【インタビュー】いつでも心は“ふたつでひとつ”、双子ソプラノデュオ山田姉妹にひとめぼれ
■ 「2つで1つ」の歌詞は、80歳で歌っても共感できる
──そして、どうしてもお話を聞かなければいけないのは、CDの最後に入っているスペシャル・トラックですよ。これはカバーではなくオリジナルで、二人が1曲ずつ、作詞を手がけているんですね。
麗:それぞれが初めて書いた作品です。両方とも2013年にできていました。
華:学生時代、同級生であるピアノの川﨑龍さんと一緒によくコンサートをやっていたんですが、「オリジナルがほしいね」ということで、自分たちで詞を書くことになりました。私の書いた「虹色の空」は、音大の3、4年生の頃、進路に迷っている時に──鎌倉におしゃれなスタバがあるのご存知ですか?
──ごめんなさい(笑)。行ったことないです。
華:お庭風の素敵な場所なんですけど、そこに行った時に「あ、詞が書けそう」と思って、座った瞬間にバーッと書いて、特に清書もせずに川崎に送ったんです。そしたら、その夜のうちにメロディーがついて返ってきて、そこから自分たちのコンサートで歌うようになりました。同級生も「聴いたよ。感動しちゃった」とか言ってくれて、最初はすごく恥ずかしかったんですけど、楽しみも増えたので、詞をいっぱい書いてみたいなと思ったきっかけになりました。そのあとに、麗も作詞した曲を作ろうということで作ったのが、「ただいま」です。
麗:私は華とは違う大学で、2年半独り暮らしをしたんですが、1年経つ頃に、家族を思い出すことが多くなったんです。家に帰っても電気がついてないし、誰も「おかえり」と言ってくれなかったり、無意識に淋しさを感じていた時に、たまに実家に帰ると、玄関に電気がついてるだけでもうれしいし、離れてみて気づくことがたくさんあって。それがすごくうれしくて。普段は恥ずかしくて「ありがとう」なんて言えないけれど、その気持ちを歌詞に込めたのがこの曲です。母の誕生日が4月なんですけど、その年の3月の終わりぐらいに、私たちの出身地の逗子市から、「山田家でファミリーコンサートをしてほしい」という依頼がありまして、そこで誰にも言わずに「ここで母に1曲プレゼントがあります」って、サプライズで歌ったのがこの曲です。
──なんていい娘さん。
麗:その後もいろんな場所で歌ってきたんですけど、母の世代の方が「この曲が好き」と言ってくださることが多くて、今回この曲がCDに入ることが決まった時も、母が泣きそうになって喜んでくれました。父も歌詞に出てくるので、父も喜んでます。ただ、タイトルを間違って覚えていて、「おかえり」がCDに入るの?って。「ただいま」なのに(笑)。
──それはきっと、お父さんお母さんは「おかえり」という側だから。
麗:母の知り合いも「おかえり」っていう人が多いです(笑)。題名は迷ったんですけど、私は帰る立場なので、母に届けるにはやっぱり「ただいま」かなと思いました。
──歌詞によると、麗さんはビーフシチューが好きなんですね。
麗:好きです! 母の作るビーフシチューがおいしいんですよ。
華:実はこれ、ビーフシチューになってますけど、本当は山田家のごはんといえば、みんな餃子が大好きなんです。
麗:うちで作る餃子が大好きなんですよ。だから本当は、歌詞に餃子を入れようとしたんですけど、♪私の大好物の餃子〜って歌うと、一気に景色が変わるので(笑)。
華:なんか違うねーって。それでビーフシチューになったという裏話があります。
──餃子には悪いけれど、それで良かったと思います(笑)。
麗:等身大の気持ちを込めた曲が多いアルバムの中に、二人にとって初めてのオリジナル曲が入るのは、感慨深いです。家族を始め、いろんな方がすごく喜んでくれています。
──アルバムの中で、特に好きな歌詞はありますか。自作以外で。
華:そうですね、「2つで1つ」(工藤慎太郎/2009年)に、“あこがれとため息は2つで1つ”という歌詞があって、それはすごいなと思いました。落ち込んだ時のため息と、あこがれとを結び合わせた工藤さんの歌詞の作り方は、きっといろんなことを感じて作られたんだろうなと、衝撃を感じました。“喜びと悲しみは2つで1つ”“出会いとさよならは2つで1つ”とか、どっちかが欠けてはいけないもので、どっちも人生に必要なものなんだなということを感じさせてくれたので。それはたぶん、26歳の今から時が経って80歳で歌っても、同じように共感できると思うんですね。だからすごく好きです。
麗:「いのちの歌」(茉奈 佳奈/2009年)で、“生まれてきたこと、育ててもらえたこと、出会ったこと、笑ったこと、そのすべてにありがとう”という歌詞があるんですが、それこそ80歳になっても、同じことを思うのかな?と。昨年、祖父をなくしたんですけど、その時期にもこの曲を歌っていて、重さをすごく感じたので、この曲にも気持ちが入りました。そして全部の曲を通して思うのが──幸せというものは、すごく大きいものではなくて、身近にあることこそ幸せで、そこに今いられることが一番幸せなんだということを、気づかせてくれる曲が多かったんです。今回は、歌詞に助けられた部分がすごく多かったですね。
──みなさん、ぜひ手に取ってみてください。ジャケットがとても可愛らしい、リボンで結ばれた二人が目印です。
麗:(小声で)イラストのこと言って。
華:自分で言ったらいいのに(笑)。麗はイラストや書道が得意で、ブックレットに麗のイラストも入っているんです。前回は白黒でのイラストでしたが、今回はカラーで載せることができたので。
麗:私の夢がひとつ叶いました。
華:私は絵や書道の才能を、全部麗に取られてしまったので。
麗:でもMCの才能はあるよ(笑)。
華:そうですね。そんな感じの二人です。
麗:助け合ってます!
取材・文◎宮本英夫
◆ ◆ ◆
※なお、BARKSが取り組む歌謡曲・演歌に特化したエンタメ情報サイト「全日本歌謡情報センター」では、山田姉妹からの動画コメントも追加掲載した同インタビュー記事を公開中です。こちらも、あわせてぜひチェックして下さい。
■「全日本歌謡情報センター」内記事へ
◆ ◆ ◆
アルバム『ふたつでひとつ 〜心を繋ぐ、歌を継ぐ』
COCQ-85416 3,000円+税
【収録曲】
・野に咲く花のように 作詞:杉山政美 作曲:小林亜星
・2つで1つ 作詞・作曲:工藤慎太郎
・どんなときも。 作詞・作曲:槇原敬之
・いのちの歌 作詞:Miyabi 作曲:村松崇継
・少年時代 作詞・作曲:井上陽水
・たしかなこと 作詞・作曲:小田和正
・あの素晴しい愛をもう一度 作詞:北山修 作曲:加藤和彦
・心の瞳 作詞:荒木とよひさ 作曲:三木たかし
・やさしさに包まれたなら 作詞・作曲:荒井由実
・部屋とYシャツと私 作詞・作曲:平松愛理
・涙くんさよなら 作詞・作曲:浜口庫之助
【スペシャルトラック(山田姉妹オリジナル)】
・虹色の空 作詞:山田華 作曲:川﨑龍
・ただいま 作詞:山田麗 作曲:川﨑龍