【インタビュー】VALSHE、音楽ルーツは“和”「神聖なもの、聖域のような意識」
■「悪いことが起こったら楽しくない?」
■って聞いたら「いや〜」って言われて(笑)
──今作のキャッチコピーは“この世こそ、美しい”です。歌詞は“曇天の空も一興と言えるかが裁量 悔いのないようにシたいことをするだけよ”で締められていますが、これはVALSHEさんの人生観ですか?
VALSHE:自分の過去の作品を振り返ると、何かマイナスなことが起こった時には反骨精神を持って“やってやろう”っていうメッセージを書くことが多かったんですけど、ふと“自分の本質ってどこだろう? 今、何が言いたいんだろう?”って考えるタイミングがあったんですね。そうしたら、自分って悪いことが起こった時にどこかでウキウキしちゃうところがあるなって。状況を楽しんでいる別の自分がいるんです。
──起こったことを悲しんではいるんだけど、っていうことですか?
VALSHE:悲しいし、イヤだなと思っているんですけど、「さあ。悪いことが起こりましたよ」って実況しているみたいな自分もいるんですよ。みんなもそうなんだろうと思っていたんですけど、ある日、マネージャーに「悪いことが起こったら楽しくない?」って聞いたら「いや〜」って言われて、「違うんだ!?」って(笑)。
──はははは。その事実に、最近気づいたんですね。
VALSHE:そう。自分には極端に楽観的な部分があるんですよ。
▲『今生、絢爛につき。』【Musing盤】 |
VALSHE:そういう面もあるんですけど、壁にぶち当たってふっと1人になった時に「ゴハン食べるのに困ってるわけじゃないし、親が生きてるからいいじゃないか」で終わっちゃうんですよ。重い病気にかかっていたら、それどころじゃないと思うんですけど、「だから、そんなことでオマエは悩めるんだろ?」って思っちゃうんです。
──悩める余裕があるだろ?っていうことですよね。
VALSHE:そう。あと、今、生きてることに“余生”の感覚があるんです。
──余生? そんなに若いのに!?
VALSHE:はい(笑)。だからなのか、いいことも悪いことも取り返しがつかないことも大なり小なりありますけど、その全てを自分なりに楽しめたら最強だなって。よく“ものの見方次第” “考え方次第”って言いますけど、ホントにその通りだなと思う。そういうことを我流で書いてみたのが「今生、絢爛につき。」の歌詞なんですよね。これも少数派だと思うんですが、今、できないことは来世に振り分けたりするんですよ。
──生きていて実現できそうもないことということですか?
VALSHE:そう。「これ、やりたいな」と思って「今生ではできないか」ってなったら「来世でやろう」で終わっちゃうんですよ。これも、みんなはそう考えないんだって最近わかったので。
──ははは。いつ死ぬかわからないから生きている間にやっておこうという気持ちとは違うんですね。
VALSHE:そうですね。もちろん作品は今、発信したいものや作りたい音楽を「いつ終わってもいい」って気持ちで毎作つくってますけど、結局、どういう状況であれ「生きてれば楽しいじゃないか」っていうところに自分は本質的に立ち戻っていくのかもしれないなと思います。
──シンプルなところに立ち戻れるのはすごいと思いますよ。
VALSHE:そこに“絢爛”という言葉がピッタリ当てはまったんですよね。サウンドのテーマと自分が発信したいことがうまく合致した曲になりました。
──なるほど。VALSHEさんがダンスしているミュージックビデオを見て驚いている人も多いのでは?
VALSHE:はい。シングル「MONTAGE」(2017年)で初めてダンスを取り入れたミュージックビデオを制作したんですけど、その時は部分的に踊っていたんですね。今回は全編にわたってガッツリ、ダンスしているので見応えがあるんじゃないかと思います。
──「激情型カフネ」の時に“情念”の話をしてくれましたが、今回も2人の女性に挟まれた嫉妬と情念が渦巻く映像になっています。
VALSHE:そうですね。ただ、ミュージックビデオでは曲のテーマをポップに表現したかったんです。監督さんとも「女性の持つ嫉妬や情念というドロドロしたものをコミカルに表現したいから、劇画タッチにしてほしい」っていうお話をしました。物語としてはこの映像が「激情型カフネ」に繋がっていくので、それぞれが紐解いてほしいですね。
──色も振り切れるぐらい派手にしたかったんですか?
VALSHE:はい。数値的に限界までコントラストをバキバキにして(笑)。自分が思い描いていた艶やかな絵になったと思います。
──どんなリアクションが返ってきましたか?
VALSHE:過去のミュージックビデオはクールな色合いとかスモーキーな色味が多かったんですね。「MONTAGE」は例外的にピンクを主体としていましたけど、それとも違う色鮮やかなVALSHEを楽しんでくださっている方が多くて、嬉しいですよね。
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