【インタビュー】岸田教団&THE明星ロケッツ「若者を向かい撃てる音楽を創らないといけないという意識でいます」

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■こういうテイストの曲をやったことがあるメンバーがいないので
■訓練もかねて難しいことをやってみようと作ったのが「stratus rain」


――さすがです。「シリウス」のMVについてもお聞きしたいのですが、岸田教団&THE明星ロケッツのMVは趣向を凝らしたものが多い中、今回はストレートにバンドのカッコよさを見せています。

ichigo:今回はロックバンドらしいMVを作りたかったんです。普通のロックバンドが好きな人が見てもカッコいいじゃんと思ってもらえるものを、ここで一度出せたらいいなというのがあったから。

岸田:ギミック的なものはなくて、強いていえば犬が出てくるくらい(笑)。

ichigo:犬は大変だったね(笑)。

岸田:ドーベルマンと指定したのに、柔らかい顔のドーベルマンが選ばれたというのは恣意的だよね(笑)。鋭い眼光でもなんでもない、つぶらな瞳のドーベルマンがきたという(笑)。

ichigo:そう! かわいい子だったな。目が岸田とそっくりだったよ(笑)。岸田に似たのを選んだのか…みたいな(笑)。

岸田:そうなんだよな(笑)。


――それは、実はMVを見て思いました(笑)。「シリウス」のMVは“白と黒”のコントラストを活かしていることも特色です。

ichigo:そういうアイディアを出したのは、単純に私が白い衣装と黒い衣装が着たかったからです。最近の私はボーイッシュな感じにしているけど、“結局ガーリィーなものが好きだよな、みんな”と思って。意外とドレスを着ている私のことを、みんな好きなんだなと。私はどっちも好きだから、だったら両方纏めてやってしまおうと思ったんです。

岸田:2パターンの衣裳を用意して、2回撮りました。白で撮ると、結構普通のバンドっぽいですね。白の普通なバンド感に、みんな結構驚きました(笑)。それに、ichigoさんは、白のほうが似合っているんじゃないかな。

――どちらも似合っていますが、個人的には黒のほうがより好きです。

ichigo:そういうふうに、わりと好みがわかれるんですよ。だから、今回のアイディアはよかったんじゃないかなと思います。

――続いてカップリングの「stratus rain」について話しましょう。

岸田:こういうテイストの曲をやったことがあるメンバーがいないので、訓練もかねて難しいこともある程度織り込んでみようと思って作ったのが「stratus rain」です。ある意味、今までの岸田教団&THE明星ロケッツの中でも、僕のカラーが一番出ている曲と言えます。こういう曲は、解釈が難しいんですよね。コツさえ掴めば技術的には可能だとしても、わからない人にはわからない。そういう曲です。

――UKロックに親しんでいないと、どういう演奏をすればいいのか迷うような気がします。

岸田:そう。ベースに関しては、こういう楽曲が求めるものを素直に弾いたという感じで特に問題なかったけど、他のパートは大変でした。特にドラムですよね。静かな曲だから静かに叩けばいいのかなと思いがちなんですが、そうじゃない。そういうところも含めてディレクションをがんばった結果、結構時間はかかったけど、なんとかわかってくれました。まずドラムができないとその時点で終わりなので、そこはしっかりやりましたね。メロディーのリズムもそうだし。リズムをギリギリまで凝っているので、リズム感が良くないと歌えないんですよ。はやぴ~さんはすぐにわかってくれましたけど(笑)。はやぴ~さんのギターが入ることで、単なるUKではないところに行った部分があって、それはよかったんじゃないかなと思います。

――同感です。「stratus rain」はichigoさんが歌詞を書かれていて、“自分には償えない過去がある”というパーソナルなことを歌っているようにも、“人とは罪深いものである”と歌っているようにも受け取れるものになっていますね。

ichigo:私は基本的に自分がやったことをあまり後悔しないので、「stratus rain」で歌っているのは人類のことです(笑)。岸田からのオーダーで、今回は明るい歌詞はなしで、“〇〇レイン”というタイトルがいいと言われたんですよ。

岸田:「雨に打たれろ」と言いました(笑)。

ichigo:そう(笑)。雨に打たれるというと、こういうのかなと思って“stratus rain”というタイトルにしたんです。先にタイトルを決めて、私は映画の1シーンを描くように歌詞を書くのが本来好きなので、そういう気持ちで書きました。

――憂いを帯びた情景が浮かんでくる歌詞になっています。それに、先ほどから話が出ていますが、「stratus rain」の歌は難しかったですか?

ichigo:難しかったです。特にリズムが難しくて、めっちゃ練習しました。ここ何作かの岸田のリズムの作り方は難しくて、ちょっと追いつけなくなってきたんですよね。それもあって、やらなきゃ、やらなきゃと追いつめられるという(笑)。でも、できるようにならなきゃなということで練習しました。私はリズムとメロディーを関連づけて覚えないんですよ。ずっとそうやってきたんですけど、器用だから言われたことを、“ああ、こういうことね”といってやってきたんです。だから、みんなは私がリズムを理解していないことに気づいてなかったという(笑)。

岸田:そう!!(笑) ichigoさんが最近4分音符の概念を理解したと言って、メンバー全員衝撃を受けました(笑)。

ichigo:みっちゃん(dr)が、教えてくれました。「これが4分ね、これが8分、これが16分」って(笑)。岸田が作るメロディーのリズムが難しくなったので、これは勉強しないとマズいなと思ったんです。

岸田:なぜ難しくなったかというと、時代による音楽の変化というのが今までは大体ジャンルだったり、メロディーだったりしたけど、去年辺りに日本の音楽は抜本的に変わったんですよね。リズムの根本的な捉え方が変わって、正しい捉え方をするようになった。究極を言うと、今までの日本の音楽業界で正しいリズムの捉え方をしている人は、ほとんどいなかったと思うんですよ。でも、去年くらいから正しくリズムを捉える人達が売れて、目立つようになってきた。それは、小さい頃からリズムというものに慣れ親しんだ世代の人たちがリスナーの中で多くなったからだと思う。リズムが気持ちいい音楽が売れるという趨勢が決定的になったのが去年、一昨年くらいなんですよね。僕は元々リズムにこだわりがあったけど、メンバー全員との兼ね合いもあってゴリゴリにはいっていなかったんですよ。でも、時代的にのっぴきならんということで、リズムを重視するようになったんです。「stratus rain」は、その練習用みたいな曲です。

ichigo:そういう曲なので、今までみたいに感覚で歌うのは無理があると思ってリズムの勉強を始めたし、「stratus rain」の歌に関しては、どこにどういうアクセントをつけるかということを事前に細かく決め込んでからレコーディングに臨みました。

――その甲斐あって「stratus rain」の歌は、より惹き込み力を増しています。さて、いろいろな要素が重なることで、今回の「シリウス」は今までの岸田教団&THE明星ロケッツとは一味異なる、大人っぽい雰囲気の作品になりましたね。

岸田:大人っぽくすることを意識したというよりは、今のミュージシャン・シーンの流れがそういう方向に寄っているというのがあって。現代のモダンな音楽に合わせていくなら、こういうものだなと思ったんです。それに、これから先の時代に対応するうえで、歌の表現力はどうしてもマストなんですよ。その結果、今回のシングルは力押しだけではどうにもならない2曲が揃ったし、今後の岸田教団&THE明星ロケッツは、そういうものが増えていくと思う。だから、もう甘えるのはやめようというスタンスになっています。

――岸田教団&THE明星ロケッツは“アニメ感”を持っていることが魅力のひとつだと思いますが、そういうことを抜きにして、普通にカッコいいロックバンドになりつつあることを感じます。

ichigo:そう感じてもらえたなら嬉しいです。今後は、そういう方向に行きたいと思っているから。

岸田:アニソンの中でやっていくにしても、そうじゃないと生き残れないんじゃないかという気がしているんですよ。今までのフィールドから積極的に出ていきたくてこういう作品を作ったわけではなくて、これくらいのことはできないと死んじゃうぞという。後からこういうことができるヤツが出てきて、確実に撃ち落とされるぞと。僕は、若者が怖いんですよ。本当に若者が怖くてですね、そう遠くない将来に大淘汰が起きるという意識のもとに生きているんです。

ichigo:そうなったときに偉そうな顔をできるくらいには、なっておかないとね。

岸田:そう。恐らく、アニソン・アーティストとメジャー・シーンの境目みたいなものがもっと薄れていくと思う。だって若い世代からすると、アニソン・アーティストもメジャー・アーティストも一緒に見えていると思うから。そうなると、今後はメジャー・シーンに行ける実力を持った人がアニソンっぽい曲をやることもあり得ますよね。僕の予想では、もっとメジャー・シーンと混ざったようなテイストのものが絶対アニソンの世界にも入ってきて、10年もすれば新しい世代の若者と、我々ロートル勢との戦いが起こっていると思うんですよ(笑)。そこで生き残っていくには、これから台頭してくるであろう若者を向かい撃てる音楽を創らないといけない。僕は、そういう意識でいます。

ichigo:そうだね。これからもがんばっていって、いつか武道館を実現させたいです。武道館を目指しますと書いておいてください(笑)。私がそういう気持ちでいることを、みんなもう忘れちゃったんじゃないかなと思って。そのために、もっと魅力的なバンドにならないといけないなと思って。前回の「ストレイ」が『博多豚骨ラーメンズ』の主題歌だったから、女子ファンが増えるかなと期待していたけど、全く増えなかったんですよ。ちょっと増えたような気もしたけど、誤差の範囲でした(笑)。

岸田:だから、次のターゲットは中国だなと思っています(笑)。

ichigo:世界に目を向けていこうということで(笑)。

岸田:ichigoさんが取れる女子のパイが小さかったので、次は人口の多い中国だなと(笑)。

ichigo:冗談っぽく言っているけど、今回の「シリウス」から世界に向けて展開していくというのは周りの人たちも考えていることなんです。だったら、それに合わせて海外の人にもライブに来てほしいと思って。中国というのはその一環で、中国だけに照準を合わせるということではありません。あと、女子人気に関しては、男性メンバーの責任だからさ。あんたたち、もっとがんばってよ(笑)。

岸田:はーい、がんばりまーす(笑)。

ichigo:こいつ、絶対そんな気ねぇな(笑)。

取材・文●村上孝之

リリース情報

TVアニメ「天狼 Sirius the Jaeger」オープニングテーマ「シリウス」
2018年8月22日(水)リリース
<アーティスト盤> CD +特典DVD (2枚組)
品番:1000723086 POS:4548967388916
価格:¥1,800+税
CD収録曲:全4曲収録
1. シリウス
2. stratus rain
3. シリウス (instrumental)
4. stratus rain (instrumental)
ジャケット仕様:イラストレーター、TAQROによる描きおろしジャケット
特典DVD収録内容:シリウス Music Video
<アニメ盤>CD+特典DVD (2枚組)
品番:1000723087 POS:4548967388923
価格:¥1,500+税
CD収録曲:全3曲収録
1. シリウス
2. シリウス (TV size)
3. シリウス (instrumental)
特典DVD収録内容:TVアニメ「天狼 Sirius the Jaeger 」ノンテロップ・オープニング(予定)
<通常盤> CD (1枚組)
品番:1000723088 POS:4548967388930
価格:¥1,200+税
CD収録曲:全4曲収録
1. シリウス
2. stratus rain
3. シリウス (instrumental)
4. stratus rain (instrumental)
ジャケット仕様:イラストレーター、TAQROによる描きおろしジャケット

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