【インタビュー】古澤 剛が味わった賞賛、葛藤、充実──「今できるすべてをみんなに聴いてもらおうと思っている」
■ 「天の川 with 小渕健太郎」は
■ お互い妥協せず“調和”させることを意識
時計の針を今へと進めよう。その「天の川 with 小渕健太郎」と、ニッポンハムグループ2018年企業CMソングとなった新曲「キミノチカラ」とを両A面に収めた古澤 剛のニューシングルが、3月14日にリリースされた。ニッポンハムグループのCMソングは「Color」に続き2曲目だが、あの時はすでにあった曲がCMに抜擢されたのとは違い、今回は純粋な書き下し。初めての経験ゆえに試行錯誤はあったが、それはとても充実した時間だった。
「「Color」の時は見つけてもらえた感謝でいっぱいだったんですけど、今度は“新しいCMでこういうメッセージを届けたいので楽曲をお願いできますか”と言ってもらえたのがすごくうれしくて。曲を書く時に一番うれしいのは、その曲が人の役に立つことなので、それを一番のモチベーションとして書き始めました。最初にCMの絵コンテやナレーションをいただいて、子供からお年寄りまでどの世代にも“食べることが未来に自分をつなげることだ”というメッセージに、マラソンをやっていることもあってすごく共感できたんですよ。もちろん野球も好きだし、ファイターズの選手が出てくれることもありましたし、まず“キミノチカラ”というタイトルを自分の中で先に決めました。君の力が必要だからとか、君の力のおかげで毎日楽しく過ごせているとか、いろんなイメージを思い描きながら、最終的には……君の力というのは、君だけが子供の頃から作ってきたたった一つの物語があって、誰もがその最先端に立っているんだから、明日は常に白紙だし、何を書き込むのも自分次第だから、そこに最高の自分を書き込んでくれよ、という応援歌になりましたね。君だけが持っている明日を描く力がある、それこそが“キミノチカラ”だよということです」
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完成した曲は、アコースティックギターとバンドが奏でる、シンプルだが力強いアコースティックロック。サビで繰り返される“超えてゆけ”という言葉がいつまでも心でリフレインし、古澤 剛の野性味あふれる歌声に背中を押される、静かに熱いメッセージソングだ。
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「この間の冬季オリンピック中継のCMでこの曲が流れた時も、アスリートの方たちの映像を観た後で聴くと、すごく背中を押している感じがするなって自分で思ったりしましたね。ただ、この“超えてゆけ”というのは、ストイックに頑張れ!という感じじゃなくて……そういうふうに響きがちなんですが、普通にそのままの自分でふっと超えられる日がきっと来るから、明日は真っ白だよということのほうが大事で、“自然に超えられるよ”という意味合いのほうが強いんです。どうしても、僕のこの野太い声で“超えてゆけ”と言われると、頑張らなきゃ!って思われがちかもしれないけど、実は軽やかに、超える力があなたにはあるはずだから焦らないで、という気持ちが強いです。それをライブでもうまく表現したいんですけど、どうしても眉間にしわを寄せて歌っちゃうもので、それが今後の課題ですね(笑)」
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あらためて、もう1曲の「天の川 with 小渕健太郎」にも触れてもらおう。作詞作曲は古澤 剛と小渕健太郎の共作になっているが、実際のところ、この曲はどんなふうに作られていったのだろうか?
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「小渕さんとの曲作りの時間は2日間あって、1日目に「Hey Brother」と「天の川」の曲ができて、2日目に歌詞を両方に乗せました。「天の川」は小渕さんがギターを弾きながら、“剛、このメロディ歌ってみて”とおっしゃっていて、自分は声という楽器に徹しようみたいな感じでしたね。メロディはほぼ小渕さん主導で、僕が隣で歌うことで進む方向を決めながら、引っ張っていってくれたようなところがあるので、きっと小渕さんの中では、僕の声が生きるメロディと曲を作ってみたいというイメージがあったんじゃないかな?と思うんですよ。僕はそれを受け取りながら歌って、“もっと良くなれ”と願いながら、あっという間にできた感じです。歌詞については、メロディに切なさが溢れていたので、一応モデルとなる僕の中での恋愛の出来事を元にして、散文詩みたいなものを落書き帳に3ページぐらい書いて持って行って、そこからさらに違うストーリーを書きかぶせるみたいな感じで作られていきました。僕が書くものは抽象的になりがちで、心の中の言葉が多いんですけど、それを小渕さんが情景が見える形に整えていってくれたという感じです。しかも出来上がってみたら“これは俺だな”と思ったんですよ。好きだと言えずに、歌にしたらいつか届くかな?と考えているとか、夜空の星を見上げて「好きだ!」と叫ぶとか、そういう感じがやけに自分みたいだなって(笑)。こういう恋愛の心を綴る曲は少なかったので、このきっかけで大事なラブソングをいただいたなという感じですね」
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コブクロの数ある名バラードを彷彿させる、シンセやパーカッションを加えた壮大なサウンドに、主役の古澤のたくましい歌声に寄り添うようなコーラスを添える小渕健太郎。どちらのファンにもアピールする、新たなバラードの名曲の誕生だ。
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「レコーディングの手法も、小渕さんが持ってるノウハウをまじまじと見せてもらうことができましたし、ゴージャスはゴージャスなんですけど、僕のスタンスも理解してもらいながら、お互い妥協はしたくなかったんですよね。妥協じゃなくて調和させることを意識して、お互いの意見がうまくまとまったと思います。サウンド・プロデューサーが小渕さんなので、小渕さんの個性が出るのは当然だと思いますし、その中で僕はこの声を使って言葉と思いを届けようという気持ちですね」
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