎるし、もしかしたら手塚さんの作品、イメージとも離れてしまうかもしれないとも思ったので、その辺りをうまく調和させて描けたらなって思いました。
──“森を駆け抜けるあの姿 白く真っ直ぐなイメージ”という歌詞にも情景が浮かびます。
TAKUMA:“白”っていうワードがあるだけでレオが連想できるぐらいに、やはりレオはすごいんですよね。レオの魂は僕たちの中にも生きているんじゃないかと思って書きました。
MORI:「Link」は4曲の中でいちばんバンドサウンドが前に押し出された曲ですね。疾走感があってビートが跳ねていて。ギターの音もたくさん入れました。
──ワウを使った音だったり?
MORI:そうですね。TAKUMAも言ってましたけど、僕らがやれることを背伸びせずにやることが大事で、それっぽいことをやったら嘘になるなって。あと、月森が話したように今回のコラボシングルはwyseであってwyseではないところがあると思うんです。だから、僕は“wyse20th+OSAMU TEZUKA90th=110万馬力”というロゴがアーティスト名ぐらいに思っていて、演奏面もwyseだけでは収まらない部分を出せたかなって。
HIRO:僕はこの曲もジャケットを見ながら聴いてほしいですね。
TAKUMA:俺ら、ドラムいなくて良かったなって(笑)。実はジャケットとは同時進行だったんでそれを見ながらの制作とはいかなかったんですけど、結果、「なるほど!」と思うものに仕上がって。
HIRO:リンクしたんだね。
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