【ライブレポート】Nissyの涙
Nissy(西島隆弘)が4月25日、4月26日に東京ドームにて<Nissy Entertainment 2nd LIVE -FINAL- in TOKYO DOME>を行った。
◆ライブ写真
Nissyは2018年2月より全国7カ所で<Nissy Entertainment 2nd LIVE>を開催。この追加公演として行われたのが、東京ドーム2デイズだった。NissyはAAAとして活躍するアーティストだが、グループではできないこだわりを詰め込んだのが、ソロで行う<Nissy Entertainment>だ。演出、衣装、映像すべてをNissy本人がプロデュースしている。
Nissyがソロで作り上げるライブは、ただ曲を聴かせるだけのものではない。「こんなの見たことない!」という驚きが随所に散りばめられ、照明のひとつひとつ、衣装のディテール、小道具…何もかもがこだわりの結晶だった。仮にNissyの曲をまったく知らなくても楽しめただろう。タイトルにしっかりと“Entertainment”と掲げている、その理由がわかる。そんな東京ドーム公演で、Nissyは涙を見せた。AAAとして何度も大きなステージで華やかなライブを繰り広げてきたNissy。そんな彼がなぜこの公演で涙をこぼしてしまったのか。
その理由を考えるために、この日のライブを振り返ってみたいと思う。<Nissy Entertainment>は、まず何よりも演出が素晴らしい。大きなスクリーンを背景にしたメインステージ、アリーナ中央まで伸びるT字型のセンターステージ、それらを繋ぐ長い花道。その空間全てを使って、一曲一曲まったく違った趣向の演出が繰り広げられたのだ。一曲目「The Eternal Live」ではスクリーンに映し出される都会の夜景とリンクするように、高層ビルを模したセットにのって赤いファーのコートにサングラスを身に付けたイカしたNissyが浮上してくるし、続いての「Double Trouble」では楽曲がドームバージョンにアレンジされさっそく衣装もチェンジ。ステージには花火が打ちあがり、「17th Kiss」では銀テープも飛び出す。もはやこの時点で、普通のライブではない。惜し気もなく特殊な演出を魅せつけてくるから、「次は何が来るか」と目を離せなくなる。
センターステージからメインステージに戻る際に、花道の各所に用意されたテーブルでNissyが手品を披露するという場面も。普通ならただ移動するだけの導線にも細かい仕掛けを施すというアイディアには、見ているひとを喜ばせようとするNissyの温かい人柄が現れている。でも、Nissyは「どうだ!」とカッコつけるというわけではない。曲中に見せるくしゃっとした笑顔には、本人もこのステージを素直な気持ちで楽しんでいることが窺える。「俺もテンション高いぜ!」と叫んだのも、心からの言葉だっただろう。もちろん歌も秀逸。素晴らしい演出はもちろん見るべきだが、たとえ目をつぶっていたとしてもNissyの歌の力は人々を魅了しただろう。
特に演出と歌の力が最高にコミットしていたのは、しっとりとした曲が続くライブ中盤に披露された「Aquarium」。昨年行われた<Nissy Entertainment 1st LIVE>横浜アリーナ公演でのステージ上に張られた水の上でびしょ濡れになって情感的に踊るNissyの姿も忘れられないのだが、今回はさらにスケールアップ。T字型のステージ目いっぱいに、高さ約9mにまで噴き上がる噴水が現れたのだ。女性ダンサーと繰り広げる情感たっぷりのダンスと切ないNissyの歌声にあわせ、噴水が形を変え色を変え、曲の世界観を彩る。まるで映画を観ているような美しい光景だ。その次の「愛tears」ではランタンのような風船がふわっとアリーナ中に舞い上がる演出で、夢のような場面も見せてくれた。こういった大掛かりな演出は、2階席、3階席といった遠い席から俯瞰で見るとより一層綺麗だっただろう。それもNissyがこだわった部分に違いない。
ガラッと趣向を変えて、ファンと作り上げるコーナーもある。会場にいるファンをひとりずつ指名し、スクリーンを使ってトークをしたり2ショット写真を撮ったり。リアルタイムでの一対一のコミュニケーションに、ファンは大喜び。こんな和やかな一幕も、Nissyのライブの醍醐味だ。楽しい雰囲気のまま披露された「DANCE DANCE DANCE」では、120名のダンサーたちとラインダンス。密なコミュニケーションから大所帯でのダンスという対比も面白い。続いて「SUGAR」を歌った後、「ありがとうございました!」とステージ下方に姿を消したNissyが、即座にステージから「嘘ぴょん!」と飛び出てくるところもユーモア満載の彼らしい演出か。そして「今日のNissy」というコーナーでは、本日開場する前からの一日を追った写真が公開されたり、ファンから「Nissyに歌って欲しい曲」のリクエストを募りトップ5に選ばれた楽曲の中から久保田利伸 の「LA・LA・LA LOVE SONG」を歌唱する場面も。全方向へのファンサービスが嬉しい。
無数のレーザー光が飛び交う「LOVE GUN」からの終盤戦は、これまでより一層華やかに。本編ラストの「The Days」では、ミュージックビデオでも共演したスヌーピーやエルモといったユニバーサル・スタジオ・ジャパンのキャラクターも登場する。旗やパラソルを持ったダンサーたちとトロッコに乗ったNissy、会場全体を巻き込んでの振り付けは、テーマパークのよう。曲のラストではメインステージに120名のダンサーも集結し、スモークや銀テープ、噴水の演出など、ありったけの華やかさを詰め込んでこの日一番の盛り上がり。ラストにNissyは画面に向かって「ありがとう、またね!」とウインクしてステージを去った。満足度の高いステージが繰り広げられ、お腹いっぱい…になるのはまだ早かった。アンコール「Girl I Need」では高さ30mにまで登る気球で、3階席のファンの目線に近づくNissy。気球にのったまま、新曲も披露された。
アンコールのMCでは「私の今の脳みその限界が、この作品です。」と感慨深げに今日のライブ、そして今日に至るまでの道のりを振り返る。そしていつもよりシリアスな表情で「僕が作ったエンターテインメントですが、みなさんが聴いてくれて見てくれて来てくれて、今日という日にエンターテインメントができました。みなさん本当にありがとうございます」と感謝を述べる。そして「そうだ、この話もしておこうかな」と、今回東京ドームで追加公演を行うことになった理由を語り始めた。
AAAとしての活動もある中、東京ドームという会場での追加公演には決意も必要だ。Nissyは「極論言ってしまえば僕ら、いつ死ぬかわからないし、僕なんかいつこの腰がだめになるかわからない。だから後回しにするのではなく、いまやろうという話になった」という。AAAの西島隆弘ではなく、Nissyというソロアーティストは、ランキングなどでは目立つ存在ではない。そのことに不安になる人がいるということも、彼は考えていたそうだ。そんなとき、「“ドーム”という活字が、僕にとってもNissyチームにとっても、そしてみんなにとっても自信につながる」と考えた結果が、今回の公演だったのだ。ただ券売状況や自身の人気を基にした何となくの流れでドームという場所を選んだのではない。自身に関わるすべての人たちのことを思った決断だったのだ。
「生涯みなさんが0歳から何歳まで生きるかわからないけど、その何十年間の中に、今日という日、僕という存在を選んでチケットを買ってここに来てくれたこと、本当にありがとうございます」と言って深く頭を下げるNissy。そして涙を流しながら「俺のエンターテインメントを面白そうとか、歌聞きたいなとか色んな思いを込めてチケットを買ってくれて見に来てくれて。今日という日を遊園地でもなく映画でもなく、自分の仕事でもなく、僕のエンターテインメントを選んでくれたことを本当にうれしく思います」と、こらえきれないように何度もファンに感謝を伝える。涙で声を詰まらせ「もうちょっとやりたかったけどね」とも。その思いを受け取ったファンからは「ありがとう!」と大きな返事がこだましていった。
鳴り止まない大きな拍手に、また込み上げる涙。「歌えなくなってしまう(笑)!」と照れ隠しのように言いつつも、ラストには「今の俺の気持ちを込めて、そしてみんなもこんな気持ちかなと思いながら歌わせてください」と言って、「My Luv」を届けてくれた。この曲には「まだこうしていたいよ」「離れてもいつの日も感じているから」「出会えたこと胸に抱きしめて」など、Nissyがファンに伝えたい思いが全部凝縮されている。もちろんファンもそれは同じで、会場にはNissyと一緒になってサビを歌う声が響き渡った。
Nissyの驕らない姿勢、ファンへのひたむきな思い、楽しいエンターテインメントを届けようとする思い。<Nissy Entertainment 2nd LIVE>はそれらがすべて詰め込まれた素敵なライブだった。こんなに素敵なライブだったということは、Nissyにはプレッシャーも苦労もあっただろう。こだわればこだわるほどそれは重くのしかかってくるだろうし、いつも明るい彼でも時には悩み、落ち込んだかもしれない。だが楽しいエンターテインメントを人々に届けようとする思いが彼の中にある。それがしっかりとファンにも届き、届いた結果ファンからも感謝され、東京ドームという大きな会場でエンターテインメントとして完成されたことが彼の涙に繋がったのではないだろうか。MCでNissyは涙ながらに「また頑張って何か作るから!」とも宣言していたので、この涙を超えた先で次に彼がどんなエンターテインメントを見せてくれるのかが楽しみだ。
ライブのエンディング映像は、打ち合わせ風景からライブに至るまで、ツアー全体を振り返る映像だった。袖でその映像を見ているNissyも映し出され、会場にいたファンも一緒になってライブへの思いを噛み締め余韻に浸っていた。映像の最後には「これでライブはお終いです」と改めてNissyの口から告げられた。…が、「どうしようか?」「どうしようか?」となかなか映像が終わらず、現れたのは1stシングル「どうしようか?」の衣装“Nissyスーツ”を身に付けたNissy。そしてステージに飛び出すと、サプライズでソロプロジェクトの始まりを象徴する「どうしようか?」を披露した。帰り仕度をしていたファンもこれにはびっくり。慌てて席に戻るファンの姿も見られた。スクリーンには2013年に<a-nation>に出演した時の同曲の映像、2016年の<Nissy Entertainment 1st LIVE>の同曲の映像も映し出され、今回の集大成を見せつけてくれた。曲が終わると「みんな携帯ある?」と問いかけて撮影の許可まで。約3時間30分、席を立つ最後の一瞬まで一度も退屈させない、本物のエンターテインメントショーがそこにはあった。
取材・文◎服部容子(BARKS)
セットリスト
M2.Double Trouble
M3.17th Kiss
M4.恋す肌
M5.ハプニング
M6.花cherie
M7.Don't let me go
M8.Aquarium
M9.愛tears
M10.DANCE DANCE DANCE
M11.SUGAR
M12.リクエスト曲
M13.ワガママ
M14.LOVE GUN
M15.KISS&DIVE
M16.まだ君は知らない MY PRETTIEST GIRL
M17.The Days
EC1.Girl I Need
EC2.新曲
EC3.My Luv
EC4.どうしようか?
◆Nissy(西島隆弘)オフィシャルサイト
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