【インタビュー】VALSHE、音楽ルーツは“和”「神聖なもの、聖域のような意識」

ポスト

■テーマ曲を作らせていただくにあたって
■「こういう気持ちもあるのか」って

──先ほど新しいことだったり、チャレンジもしているのが今回のミニアルバムでもあるという話をしてくれましたが、中でも挑戦作は?

VALSHE:それぞれの曲にありますけれど、最もという意味でいったら「インスタントセレブリティ」という曲ですね。

──7曲の中でも、曲調も含めて色合いが違いますね。

VALSHE:そうですね。自分がチャレンジできなかった領域というか、新しいアプローチをしてみたいと思って作った曲です。表題曲とは違うアルバムの中に収録されているキャッチーじゃないけど、「なんか癖になるんだよな」っていう曲を作りたかったんです。ふだん好んで聴いている洋楽からインスパイアされたので、自分の好みが反映されていると思います。

──ミディアムテンポのダンスチューンですよね。ふだん好んで聴いている洋楽というと?

VALSHE:もちろんロックも好きなんですけど、クラブサウンドやハウスだったりをBGM的に流しているのが好きなんです。EDMを取り入れた曲はこれまで数曲あるんですけど、自分で作ってみたことはないなと思ったんですね。で、自分が作る曲の色とかクセを分析して、自分にしいている制約をとっぱらって作ってみたんです。

▲『今生、絢爛につき。』【通常盤】

──ちなみに、その制約って?

VALSHE:無音が不安なんです。

──音と音の隙間を埋めたいタイプですか?

VALSHE:そうなんです。文章やセリフは行間も含めて読めるのに、いざ自分が鍵盤に向かうと休符が怖くなるんです。もともとメロディが詰まっていて高低差が激しい曲が好きなんですけど、この曲は作る前から色味や世界観、歌詞のテーマが浮かんでいたので「怖れるな」と思って作りました。

──作詞はVALSHEさんが信頼を置いているdorikoさんですが、テーマを伝えたんですか?

VALSHE:はい。ただdorikoの言葉選びが好きなのでテーマだけ伝えて自由に書いてもらいました。

──「インスタントセレブリティ」は今作の中でいちばん現代の風潮を映している内容かなと。

VALSHE:はい。うまく書いてくれたなと思いました。読む人が読めばわかるように。

──シニカルにも捉えられるし、今の時代を楽しんでいるようにも解釈できる。

VALSHE:そうですね。うまく中和されている感じなので歌っていても楽しかったです。サウンド的にもライブで新しい盛り上げ方ができる曲かなと。

──曲調はタイプが違いますけど、“スパンコール”というワードが出てきたり、きらびやかさというところでは共通したものがありますね。それと「夕暮花火」は日本的で儚く美しいバラードです。

VALSHE:ありがとうございます。“和”をモチーフにした作品なのにバラードが1曲もなかったので作ったんですけど、ここまでどストレートな曲はなかったかもしれないですね。

──情景が浮かび上がってくる歌詞はVALSHEさんの記憶と重なる部分があるんでしょうか?

VALSHE:夏の終わりをテーマにした曲なんですが、これまで歌詞は未来のことだったり、これからのために過去を見つめる目線で書くことが多かったのに対して過去を思って佇んでいるような曲にしたかったんですね。そうしたら、未成熟ゆえの美しさが浮かび上がってきたんです。やり直したいでもなく、過去を消したいわけでもなく、幼い日の自分に立ち戻った時の情景を切り取った歌詞になったと思っています。


──なるほど。今作の最後の曲はTVアニメ『信長の忍び〜姉川・石山篇〜』の第2クールオープニングテーマ「追想の理」で締められています。この曲はイントロのメタリックなギターといい、いちばんロック色が強いですね。

VALSHE:はい。今回、『信長の忍び』とコラボレーションさせていただくのは2度目になるので、サウンドも歌詞もアニメにもっと歩み寄れる曲にしたいと思って、何度も本を読んで考えた上で書きました。

──歌詞は本作のテーマと繋がっていますか?

VALSHE:本質的なところで繋がっていると思います。アニメのキャラクターの心情や情景とリンクできる言葉選びをしているんですが、自分自身への期待を込めて書いた歌詞でもあるので、そういう意味では『今生、絢爛につき。』をまとめるのにふさわしい曲になったと思っています。

──期待するというのは、想いが時を超えて未来に届いていってほしいというメッセージでしょうか?

VALSHE:そこは真逆で、これまで作品とコラボレーションさせていただく時は自分が共感できる部分を噛み砕いて歌詞にしてきたんです。今回は自分の中になかった感覚だけど、“こういう美しさもあるんだな”と感じた部分を書いています。“自分もそう思えるようになりたい”ということではなく“自分の中にもそういう気持ちが生まれてくるのかな?”という希望的観測を含めて書いているので、そういう意味で最後に持ってきたんです。

──自分の中になかった感覚というのは?

VALSHE:『信長の忍び』は戦乱の世が舞台なので、帰りを待っている人たちがいる中、戦っている人たちは未来を思って死んでいくんですよね。次の世代だったり、未来を生きていく人たちのために戦う人の姿が印象的なんですけど、自分自身はこの世からいなくなった後に誰かに遺志を継いでもらいたいとか、死んだ後に評価されたいと思ったことが1度もないんです。自分とまわりの人と想いや願いを共有することはとても重要だと思っているんですけれど、後の世代のことを考えたことはなくて、今回、テーマ曲を作らせていただくにあたって「こういう気持ちもあるのか」って。

──次の世のことに想いを馳せるみたいな?

VALSHE:例えば自分がいなくなった後の音楽シーンのことを思ったりしたこともなかったので、そういう気づきが次に繋がっていくのかなって。

◆インタビュー(4)へ
◆インタビュー(2)へ戻る
この記事をポスト

この記事の関連情報