【インタビュー】ベリーグッドマン、経験したことのない苦悩を超えて決意を込めた『SING SING SING 6』
前作からわずか半年、初のホールツアーをはさんで驚異的なペースで届いたベリーグッドマンのニューアルバム。メジャー3作目にあたる『SING SING SING 6』は、三位一体のコーラスと力強いメッセージで綴る応援歌「Hello」を筆頭に、先行配信でチャートを賑わせた「世界中のどんなラブソングよりも feat.erica」、フューチャーベースやトラップなど現代的なクラブサウンド、そしてまさかの合唱曲など、カラフルにハジける10曲入り。得意の応援歌とラブソングの二本立てに、新たな要素を盛り込んだ充実の1枚だが、実はその裏にはこれまでに経験したことのない苦悩の日々があった――。音楽家としての決意がにじむ、RoverとMOCAの告白に耳を傾けてみよう。
◆ベリーグッドマン~画像&映像~
■しがみついていかないと置き去りになるという気持ちのほうが強い
■上には上がいるから食らいついていかなあかんと今は思っています
――毎度お会いするたびに言ってますけども。アルバムを出すのが早い!
MOCA:絶対早いですよ。
Rover:早すぎます。
――生き急いでいます。でもこのペースでこのクオリティは本当に素晴らしいですよ。
Rover:良かったです。HiDEXのスタジオがあるから、このペースで作れるのかなとは思うんですけど。それと、新しいものを出せるならどんどん出したほうが、リスナーさんも絶対いいと思うので。
――MOCAさん。この半年で個人的な成長や変化を感じる部分は。
MOCA:積極的に、より音楽的に成長できてるなって自分でも感じられるようになったのは、初めてかなと思いますね。今までも攻めていたんですけど、より攻めに行けているかなと。いい意味で売れてないんで。
――何を言っているんですか。
MOCA:ヒット曲が出てたら、逆にガチガチになったかもしれない。そういうものがいい意味でないんで、何でもできるなみたいな。
――前回のホールツアーも大成功で、環境は明らかに良くなってるでしょう。それでもまだまだ?
Rover:上がっているなという感覚もありますけど、どっちかというと、しがみついていかないと置き去りになるという気持ちのほうが強いというか。上には上がいるから、食らいついていかなあかんと今は思っていますね。
――それはステージが上がったんじゃないですかね。何も怖くないイケイケの時期があって、その次の段階に入ったみたいな。
Rover:いや、イケイケの時期はあんまりなかったんで(笑)。キャラ的にイケイケの感じになっていただけで、けっこうたぶん真面目なんですよ。かなりの優等生レベルの奴やと思うんですけど、ただ肩ひじ張って音楽作っていてもしょうがないという気持ちもあったんで。そういう意味では今回の『SING SING SING 6』は、けっこう力抜けてていいんじゃないかとは思うんですけど。
――まさに。すごくナチュラルな3人の姿が見えてくるアルバムです。
Rover:前作が真面目な1枚だったんで、もしかしたらホップ・ステップ・ジャンプの、ジャンプする前の作品が『5』だったんかな?という思いもありますね。『6』がジャンプになるのかどうなのか、まだわかんないですけど、気持ち的にはすごくジャンプしていますという感じですね。
――Roverさんはどんなモードだったんですか。この半年間のメンタリティは。
Rover:正直、けっこう無理があるなと思っていたんですよ。前回、タイアップが7曲ついて出した『5』が、まだ消化されてない気持ちがあったんで。もちろんお客さんには新しいものを届けたいけど、僕らの中で前作を消化しきれてないまま新しいものを出すのは、「何のために出すの?」と言われたら即答はできないみたいな、嘘になってしまう気持ちがあるような気がして。
――うーむ。なるほど。
Rover:たとえば応援歌の「ハイライト」が“ずっと描いてた夢の場所へ僕らならいける”という決意の曲だとしたら、次に何を歌えばいいのか?と。アッパーチューンとかラブソングとかは、全然書けるんですけど…。
▲Rover
――メッセージ系の曲をどう歌えばいいのか迷っていた。
Rover:そうです。僕はもう無理やと思いました。実際、最後まで作れなかった。なので、春にリリースするなら「友達の歌」という、友達に贈る歌で行きたいと言ったんですけど、それもなかなか出てこなくて。『5』を10月4日にリリースして、11月11日にデモテープはできていたんですけど、10時間ぐらいスタジオにこもって、最後の最後に出たっていう感じ。でもその時はまだ『5』も出したあとやし、まあ無理やなっていう感じだったんですけど、そこから約3か月まったく曲が出なかった。そこでMOCAが出してくれたのがリード曲になった「Hello」なんですよ。
――おお。救世主現る。
Rover:救世主です。そこで思ったのは、自分だけが背負う必要はないというか…もちろんそれぞれに背負ってくれてるんですけど、みんな以上に背負いたくなってた自分がいたので、それは違うなと思いましたね。だから今回、みんなで作ることが絶対に正解だと教えてもらえたような気がしています。
――ああ。なるほど。
MOCA:だから誰かがヤバい時は引っ張り上げるみたいな動きがあって。
Rover: 仲間ってそういうもんだなと思ったんですよね。
――納得しました。冒頭にMOCAさんが「積極的に、より音楽的に成長できてる」と言ったのは、そのへんの意味も含んでいる。
MOCA:そうですね。『1』『2』『3』と、ほぼRoverとHiDEXに助けられて出したインディーズ時代があって、『4』の「Eye to Eye」という曲で「ちょっとMOCA歌ってみてよ」というところから、サビのメロディを出せるようになって。「Hello」は前作の「ハイライト」を作った夜に、Roverが帰ってから一人でギター弾きながら作った曲なんで、もともとあった曲なんです。なかなか曲が出てこない中でRoverが悩んでいたんで、そこを逆にチャンスととらえて「今、俺が頑張らなあかん時や」という気持ちがありました。それで「Hello」という、今の自分たちのリアルな現状を歌った曲ができてからは早かったですね。これをガチッと固めて「あとは好きなことやろうぜ」みたいな感じやったんで。
Rover:本当に今『6』を作り終えて、僕はものすごい制作意欲があるんですよ。ここで一個突き抜けた感じがあったというのは、僕の中ですごいきっかけになりました。
――良かった。
Rover:それと、誰が曲を書いてるとか僕は気にしていなかったんですけど、それってやっぱり大切だなと思いましたね。これはMOCAじゃなかったら、ほかの人からアイディアをもらってたら納得いってなかったと思います。やっぱり一児の母親として…。
MOCA:何で性別変わってんねん!(笑)
Rover:そうか(笑)。一児の父親として2歳の子供を育てるという、僕が経験してないことをしてる人やし、説得力あるなと。誰が作ったとか音楽には関係ないとも思うんですけど、でもその人が作った背景は確実にあるなと思うし、「Hello」はそれがにじみ出てる曲やなってめっちゃ思っているんで、「ハイライト」を全然越してきてると思いますね。「ハイライト」はもちろんいい曲やけど。
▲MOCA
――「今は愚痴ってる暇などないな」「あきらめない/明日が見えなくても」とか。言葉が本当に等身大。
Rover:特別なことは何も言ってないんですよ。
――うん。だからいいと思う。
MOCA:その歌がほんとうにその人に合ってるか?って、すごく大事だと思うんですよ。僕たちがリムジンに乗ってシャンパン飲んでるような曲とか、絶対似合わへん。
――確かに(笑)。
MOCA:でも自分たちが大阪城ホールを目標に掲げて頑張っていく中で、全然ヒット曲が出ないやんけとか、上に先輩が詰まってるなーとか、メッセージソングももうあの人がやってるしなーとか思いながら、あらゆる矛盾と戦いながらそれでも頑張るというのが、今のこの仕事は自分に合ってるのか?とか悩んでるのと、ちょうどリンクしてるんかな?と思っていて。
――ああ。なるほど。
MOCA:僕らがめっちゃ売れていてお金を持っていて、アリーナとかバンバンやっていたら逆に歌えないというか、「おまえらも願えば叶うぞ」みたいな、上から目線の聴こえ方になると思うんで。ちょうどいいタイミングで出せたかなとは思っています。
――ちなみに、その前の「Intro」でしゃべってるかわいい声は、MOCAさんの息子さん?
MOCA:はい。ここまで自由度の高いアルバムになったから、自由なのがいいと思って、一回録ってメンバーに聴かせたら、面白いということになって、そのまま行くことになりました。息子の名前が太郎っていうんですけど、太郎から始まり2曲目が「Hello」でいちおう韻を踏んでいるという、誰もわからない遊びをやっています。
◆インタビュー(2)へ
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