【ライヴレポート】sads、HER NAME IN BLOODを迎えた対バン・シリーズ第6夜に“明るい名演”
6月23日、東京・新宿BLAZE。全7公演におよぶsadsの対バンシリーズ<The reproduction 7th anniversary『EVIL 77』 VS 7 days>は第6夜を迎えていた。この雨の夜、sadsに立ち向かっていったのは、重厚なサウンドと愛すべきキャラクターを誇るHER NAME IN BLOOD。かねてより深い敬意と友情で結ばれている両バンドの真剣勝負だ。
◆sads × HER NAME IN BLOOD 画像
定刻の午後6時にフロアが暗くなると、SEのSURVIVOR「Eye Of The Tiger」が流れ出す。この曲を聴いたが最後、誰もが戦闘モードに入らざるを得ない。DAIKI(G)、TJ(G)、MAKOTO(B)、MAKI(Dr)といった個性の強い面々が手拍子で歓迎されると、筋肉ムキムキのIKEPY(Vo)が入場。「新宿、しょっぱなからカマそうぜ! お前らの力を見せてみろ!」と彼が絶叫すると、1曲目の「POWER」が全力で観客に叩きつけられる。文字通りパワフルな曲調のなかから滲み出るエモーショナルなフレーズが心地よい。
続く「LAST DAY」の疾走感とスケールの大きさも見事なもの。見た目やアクションだけでも十分に楽しませてくれるが、特筆すべきは、その演奏のタイトさだ。はじめは様子を見ていたsadsファンも、ショウが進行するにつれて、自然と拳を上げ、頭を振っているのが印象深かった。
「今日は、なんとsadsとのツーマンです。俺たちを呼んでくれたsadsに感謝します。愛とメタルと筋肉を届けに来ました! 俺たちがHER NAME IN BLOODだ!!」
とIKEPYが豪快に自己紹介し、「Take! Me! Back! To Hell!」のコール&レスポンスが印象的な「KINGSLAVE」で、フロアに一気に一体感が生まれる。「でけージャンプを見せてくれ!」とのIKEPYの声を合図に観客が飛び跳ねる「KATANA」の絵面は、メタル・ダンス・フロアとでも呼ぶべき仕上がり。パワーのあり余った野獣たちが、時々コミカルな仕草を入れつつも質の高いパフォーマンスを見せるさまが痛快だ。
DAIKIがゆっくりと語り始める。「今日は僕にとって特別な日です。僕は昔から清春さんが大好きで、アーティストで初めて好きになった人が清春さんなんです。今日のツーマンが実際に起こって、とりあえず、言葉にできない状態です。10年間、バンドをやってきてよかったなって思います」──彼の全身から溢れ出る清春への敬愛に対して、あたたかい拍手が送られると、その後も、どっしりと構えた曲調が魅力の「Answer」や、強烈な力でオーディエンスを巻き込む「MASK」など、場内の燃焼は止まらない。
「俺たち、“筋肉のバンド”って言われてるけど、たった1人の筋肉バカ(IKEPY)のおかげでそう言われてるだけです」と場を和ませるDAIKI。その発言を受けたIKEPYが「もっと全身の筋肉使って、明日動けなくなろうぜ!」とオーディエンスを煽ると、彼らの演奏も終盤へ突入。アグレッシヴな「GASOLINES」でフロアに燃料をぶちまけると、楽曲のクライマックスで、DAIKI、TJ、MAKOTOの弦楽器隊がステージ中央に集まり、フォーメーションを組む。彼らがギターを裏返すと、そこには「S」「A」「DS」の文字が現われる。HER NAME IN BLOOD名物のこのお茶目な演出で観客全員を味方につけ、ドラマチックな「FORSAKEN」につなげると、ラストは荒ぶる「BAKEMONO」で新宿BLAZEをねじ伏せた。
すでに開演から約1時間が経過。あっという間にもほどがある。たとえ気分が沈んでいても、強引にでも元気にしてくれるような明るさが、HER NAME IN BLOODにはある。
HER NAME IN BLOODが去ってから約40分が経過したステージに、sadsが現われる。「新宿!」と清春(Vo)が一言発しただけで、フロアには独特のスリルが満ちてゆく。「See A Pink Thin Cellophane」で妖しくグルーヴィに始まった彼らの演奏は、HER NAME IN BLOODとはひと味違った爆音を響かせている。繊細かつ大胆にサウンドを構築するK-A-Z(G)、重戦車のごとき連打でフロアを揺らすGO(Dr)、轟音のなかを軽快なフットワークで彩るYUTARO(B)。そんな彼らを束ねる清春の叫びと舞に、観客は早くも目が釘付けだ。
「今日の体調は70%ぐらい」とMCで語っていたように、この日の清春は万全のコンディションではなかったようだ。しかし、終始そんなことを感じさせないパフォーマンスなのが恐ろしい。たとえば、「STUCK LIFE」「FREEZE」「MAKING MOTHER FUCKER」「NIGHTMARE」のノンストップの流れには、狂気すら感じるほどだった。ある種の“ゾーン”に入ったときの清春の目つきといったら──。和やかなMCタイムと一旦演奏に入ったときの集中力との落差がこんなに激しいバンドも珍しいだろう。ポップさとヘヴィさが絶妙にブレンドされた「ID POP」で観衆を踊り狂わせ、熱気というより殺気をもはらんだ「BECAUSE」でこの場を掌握すると、清春はこう叫んだ。「狂エ死ヌ夜マデ!」。
sadsファンはこの強烈なメッセージに応答する義務がある。ラストはド迫力の「THANK YOU」で爆発的な盛り上がりを見せると、オーディエンスはステージに向かって、思い思いに歓喜と感謝の言葉を叫んでいた。
この轟音祭がここで終わるはずもなく、アンコールに応えて、すぐにsadsのメンバーが登場する。「せっかくなので、HER NAME IN BLOODを交えて何かをしたい」と清春が招き入れたのは、IKEPYとDAIKI。彼らの日頃の仲の良さがうかがえるトークで場内に笑いを生んだ後、DAIKIセレクトによるsadsの楽曲でコラボレーションが実現した。sadsの4人にヴォーカルIKEPYとギターDAIKIの2人を加えた「WASTED」は、とにかくブ厚い。ただでさえ切れ味の鋭いナンバーに、並外れた力強さが加わっていた。sadsの必殺曲の破壊力を高めた2人の戦士に大きな拍手が送られると、彼らは満面の笑みを浮かべてステージを去った。
「もう1曲やるかやらないか。ここで終わったほうがキレイじゃない?」とフロアを挑発する清春。観客の反応を確かめた後、「最後の曲をやって、爽快に終わりましょう」と宣言すると、7月6日のマイナビBLITZ赤坂から始まるワンマンツアー<FALLING>のことを語り始めた。「<FALLING>では、できるだけ新曲をやりたい。次のアルバムは幅広くて、みんなが好きな感じだと思う。この5年ぐらい、いい人になろうとしてたんだけど、これからは、今まで頑張ってた分、やりたいことをやります。もう、何が起こるかわかりません! それをみんなが生き証人として伝えてください。以上!」。
ただでさえ燃えさかっていた観客に、「突っ込め、突っ込め!」の扇動が投下される。最後の最後は「CRACKER’S BABY」だ。“これぞsads”と言いたくなる手の付けられなさが嬉しい。この曲が着地点を迎え、sadsとHER NAME IN BLOODのメンバーが全員横一列に並んで喜びの表情を浮かべたとき、時計の針は午後9時を回っていた。
<EVIL 77>第6夜は、理屈抜きで楽しめる、明るい名演だった。sadsとHER NAME IN BLOODの間には、友情と敬意と笑いがある。熱い空気と笑顔が場内にどんどん広がっていく素晴らしさ。そんな解放感の尊さに改めて気づかされる一夜だった。
取材・文◎志村つくね
撮影◎柏田芳敬
■<The reproduction 7th anniversary「EVIL 77」VS 7 days>
6月01日(金) 恵比寿LIQUIDROOM w/東京ゲゲゲイ
6月09日(土) 渋谷CLUB QUATTRO w/SUPER BEAVER
6月10日(日) 渋谷CLUB QUATTRO w/a flood of circle
6月12日(火) 横浜BayHall w/LOUDNESS
6月15日(金) 恵比寿LIQUIDROOM w/BiSH
6月23日(土) 新宿BLAZE w/HER NAME IN BLOOD
7月09日(月) 代官山UNIT w/ミオヤマザキ
■<The reproduction 7th anniversary TOUR「FALLING」>
07月06日(金) 赤坂BLITZ
07月21日(土) 梅田CLUB QUATTRO
07月22日(日) 梅田CLUB QUATTRO
07月28日(土) 名古屋BOTTOMLINE
08月03日(金) HEAVEN'S ROCK さいたま
08月17日(金) 高崎club FLEEZ
08月23日(木) 柏PALOOZA
【chapter 2】
09月08日(土) 松本Sound hall a.C
09月09日(日) 富山MAIRO
09月27日(木) 京都FANJ
09月29日(土) 岡山CRAZYMAMA KINGDOM
10月05日(金) 水戸LIGHTHOUSE
10月12日(金) 浜松Live House窓枠
10月19日(金) HEAVEN’S ROCK熊谷
【chapter 3 TOKYO 7DAYS】
11月06日(火) 渋谷WWWX
11月14日(水) 新宿LOFT
11月15日(木) 新宿LOFT
11月20日(火) 代官山UNIT
11月21日(水) 代官山UNIT
11月27日(火) 下北沢GARDEN
11月30日(金) 品川Stellar Ball
■<The reproduction 7th anniversary「FALLING」-EVERLASTING TRUTHS->
09月29日(土) 岡山CRAZYMAMA KINGDOM
■NEW ALBUM『FALLING』
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