【ライヴレポート】sads、a flood of circleを迎えた対バン・シリーズ第3夜に“美しい刺激”
「2018年はsadsを動かす」という清春の宣言通り、再結成7周年となる2018年、sadsの活動が精力的であることに間違いはない。2017年4月に加入したYUTARO(B)もすっかり馴染み、すでにフルアルバムの制作に取り掛かっていることや、7月6日の赤坂BLITZ公演を皮切りに全7公演に及ぶツアー<FALLING -chapter1->もアナウンス(2018年6月10日現在)されているが、6月から7月にかけて開催されるこの<The reproduction 7th anniversary「EVIL 77」VS 7 days>と題された対バン・シリーズ開催は、大きな驚きと共に迎えられたことだろう。
◆sads × a flood of circle 画像
これまでワンマンを軸として活動してきたsadsがあえて企画するだけあり、招いたゲストはジャンルの壁にとらわれないバンド界の猛者ばかりであることに加え、ダンスを主体とするエンターテイメント集団まで顔を揃えるという、通常ではありえない振り幅となっている。
そんなシリーズの第3日目となる2018年6月10日、渋谷CLUB QUATTRO。ゲストとして登場したのは長らくサポートギタリストを務めていたアオキテツが正式加入し、満を持して完成させた新作『a flood of circle』を引っさげてツアー中のa flood of circle(以下、afoc)だ。ロックンロールやブルースを基調としながらも、最先端のエッセンスを取り入れ、独自のサウンドに昇華する彼ら。熱心なafocのファンも駆けつけていたが、普段とはまた違った空気感が漂う中、はたしてどんな一歩を踏み出すのかと思っていたが、渡邉一丘の叩き出す強いショット、舞うようにうねるHISAYOのベース、その弾け方が凄まじいアオキ、ステージ中央で魂を削るような歌声でフロアを掌握する佐々木亮介という4ピースは、1曲目の「Blood&Bones」からいつものようにド直球のロックンロールをぶつけてくる。考えてみれば、雑食で異種格闘技戦を好むバンドであり、sadsの対バン・シリーズだからといって、妙な気負いはないのだ。
出だしからインパクト大なその屈強なサウンドはsadsファンにも響くのは当然か。矢継ぎ早に曲を放ちながら会場全体の熱気をどんどんと高めていき、素晴らしきロックンロールショウを展開していく。曲中、フロアのリアクションに渡邉が思わず笑みをこぼす場面もあり、手応えを感じ取っていることを見受けられた。
だが、まだまだ足りないとばかりに佐々木は、「今日は何をしに来たの? 日本でいちばんヤバいロックンロールを体感しに来たんでしょ?」と口にし、「GO」では力を振り絞って「もっと行こうぜ!」と言わんばかりに“Ready, Steady, Go”と叫びまくる。当然、そのアジテートに黙っているようなオーディエンスではなく、突き上げられる拳の数は増えていき、対バン形式だからこそ起こり得る会場の一体感の増し方が痛快だった。
ライヴ中、「いくら先輩だからといって胸を借りるつもりはなく、愛を込めてぶっ飛ばしにきた」と佐々木が語ったように、一瞬たりとも戦闘態勢を緩めることがない勝ち気なafoc。佐々木がこの日の想いをギターを弾きながら語り、すべてのオーディエンスを高みへ導くような「Honey Moon Song」、大胆にラップを取り入れた「One Way Blues」等、タフでしなやかなロックンロールを展開していき、終盤にはダイバーも出現するほど、エネルギッシュなムードを作り上げていく。
終わってみれば、MV曲を連投するようなよそ行きのスタイルではなく、まさに今の彼らを象徴する曲たちが並んだセットリストで、強靭さと色気というロックンロールに不可欠なモノを炸裂させるバンドの充実度を見せつけてくれた内容。目撃したオーディエンスに強烈な爪痕を残していったに違いない。
そのパフォーマンスを受けて、主役であるsadsが登場したのだが、厳かなSEが鳴った瞬間から、先ほどまでafocがいたステージとは思えないような別世界の空気感が生み出される。フロアからは無数のメロイックサインが掲げられ、清春がステージ中央で立ちはだかり、まずは挨拶代わりに「CRACKER'S BABY」を投下。その威圧感に溢れたヘヴィなサウンド、凄みと鋭さを兼ね備えた清春の歌声のマッチングが素晴らしく、序盤からオーディエンスの狂乱っぷりが凄まじい。前へ前へと押し寄せ、頭を振り乱し、叫び続ける。そんなカオティックな様相を清春は確かめるように見渡し、立ち止まることなく「LIAR」でさらに加速。とてつもない重低音が見事にドライブし、会場全体を飲み込んでいくのだ。
だが、強烈な激しさで押し寄せながら、絶妙な緩急で魅了するのも傑出したsadsの器が為せる技であろう。K-A-Zの精彩を放つギターの音色で彩られた「ID POP」をプレイし、オーディエンスを飽きさせることがない。
ここで清春が、「清春さんはロックスターだからリハにも来なくて、まだ会ったことがない」と佐々木がMCで話したことを受け、「さっき楽屋で(佐々木に初めて)会いまして」と笑いを誘い、「オレの好きなタイプの曲も結構あって、ああいう声を出せたらいいな」とライヴを観た感想を述べる。加えて、「せっかく来たからには、ちょっとだけでも楽しんでってください」とafocのファンへの心遣いもあり、序盤からの圧倒的な盛り上がりに面食らっていたオーディエンスもステージへの集中度が高まっていったように見えた。
その後も冗談交じりのMCを加えながら、とにかく凶暴でグラマラスなサウンドを響かせるsads。ゆるりとした空気から一気に引き締めるその切り替えは、そうそう観られることではなく、まさに神業的ともいえるだろう。清春がステージを所狭しと動き回り、大きな声を上げれば、それ以上のパワーをオーディエンスも返そうとする。どこを切り取ってもクライマックスのような場面ばかりが続いていく中で、特に印象的だったのがスケール感みなぎるロックチューンな「spin」。屈強なサウンドの中で力強さとしなやかさを持ち合わせた歌を鳴らしながら、観る者すべてへ襲いかかる。その技術もさることながら、切れ間なく攻めの姿勢で踏み込み続けるのが驚異的なのだ。
中盤以降も修羅の如き熱量で歌い咆哮する清春、巧みなフレーズと音色を使い分け、曲の世界観を増幅させるK-A-Z、爆撃機さながらのとんでもないパワフルさで会場を揺らすGO、前のめりになりながらフロアをさらなる狂乱へと誘うYUTAROといった布陣に隙はない。オーディエンスの心に着火し続け、狂騒の宴が繰り広げられていく。
怒涛の流れの中、ラスト1曲となったところで、改めてこの対バンシリーズの意味合いについて、「僕は自分たちだけで自立してやっていくことを20年以上前に決めたんですけど、みんなにも交わらないであろう人たちとやる僕らを観て欲しかった」と清春が語ったのだが、その後に続けた活動に関する矜持もまた記憶に残るモノであった。世の風潮に流されることなく、「バンドとファンの人たちがいちばん得をするべきだと思う」という気概のもと、自らが信じる音楽を提示し続ける清春。妥協することなどなく、常に第一線で戦い続けてきたからこその重みであろう。
締めくくりとなった「THANK YOU」では、恐ろしいほどのスクリームで会場を煽り、それに続けとメンバー3人もより覚醒し、猛然と打って出る。その圧倒的なグルーヴを受けて、フロアから突き上げられるメロイックサイン。クライマックスにふさわしい、美しい情景が眼前に広がり、刺激的な夜は幕を下ろした。
終演からしばらく経ち、打ち上げの席だろうか、清春がインスタグラム、佐々木がツイッターに2ショットの写真をアップしたのだが、お互いのバンドTシャツを身にまとっている姿がそこにあった。それは挑み続ける両雄がしっかり交わった何よりの証。この日のライヴを経たそれぞれのステージがまた楽しみになった。
取材・文◎ヤコウリュウジ
撮影◎尾形隆夫
■<The reproduction 7th anniversary「EVIL 77」VS 7 days>
6月01日(金) 恵比寿LIQUIDROOM w/東京ゲゲゲイ
6月09日(土) 渋谷CLUB QUATTRO w/SUPER BEAVER
6月10日(日) 渋谷CLUB QUATTRO w/a flood of circle
6月12日(火) 横浜BayHall w/LOUDNESS
6月15日(金) 恵比寿LIQUIDROOM w/BiSH
6月23日(土) 新宿BLAZE w/HER NAME IN BLOOD
7月09日(月) 代官山UNIT w/ミオヤマザキ
■<The reproduction 7th anniversary TOUR「FALLING」>
【chapter 1】
07月06日(金) 赤坂BLITZ
07月21日(土) 梅田CLUB QUATTRO
07月22日(日) 梅田CLUB QUATTRO
07月28日(土) 名古屋BOTTOMLINE
08月03日(金) HEAVEN'S ROCK さいたま
08月17日(金) 高崎club FLEEZ
08月23日(木) 柏PALOOZA
【chapter 2】
09月08日(土) 松本Sound hall a.C
09月09日(日) 富山MAIRO
09月27日(木) 京都FANJ
09月29日(土) 岡山CRAZYMAMA KINGDOM
10月05日(金) 水戸LIGHTHOUSE
10月12日(金) 浜松Live House窓枠
10月19日(金) HEAVEN’S ROCK熊谷
【chapter 3 TOKYO 7DAYS】
11月06日(火) 渋谷WWWX
11月14日(水) 新宿LOFT
11月15日(木) 新宿LOFT
11月20日(火) 代官山UNIT
11月21日(水) 代官山UNIT
11月27日(火) 下北沢GARDEN
11月30日(金) 品川Stellar Ball
■<The reproduction 7th anniversary「FALLING」-EVERLASTING TRUTHS->
09月29日(土) 岡山CRAZYMAMA KINGDOM
■NEW ALBUM『FALLING』
online sale coming soon
この記事の関連情報
【レポート】a flood of circle、アルバム発売記念“佐々木亮介ストリートライヴ”で「俺たちはまだここで歌ってる」
【インタビュー】a flood of circle、削ぎ落として剥き出しな愛と葛藤のアルバム完成「もっとやらかしたい。不安定なほうにいきたい」
a flood of circle、新曲「ファスター」MV監督は番場秀一+毎日フラッド企画実施
佐々木亮介(a flood of circle)、弾き語りツーマン<雷よ静かに轟け>第八夜を12月開催
a flood of circle・佐々木亮介、アルバム発売を記念したストリートライブを開催決定。新ビジュアル&ジャケット公開も
清春、黒夢復活ライブと恒例<The Birthday>公演の放送/配信が決定
【ライブレポート】a flood of circle、3時間超え全32曲の日比谷野音公演に覚悟「俺と一緒に行こう」
a flood of circle、15周年記念新曲リリース。ニューアルバム発売、全国ツアー開催も発表
a flood of circle、次回ツアーファイナル公演の日程&会場を発表