【インタビュー】いつでも心は“ふたつでひとつ”、双子ソプラノデュオ山田姉妹にひとめぼれ
■ これから歳を重ねて、子供たちにも歌い継いでいきたい曲を選んだ
華:そうですね。平成の歌まで。
──前作を踏まえて、どういうアルバムにしようというテーマがありましたか。
華:前回と同じように、日本語を大事に歌い継いでいくということは一貫しているんですが、今回の選曲は、より世代が私たちに近づいたので、等身大の気持ちを込めやすかったです。たとえば昭和のフォークだと、憧れや想像で歌っていたものが、今回のアルバムでは、私たちの心にスッと入ってくる歌詞に出会うことができたので。これから歳を重ねて、子供たちにも歌い継いでいきたいと思う曲を選ばせていただきました。
──平成の曲が6曲入っていますが、たとえば「少年時代」(井上陽水/1990年)が出た時には、まだお生まれになっていない。
麗:はい。次の年に生まれました。
華:でも小学生の頃から、「少年時代」はよく歌っていました。
麗:教科書にも載っていたので。
華:「心の瞳」(坂本九/1985年)も、合唱曲としてよく歌われていたので、合唱曲だと思っていたら、坂本九さんの最後の曲だということをあとから知りました。高校生が合唱で歌う曲も、実はこういう曲なんだよって、知ってもらえたらうれしいと思う曲ですね。
──ここに入っているのは、全曲知っていた曲ですか。
麗:知らなかった曲は、「部屋とYシャツと私」(平松愛理/1990年)です。
華:アレンジャーの方に、「可愛い曲があるよ」と教えていただいて、一番最後に入れることが決まりました。
麗:この曲だけ三拍子だし、歌詞の内容もほかの曲とはちょっとテイストが違うので。インパクトがあって面白いんじゃない?ということで、歌ったら、私たち二人の解釈が違ったりして、すごく面白かったです。ほかの曲は、解釈を同じにして声を合わせる曲が多い中、この曲は、違う女の子が二人で歌っている感覚で、新しいサウンドになったかなと思います。今回は、解釈が違ってもいいんじゃない?という考えをもとに、二人で合わせようということよりも、それぞれがしっかりと自分の思いを込めて歌おうという思いが強かったんです。
──そうなんですね。
麗:1枚目のアルバムは、解釈を一致させて、声を寄せて、その面ですごくいいアルバムができたと思うんですが、今回はテイストが違って、ちょっとレベルアップした山田姉妹になったのかな?って、この曲に気づかせてもらったのかなと思います。
──ハーモニーの種類も豊富ですね。上に行ったり下に行ったり、追っかけたり、スキャット風にしたり。合唱といってもいろんなやり方があるんだなと思って、感心しました。
華:歌い分けも、どっちが合うかを歌ってみて決めています。たとえば、この歌詞は麗より私のほうが好きだけど、歌うのは麗のほうが合うから、麗に歌わせようとか。そういう話し合いに時間をかけて、日本語が一番伝わるのはどっちだろう?と考えながら、決めていきました。
──それは、たとえば?
華:「あの素晴しい愛をもう一度」の、<♪広い荒野にぽつんといるよで>とか、そこだけ歌詞がせつなくて、優しい感じのメロディになるんです。ここがすごく素敵だから歌いたいって麗が言ってたんですけど、ぽつりと「でも華のほうが合うよね」って。私は麗が歌ってもいいと思ったんですけど、その一言で「確かにそうね」って。
麗:そこまでずっと元気で来て、ふっと淋しくなる時に、華の優しい声のほうが絶対に合うと思ったんです。逆に「少年時代」の<♪夢はつまり想い出のあとさき>という、華が歌うと言っていた部分を私が歌っています。夢の話をする時に、変化をつけたくて、次の歌詞をつなげるためにも「ここは麗のほうがいいよ」と華が言ってくれたので。今回は、自分から歌いたいと主張するよりも、「これはあなたのほうが合う」と言い合ったりしましたね。やっぱり、より良い作品を作る時の気持ちは“ふたつでひとつ”なので。
──うまいこと言いました。
麗:そこの目的が、二人とも一致していたので。たくさん話し合いをして、スムーズに歌えました。
華:ただ、一つ野望があって、コンサートで、いつかパートを逆にして歌ってみたいんですよ。
麗:間違い探しでもいいね。「今、CDとは何かが違いました、何でしょう?」と。たくさん聴いてもらって、覚えてもらってから、そういうことができたら面白いかもしれないです。
──今回は伴奏もパワーアップして、ピアノだけではなく、弦カルテットやウッドベース、グロッケンも入って、カラフルになってます。
華:そうなんです。今までピアノ一本で歌ってきたので、それが基本だと思っているんですが、弦が入るだけで厚みが増すので、歌詞が載ると言葉がふわっとしてより聴きやすくなるのかな?と、ずっと思っていたので。
麗:いろんな景色になるので、そこに乗っかるだけで、歌も助けてもらいましたし。木製楽器の温かい音色で、優しい気持ちで歌うことができました。
◆インタビュー(3)へ