【コラム】『池袋ウエストゲートパーク』が23年後の今、Netflixで再沸の理由と清春「忘却の空」
2000年に放映されたTVドラマ『池袋ウエストゲートパーク』(通称『I.W.G.P.』)がNetflixで配信され、最新オリジナルドラマを抑えて人気作品ランキング日本トップ10(テレビ部門)の上位を獲得している。23年前のドラマの再放送が今なぜ? 時代を超越して支持を集める名作には、新作にはないもの──現代のコンプライアンスを木っ端微塵に吹っ飛ばすような刺激と危うい香りを孕んだリアルがある。主題歌「忘却の空」もそうだ。
◆清春 画像 / 動画
ちなみに今から23年前がどんな時代だったかというと、イチローが日本人初の大リーガーとして活躍、プレステ2が発売され、ストーカー規制法が施行、ファッションでは腰パンがトレンド入りしている。1990年代に街にたむろし、オヤジ狩りが問題視されていた“チーマー”は影を潜め、アメリカのストリートギャングに憧れていた少年たちが“カラーギャング”(チームごとにシンボルカラーが異なる)を結成し、イキっていた。ヒップホップな時代の空気、池袋のストリートカルチャーをパッケージしたのが長瀬智也主演の『I.W.G.P.』だった。原作は石田衣良の短編小説シリーズで、ドラマの脚本を手掛けたのはその後、売れっ子になり、何度も長瀬とタッグを組むことになるクドカンこと宮藤官九郎。演出のメインは堤幸彦だ。
リアルタイムでこのドラマを見た人の多くが“カッケー!”と思ったのではないだろうか。キャラクターが魅力的なのはもちろんだが、カット割りがぶっ飛んでいてドラッギーでスピード感があって、民放では今や放送できないエロかったり、エグかったりするシーンも満載。ポンコツなヤツらがいっぱい出てくるのに不思議とじめっとした感じはなく、サスペンスものでありながら笑えるクドカンワールド。いろいろな意味で斬新だったのを記憶している。
男女問わず、憧れたのは長瀬演じる主人公のマコト(まこっちゃん)と窪塚洋介演じるカラーギャング集団G-Boysのアタマの“キング”ことタカシだろう。マコトは警察が手出しできない事件を持ち込まれる“ブクロ”のトラブルシューターで、「めんどくせぇ!」が口癖だが、頼まれると断れないお人好しの一匹狼。
金髪に白のタンクトップがトレードマークの“キング”は一見、チャラいがケンカがめっぽう強く、舌足らずのしゃべり方が特徴。アホっぽいようで実は頭脳明晰、リーダーにふさわしいカリスマ性の持ち主。小栗旬がG-Boysのメンバー役で出演していたり、坂口憲二が“ドーベルマン山井”と呼ばれる不良を演じていたり、妻夫木聡が池袋を仕切る暴力団役だったり、高橋一生がマコトの中学時代の同級生で引きこもりゆえに事件解決に貢献する役(マコトと再会し、引きこもりから脱却するが、その後、ファミレスに引きこもり、家に帰れなくなる)で出演していたり、小雪がマコトを誘惑する役だったり、後にブレイクするキャストが揃っているのも人気再燃の理由のひとつなのかもしれない。
連ドラが終了し、3年後に放映されたスペシャルドラマ『池袋ウエストゲートパーク スープの回』ではRIZEやクレイジーケンバンドの横山剣が出演して話題となった。ロックミュージシャンとも相性抜群のドラマと言い換えることもできるだろう。
そして、『I.W.G.P.』を象徴する楽曲といったら主題歌である「忘却の空」だ。ザラついたサウンドと当時の清春のトゲを残すようなボーカル、“乾いた風に吹かれ 独りきり歩いてる”という歌詞で始まる曲は、どこか空虚なドラマの世界観とシンクロしていて、流れる空の映像を眺めながら、この曲を聴かないと毎回、『I.W.G.P.』が終わらない気がしていた。
同楽曲はリリース当時、オリコンシングルチャート2位を獲得。30万枚を超える売り上げを記録した。しかし、その数字以上に我々の記憶に刻まれていることは明らか。2020年11月放送されたアニメ版『池袋ウエストゲートパーク』第7話で、清春の「忘却の空」(25th Anniversary Ver.)がオープニングに起用されると、SNSが喜びの声で沸騰した。ちなみに、清春のアルバム『Covers』(2019年9月発表)初回限定盤DVDにはセルフカバーによる「忘却の空」を収録。当時のミュージックビデオをバックに投影し、その前で現在の清春がアグレッシヴな演奏を繰り広げる胸アツな仕上がりも話題となった。また、音源としては10thアルバム『JAPANESE MENU / DISTORTION 10』(2020年3月発表)の初回限定盤にボーナストラックとして収録されている。
「僕が思ってるロックンロールって、どしゃ降りだったり、ドロドロだったり、めちゃくちゃ曇ってるとか湿気があるとか、そういう感じ」とは『JAPANESE MENU / DISTORTION 10』リリース時の清春の言葉だ。「忘却の空」の持つ、ストリートカルチャー、危険な匂い、規格外──それは清春のアーティスト性そのものと言っていいだろう。
ドラマがやばい。主題歌もリンクする。革命的だった本作が世代を超えて支持されるのは、必然だったのだ。
文◎山本弘子
■清春<THE 30TH DEBUT DAY>
open17:30 / start18:30
▼チケット
オールスタンディング 9,000円 ※ドリンク代別途必要
・e+
https://eplus.jp/sf/detail/0084320001
・ぴあ
https://t.pia.jp/pia/ticketInformation.do?eventCd=2245055&rlsCd=001&lotRlsCd=
・ローチケ
https://l-tike.com/order/?gLcode=72607&gPfKey=20221219000001307601
この記事の関連情報
【ライヴレポート】清春、30周年記念ツアー全60本中40本目のバースデー公演「最後までみんなを連れていきます」
黒夢、生配信番組で最新インタビュー公開
黒夢 × SAINT Mxxxxxx、コラボレーション始動
清春、黒夢復活ライブと恒例<The Birthday>公演の放送/配信が決定
清春 × Boris、コラボシングル「The Hidden Bloodline」発売決定
【ライヴレポート】清春、30周年ツアー前半戦“Yokohama ReNY betaこけら落とし”公演に3時間半の超人的領域
【ライヴレポート】SADS、限定復活<1999-2003>初日公演「ロックに、音楽に、美学に年齢関係ありません。踊り狂ってください」
SADS、限定復活ライヴを10月放送配信
SADS、20年ぶり初期メンバー限定復活含む3DAYSは全曲被りなし