【インタビュー】古澤剛、初のフルAL『夢で会いましょう』に込めた願い
メジャーデビューから待つこと2年弱、古澤剛の初のフルアルバムが完成した。タイトルは『夢で会いましょう』。過去2年間、というよりも歌を作り始めてから、もっと言えば生まれてから今までの、すべての時間の中で出会った人、感じた思いを歌にしたためた、嘘偽りなき全13曲。CMソングで注目された「Color」「キミノチカラ」、コブクロ・小渕健太郎との共作2曲など話題曲をたっぷり盛り込み、タイトル曲「夢で会いましょう」をイントロとラストに配したコンセプチュアルな作品の中で、彼は何を聴き手に伝えようとしたのか。その言葉はどこまでも誠実で、優しさと力強さに溢れ、とことんポジティブなものだった。
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■ “あの1曲”というよりも
■ アルバムのジャケットが頭に浮かぶ
▲アルバム『夢で会いましょう』 |
古澤剛:もちろんです。楽曲としては、アルバムが一番表現できる場だと思うんですよ。ライブもそうですけどそれはまた別で、アルバムは1枚単位で印象に残ってほしいと思っていて、なぜなら僕が好きで聴いてきたのもアルバム単位だからです。“あの1曲”というよりもアルバムのジャケットが頭に浮かぶことが多いので、アルバム作りにはものすごく思い入れがあります。早く作りたかったです。
── 結果的に2年近くかかりました。
古澤:なんでこんなにかかったんでしょうね(笑)。でも今のタイミングじゃなきゃこれらの楽曲が世に出ることはなかったわけで、これはいいに違いないと自分で思った曲しか入ってないので本当に良かったなと思います。アルバム作りを始めてから新しく作った「チキン南蛮〜絶妙な男〜」とか「雨のTokyo Night」とか、普段は絶対ほめてくれない事務所の社長がいいと言ってくれて、びっくりしちゃって(笑)。
── そのへんの曲調は懐かしいポップス風味と言いますか。アコースティックとロックバンドのイメージが強い古澤さんの音楽性にフレッシュな印象を付け加えていて、すごくいいなあと。
古澤:最近、荻野目洋子さんの曲で高校生とかが踊っているのを見て、これは80年代や90年代頭の音楽が来てるなと。海外でもブルーノ・マーズが作るトラックはその時代を感じさせるし、そういう影響もあったと思います。楽曲がそういう方向に引っ張ってくれたところはありますよね。
── 時系列で言うと、「歩み」が一番古い曲ですか。
古澤:そうです。22歳ぐらいの時の曲で、日記としても読み返せますけど、自分で書いたという感じがあんまりしないんですね。作品って面白くて、自分の価値観がどんどん変わっていくと“これ誰が書いたんだっけ?”という変な感覚になる時があるんですよ。最近はそれが快感というか、録音する時には完全に手放してしまってますね。
── 状況としてはまだ、シンガーとしての未来がはっきりと見えない時期ですよね。「歩み」を作った時は。
古澤:そうなんです。まったく見えてない。今回あらためて歌詞を吟味してみて、“そういえばこれを書いたのは夢をあきらめた時だったな”と。本当はあきらめきれてないけど、母親が死んだことで、実家に帰って就職して長男らしく生きていこうとした。“僕はもっと強くならなきゃね”“僕は歩き始めるよ”というフレーズも、夢に向かってとかではなくて、もう夢はあきらめてしまったけど新しい自分の道がここにあるさ、という感じの淋しさがどこかにあるんですよね。録ってみてそこにあらためて気づかされたというか、自分でも忘れていたものがそこにあったなと思いました。
── アルバムの序盤には、昔を思い出すイメージの曲が並んでいるように思います。「明日の少年」も「歩み」も、「はじまりの空」もきっとふるさとの空だろうなと思うし。
古澤:そうなんですよね。いちおうアルバムの中に起承転結があって、時系列になったりもしてるんです。起のところはけっこう大きな視点でのみなさんへのメッセージになっていて、「はじまりの空」の、夢を思い描いて歩き始めた頃の景色だったり、「キミノチカラ」も、挫折を繰り返してなんとか乗り越えようとする中から生まれたものだし、「明日の少年」も小さな頃を振り返って今の自分を見つめ直す歌だし。
── そこが起だとすると、承にあたるのは?
古澤:「歩み」ぐらいまでが起になって、「GRANDPA MAN」と「Hey Brother!」が承みたいな感じ。「天の川」をそこに入れてもいいですけど、ここからラブソングが始まるので転かなと思っていて、「チキン南蛮〜絶妙な男〜」「雨のTokyo Night」が転で、それ以降は結みたいな感じ。はっきり分けてるわけではないけど、頭の中にそういう区切りはあります。曲の根底にあるテーマで分けると、そういうふうになるのかなと思いますね。
── もう一つ、このアルバムは出会いのアルバムでもあると思うんですね。具体的にはコブクロの小渕健太郎さん、樋口了一さん、剛さんのおじいちゃんをはじめ、これまでに出会った人、家族、そして女性とか。
古澤:ほとんどの曲に対象となる人の顔が見えてくるので、そういう人たちに与えてもらった楽曲であることは間違いないですね。人と出会い、僕がそこにいたからこの曲が書けたと思うので、やっぱり人に恵まれているんだなと思います、こうやって作品を見ると。演奏してくれた人を含めて、完璧なる適材適所がこのアルバムにはあるなと思うんですよ。
── あらためて何人かについてコメントを。剛さんにとって、樋口了一さんという人は?
古澤:もはや家族というものも越えてきてる感じがあるというか、何も言わずに通じ合えてる…と僕が思い込んでるだけかもしれないですけど(笑)、ものすごい信頼と尊敬があって、今でもいろんなことを学び続けている人です。
── 樋口さんとの共作「明日の少年」は、どんな作り方を?
古澤:樋口さんがあたためていたメロディがあって、こういう曲調は剛に合うんじゃないか?ということで、時間をかけてブラッシュアップしていきました。最初に曲のデモを聴かせてもらった時には違う歌詞があったんですけど、地元の小高い丘の上にあるフェンスのある野球場が頭の中によみがえってきて、これはそういう歌だなと思ってしまったんですね。僕は野球少年だったので。それで歌詞を書いて樋口さんに投げたら、樋口さんの息子さんが野球をしていて、“息子の、最後の打席のシーンが忘れられないんだよね”という、それを歌詞に書き加えてくれて。そうやってどんどん出来上がっていきましたね。
── 曲調は、ちょっと懐かしい感じのロックっぽいJ-POPど真ん中。
古澤:サウンドはビーイング系といいますか(笑)、90年代に僕が小学生の頃聴いていた胸ときめく音楽の、ああいうエネルギーを感じてほしいと考えてました。編曲も樋口さんなんですけど、レコーディング中もずっとコンソールの前にいて“ここはこういうふうにしたほうがいい”って引っ張ってくれたので。サウンド面ではまったく悩まず、これしかないよねというものができたので良かったです。
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